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寝かしつけにようやく成功して、そっと部屋を出た直後。足元が揺れて、暗がりのなかで最初に頭をよぎるのは「おむつ、あと何枚あったっけ」ではないでしょうか。赤ちゃんの備えがむずかしいのは、品目そのものより量が読めないところにあります。
先に答えを置きます。目標はまず3日分、そのうえで1週間分。1週間分を数にすると、おむつは約70枚、育児用調製粉乳なら980g、乳児用液体ミルクなら7ℓ、飲料水は赤ちゃん1人あたり21ℓです。これは東京都「東京防災」の備蓄モデルと、中央防災会議幹事会の計画にひもづく公的な1日量を、日数で掛けただけの数字になります。
つまり、備えの量は勘で決めるものではありません。1日あたりの量が分かれば、あとは日数を掛けるだけで自宅の必要数が出ます。この記事は、その掛け算をあなたの家の月齢と人数で実行するための道具です。おむつのサイズ表も、持ち出す物と家に置く物の仕分けも、この計算の下流にぶら下がっています。
この記事でわかること
- 赤ちゃんの備蓄は何日分が目標か(国と東京都が示す「3日→1週間」の段階目標)
- おむつ枚数・ミルク量・水の量を「1日あたり×日数」で自分で逆算する早見表
- 備蓄したおむつのサイズが体重の伸びで合わなくなる問題と、その回し方
- 避難所へ持ち出す分と自宅に置く分の仕分け、そのまま使える書き込み式チェックリスト
赤ちゃんの備えは「3日」で始めて「1週間」で仕上げる
家庭備蓄の推奨日数とは、支援物資や流通が回復するまで自宅の在庫だけで暮らせる日数の目標値である。この目標値は、国と自治体でほぼ同じ形をしています。
農林水産省は、家庭での食料備蓄について「最低でも3日分、出来れば一週間分程度」と示しています。根拠として挙げられているのは東日本大震災の実態で、発災後3日目以降まで食料調達が困難だった地域があったこと、電気の復旧に1週間以上・水道の復旧に10日以上を要した地域があったことです(出典: 農林水産省「家庭備蓄の実践」)。
東京都も同じ階段を描きます。「東京防災」は「まずは3日分を目標に、1週間やその先も見据えた備蓄を」と書き、コラムでは支援が届くまでの少なくとも1週間は誰にも頼らず暮らせるように備えることが備蓄だ、と踏み込んでいます(出典: 東京都「東京防災」)。
3日は「最低ライン」、1週間は「到達点」。赤ちゃんの分も、この2段階の目標をそのまま当てはめて数を出します。
赤ちゃんの分だけは「3日で足りる」と考えないほうがいい理由
大人は食べる量を減らせます。1日2食にもできるし、味の好き嫌いも我慢できる。ところが乳児は、飲む量も替える回数も自分の都合で減らせません。ここが赤ちゃんの備蓄が大人と決定的に違う点です。
もうひとつ、公的なチェックリストの側にも事情があります。消防庁の「備蓄品チェックシート」を見ると、飲料水について「1日3ℓが目安。3日分は備えましょう」とは書かれているものの、紙おむつや粉ミルクといった乳幼児専用の品目は記載されていません(出典: 消防庁「備蓄品チェックシート」)。一般向けのリストをそのまま印刷して壁に貼っても、赤ちゃんの欄は空白のままなのです。
だからこそ、乳幼児を含む家庭の備蓄モデルを具体的な数で示している東京都「東京防災」の備蓄ユニットリストが効いてきます。夫婦+乳幼児1人+高齢女性1人の4人家族、乳幼児は生後11ヶ月で卵アレルギーあり、という設定で1週間分の数量が並んでいる資料です。次の章では、この数字を積算表の出発点に使います。
必要数は「1日あたりの量 × 日数」で出す
積算とは、1日に使う量を確定させたうえで、備えたい日数を掛けて総量を求める計算のことである。赤ちゃんの備蓄は、この2つの数さえ押さえれば自分の家の答えが出ます。
まず、起点になる公的な1日量を並べます。乳児用の育児用ミルクについては、三重県の備蓄・調達基本方針(令和元年6月)が、0歳児を対象に育児用調製粉乳は1人1日あたり140g、乳児用液体ミルクは1ℓを基本とすると定めています。この数値は中央防災会議幹事会が決定した「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」(令和元年5月27日)に基づくもので、内閣府の事務連絡の別添資料として公開されています(出典: 内閣府(防災担当)ほか事務連絡 別添資料)。
おむつと水は、東京都「東京防災」の備蓄ユニットリストが出発点です。1週間分としておむつ約70枚、お尻拭き1パック、スティックタイプの粉ミルク約20本、離乳食1週間分以上。水は1人1日3ℓ、簡易トイレは1人1日5回分程度が目安と示されています。

赤ちゃん1人分の積算早見表
| 品目 | 1日あたりの目安 | 3日分 | 1週間分 | 1日量の出典 |
|---|---|---|---|---|
| 紙おむつ(生後11ヶ月ごろ) | 約10枚 | 約30枚 | 約70枚 | 東京都「東京防災」備蓄ユニットリスト |
| 紙おむつ(新生児期) | 10〜13枚 | 30〜39枚 | 70〜91枚 | ムーニー公式(10〜12回)/グーン公式(10〜13回) |
| 育児用調製粉乳(0歳児) | 140g | 420g | 980g | 三重県備蓄・調達基本方針(南海トラフ計画に基づく) |
| 乳児用液体ミルク(0歳児) | 1ℓ | 3ℓ | 7ℓ | 同上 |
| スティックタイプ粉ミルク | 約3本 | 約9本 | 約20本 | 東京都「東京防災」備蓄ユニットリスト |
| 飲料水(1人分) | 3ℓ | 9ℓ | 21ℓ | 東京都「東京防災」/消防庁チェックシート |
| 簡易トイレ(1人分) | 5回分程度 | 15回分程度 | 35回分程度 | 東京都「東京防災」 |
※3日分・1週間分の欄は、各出典が示す1日あたりの目安に日数を掛けた値です(1週間分のおむつ約70枚・スティック粉ミルク約20本は東京都の資料に記載された数量そのもの)。すべて目安であり、赤ちゃんの体格・月齢・体調によって前後します。
この表を、体感に翻訳するとこうなります
数字が並ぶと逆に手が止まるので、いったん生活の言葉に置き換えます。1日約10枚というおむつの目安は、ムーニー公式が新生児期の目安として示す「2〜3時間に1回程度」という交換ペースとほぼ重なります。朝起きてから夜寝るまで、そして夜中も、2〜3時間おきに1枚ずつ消えていく。その連続が1週間で70枚という塊になるわけです。
液体ミルクのほうも換算してみましょう。1日1ℓという目安を、江崎グリコ「アイクレオ赤ちゃんミルク」の内容量125mLで割ると、1日およそ8本、3日で24本、1週間で56本。段ボールで買い置きしていないと届かない数だと分かります。飲料水21ℓも、2ℓのペットボトルに直せば約10.5本。赤ちゃん1人分でこれですから、家族の人数分となると玄関先の一角が埋まる量です。
ここに挙げた1日量は、あくまで公的資料が示す目安です。実際に必要な量は月齢・体重・授乳の状況で大きく変わります。授乳や離乳、体調に関する判断は、かかりつけの小児科医・助産師・管理栄養士など専門家にご相談ください。
家族全体で必要な水の総量は、赤ちゃんの分だけでは決まりません。大人の分・調理用・衛生用をまとめて計算する手順は水の備蓄は1人何リットル必要かを日数別に計算した記事にまとめてあるので、世帯分の合計はそちらで出してください。
なお、赤ちゃんがいる家庭では500mlサイズを一定量まぜておく考え方もあります。開けたら使い切る前提の量なので、少しずつ使う場面と相性がよいためです。2ℓだけで揃えると、一度開けたあとの扱いに気を使う場面が出てきます。
おむつは月齢ではなく体重で決まる
紙おむつのサイズとは、月齢ではなく体重のレンジで区切られた規格である。ここを取り違えると、せっかく備蓄した1週間分がまるごと使えなくなります。
メーカー3社の公表値を並べると、区切りはおおむね共通しています。新生児用はいずれも体重5kgまで、Sサイズは3社とも4〜8kg、Lサイズも3社とも9〜14kg。差が出るのはMサイズと、その上のビッグサイズです。
| サイズ | ムーニー(ユニ・チャーム) | メリーズ(花王) | グーン(大王製紙) |
|---|---|---|---|
| 新生児用 | お誕生〜5kg | 誕生〜5kg | 〜5kg |
| S | 4〜8kg | 4〜8kg | 4〜8kg |
| M | 6〜11kg | 6〜12kg(パンツ) | 6〜11kg(テープ)/6〜12kg(パンツ) |
| L | 9〜14kg | 9〜14kg | 9〜14kg |
| ビッグ/BIG | (公式ページで数値を確認できず) | 12〜22kg | 12〜20kg(テープ)/12〜22kg(パンツ) |
※各社公式サイトの表示(2026年8月8日確認)。体重は目安であり、身長やおなか周り、体型の個人差で前後します。最新の表示は各社公式ページでご確認ください。
新生児用はどのメーカーも上限が5kgで、使える期間がいちばん短いサイズです。パンパースの「さらさらケア テープ 新生児サイズ」は5kgまでの表示で84枚入り。新生児期の目安である1日10〜13枚に当てはめると、1パックでおよそ1週間分に届く計算になります。出産前に用意するなら、この枚数をひとつの単位として数えると備蓄量が見えやすい。
体重帯の実例として分かりやすいのがSサイズです。同じパンパース「さらさらケア テープ」のSサイズは4〜8kgの表示で70枚入り。新生児用の上限5kgと帯が重なっているので、体重の伸び方によっては早めに移る家庭もあります。1日約10枚で回すなら1パックがちょうど7日分。早見表の「1週間分」を、そのまま1パックに置き換えられる数量になっています。
備蓄したおむつが「合わなくなる」問題
ここが赤ちゃんの備蓄でいちばん厄介な落とし穴です。水や乾パンは置いておけば置いた分だけ資産ですが、おむつは違う。サイズが合わなくなった瞬間、在庫はゼロと同じ扱いになります。
表を見ると、レンジの重なりが対処のヒントになっています。Sは4〜8kg、Mは6〜11kgなので、6〜8kgの帯は両方が使える。つまり体重がSの上限に近づいてきた時期は、SとMを併走させる期間だと考えられます。
その併走の受け皿になるのがMサイズです。ムーニーの「マシュマロ肌ごこち モレ安心 テープ」Mサイズは6〜11kgの表示で56枚入り。Sの上限8kgとMの下限6kgが2kg分かぶっているため、この時期はSの在庫を消化しながらMを少しずつ足していく形が組めます。なお商品名にある「マシュマロ肌ごこち」はメーカーの製品名で、肌に合うかどうかは赤ちゃんによって違いますから、湿疹などが気になるときはかかりつけの小児科医にご相談ください。
備蓄おむつの回し方(サイズ切り替え期の考え方)
- 備蓄分を「箱買いして押し入れに封印」しない。日常使いの棚と同じ場所に置き、古いものから普段使いに回す(ローリングストック)
- いま使っているサイズを1週間分、次のサイズを3日分。体重が上のレンジに入ってきたら比率を入れ替える
- サイズアップの判断は体重の数字だけで決めない。漏れが増えた、太もものゴム跡が食い込む、といった実物のサインも合わせて見る(3社とも体重は目安である旨を明記)
- 1サイズ大きい物が余ったときは、夜間用として先に使い切る手もある
おむつのほかにも、家に置いておく生活用品の全体像は家庭の備蓄品リスト完全版に品目単位でまとめてあります。赤ちゃん用品はその一部として組み込むと、二重に買う無駄が減ります。
ミルクと水は「お湯が作れない前提」で組む
乳児用液体ミルクとは、調乳せずそのまま飲ませられる液状の母乳代替食品である。この一文が、災害時の備えにおける粉ミルクとの決定的な違いです。
国の方針も、この点をはっきり書いています。内閣府(防災担当)・内閣府男女共同参画局・厚生労働省子ども家庭局母子保健課の連名事務連絡(令和元年10月25日)は、ライフライン断絶時に水等を使わず授乳できる乳児用液体ミルクの活用を挙げ、平時からの育児用ミルク・使い捨て哺乳瓶・消毒剤等の備蓄を都道府県等に要請しています。実際、令和元年台風19号では液体ミルクと哺乳瓶がプッシュ型支援として送られ、宮城県に液体ミルク200個・哺乳瓶60個、福島県に312個・110個、茨城県に168個・100個、長野県に96個・使い捨て哺乳瓶500個が届けられました(同事務連絡の参考資料、令和元年10月24日時点)。
ここで大事なのは、支援は来るが、来るまでの時間は自分で埋めるしかないという構造です。プッシュ型支援があるからこそ家庭備蓄が要らない、という話にはなりません。
粉ミルクと液体ミルクは、役割が違う
粉ミルクは軽くて場所を取らず、常温で保存できます。消費者庁のリーフレットによれば、乳児用調製粉乳は直射日光を避けて室温で保存でき、開缶後はなるべく早く(1ヶ月以内)使い切ること、作りおきや飲み残しは与えないこととされています。一方で、お湯と清潔な哺乳瓶が要る。断水と停電が重なった状況では、そこがボトルネックになります。
液体ミルクは逆です。そのまま飲ませられる代わりに、重い。1日1ℓという目安は、そのまま1日1kg超を運ぶという意味でもあります。避難用のリュックに1週間分を詰めるのは現実的ではありません。
結論として、両方を持つのが現実解です。持ち出し袋には液体ミルク(お湯が要らない)、自宅の在庫には粉ミルクを厚めに(軽くて量を置ける)。役割で分けると、どちらか一方に賭けるより破綻しにくくなります。
賞味期限にも差があります。江崎グリコ「アイクレオ赤ちゃんミルク」は製造日より10ヶ月、明治「ほほえみ らくらくミルク」は製造日から18ヶ月(2021年4月製造分より14ヶ月から延長)と各社が公表しており、入れ替えの手間が変わってきます。液体ミルクが常温で置ける制度上の裏づけは、厚生労働省の通知(令和6年3月19日付 健生発0319第10号)にある「常温保存可能品」の規格基準で、原材料等を摂氏120度で4分間加熱する方法(又は同等以上の殺菌効果を有する方法)と、あらかじめ殺菌した容器包装への無菌的な充塡が条件です。
同通知は保存基準を「常温を超えない温度で保存」と定め、夏期の保管・輸送時は温度管理に十分配慮する旨も明記しています。常温保存可能=どんな温度でも平気、ではありません。真夏の車内やベランダに置きっぱなしにする保管方法は避けてください。
開封後の扱い、温め方、家庭でのローテーションの組み方といった実務は、液体ミルクは備蓄になる?開封後・温め方・保存の条件をまとめた記事で個別に扱っています。本記事では在庫の「量」までを担当し、開封後や加温の詳細はそちらに委ねますので、液体ミルクを主軸に据える方は続けてお読みください。
調乳に使う水について
備蓄品リストの側では、内閣府男女共同参画局のチェックシートが品目例として「乳幼児用飲料水(軟水)」を挙げています。また、厚生労働科学研究費補助金の助成を受けて制作された「あかちゃんとママを守る防災ノート」(内閣府の検討会ワーキンググループ参考資料として掲載)にも、市販の水を使う際には軟水を使う旨、哺乳瓶がない場合は紙コップやスプーンで少しずつ飲ませる旨が記載されています。
ただし、どの製品をどう使うかの最終的な可否は水の硬度だけで決まるものではありません。調乳に使う水は、ご使用のミルクの製造販売元の指示と、水そのものの製品表示を必ずご確認ください。当サイトから特定の水を「調乳に使える」と断定することはしません。
同じ資料には、粉ミルクを提供する際は哺乳瓶の衛生が確保される前提であること、個包装タイプが衛生的で便利であることも書かれています。内閣府男女共同参画局の事務連絡(平成23年3月16日、同24日一部修正)は、避難所提供物資としておむつ(おしり拭きもあるとよい)、粉ミルク、哺乳ビン(乳首・消毒器具も必要)、離乳食(小型スプーンも必要)を挙げており、「本体」だけでなく付属品まで含めて1セットだという視点が読み取れます。
離乳食期に入っていたら
農林水産省は「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」に乳幼児のセクションを設け、粉ミルクの作り方や9〜12ヶ月向けを含む離乳食の備えを、栄養・医療の専門家監修で掲載しています。東京都の備蓄モデルでも、11ヶ月児の欄には離乳食が1週間分以上と書かれていました。
おかゆややわらかいご飯を用意しておきたい時期であれば、常温で置けて湯せんでも食べられるパックご飯が選択肢に入ります。銘柄ごとの保存期間や量の違いはパックご飯の備蓄について整理した記事にまとめました。離乳が終わって幼児食に移行したあとの必要量は、子どもの非常食を年齢別の量の目安で解説した記事のほうが実態に合います。
そして忘れがちなのが、家族全体の食料です。赤ちゃんの分ばかり充実して、大人が3日目に食べる物がない、という偏りは起こりえます。世帯分をまとめて確保する方法は非常食セット7日分を比較した記事で扱っています。
「持ち出す物」と「家に置く物」は分けて考える
持ち出し品とは、避難のときに手に持って運べる重量に収まる分だけを指す。在宅避難で使う備蓄とは、そもそも設計思想が違います。
ここで効いてくるのが重さの現実です。乳児を連れて避難するとき、「あかちゃんとママを守る防災ノート」は抱っこ紐やスリング等を使って抱っこして避難すると明記しています。つまり両腕はすでに赤ちゃんで埋まっている。残る運搬力は背中のリュック1つ分だけ、という前提で品目を選ぶ必要があります。
液体ミルクの1週間分は7ℓ、水は赤ちゃん1人分だけで21ℓ。合計28kg近い重量を、抱っこ紐で乳児を抱えたまま運ぶのは現実的ではありません。だから仕分けが要るのです。

| 品目 | 持ち出す(リュック) | 家に置く(在宅避難) | 分ける理由 |
|---|---|---|---|
| 紙おむつ | 1日分(10〜13枚が目安) | 1週間分(約70枚が目安) | かさばる。全量は運べない |
| おしりふき | 携帯サイズ1個 | 1パック以上 | 手拭き・体拭きにも回せるため多めに |
| ミルク | 液体ミルク中心(お湯が要らない) | 粉ミルクを厚めに(軽くて量を置ける) | 避難直後はお湯と衛生の確保が難しい |
| 哺乳瓶・乳首・消毒器具 | 使い捨てタイプ | 通常品+消毒剤 | 洗浄できない前提で持ち出す |
| 飲料水 | 小容量を数本 | 1人1日3ℓ×日数 | 21ℓは背負えない |
| 抱っこ紐・スリング | 必ず持ち出す(着用したまま) | 予備があれば | 両手を空けるための道具 |
| 母子健康手帳・健康保険証 | 常に携帯 | ― | 資料に「常に携帯し、大切なページはクラウドに」と明記 |
| 離乳食・小型スプーン | 1〜2食分 | 1週間分以上 | 付属品まで含めて1セット |
| 簡易トイレ | 数回分 | 1人1日5回分程度×日数 | 在宅避難では消費が読める |
※持ち出す量は、東京都・メーカー各社が示す1日あたりの目安を1日分として置いたものです。避難するかどうか、どこへ避難するかの判断は、お住まいの自治体や気象庁など公的機関の情報に必ず従ってください。
夜のおむつ替えと授乳で、両手が空く明かりを
停電下でいちばん困る作業は、たぶん夜間のおむつ替えと授乳です。スマホのライトを口にくわえるわけにもいかず、片手で赤ちゃんを支えながらもう片手で懐中電灯を持つと、作業する手が残りません。頭に着けるタイプの明かりが1つあると、この場面だけは形勢が変わります。
大人自身の持ち出し袋の中身(衣類・情報・現金・衛生用品など)は赤ちゃん用品とは別枠で必要です。品目の全体像は防災リュックの中身リストをまとめた記事を土台にして、そこへ本記事の赤ちゃん用の列を足す形にすると、抜けが出にくくなります。
また、産後まもない時期であれば母親側の備えも同時に要ります。避難所での調達がむずかしくなりやすい品目については生理用品の備蓄量と保管方法をまとめた記事を参照してください。赤ちゃんの分だけ完璧で、お母さんの分がゼロ、という配分は避けたいところです。
書き込み式チェックリスト(在庫を◯×で埋める)
チェックリストとは、買う物の一覧ではなく、いま家にある物と目標量の差を可視化する道具である。以下は印刷やスクリーンショットで使う前提で作りました。各項目の右側に、自宅の在庫数と、上の早見表で出した目標数を書き込んでください。
ミルク・水(0歳児)
- 乳児用液体ミルク 目標:1日1ℓ×___日分=___ℓ / 自宅在庫:___
- 育児用調製粉乳 目標:1日140g×___日分=___g / 自宅在庫:___
- スティックタイプ粉ミルク 目標:1日約3本×___日分=___本 / 自宅在庫:___
- 哺乳瓶(使い捨てタイプを含む)・乳首・消毒器具 / 自宅在庫:___
- 飲料水 目標:1日3ℓ×___日分=___ℓ / 自宅在庫:___
- 紙コップ・スプーン(哺乳瓶が使えない場面用) / 自宅在庫:___
おむつ・衛生
- 紙おむつ(いま使っているサイズ) 目標:1日約10枚×___日分=___枚 / 自宅在庫:___
- 紙おむつ(次のサイズ) 目標:3日分=___枚 / 自宅在庫:___
- おしりふき 目標:1週間で1パック以上 / 自宅在庫:___
- 使用済みおむつを入れる袋(防臭タイプ) / 自宅在庫:___
- 簡易トイレ 目標:1日5回分程度×___日分×家族___人 / 自宅在庫:___
食事(離乳食期)
- 離乳食(月齢に合ったもの) 目標:1週間分以上 / 自宅在庫:___
- 小型スプーン / 自宅在庫:___
- やわらかいご飯・おかゆ類 / 自宅在庫:___
- アレルギー対応品(該当する場合) / 自宅在庫:___
移動・記録・明かり
- 抱っこ紐またはスリング(すぐ取り出せる場所にあるか)
- 母子健康手帳・健康保険証(常に携帯できているか。大切なページの控えを取っているか)
- 両手が空く明かり(頭に着けるタイプ)と予備電池
- 着替え・タオル・バスタオル(おくるみ・目隠しにも回せる)
- 赤ちゃんが落ち着けるもの(お気に入りのおもちゃ等)
目標欄の日数は、まず「3」で一度埋めてください。3日分がすべて◯になってから、同じ表を「7」で埋め直します。最初から1週間分で計算すると、差が大きすぎて手が止まりやすいためです。
このリストが当てはまらないケース
汎用リストとは、平均的な条件の家庭を想定して作られた最大公約数である。したがって、条件が平均から外れる家庭ではそのまま使えません。ここを書かずに終わる記事が多いので、線引きを明示しておきます。
- 医療的ケアが必要なお子さん……電源が要る機器、薬、専用の栄養剤などは、本記事の一般的な数量計算の範囲外です。停電時の対応も含め、主治医や医療機器の提供元、お住まいの自治体の担当窓口と個別に計画を立ててください。
- 食物アレルギーがあるお子さん……東京都の備蓄モデルでも、乳幼児は卵アレルギーありという設定で、粉ミルク・離乳食ともにアレルギー対応品が指定されていました。対応品は入手経路が限られるため、一般品と同じ感覚で「後で買い足す」計画は立てないほうが安全です。品目の選定は必ず専門家と相談のうえ決めてください。
- 月齢が上がっていく前提が織り込めていない……本記事の数字は、公的資料で1日量が確認できた新生児期と生後11ヶ月ごろの2点を起点にしています。その中間の月齢や、1歳を過ぎたあとの必要量は各家庭で変わります。備蓄は「一度作って終わり」ではなく、少なくともサイズが変わるたびに見直す性質のものです。
- 完全母乳・混合など授乳の状況によって変わる……育児用ミルクの必要量は、授乳の形によって当然変わります。消費者庁のリーフレットも、母乳が足りているか等を確認のうえ、使用前に医師・管理栄養士・助産師に相談することが望ましいとしています。
- 避難の可否そのもの……どのタイミングでどこへ避難するかは、住んでいる場所のハザードや住宅の構造で変わります。判断はお住まいの自治体や気象庁などの公的情報に従ってください。本記事は「備える量」の話であって、「逃げ方」の指示ではありません。
ベビーカーで避難できるかどうかについては、当サイトから判断を示すことはしません。公的資料で確認できたのは乳児の避難手段として抱っこ紐やスリング等が挙げられていることまでで、ベビーカーの可否を明記した公的文書は確認できませんでした。避難経路の状況によっても変わるため、お住まいの自治体の案内で最新の情報をご確認ください。
よくある質問
Q. 赤ちゃんの防災グッズは何日分そろえればいいですか?
A. まず3日分、そのうえで1週間分が目標です。農林水産省は家庭での食料備蓄について「最低でも3日分、出来れば一週間分程度」とし、東京都「東京防災」も「まずは3日分を目標に、1週間やその先も見据えた備蓄を」と示しています。赤ちゃんの用品は量を減らす調整がききにくいので、家族のなかでは優先的に1週間分へ引き上げる対象になります。
Q. おむつは何枚あれば足りますか?
A. 東京都「東京防災」の備蓄モデル(生後11ヶ月の乳幼児を含む4人家族)では、1週間分としておむつ約70枚が挙げられています。1日あたりに直すと約10枚です。新生児期はメーカー公式の交換回数の目安が1日10〜12回(ムーニー)、1日10〜13回(グーン)とされているため、同じ日数でもやや多めに見積もる形になります。いずれも目安であり、体格や体調で前後します。
Q. 粉ミルクと液体ミルク、どちらを備えるべきですか?
A. 役割が違うため、両方を持つのが現実的です。粉ミルクは軽くて量を置ける代わりに、お湯と清潔な哺乳瓶が要ります。液体ミルクは水を使わずに授乳できる代わりに、重い。国の事務連絡(令和元年10月25日)も、ライフライン断絶時に水等を使わず授乳できる乳児用液体ミルクの活用と、平時からの育児用ミルク・使い捨て哺乳瓶・消毒剤等の備蓄をあわせて挙げています。開封後の扱いや温め方の詳細は液体ミルクの記事に整理しています。
Q. 備蓄しておいたおむつのサイズが合わなくなりそうです。どうすればいいですか?
A. 押し入れに封印せず、日常使いと同じ棚に置いて古いものから使う「ローリングストック」に切り替えるのが基本です。3社の公表値ではSが4〜8kg、Mが6〜11kg(メーカー・タイプにより6〜12kg)と体重レンジが重なっているため、体重が上限に近づいた時期はSとMを併走させる期間と考えられます。ただし体重は目安であり、漏れやゴム跡といった実際のサインも合わせて判断してください。
Q. 一般的な防災リストに赤ちゃん用品が載っていないのはなぜですか?
A. すべてのリストが乳幼児を想定しているわけではないためです。たとえば消防庁の「備蓄品チェックシート」には飲料水1日3ℓという記載はありますが、紙おむつや粉ミルクといった乳幼児専用の品目は記載されていません。乳幼児を含む家庭は、一般向けのリストに本記事のような赤ちゃん用の列を自分で足す必要があります。
家族全体の食料をまとめて確保する方法は、非常食セット7日分を1食あたりで比較した記事で扱っています。赤ちゃんの分と大人の分は、別々に数えたほうが抜けません。
まとめ:今日やることは、1日あたりの数を1つ決めるだけ
備蓄の準備でつまずく原因は、たいてい「何をどれだけ」の後半にあります。品目は調べればすぐ出てくるのに、量が決まらないから買い物リストにならない。逆に言えば、1日あたりの数さえ確定すれば、あとは掛け算と買い足しの作業に落ちます。
必要数 = 1日あたりの量 × 備える日数。おむつ約10枚/日、育児用調製粉乳140g/日、乳児用液体ミルク1ℓ/日、水3ℓ/日。この4つを起点に、まず「×3日」から始めてください。
今日やることは1つだけで十分です。いま家にあるおむつの枚数を数えて、3日分(約30枚)に届いているかを確かめる。それだけで、自分の家がどのくらいの位置にいるのかが分かります。
- 数えるいま家にあるおむつ・ミルク・水の在庫を数え、上のチェックリストの「自宅在庫」欄に書き込みます。所要時間は5分ほどです。
- 3日分まで埋める早見表の「3日分」の欄と比べて、足りない品目だけを次の買い物リストに移します。一度に1週間分を目指さないのがコツです。
- 回す仕組みにする備蓄分を押し入れに封印せず、日常使いの棚に混ぜて古いものから使います。おむつはサイズが変わる前に消費でき、ミルクは賞味期限(アイクレオ赤ちゃんミルクは製造日より10ヶ月、ほほえみ らくらくミルクは製造日から18ヶ月と各社が公表)の管理がしやすくなります。
そして最後にもう一度だけ。ここに書いた数はすべて公的資料が示す目安であり、あなたの赤ちゃんに必要な量そのものではありません。授乳・離乳・体調に関する判断はかかりつけの小児科医や助産師など専門家に、避難に関する判断はお住まいの自治体や気象庁などの公的機関に、それぞれ委ねてください。この記事の役割は、その手前にある「量の見当をつける」ところまでです。
参考・出典
- 農林水産省「家庭備蓄の実践」 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/3.html (確認日: 2026年8月8日)
- 農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/guidebook.html (確認日: 2026年8月8日)
- 東京都「東京防災」(備蓄ユニットリスト・備蓄の考え方) https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/074/02/030318.pdf (確認日: 2026年8月8日)
- 内閣府(防災担当)・内閣府男女共同参画局・厚生労働省子ども家庭局母子保健課 事務連絡「災害時における授乳の支援並びに母子に必要となる物資の備蓄及び活用について」(令和元年10月25日)及び別添資料 https://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/siryo_46.pdf (確認日: 2026年8月8日)
- 内閣府男女共同参画局「チェックシート(備蓄・避難所・応急仮設住宅)」及び事務連絡「女性や子育てのニーズを踏まえた災害対応について」 https://www.gender.go.jp/policy/saigai/ikenkoukan/pdf/ikn_03_01_03.pdf (確認日: 2026年8月8日)
- 内閣府 避難所の確保等に関する検討会ワーキンググループ参考資料「あかちゃんとママを守る防災ノート」(厚生労働科学研究費補助金の助成、制作: NPO法人MAMA-PLUG) https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanzyokakuho/wg_situ/pdf/dai3kaisankou4.pdf (確認日: 2026年8月8日)
- 消防庁「備蓄品チェックシート」 https://www.fdma.go.jp/relocation/bousai_manual/too/pdf/store.pdf (確認日: 2026年8月8日)
- 厚生労働省 令和6年3月19日付通知(健生発0319第10号)常温保存可能品の規格基準 https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/001230334.pdf (確認日: 2026年8月8日)
- 消費者庁「乳児用調製粉乳ってなに?」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/assets/food_labeling_cms206_20230927_07.pdf (確認日: 2026年8月8日)
- ユニ・チャーム「ムーニー」公式(おむつのサイズと交換回数の目安) https://jp.moony.com/ja/tips/baby/childcare/diapers/bm0077.html (確認日: 2026年8月8日)
- 花王「メリーズ」公式(おむつのサイズ選び) https://www.kao.co.jp/merries/guide/select/ (確認日: 2026年8月8日)
- 大王製紙「エリエール グーン」公式(製品ラインナップ/おむつ替えの目安) https://www.elleair.jp/product/list/baby / https://www.elleair.jp/goo-n/article/useful/204123/ (確認日: 2026年8月8日)
- 江崎グリコ「アイクレオ赤ちゃんミルク」公式 https://www.glico.com/jp/product/babyfood/icreo/44817/ (確認日: 2026年8月8日)
- 明治「ほほえみ らくらくミルク」公式 https://www.meiji.co.jp/baby/hohoemi/rakurakumilk/ (確認日: 2026年8月8日)
