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ポータブル電源の容量計算は、「家電のW(ワット)数 × 使う時間(h)= Wh(ワットアワー)」を家電ごとに出して合計し、最後に0.8で割る——この3手順で終わります。むずかしい電気の知識はいりません。必要なのは、自宅の家電に貼られている数字だけです。
そのW数は、カタログを探し回らなくても本体で確認できます。冷蔵庫なら冷蔵室ドアの内側または側面の「品質表示ラベル」(パナソニック公式FAQ)。扇風機なら背面や底面。たとえばパナソニックの扇風機F-C337Bは「強」運転で15W(同社仕様ページ)なので、1日8時間なら120Whです。この計算を4〜5行ぶん積み上げれば、わが家に要る容量が数字で出ます。
この記事は「家電から積算する」ことに役割を絞りました。何人・何日で何クラスを選ぶかはポータブル電源のおすすめ容量・人数×日数で逆算が担当します。
この記事でわかること
- 家電の消費電力を本体のどこで確認するか(冷蔵庫・扇風機などの具体的な場所)
- 「W」と「VA」表記が混在する理由と、VAしか書いていない家電の換算手順
- 自分の家電を書き込んで合計できるWh積算表と、代表値の出典つきさくいん表
- 冷蔵庫のように起動の瞬間だけ電力が跳ね上がる家電の見分け方
消費電力のW数は家電本体の「定格ラベル」で確認する
定格ラベルとは、その家電の電圧や消費電力を製造元が表示した銘板であり、ほぼすべての家電のどこかに貼られている表示です。ネットで「冷蔵庫 消費電力」と検索して出てくる平均値より、目の前のラベルの数字のほうが正確です。
問題は「どこに貼ってあるか」でしょう。パナソニック公式FAQは、冷蔵庫の消費電力量の確認場所としてカタログ・比較表に加えて「冷蔵室ドア内側または側面の品質表示ラベル」を挙げています。扉を開けて内側を見るだけで済みます。
- 冷蔵庫:冷蔵室ドアの内側、または本体側面の品質表示ラベル(パナソニック公式FAQ)
- 扇風機・サーキュレーター:本体背面または底面のラベル、および取扱説明書の仕様欄
- 電気ポット・電子レンジ:本体背面または底面。定格消費電力と定格電圧がセットで書かれている
- スマホ・PCの充電:本体ではなく、コンセントに挿す電源アダプタ側の表示を見る
- 照明器具:器具本体の銘板。VA表記になっているケースがある(次章で換算)
スマホ充電について補足します。見るのは充電器(電源アダプタ)です。アップルの「20W USB-C電源アダプタ」は最大出力20Wと公式に表示されています。スマホ本体側の受け入れ能力や充電の進み具合によって実際の消費はこれより小さくなりますが、多めに見積もるぶんには計算が破綻しません。
「W」と「VA」は別物|VA表記しかない家電はこう換算する
VA(ボルトアンペア)とは、電源から送り出される電力の大きさ=皮相電力を表す単位です。一方のWは、実際に消費された電力。似ているようで、同じ数字にはなりません。
パナソニックの公式FAQは、照明器具の負荷容量について次の2つの式を示しています。
- 負荷容量(VA)= 定格電圧(V)× 入力電流(A)
- 消費電力(W)= 定格電圧(V)× 入力電流(A)× 力率(%)
2つを見比べると、W = VA × 力率という関係が浮かび上がります。力率(りきりつ)とは、送り出された電力のうち実際に仕事へ使われた割合のこと。力率が100%ならVAとWは同じ値、力率が低いほどWはVAより小さくなる、という関係です。
力率がどこにも書かれていない家電は、VAの数値をそのままWとみなして積算してください。実際の消費電力はそれ以下になるため、容量を少なく見積もってしまう失敗を防げます。電気の計算では「多めに見ておく」が安全側です。
代表的な家電の消費電力の目安(出典つきさくいん表)
代表値とは、メーカーが公表した特定機種の実データであり、自宅の同種家電の当たりをつけるための参照値です。ラベルが読めなかったとき、あるいは買う前に概算したいときの補助として使ってください。数字の性格が違うので、出典と注意点を同じ表に並べました。
| 家電カテゴリ | 代表消費電力 | 出典 | 備考・注意点 |
|---|---|---|---|
| 冷蔵庫(定格内容積472L) | 電動機90W | パナソニック NR-F478TM 仕様ページ | 年間消費電力量220kWh/年。電熱装置(霜取りヒーター等)は198W。起動の瞬間は別枠(後述) |
| 扇風機(強運転) | 15W | パナソニック F-C337B 仕様ページ | 50Hz/60Hz共通。弱運転ならさらに小さい |
| スマホ充電 | 20W(充電器の定格) | アップル 20W USB-C電源アダプタ | 実際の消費はこれ以下。多めに見積もる用途に向く |
| 照明 | 器具のラベルを参照 | — | VA表記の場合は前章の手順でWへ換算する |
ここで押さえておきたいのは、冷蔵庫の位置づけです。資源エネルギー庁「冬季の省エネメニュー ご家庭の皆様」(令和7年10月発行)によると、冬季の1日における家庭の電気使用割合は暖房32.7%、冷蔵庫14.9%、給湯12.6%、照明9.2%、待機電力5.5%、テレビ・DVD4.2%。暖房の内訳はエアコン17.0%、電気ストーブ3.8%、こたつ2.1%、電気カーペット1.8%となっています。
つまりどういうことか。冷蔵庫は「1台あたりの消費電力は小さいのに、家全体では2番目に電気を使う」家電なのです。90Wという数字は小さく見えます。けれど24時間動き続けるので、Whが静かに積み上がる。停電時に何を守るかを考えるとき、この構造は覚えておく価値があります。
容量と定格出力の両方をカタログで確認できる国内主要ブランドの公式サイトはこちらです(→EcoFlow(エコフロー)公式サイトでポータブル電源を見る / Jackery(ジャクリ)公式サイトでポータブル電源を見る
)。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
書き込み式「家電別Wh積算表」で必要容量を出す
Wh(ワットアワー)とは、消費電力Wにその家電を使う時間hを掛けた電力量の単位です。ポータブル電源の「〇〇Wh」という表記も、この電力量を指しています。単位がそろっているので、家電側を同じWhに直せば引き算ができる、という仕組みです。
家電1つの1日分(Wh)= ラベルのW数 × 1日に使う時間(h)
必要な表記容量(Wh)= 全家電の1日分の合計 × 停電日数 ÷ 0.8
最後の「÷0.8」は飛ばさないでください。ポータブル電源に蓄えた直流の電気を、家電が使う交流に変換するときにロスが出るためです。加えて、使い込むほど蓄えられる量は少しずつ落ちていきます。表記容量の8割前後を実用値とみておくと、計算と現実のズレが小さくなります。
以下が積算表です。空欄に自宅の数字を書き込んでください。1行目には記入例を入れてあります。
| No. | 家電名 | W数(ラベル/VA換算) | 1日の使用時間h | 1日の消費Wh | 起動時に定格を大きく超える? | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 例 | 扇風機(強) | 15W | 8h | 120Wh | いいえ | 就寝時は弱で運転 |
| 1 | W | h | Wh | はい/いいえ | ||
| 2 | W | h | Wh | はい/いいえ | ||
| 3 | W | h | Wh | はい/いいえ | ||
| 4 | W | h | Wh | はい/いいえ | ||
| 5 | W | h | Wh | はい/いいえ | ||
| 合計 | 1日の合計Wh | Wh | — | |||
| 結果 | 合計Wh × 停電日数 ÷ 0.8 | Wh | — | これが必要な表記容量 |
数字だけだと実感が湧きにくいので、体感に翻訳しておきます。当サイトで上の式を使って試算すると、1000Whの表記容量は、実用800Whとして扇風機(強・15W)なら約53時間ぶん。丸2日は回し続けられる計算になります。スマホ充電は、20Wの充電器で1時間ぶんを20Whと数えれば約40回相当。家族4人が1日1回ずつ充電するとして、10日ぶんという規模感です。
冷蔵庫など「起動時に跳ね上がる」家電は定格Wだけで判断しない
突入電流とは、電源を入れた瞬間だけ流れる大きな電流のことです。ここを見落とすと、Whの計算は合っているのに家電が動かない、という事態が起こります。
停電が始まり、冷蔵庫の電源プラグをポータブル電源に差し込んだ瞬間。保護回路が働いて出力が止まる——この現象の正体が突入電流です。パナソニックの公式FAQ「発電機で冷蔵庫を使えるか」は、冷蔵庫の突入電流が10A(1000W)を超えると明記しています。定格の電動機出力が90Wの機種でも、起動の一瞬だけは1000W超が必要になり得るということ。10倍以上の差です。
同FAQは、発電機で冷蔵庫を使う場合はインバーター付きであっても接続の可否をメーカーへ事前確認するよう求めており、インバーターなしの発電機では制御回路の誤動作や故障のおそれがあるとしています。ポータブル電源も同じ考え方で見ておくと安心でしょう。
- 要注意(起動時に定格を大きく超える):冷蔵庫、エアコン、除湿機、洗濯機、電動工具、ポンプ類などモーター・コンプレッサーを使う家電
- 要注意:電子レンジ、電気ケトル、ドライヤーなど短時間に大電力を使う加熱系(定格そのものが大きい)
- 通常(定格Wのままで積算してよい):LED照明、扇風機、スマホ・PCの充電、ラジオ、ルーター、電気毛布
要注意に該当する家電を動かす予定があるなら、容量(Wh)とは別にポータブル電源側の「定格出力(W)」と「瞬間最大出力(サージ出力)」を製品仕様で確認してください。容量が大きくても定格出力が小さいモデルでは、起動時に立ち上がりません。冷蔵庫については、使用の可否を家電メーカーへ問い合わせるのが確実です。
この「定格出力(W)」と「瞬間最大出力」を製品ページで確認する作業が実際どう見えるのか、1台で示します。EcoFlow(エコフロー)の「RIVER 2」は、EcoFlow公式サイトで容量256Wh・AC定格出力300W・リン酸鉄リチウムイオン電池・重量約3.5kgと公表されています(2026-09-04確認時点)。定格300Wという数字が先に分かっていれば、前章の冷蔵庫(突入電流10A=1000W超)は容量ではなく出力の側で最初からはじかれると、買う前に判断できます。積算した必要容量が1000Whを超えていたとしても、確認する順番は同じです。
もう1つ、表記の読み方に注意が要ります。同社は定格を一時的に超える負荷への対応を「X-Boost」と呼び、公式サイトでは利用時450Wと説明しています。他社が使う「サージ出力」「瞬間最大出力」とは、呼び名も測り方も同じではありません。数値の名前はメーカーごとに違うので、比べるときは製品ページの表記をそのまま書き写す——それだけで、せっかく積算した容量が出力側で無駄になる失敗は避けられます。
この計算がいらない家庭の条件と、ここでは決まらないこと
正直に言うと、この積算作業が不要な家庭もあります。目的が「スマホと明かりを保つこと」だけなら、ポータブル電源という選択肢自体が過剰かもしれません。
- 停電中に動かしたい家電がスマホ・ラジオ・小型ライトだけ——モバイルバッテリーと乾電池式ランタンのほうが軽く、置き場所も選びません
- 賃貸のワンルームなどで10kgを超える機器の置き場所と保管環境を確保しにくい
- 年に一度も充電状態を点検する習慣が持てない——リチウムイオン電池は放置すると性能が落ちていきます
- 調理の熱源が目的——電気で加熱するのは効率が悪く、カセットこんろのほうが素直な解決です
1つ目に当てはまる方は防災用モバイルバッテリー容量、そもそも必要かを迷っている方はポータブル電源はいらない?を先に読んだほうが遠回りせずに済みます。調理の熱源はカセットコンロは防災にいらない?で扱っています。
そして、この記事で決まらないこともはっきりさせておきます。ここでの役割は「家電単位でWhを積算する」ところまで。積算で出た数字をもとに、何人家族・何日ぶんならどの容量クラスが妥当か、製品をどう比べるかはポータブル電源のおすすめ容量・人数×日数で逆算が担当します。積算表を埋めてから読むと、クラス選びの判断がぶれません。
まとめ|今日やることは、冷蔵庫のドアを開けることだけ
必要なWhは、人気ランキングではなく自宅のラベルから決まります。手順は3つです。
- ラベルを写す停電中に動かしたい家電を3〜5個に絞り、本体のラベルからW数を書き出します。冷蔵庫はドア内側または側面、扇風機は背面か底面。VA表記なら、そのままWとみなして構いません。
- Whを積算する「W×1日の使用時間h」で家電ごとのWhを出して合計します。停電日数を掛け、最後に0.8で割ったものが必要な表記容量です。
- 出力側を確認する冷蔵庫やエアコンを含めるなら、容量とは別に定格出力・瞬間最大出力を製品仕様で確かめます。ここまで決まれば、あとは条件に合うモデルを選ぶだけです。
今日やる行動は1つ。冷蔵庫のドアを開けて、内側のラベルを1枚スマホで撮っておくことです。数字さえ手元にあれば、積算は5分で終わります。
よくある質問
Q. ラベルに「年間消費電力量◯◯kWh/年」しか書かれていません
それは1年間に使う電力量の合計で、瞬間の消費電力(W)とは別の数字です。たとえばパナソニックNR-F478TM(定格内容積472L)は年間消費電力量220kWh/年ですが、定格の電動機出力は90W。停電時の計算に使うのは後者です。年間値しか見つからない場合は、同じメーカーの仕様ページで定格消費電力の欄を確認してください。
Q. 複数の家電を同時に使うときは、どう計算しますか
Wh(容量)は単純な足し算で構いません。注意が要るのはW(出力)のほうで、同時に使う家電のW数を合計した値が、ポータブル電源の定格出力を超えないかを確認します。容量が足りていても出力が足りなければ動かない——この2つは分けて考えてください。
Q. 積算した数字より大きめの容量を選んでおけば安心ですか
容量が増えるほど本体は重くなり、置き場所も限られます。持ち運べない機器は避難時に使えません。積算値を基準に、余裕は「必要容量の1.2〜1.5倍程度」といった範囲で考え、重量と保管場所とのバランスで決めるのが現実的です。保管場所の考え方は防災グッズの収納場所4か所分散も参考になります。
出典: 資源エネルギー庁「冬季の省エネメニュー ご家庭の皆様」(令和7年10月発行)/パナソニック 冷蔵庫 NR-F478TM 仕様/パナソニック FAQ「冷蔵庫の消費電力量と電気代の計算方法は」/パナソニック FAQ「照明器具の負荷容量(VA)の計算方法」/パナソニック 扇風機 F-C337B 仕様/Apple 20W USB-C電源アダプタ/パナソニック FAQ「発電機で冷蔵庫を使えるか」
