4人家族の防災リュックは何個いる?大人と子どもで重さを分ける配分表

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4人家族ぶんの防災リュックを用意しようとして、「とりあえず4つ買えばいいのか」で手が止まる。ここでつまずく人はとても多いです。答えを先に書きます。必要なのはリュック4つではなく、背負える人の数だけ。大人2人と子ども2人の家庭なら、実質は大人用が2つ、子ども用の軽いものが2つ。そして中身の重さは、4等分しません。

理由は身も蓋もなく、体格が違うからです。自治体の公式ページでよく見かける目安は男性15kg・女性10kg。いっぽう子どもの荷物については、学術研究が体重の10〜15%という数字を出しています。体重25kgの小学生なら2.5〜3.75kg。大人の枠の4分の1にも届きません。同じ量を人数で割ってしまうと、いちばん体力のない人が最初に歩けなくなります。

もうひとつ、先に知っておくと買い物がラクになる事実があります。「4人用の防災セット」という完成品は、そもそもほとんど売られていません。探しても見つからないのは、探し方が下手だからではないのです。

この記事でわかること

  • 主要メーカー4社を横並びで確認すると「4人用の防災セット」は存在しない(2026年8月21日確認時点)
  • 「男性15kg・女性10kg」は国が決めた基準ではなく、自治体の公式ページに載っている数値である
  • 人数で割らず「背負える重さ」で割る配分の考え方と、そのまま使える書き込み式シート
  • はぐれる前提で、明かりや食料を重複させ、救急用品や書類は1つに集約する分け方
目次

4人用の防災セットは、ほとんど売られていない

防災セットとは、非常時に持ち出す最低限の道具と食料を1つのリュックにまとめた完成品のことです。1人用、2人用と人数の単位で売られているため、4人家族なら4人用があるはずだと考えるのが自然でしょう。ところが実際に主要メーカーの公式ラインアップを1社ずつ当たると、その単位の商品が出てきません。

編集部で公式サイトの人数展開を確認した結果が次の表です。「4人用」の欄がすべて「なし」で埋まります。

メーカー 公式の人数展開 4人用の有無 確認日
アイリスオーヤマ 1人用・2人用まで(例:防災リュック2人用67点セット NBS2-67) なし 2026年8月21日確認時点
山善 1人用(防災バッグ30 YBG-30R/30点)。4人家族向けは同じ商品を4個束ねる売り方 なし(1人用×4という扱い) 2026年8月21日確認時点
LA・PITA 1人用・2人用・3人用+キッズ用・ベビー用、および「SHELTERファミリー」(30Lリュック×1+KIDSリュック10L×1) 4人用単体はなし 2026年8月21日確認時点
Defend Future 1人用・2人用まで なし 2026年8月21日確認時点

アイリスオーヤマの公式サイトは編集部からの直接アクセスがブロックされたため、ラインアップは複数の検索結果を突き合わせて確認しています。また「SHELTERファミリー」は何人用かという表記が公式ページになく、総重量・総点数も記載がありません。この表の内容は、あくまで各社が公表している人数の単位についての整理です。

4人ぶんを1つにまとめると、誰も背負えなくなる

ではなぜ、どのメーカーも4人用を作らないのでしょうか。重さで考えると理屈が見えてきます。

公表値が確認できた1人用セットは、山善の防災バッグ30(YBG-30R)で約1.97kg、30点入り、サイズは約320×430×160mmです。約1.97kgは、2Lのペットボトル1本ぶんとほぼ同じ重さと考えてください。これを4人ぶん単純に足すと、道具だけで約7.9kgになります。

つまりどういうことか。ここに水と着替えを加えれば、1つのリュックはあっという間に10kgを超えます。その重さを背負えるのは家族のうち1人だけ。しかもその1人が仕事先にいたり、はぐれたりした瞬間に、家族全員の装備がまるごと消えてしまいます。4人用という商品が成立しないのは、需要がないからではなく、1つにまとめた時点で防災用品として機能しなくなるからです。

「4人用」と書かれた商品が見つかったときは、中身が4人ぶんなのか、それとも1〜2人用のセットを複数個まとめた販売単位なのかを確認してください。前者ならリュックの数と背負える人の数が合っているかを、後者なら1個あたりの重さを見ることになります。

なお、持ち出し用のリュックと家に置いておく備蓄は役割がまったく違います。リュックに詰めるのは「持って出る数日ぶん」だけで、それ以上は家に積むほうが理にかなっています。家に置く量の考え方は4人家族の1週間備蓄|必要量を実際に積み上げると何箱になるかで箱の数まで出しているので、リュックの中身を減らす判断材料に使ってください。

持ち出す重さの目安は、国ではなく自治体と研究が出している

重量の目安とは、避難時に背負って歩ける荷物の上限として示された数値のことです。防災の記事を読んでいると「男性15kg・女性10kgが基準です」という一文によく出会います。この数字がどこから来ているのかを、編集部で一次資料まで辿りました。結果は、多くの人が思っているものとは少し違いました。

政府(内閣府・消防庁)は重量の数値を出していない

内閣府の防災情報のページ「特集 家族で防災」を実際に開いて全文を確認しましたが、重量の目安に関する記述はありません。総務省消防庁の「非常用持出品チェックシート」PDFも同様で、こちらに書かれているのは品目のリストだけです。貴重品類(現金・10円玉・通帳・印鑑・保険証・免許証)、避難用具(懐中電灯・携帯ラジオ・予備電池・ヘルメットまたは防災ずきん)、生活用品、救急用具、非常食品、衣料品、感染症対策物品、携帯カイロ。何kgまでという線引きは、どこにも出てきません。

自治体レベルでは「男性15kg・女性10kg」が広まっている

いっぽう広島県の防災ポータル「防災グッズ一覧」には、非常持出袋の重さの目安として男性15kg・女性10kgという数値が明記されています。同じ趣旨の記載は他の自治体でも見かけます。国の統一基準ではなく、自治体が住民向けに示している実務的な目安という位置づけで読むのが正確です。

学術研究は「kg」ではなく「体重比」で見ている

研究の世界では、そもそも絶対値のkgで語りません。京都光華大学の防災ラボが紹介している論文をたどると、Brackley & Stevenson(2004)が体重の10〜15%を制限とすべきだと述べ、直井ら(2014)は体重の15%の負荷は腰部リスクの観点から避けるべきだと指摘しています。Chen & Mu(2018)の男子小学生を対象にした研究も、15%は避けるべきという結論です。米国小児科学会は、子どものリュックについて体重の10〜20%を超えないようにという見解を示しているとされます。

背負える重さの上限=体重の10〜15%。体重60kgの大人なら6〜9kg、体重25kgの小学生なら2.5〜3.75kg。家族の人数ではなく、この式で1人ずつ枠を決めます。

上に挙げた論文と米国小児科学会の見解は、京都光華大学の紹介記事を経由して確認したもので、編集部は原論文そのものには到達していません。引用元の論文名は同記事に明記されています。また日本小児科学会が同様の見解を出しているかどうかは、複数の検索を行いましたが確認できませんでした(見解が存在しないという意味ではありません)。

文部科学省の通知にも、kgも%も書かれていない

「子どものランドセルは重すぎる」という話題でよく引き合いに出される文部科学省の事務連絡「児童生徒の携行品に係る配慮について」(2018年9月6日付)の原文も、PDFで全文を確認しました。書かれているのは、宿題以外の教材を学校に置いてよいといった学校側の運用の工夫例です。重量やパーセントの数値は一切ありません。

ここまでを整理すると、こうなります。国は数値を出していない。自治体は15kg・10kgという実務的な目安を出している。研究は体重比で見ている。3つは矛盾しているのではなく、答えている問いが違うのです。だから大人の枠は自治体の数値で丸め、子どもの枠は体重比で決める、という使い分けができます。

大人1人ぶんを実際に10kgへ収める作業がどれくらい削る作業になるかは、一人暮らし女性の防災リュック|10kgに収める中身の決め方で1品ずつ積み上げています。4人家族の大人枠を考えるときの下地としてそのまま使えます。

4人家族の配分は、人数で割らずに「背負える重さ」で割る

配分とは、家族全員ぶんの持ち出し品を、誰のリュックにどれだけ入れるかを決める作業のことです。ここがこの記事の主役になります。

玄関に並んでいる4つのリュックを、家族4人で背負う場面を思い浮かべてみてください。同じ大きさのリュックが4つ並ぶと、なんとなく公平に見えます。でも実際に持ち上げるのは、体重60kgの大人と、体重15kgの園児です。同じ重さを持たせた瞬間に、園児のほうは玄関から一歩も動けません。公平に見える配分と、全員が歩ける配分は別物なのです。

まず4人ぶんの「枠」を先に決める

買う前でも詰める前でもなく、いちばん最初にやるのが枠決めです。体重の10〜15%を全員ぶん計算して、紙に書き出します。典型的な4人家族で当てはめると、次のようになります。

体重の例 上限の目安(体重の10〜15%) 自治体の目安との関係
70kg 7.0〜10.5kg 男性15kgより手前で止まる
55kg 5.5〜8.25kg 女性10kgより手前で止まる
小学生 25kg 2.5〜3.75kg 大人の目安は当てはまらない
未就学児 15kg 1.5〜2.25kg ほぼ空に近い荷物になる

4人の枠を足すと16.5〜24.75kg。ここで気づいてほしいのは、枠の6割以上を大人2人が持っているという点です。人数は4人でも、運べる能力で見ると4人家族はほぼ「大人2人ぶん+おまけ」。だから配分は4等分にならず、大人に寄せる形になります。

大人が持つもの

大人のリュックに入れるのは、重いもの、全員が使うもの、そして命に直結するものです。水、明かり、救急用品、書類、そして頭を守る道具。優先度の高い順に大人の枠から埋めていき、余った枠に着替えなどを足していくと収まりが良くなります。

頭を守る道具は、大人こそ持つ意味があります。落下物から身を守れなければ、子どもを連れて歩くという役割そのものが果たせなくなるからです。ただしヘルメットはかさばるという問題があります。ここで候補になるのが、DICプラスチックの折りたたみヘルメットIZANO2です。

公表値では、重量450g、使用時のサイズ297×222×139mmで、折りたたむと厚さ63mmまで縮みます。材質はABS樹脂、対応する頭囲の目安は47〜62cm、全9色で2021年6月3日の発売。飛来落下物用と墜落時保護用の国家検定を取得しています。450gは500mlペットボトル1本弱。大人の枠が7〜10kgあることを思えば、450gを固定枠として先に確保しても、残りの配分は十分に組めます。厚さ63mmという数字は、リュックの背中側に立てて入れても他の中身を圧迫しないという意味です。

枠に何を入れるかで迷ったら、品目そのものの優先順位は防災リュックの中身リスト|最低限の6つと、入れなくていい5つに委ねてください。この記事では「誰がどれだけ持つか」だけを扱い、何を入れるかの取捨選択はそちらで扱っています。

小学生に持たせる物

小学生の枠は2.5〜3.75kg。大人の3分の1ほどです。ここに家族共有の重い物を入れると、すぐに枠が埋まります。だから小学生のリュックには、原則として自分のために使う物と、軽い主食を入れます。着替え、雨具、飲みかけの水、自分の名前と連絡先を書いたカード。これで枠の半分ほどが埋まります。

残りの枠に入れる主食として扱いやすいのが、尾西食品の携帯おにぎりです。公表値では1食あたりの内容量が鮭42g、わかめ42g、五目おこわ45g、昆布42g。乾燥した状態なので、1食持たせても枠をほとんど食べません。必要な水量は鮭・わかめ・昆布が67ml、五目おこわが59mlで、出来上がりは109gまたは104gになります。熱量は鮭152kcal、わかめ151kcal、五目おこわ168kcal、昆布150kcal。保存期間は全種5年です。

言い換えると、40g台の紙包みが、水を注ぐだけで100gを超えるおにぎりに変わるということ。子どもの枠を削らずに主食を持たせられる数少ない選択肢です。味が4種類あるので、避難先で同じものを食べ続けずに済むという点も、子どもにはありがたいところです。

未就学児のリュックはどうするか

体重15kgの子の枠は1.5〜2.25kg。この枠は、正直に言えばほぼ空のまま運用するのが正解です。目的が荷物を運ぶことではなく、リュックを背負う習慣と、はぐれたときに身元がわかる状態を作ることにあるからです。名前と保護者の連絡先を書いたカード、小さなタオル、お気に入りの小物。これで十分に機能します。

そなえぐらし管理人

小さい子のリュックを「もったいないから」と詰めてしまう気持ち、よくわかります。でも重くて途中で放り出されたら、中身ごと失うことになります。空に見えるくらいが、ちょうどいいんです。

そのうえで、子どもの枠に1つだけ足すなら井村屋のえいようかんが候補になります。公表値は1本60g・171kcalで、60g×5本入り(内容量300g)。賞味期限は5年6か月です。原材料は砂糖、生あん(小豆)、水あめ、寒天のみで、特定原材料およびそれに準ずるものを使用していません

これが効くのは2つの場面です。ひとつは水が使えないとき。ようかんはそのまま食べられるので、水を1滴も減らさずにカロリーを入れられます。もうひとつは、家族や避難先の誰かに食物アレルギーがあるとき。原材料が4つしかないので、分け合う判断がしやすくなります。1本60gなら、園児の枠にも小学生の枠にも無理なく入ります。

そのまま使える、書き込み式の配分シート

ここまでの考え方を、1枚に落とし込みます。印刷するか手元の紙に写して、「実際の重さ」の欄だけを空けたまま用意してください。詰め終わったリュックを体重計に載せて、その場で書き込む欄です。上限と実測の差が、そのまま余裕の大きさになります。

体重 上限の重さ(体重の10〜15%) 担当する品目 実際の重さ
大人A    kg    kg 〜    kg 水/ヘルメット/明かり/家族4人ぶんの主食/現金    kg
大人B    kg    kg 〜    kg 水/ヘルメット/明かり/救急用品/書類一式/携帯トイレ    kg
小学生    kg    kg 〜    kg 自分の着替え/雨具/自分の水/主食1食/連絡先カード    kg
未就学児    kg    kg 〜    kg 連絡先カード/タオル/ようかん1本/お気に入りの小物    kg

大人1人ぶんの重さを、公表値だけで積み上げてみる

枠に対して実際どのくらい入るのか。公表値が確認できている品目だけで、大人Aのリュックを積み上げます。

品目 重さ(公表値) 数量 小計
1人用の防災セット一式(30点/山善 YBG-30Rの公表値) 約1,970g 1式 約1,970g
折りたたみヘルメット IZANO2 450g 1個 450g
LEDランタン GENTOS EX-136S 約355g 1台 約355g
尾西食品 携帯おにぎり(家族4人×1食) 1食42〜45g 4食 約171g
井村屋 えいようかん(60g×5本) 1本60g 5本 300g
合計 約3,246g(約3.25kg)

体重70kgの大人の上限を10.5kgとすると、ここまでで枠の3分の1弱。残る約7kgが、水と着替えとタオルの取り分になります。逆に体重55kgで上限8.25kgとするなら、残りは約5kg。同じ中身でも、背負う人によって残り枠が2kg以上変わります。

子ども側も同じ計算をしてみます。小学生に折りたたみヘルメット450g、携帯おにぎり1食42g、ようかん1本60gを持たせると合計552g。上限2.5kgに対して、まだ約2kgの余裕があります。この2kgに着替えと雨具と水が入る、という順番で埋めていくと、無理のない配分に落ち着きます。

積み上げの母体にした約1,970gは、山善の1人用セットの公表値をそのまま計算材料として借りたものです。アイリスオーヤマとLA・PITAはセット総重量の公式記載が確認できませんでした。手持ちのセットがある場合は、そのまま体重計に載せて実測してください。公表値の積み上げは、あくまで買う前の見積もりです。

4人家族の防災リュックで誰が何を持つかの対応表。大人Aは水とヘルメットと明かりと主食4人分、大人Bは水とヘルメットと明かりと救急用品と書類、小学生は着替えと雨具と自分の水と主食1食、未就学児は連絡先カードとタオルとようかん1本

なお、ここまで一度も「何リットルのリュックを選ぶか」に触れていません。容量は重さが決まってから逆算するものだからです。詰めるものと重さが確定してからサイズを決める手順は、防災リュックは何リットル必要?中身の重さから逆算する容量とサイズの決め方に委ねます。この記事の配分表を先に埋めてから、そちらへ進むのが最短です。

はぐれる前提で、重ねて持つものと1つでいいものを分ける

重複装備とは、家族が別々の場所にいても困らないように、同じ物を2人以上が持つ考え方のことです。4人家族の配分がややこしくなる最大の理由は、この「重ねる/重ねない」の判断が品目ごとに違うところにあります。

判断の軸は1つだけ。その人がその物なしで数時間過ごせるかどうかです。過ごせないものは重ねる。過ごせるものは1つに集約して、そのぶん軽くする。

  • 重ねて持つもの:明かり、水、主食、携帯トイレ、家族の連絡先メモ、現金(特に小銭)
  • 1つでいいもの:救急用品一式、通帳・印鑑・保険証・免許証などの書類、缶切り、携帯ラジオ

書類や救急用品を重ねないのは、単純に重くてかさばるからだけではありません。書類は分散させると管理も再発行の手続きも複雑になります。1人が責任を持って1セットを運ぶほうが、結果として失いにくくなるのです。

明かりだけは、必ず2つ以上に分ける

重ねるものの中でも、明かりの優先度は突出しています。夜に停電した集合住宅の階段を降りる、避難所で自分の場所を探す、子どもの顔色を確認する。どれも、明かりがない側の1人には代わりがききません。

据え置きで使える明かりとして公表値が明確なのが、GENTOSのEX-136Sです。重量は電池を含めて約355g。350mlの缶飲料1本ぶんとほぼ同じ重さと考えるとイメージしやすいでしょう。明るさは370lm(Highモード)、点灯時間は約9時間(High)/18時間(Mid)/142時間(Eco)/60時間(キャンドル)。電源は単3形アルカリ電池6本で、サイズは約φ78.0×141.5mm、耐塵・1m防水のIP67準拠、2m落下耐久です。

ここで効いてくるのが「355g」という数字です。大人2人がそれぞれ1台ずつ持つと、家族全体で710g。500mlペットボトル1本半ぶんの重さを足すだけで、家族が2手に分かれても両方に明かりが残ります。Ecoモードの142時間は、夜だけ使えば単純計算で数日以上もつ長さです。

重ねる・重ねないを一巡させたあと、抜けを埋める作業に移ります。配分を決めたあとに残りやすい穴は防災グッズで忘れがちなものにまとめてあるので、配分表が埋まったタイミングで照らし合わせてください。

子どもの分は、重さより「自分で背負い続けられるか」で決める

防災ずきんとは、頭と首まわりを覆う布製の被り物で、日本防炎協会の認定制度では防炎性能と衝撃吸収性能の両方が試験される製品です。子どもの頭を守る道具には、ヘルメットとこの防災ずきんという2つの系統があります。

選び分けの基準は、重さそのものよりも「自分でかぶり続けられるか」「置き場所に持っていけるか」です。ヘルメットは衝撃に強い反面、幼い子は嫌がって外してしまうことがあります。防災ずきんはかさばらず学校や園に置いておけますが、性能の担保は製品によって差があります。

持ち出す重さの目安の出どころ別対応表。内閣府と消防庁は重量の記載が無く、広島県など自治体は男性15kg・女性10kg、学術研究は体重の10〜15%まで、文部科学省は子どもの荷物に数値基準なし

日本防炎協会の認定は、何を保証しているのか

防炎製品認定制度は、消防法令で防炎化が義務づけられていない製品について、公益財団法人日本防炎協会が自主的に設けている制度です。防災頭巾等はその対象品目のひとつで、性能試験基準に具体的な合格ラインが書かれています。編集部で全文を確認した内容が次のとおりです。

試験 方法 合格の基準 出典
衝撃吸収性 JIS T 8131:2000の6.3・6.5に準拠。質量0.09〜0.095kgのストライカーを100mm上方から自然落下 人頭模型が木材・金属複合品なら衝撃力7.4kN以下、金属製なら9.8kN以下 日本防炎協会 防炎製品性能試験基準(2026年8月21日確認時点)
防炎性能 45°エアーミックスバーナー法。試験体4体を90秒間加熱 炭化長は最大10cm以下・平均8cm以下、かつ残炎時間20秒以下 同上
洗濯後の性能 洗たく処理を行ったうえで再試験 洗濯後も上記基準を満たすこと 同上

言い換えると、認定品は「燃えにくい」だけの製品ではありません。頭にかかる衝撃力の上限まで数値で決められていて、しかも洗ったあとにもう一度その基準を満たすことを求められています。子どもの防災ずきんは日常的に洗うものですから、この洗濯後の再試験という条件は地味ですが重要です。

日本防炎協会自身が「インターネット上の通販サイトで偽防炎製品(防災頭巾)が複数確認されている」「偽造した防炎製品ラベルを貼付し、認定品と称して販売されている」と公式に注意喚起しています。協会は認定品を作るメーカーの直販サイトやカタログ通販での購入を推奨しています。ラベルの有無だけで判断せず、メーカー名が協会の認定事業所一覧に載っているかを確かめてください。

認定事業所一覧に名前がある製品を選ぶ

その一覧に実際に名前があるメーカーのひとつが、大明企画です。協会が公開している「防炎製品(防災頭巾)認定事業所一覧」に、事業所番号M-3408・M-0346として掲載されており、記載の電話番号も同社サイトのものと一致することを編集部で確認しました。

同社のセーフティクッションES アルミタイプ 90001は、外形寸法490×280mm。側地・裏地・芯材にポリエステル防炎処理生地を使い、かぶったまま音が聞こえるよう耳穴が開いています。反射材付きで、ダストマスクが付属し、記名欄があります。重量は公式・販売店のいずれにも記載が確認できなかったため、この記事では書きません。子どもの配分シートに書き込むときは、実物を計ってから記入してください。

耳穴と記名欄という2つの仕様は、子ども用として実務的な意味があります。耳が塞がれないことは、避難誘導の声が聞こえるということ。記名欄は、はぐれたときに名前が読めるということ。未就学児のリュックに連絡先カードを入れるのと、狙いは同じです。

ヘルメットと防災ずきんのどちらを、どの年齢で選ぶのか。学校の指定や保管場所まで含めた比較は防災ヘルメットと防災ずきんはどちらが必要?で扱っています。両方そろえる必要があるのかという疑問も、そちらで整理しました。

この配分が当てはまらない家庭がある

配分表とは、背負える人と背負えない人の組み合わせを一枚に写し取ったものです。だから組み合わせが変われば、表そのものが別の形になります。ここまで示した配分表は大人2人と子ども2人という典型例を前提にしたもので、当てはまらない家庭を正直に3つ挙げます。

大人が1人のとき

大人1人と子ども2人の三人家族、あるいは大人1人と子ども3人。この場合、重複装備の考え方が根本から変わります。明かりを2つに分けようにも、背負える大人が1人しかいないからです。

現実的な組み方は、大人の枠に必需品を集約したうえで、小学生以上の子に「明かり1つ」だけを重複させる形です。ランタンではなく、子どもが自分で扱える小型の明かりを1つ。そのぶん、子どもの枠から着替えを1組減らします。3人家族なら大人の枠に余裕が生まれると考えがちですが、運ぶ人が減っている以上、総量はむしろ絞る方向で考えるほうが安全です。

子どもが3人以上のとき

子どもが増えると、背負えない人だけが増えていきます。大人2人+子ども3人の5人家族では、大人2人の枠の合計は変わらないのに、守る対象が1人増える計算です。

この場合は、リュックの数を増やすより、いちばん上の子を「準・大人」として扱うほうが機能します。体重が35kgあれば上限は3.5〜5.25kgで、下の子の着替えや食料を分担できる水準に届きます。人数×1個という発想から離れることが、ここでも鍵になります。

在宅避難が前提のとき

マンションの中高層階に住んでいて、建物の安全が確認できるなら、そもそも背負って逃げない選択肢があります。この場合、リュックは「万一のときに掴んで出る最小限」に絞り、量の勝負は家の中の備蓄へ移します。配分表の上限を埋めきる必要はありません。

家族構成を入力すると必要な品目と数量が人数に応じて算出される東京都の「東京備蓄ナビ」のような公的ツールを使うと、在宅側にどれだけ積むかの当たりがつきます。家全体の備蓄の考え方は家庭の備蓄品リスト完全版|人数×日数の早見表つきに人数×日数の早見表としてまとめてあるので、リュックと家の役割分担を決めるときに開いてください。

逃げるか、家に留まるか。この判断は荷物の重さで決めるものではありません。避難するかどうかの最終的な判断は、内閣府・消防庁および居住地の自治体が発表する避難情報とハザードマップに従ってください。この記事が扱うのは、避難すると決めたあとの荷物の分け方だけです。

よくある質問

Q. 防災リュックは家族3人なら3つ必要ですか?

人数と同じ数を用意する必要はありません。基準は「背負える人が何人いるか」です。大人2人と乳児1人の3人家族なら、実質は大人用2つ。大人1人と小学生2人の3人家族なら、大人用1つと軽い子ども用2つになります。3人家族でも4人家族でも、体重の10〜15%という枠を1人ずつ計算してから個数を決める手順は同じです。

Q. 4人ぶんを1つの大きなリュックにまとめてはいけませんか?

おすすめできません。公表値が確認できた1人用セットは約1.97kgで、4人ぶんまとめると道具だけで約7.9kg。水と着替えを足せば10kgを超えます。背負えるのが1人だけになるうえ、その1人と離れた瞬間に家族全員の装備が失われます。重い物を大人に寄せるのと、1つにまとめるのは別の話です。

Q. 未就学児にリュックを背負わせる意味はありますか?

あります。ただし荷物を運ばせるためではありません。体重15kgの子の上限は1.5〜2.25kgで、実際に入れるのは連絡先カード、タオル、ようかん1本、お気に入りの小物といったところ。目的は、背負って歩く練習と、はぐれたときに身元がわかる状態をつくることにあります。重くすると途中で放り出され、中身ごと失うことになります。

Q. 大人の「15kg・10kg」という目安は誰が決めたものですか?

国の基準ではありません。編集部が内閣府の防災情報のページと総務省消防庁の非常用持出品チェックシートPDFを実際に開いて確認した範囲では、どちらにも重量の記載がありませんでした。この数値は広島県など自治体の公式ページに掲載されているものです。学術研究のほうは体重の10〜15%という体重比で見ており、米国小児科学会は子どもについて体重の10〜20%という見解を示しているとされます。日本小児科学会の見解については、複数の検索を行いましたが確認できませんでした。

Q. 子どもの荷物の重さについて、文部科学省が基準を出していると聞きました。

2018年9月6日付の事務連絡「児童生徒の携行品に係る配慮について」の原文をPDFで全文確認しましたが、kgもパーセントも一切書かれていません。内容は、宿題以外の教材を学校に置いてよいといった学校側の工夫例です。「体重の何%まで」という言い方の根拠は学術研究の側にあり、文部科学省が定めた数値ではないと区別して読んでください。

配分が決まったうえで「1から詰めるのは大変だから完成品を買う」と判断したなら、次は中身の検証に進みます。市販セットは点数の多さで比較されがちですが、実際に見るべきなのは1点ずつの中身と重さです。防災セットのおすすめはどれ?市販セットの中身を1点ずつ検証する選び方で、公表値をもとに1点ずつ確認する手順をまとめています。

まとめ:今日やることは、家族4人の体重を書き出すことだけ

4人家族に必要なのはリュック4つではなく、背負える人の数だけ。中身は人数で割らず、体重の10〜15%という枠で1人ずつ決める。「4人用の防災セット」が見つからないのは、1つにまとめた時点で誰も背負えなくなるからです。

買い物より先に、紙とペンで済む作業があります。家族4人の体重を書き出して、それぞれに0.10と0.15を掛ける。これだけで、何をどこまで買えばいいのかの上限が見えます。

そなえぐらし管理人

完璧な4つを一度にそろえなくて大丈夫です。まず大人2人ぶんの枠を決めて、そこに明かりと主食を入れる。子どもの枠は、その次でも間に合います。

  1. 体重を書き出して枠を出す家族4人の体重に0.10と0.15を掛け、上限の幅を紙に書きます。大人の枠が全体の6割以上になっていれば、計算は合っています。
  2. 配分シートの「担当する品目」を埋める明かり・水・主食は大人2人に重ねる。救急用品と書類は1人に集約する。子どもの欄は自分のための物と軽い主食だけにします。
  3. 詰め終わったリュックを体重計に載せる「実際の重さ」の欄を実測で埋めます。上限を超えていたら、重いものから大人の枠へ移すか、家の備蓄側へ戻してください。

参考・出典

  • 広島県 防災ポータル「防災グッズ一覧」(男性15kg・女性10kgの記載を確認)
    https://www.gensai.pref.hiroshima.jp/prepare/goods.html(2026年8月21日確認時点)
  • 内閣府 防災情報のページ「特集 家族で防災」(重量の記載がないことを確認)
    https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h23/66/special_01.html(2026年8月21日確認時点)
  • 総務省消防庁「非常用持出品チェックシート」PDF(品目リストのみで重量の記載がないことを確認)
    https://www.fdma.go.jp/relocation/bousai_manual/too/pdf/mocidashi.pdf(2026年8月21日確認時点)
  • 文部科学省 事務連絡「児童生徒の携行品に係る配慮について」(2018年9月6日付/数値記載がないことを確認)
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/keikohin/__icsFiles/afieldfile/2018/09/06/1408967_001_1.pdf(2026年8月21日確認時点)
  • 京都光華大学 防災ラボ「非常持出袋の重さ」(Brackley & Stevenson 2004、直井ら2014、Chen & Mu 2018、米国小児科学会の見解の紹介)
    https://www.koka.ac.jp/sociology/news/bousailab/emergency-bag-weight(2026年8月21日確認時点)
  • 公益財団法人日本防炎協会「偽防炎製品(防災頭巾)にご注意ください」および添付の認定事業所一覧
    https://www.jfra.or.jp/pdf/news_20200114.pdf(2026年8月21日確認時点)
  • 公益財団法人日本防炎協会「防炎製品性能試験基準」(最終改正 平成25年7月10日 基準第1号)
    https://www.jfra.or.jp/whatnew/pdf/130830_kaisei/seinoushiken_kijyun.pdf(2026年8月21日確認時点)
  • DIC株式会社 プレスリリース(IZANO2の重量・寸法・国家検定取得)
    https://www.dic-global.com/ja/news/2021/products/20210520232108.html(2026年8月21日確認時点)
  • GENTOS 公式製品ページ EX-136S
    https://gentos.jp/products/EX-136S(2026年8月21日確認時点)
  • 尾西食品株式会社 公式「製品規格一覧」PDF(携帯おにぎりの内容量・必要水量・熱量・保存期間)
    https://www.onisifoods.co.jp/products/pdf/kikaku_04.php(2026年8月21日確認時点)
  • 井村屋株式会社 公式「えいようかん」
    https://www.imuraya.co.jp/goods/yokan/c-eiyo/eiyo/(2026年8月21日確認時点)
  • 山善 防災バッグ30 YBG-30R(重量約1.97kg・30点・サイズ)
    https://yamazenbizcom.jp/item/22666.html(2026年8月21日確認時点)
  • LA・PITA 公式 製品ページ(人数展開・SHELTERファミリーのセット内容)
    https://lapita.co.jp/company/product/product02(2026年8月21日確認時点)
  • アイリスオーヤマ 公式 防災グッズ/防災セット(編集部からの直接アクセスは遮断されたため、複数の検索結果でラインアップを確認)
    https://www.irisohyama.co.jp/emergency-supplies/emergency-kit/(2026年8月21日確認時点)
  • Defend Future 公式ストア(人数展開)
    https://store.defend-future.net(2026年8月21日確認時点)
  • 大明企画 セーフティクッションES アルミタイプ 90001 の寸法・仕様(販売店表記/重量の記載は確認できず)
    https://www.taroto.jp/view/item/000000202448(2026年8月21日確認時点)
  • 東京都防災ホームページ「東京備蓄ナビ」
    https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kyojyo/1001855/1013810.html(2026年8月21日確認時点)
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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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