大雪の立ち往生に備える車の装備|スタック脱出の道具と、車内で一晩過ごす備え

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目次

大雪の立ち往生対策は「抜ける道具」と「耐える道具」を分けて積む

大雪の立ち往生とは、雪や事故で前の車が動かなくなり、自分の車も進むことも戻ることもできなくなった状態のことです。スタックが「自分のタイヤが空転して動けない」個人の事故だとすれば、立ち往生は「列ごと止まる」出来事。だから必要な道具も、ひとつではなく二種類あります。

まず押さえておきたい数字がひとつあります。JAFが2015年2月16日に北海道旭川市で行ったユーザーテストでは、雪に埋まった車のエンジンをかけたまま何も対策をしなかった場合、開始から16分で車内の一酸化炭素濃度が短時間暴露限度の400ppmに達し、そこから6分後、計22分で測定上限の1,000ppmに達したと公表されています。16分というのは、カップ麺を作って食べ終わるくらいの時間です。なお、このテストが行われたのは10年以上前です。それでも今回この数字を使うのは、雪に埋まった車内の一酸化炭素濃度を条件別に測った公表データが、ほかに見当たらなかったからです。

この数字は、怖がるために覚えるものではありません。「止まったら、まずマフラー周りを掘る」という行動を、迷わず最初に持ってくるための目安です。同じテストで窓を5cm開けた条件では、400ppmに達したのは約40分後。除雪と換気が、危険までの時間をどれだけ後ろにずらすかがはっきり出ています。

この記事でわかること

  • JAFの実測値でみる「立ち往生のタイムライン」と、何分目に何をするか
  • スタックから抜けるためのJAF公式4手順を、上から順に試す判定フロー
  • 抜けられないと決まったあと、車内で一晩を過ごすための暖・明かり・電源・トイレ・食べ物の決め方
  • 通年で積みっぱなしにする物と、冬だけ載せる物を、トランクと車内に振り分ける基準

走り続けるか、引き返すか、そもそも出発を取りやめるか。この判断そのものは、気象庁の大雪に関する情報、国土交通省や高速道路会社の通行止め・チェーン規制の発表、そして現地の道路管理者の指示に必ず従ってください。この記事が扱うのは、あくまで「それでも止まってしまったとき」の装備の話です。

出発前の情報収集という点では、鉄道の運休判断と考え方は似ています。事業者が先に「止める」と決めてくれる場合の読み方は台風の計画運休はいつ発表される?で整理しました。道路には計画運休にあたる仕組みが少ないぶん、自分で線を引く必要がある、と考えると分かりやすいはずです。

危険の分かれ目は開始22分。立ち往生のタイムラインを先に頭へ入れる

立ち往生のタイムラインとは、車が動けなくなってからの経過時間ごとに「何が起きるか」「何をすべきか」を並べた行動表のことです。上位の解説記事の多くは持ち物リストから入りますが、順番が逆だと道具は活きません。時間の感覚が先、道具はそのあとです。

下の表は、JAFのユーザーテストで公表されている実測値を、経過時間の軸に並べ直したものです。値はいずれもテスト当日の条件下でのもので、そのままどの車にも当てはまる保証はありません。

経過時間 対策なし(JAF実測) 窓5cm開放(JAF実測) そのときにやること
0分 エンジンをかけたまま待機開始 同左 ハザード点灯。まず自分と同乗者の安全を確保する
5分 CO濃度が100ppm台に上昇し始める 防寒着を着る。降りられるうちに外の状況を見る
16分 短時間暴露限度の400ppmに到達 この時間までにマフラー周りの除雪を終えておきたい
22分 測定上限の1,000ppmに到達 除雪ができないなら、エンジンを止める判断に切り替える
約40分 400ppmに到達 換気だけに頼らない。除雪を繰り返す前提で考える
数時間〜 列が動かないまま夜になる可能性が出てくる 暖・明かり・電源・トイレの装備に切り替える

出典:JAF ユーザーテスト「クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意」(2015年2月16日/北海道旭川市・サンタプレゼントパークで実施。2026年9月9日確認時点)

雪に埋まった車内の一酸化炭素濃度が上がるまでの時間を並べた対応表。5分で窓5cm開放の車内が100ppm台、16分で対策なしの車内が400ppm、22分で対策なしが測定上限1,000ppm、約40分で窓5cm開放でも400ppmに達し、だから先にやるのはマフラー周りの除雪だと示す。出典はJAFユーザーテスト(2015年2月16日・北海道旭川市)

JAFはこのテストについて、「車の周囲の状況や風向き、エアコンの設定などで変わるため、今回安全だった条件でも危険になる場合がある」と注記しています。つまり、窓を5cm開けたから安全、という読み方はできません。時間の数字は「安全な持ち時間」ではなく、行動を前倒しするための目印として使ってください。

ここまでを言葉に置き換えると、こうなります。マフラーが雪でふさがれた状態でエンジンをかけ続けるのは、換気の有無にかかわらず時間との勝負になる。だから優先順位の一番上は「暖をとる道具」ではなく「スコップ」なのです。この順番だけは、装備を買う前に決めておきたいところ。

そなえぐらし管理人
この数字を最初に見たとき、正直「思ったより早い」と感じました。ただ、恐ろしさより先に頭に残ったのは、対策の内容がとても地味だということ。特別な機械ではなく、スコップで排気口の周りを掘る。それが一番効くというのは、備えとしてはむしろ心強い話だと思っています。

エンジンを止めないなら、最初にやるのはマフラー周りの除雪

マフラー周りの除雪とは、車の排気口とその周囲に積もった雪をどけて、排気ガスの逃げ道をつくる作業のことです。JAFのユーザーテストでも、「対策なし」「マフラー周辺の除雪」「窓5cm開放」の3パターンが比較されました。順番として最初に来るのは、換気ではなく除雪です。

理由は単純で、換気は「入ってきたものを薄める」対策、除雪は「そもそも入れない」対策だから。入口をふさぐほうが確実だ、という話に尽きます。

  • 車の後方に回り、排気口の高さより上まで雪をどける
  • 排気口の真後ろだけでなく、左右にも幅をとって掘る
  • 降り続いている間は、一度掘って終わりにしない
  • 掘っているあいだ、後続車から自分が見えるかを意識する

そして、この作業には現実的な壁があります。降雪が続けば、掘った穴はまた埋まる。つまり除雪は一回の作業ではなく、繰り返す作業です。ここを見落とすと「一度掘ったから大丈夫」という油断が生まれます。

掘れないと判断したら、エンジンを止める。体調がすぐれない、雪が深すぎる、外に出るのが危険といった理由で除雪できないなら、暖房を諦めて防寒装備に切り替えるのが筋の通った判断です。「エンジンをかけ続けられない前提」で装備を選んでおくと、この判断が格段にしやすくなります。

なお、エンジンをかけ続けるかどうかは燃料の残量とも直結します。冬の遠出の前にどこまで入れておくかは災害に備えてガソリンは何割?で扱いました。ここでは消費量の具体的な数字は出しません。車種や外気温で大きく変わるうえ、公的機関の一次公表値として確認できた数字がないためです。

ちなみに、JAFは冠水路の走行についても実験を公開しています。「水深何cmまでなら走れるのか」という感覚のズレは雪でも同じで、冠水した道路は車で走れる?JAFの実験でわかる限界と合わせて読むと、自分の見積もりの甘さがどこにあるか掴みやすくなります。

スタックからの脱出は、JAFの4手順を上から順に試す

スタックとは、駆動輪が空転して路面をとらえられず、前にも後ろにも進めなくなった状態です。雪道での自力脱出について、JAFは順序立てた方法を公開しています。この記事では、そこに書かれている手順だけを扱います。

順番には意味があります。手前の手順ほど、道具が少なくて済み、車を傷めにくく、失敗してもやり直せる。だから上から順に、というのが基本形になります。

  1. タイヤの前後の雪を、スコップで取り除く。まずタイヤが乗るべき地面を出す作業です。
  2. 脱出プレートを、駆動輪と雪面の間に差し込む。空転しているタイヤに、噛む相手をつくります。
  3. 丈夫な布やチェーンを、空転しているタイヤの下に敷く。プレートがないときの代替です。
  4. 牽引ロープを使い、他車に引いてもらうよう依頼する。ここから先は自力ではありません。
  5. それでも動かないなら、JAFのロードサービス(#8139)や加入している保険会社のロードサービスに連絡する
スタックから脱出する手順を上から順に並べた対応表。①タイヤの前後の雪をスコップで除去、②脱出プレートを駆動輪と雪面の間に差し込む、③丈夫な布やチェーンを空転したタイヤの下に敷く、④牽引ロープで他の車に依頼する、⑤JAFロードサービス#8139へ連絡する、の5段

タイヤの空気圧を下げて接地面を広げる、という方法をよく見かけますが、JAFの公式ページにはこの手順の記載がありません。裏の取れていない方法は載せない方針のため、この記事では扱いません。

この4手順のために、車へ積んでおく道具

手順が決まれば、必要な道具も自動的に決まります。①スコップ、②脱出プレート(スタックラダー)、③丈夫な布か布製チェーン、④牽引ロープ。この4つが、そのまま買い物リストになるわけです。

優先度をつけるなら、いちばん上はスコップ。手順①で使うだけでなく、前章のマフラー周りの除雪でも使うからです。1本で2つの役割を持つ道具は、限られたトランクの容量のなかで最初に選ぶ価値があります。

「抜ける道具」とは別に、車から降りるための道具がいる

ここでもうひとつ、性格の違う道具の話をします。スタックからの脱出は「車を動かす」ための備えですが、水没や横転、ドアが変形して開かないといった場面で必要になるのは「人が車から出る」ための備えです。用途がまるで違うので、同じ袋にまとめるより役割で分けたほうが迷いません。

その代表が、シートベルトカッターとウィンドウハンマーを兼ねた脱出用ハンマー。AmazonのプライベートブランドであるAmazonベーシックからも、レスキューハンマーが出ています。Amazonの商品ページでは、シートベルトカッターとウィンドウハンマーを兼ねた2点セットとして表示されています(2026年9月9日確認時点)。製造元の公式サイトでの詳細仕様は確認できていないため、重量や素材については触れません。

2点セットである意味は、置き場所を2か所つくれることにあります。運転席側と、後席や助手席側。ひとつしかないと、いざというとき手が届かない側の席で使えないためです。

ハンマーは、種類ごとに割れ方も持ち方も違います。バネ式とハンマー式の差、そもそもガラスの種類によっては割れないという前提の話は、車の脱出用ハンマーの選び方にまとめました。買う前に一度目を通しておくと、選び方の軸が変わるはずです。

抜けられないと決まったら、暖・明かり・電源・トイレ・食べ物の5つで一晩を組む

車中での一晩の備えとは、暖房を当てにせずに朝まで過ごすための最低限の装備一式のことです。関越道では、報道によると2020年12月、塩沢石打サービスエリア付近で最長52時間の滞留があったとされています。半日どころか、丸二日という桁です。

ただ、いきなり「52時間分」を積むのは現実的ではありません。まずは一晩、つまり夕方から翌朝までを単位にして組むと、量も置き場所も決めやすくなります。

暖:毛布とカイロを、別々の役割で持つ

渋滞の列に入ってしまうと、外に出るのも一苦労です。凍える車内で最初に効くのは、電気を使わずに体温を逃さない道具。毛布はその代表格で、寝るためというより体に巻きつけて熱を閉じ込めるために積みます。

災害備蓄用として売られている「もしもうふ」は、不織布の毛布を10枚単位で扱う商品です。Amazonの商品ページでは、10枚入り・サイズ140×200cm・アルミ真空圧縮梱包と表示されています(2026年9月9日確認時点)。140×200cmは、シングルの掛け布団に近い大きさ。真空圧縮で届くため、車に積む前提の防災用品としては扱いやすい形です。

10枚入りという単位に戸惑うかもしれませんが、車に1〜2枚、自宅の備蓄に残り、という分け方ができます。家族の人数分を車に積みっぱなしにするより、車に必要な枚数だけを割り当てて、残りは家に置くほうが場所の面でも無理がありません。


ただし毛布だけでは足りません。毛布は熱を逃がしにくくする道具であって、熱を生む道具ではないからです。体が冷え切ったあとに毛布をかぶっても、温まるまでには時間がかかります。日本救急医学会は低体温症を「深部体温が35℃以下に低下した状態」と定義していますが、そこまで下がる前に手を打つのが本筋でしょう。

そこで組み合わせたいのが、化学反応で熱を出す使い捨てカイロです。アイリスオーヤマの「ぽかぽか家族 貼る レギュラー PKN-30HR」は、Amazonの商品ページで30枚入り・サイズ13×9.5cm・貼るタイプと表示されています(2026年9月9日確認時点)。持続時間や最高温度はメーカー公式ページで確認できなかったため、ここでは書きません。

貼るタイプを選ぶ理由は、手がふさがらないこと。運転席で操作をしながら、あるいは外で除雪をしながらでも、貼っておけば効き続けます。30枚という枚数も、家族3人で一晩に数枚ずつ使うと考えれば、車に置く箱としてちょうどいい単位です。


低温やけどには注意が必要です。同じ場所に長時間貼り続けない、就寝時は使わない、肌に直接貼らないといった、商品パッケージの注意書きに従ってください。眠気があるときほど、熱さに気づきにくくなります。

明かり:手を空けたまま、車内全体を照らせるもの

夜の立ち往生で意外と効くのが明かりです。スマートフォンのライトでも一時的には足りますが、車内で長時間つけっぱなしにする用途には向きません。バッテリーを連絡手段のために温存したいからです。

GENTOS(ジェントス)の「エクスプローラー EX-136S」は、車載用としてよく挙がるLEDランタンのひとつ。Amazonの商品ページでは、明るさ370ルーメン、実用点灯9〜142時間、防水、ANSI規格準拠と表示されています(2026年9月9日確認時点)。メーカー公式サイト(gentos.jp)にも同型番の仕様ページがあり、明るさ・点灯時間・防水性能はおおむね一致しますが、ANSI規格準拠の表示はAmazon商品ページのみで、メーカー公式サイトには見当たりません。

実用点灯の幅が9〜142時間と大きく開いているのは、明るさの段階によって変わるからと考えられます。全開で照らせば短く、弱く灯し続ければ長い。一晩を越える立ち往生では、弱く長く灯せるかどうかが実際の使い勝手を左右します。

電源:スマートフォンを、情報と連絡のために生かし続ける

立ち往生の最中、スマートフォンは道路情報の確認、家族への連絡、勤務先への連絡、そして救援要請と、何役もこなします。エンジンを止める判断をした場合、車のシガーソケットからの充電も止まる。だからモバイルバッテリーの位置づけは「あると便利」ではなく、装備の柱のひとつです。

Ankerの「Power Bank(20000mAh, 30W)」は、容量20000mAh・出力30Wという仕様です(2026年9月9日確認時点)。30Wという出力は、スマートフォンだけでなく機種によってはノートパソコンやタブレットの充電にも回せる水準です。なお重量はAnker公式サイトによると約462gです(本体サイズは約153×71×28mm)

ここで大事なのは容量の数字より、運用のほうです。車に積みっぱなしにするモバイルバッテリーは、いざというとき空だった、という失敗が起こりがち。季節の変わり目に残量を確認して継ぎ足すという、年に数回の作業をセットにして初めて装備になります。


寒さのなかではバッテリーの見かけの残量が落ちることがあります。極端に冷やさない置き場所(トランクの奥より車内)を選び、必要になるまでポーチや衣類でくるんでおくと扱いやすいでしょう。

トイレ:一晩の備えで、いちばん後回しにされやすいもの

装備リストを作ると、たいていトイレは最後に来ます。けれど列が動かない状況で最初に困るのは、多くの場合ここです。サービスエリアまで歩ける距離とは限らず、路肩に出ること自体が危険な状況もあり得ます。

Qbitの「どこでも携帯トイレ 小便用」は、Amazonの商品ページで受け口付きMサイズ・6回分・廃棄袋付き・男女兼用と表示されています(2026年9月9日確認時点)。6回分という単位は、一人で一晩、あるいは二人で数回と考えると現実的な量です。

受け口が付いていることと、廃棄袋が付いていることには、それぞれ別の意味があります。前者は車内という狭い場所で使うための形。後者は、使ったあとを持ち帰るための備えです。使ったあとの置き場所まで含めて考えられていない携帯トイレは、結局使われません。


目隠しになる大判のポンチョやレインコート、それに車の窓を隠すサンシェードやタオルを一緒に積んでおくと、実際に使う心理的なハードルが下がります。装備は、使う気になれるところまで揃えて初めて装備です。

食べ物と飲み物:量より「開けてすぐ食べられるか」

寒い車内で、湯を沸かして調理するのは現実的ではありません。求められるのは、包装を開けたらそのまま口に入れられて、常温で長く持ち、こぼれにくいもの。ようかんやビスケット、キャンディのような形が向いています。

飲み物は、暖房を絞る前提だと凍結の心配もあります。トランクではなく車内側に置き、量は「たっぷり」ではなくトイレの回数とセットで考えるのが現実的です。飲めば出ます。ここを切り離して備えると、片方だけ足りなくなります。

車中で夜を越す装備の全体像は、車中泊は防災になる?一晩分の装備リストで別途まとめています。立ち往生は「望まない車中泊」でもあるので、装備の重なりはかなり大きくなります。

積みっぱなしにする物と、冬だけ載せる物は、トランクと車内で分ける

車載防災の置き場所とは、「取り出す速さ」と「積みっぱなしにできるか」の2軸で決める配置のことです。全部トランクに入れると、いざというとき車外に出なければ取り出せない。全部車内に置くと、今度は日常の使い勝手が犠牲になります。

品目 置き場所 通年/冬だけ 理由
脱出用ハンマー(2点) 車内・運転席と後席の手の届く位置 通年 トランクにあると、必要な場面で取りに行けない
モバイルバッテリー 車内・グローブボックス 通年 冷やしすぎない。日常の充電にも使う
LEDランタン 車内・座席下やドアポケット 通年 停電時や夜のトラブルでも使う
携帯トイレ 車内・座席下 通年 渋滞は季節を選ばない
スコップ トランク 冬だけ かさばる。降雪期の前に載せ、春に降ろす
脱出プレート・牽引ロープ トランク 冬だけ 使うのは車外。取り出しは外からで問題ない
毛布・カイロ トランク(1枚だけ車内) 冬だけ まとめてトランク、すぐ使う分だけ手元に
長靴・防寒着・手袋 トランク 冬だけ 除雪作業は必ず車外。濡れる前提の物はまとめる

この表の考え方をひとことで言えば、「車外で使う物はトランク、車内で使う物は車内」。除雪も脱出作業も外でやるので、トランクにあって困りません。逆に、ハンマーや明かりは車内から動けない状況でこそ必要になります。

  • 冬タイヤは、溝の深さを新品時と比べて確認しておく(国土交通省も冬用タイヤの点検を呼びかけています)
  • チェーンは、装着方法を晴れた日に一度練習しておく
  • チェーンは携行するだけでなく、早めに装着する
  • スコップ・毛布・カイロは、初雪の便りが届く前にトランクへ移す

国土交通省は2025年11月20日の報道発表で、大型車の立ち往生防止対策として、冬用タイヤの装着と溝深さの確認、チェーンの装着方法の事前確認・携行・早めの装着を呼びかけています。大型車向けの発表ですが、乗用車でもそのまま通じる中身です。

車に積む防災用品全体のリストと、車内とトランクの振り分け方は車に常備する防災グッズ|車内とトランクで分けるで網羅的に扱っています。この記事は、そこから「大雪の立ち往生」という条件だけを抜き出した枝の1本、という位置づけです。

そなえぐらし管理人
置き場所を決める作業は地味ですが、ここを飛ばすと「買ったのに使えなかった」という一番もったいない結果になります。買い物リストより先に、トランクのどこを空けるかを決めてしまうほうが、結局は早いと感じています。

この備えが当てはまらないケースと、デメリット

備えが当てはまらないケースとは、この記事が前提にしている条件(自家用の乗用車で、雪の降る地域を走る可能性がある人)から外れる状況のことです。前提が変われば、答えも変わります。

  • 雪がほとんど降らない地域で、冬に遠出もしない場合。スコップや脱出プレートを通年で積む意味は薄く、トランクの容量を圧迫するだけになります。ハンマー・明かり・携帯トイレなど、季節を問わない4点に絞るほうが合理的です。
  • カーシェアやレンタカーが中心の場合。車に積みっぱなしという発想が使えません。持ち歩ける小さなポーチに、ハンマー・モバイルバッテリー・カイロ・携帯トイレをまとめ、借りるたびに載せる形にしたほうが確実です。
  • 電気自動車やハイブリッド車の場合。暖房と航続距離の関係が内燃機関の車とは異なります。JAFのテストはガソリン車を用いた条件でのものですから、この記事のCO濃度の数値をそのまま当てはめることはできません。
  • 大型車・業務車両の場合。国土交通省は、立ち往生時に運送事業者の措置が不十分と判断されれば行政処分の対象になり得ると示しています。個人の備えとは別に、事業者としての手順書が必要です。

デメリットも正直に書いておきます。ここまでの装備を一式そろえると、トランクのかなりの面積を占めます。買い物の荷物やベビーカーを積む方には、無視できない負担です。だからこそ「冬だけ載せる物」を分けておく意味があります。それでも全部は積めない、という場合は、スコップ・毛布・カイロ・モバイルバッテリーの4点から始めるのが現実的です。

もうひとつ。装備は、あればあるほど安全になるわけではありません。前章の表のとおり、置き場所を間違えた道具は無いのと同じです。数を増やす前に、いま積んでいる物が「必要な瞬間に手が届く場所にあるか」を確かめるほうが、効き目は大きいはずです。

大雪の立ち往生と車の備えに関するよくある質問

Q. エンジンは切るべきですか、かけ続けるべきですか

A. マフラー周りの除雪を続けられるかどうかが分かれ目です。JAFのユーザーテストでは、対策なしの条件で開始16分に400ppm、22分に測定上限の1,000ppmという値が記録されています。除雪を繰り返せる状況ならエンジンをかけ続ける選択肢が残りますが、掘れない・体調が悪い・外に出るのが危険といった場合は、エンジンを止めて防寒装備に切り替える判断が必要になります。同テストについてJAFは、周囲の状況や風向き、エアコンの設定で結果が変わる旨を注記しています。

Q. 窓を開けておけば大丈夫ですか

A. 「大丈夫」とは言えません。同じテストで窓を5cm開けた条件では、開始5分でCO濃度が100ppm台に上がり始め、約40分後に400ppmに達しています。換気は危険までの時間を延ばす効果は見込めるものの、対策としては除雪の代わりにはなりません。順番としては、除雪が先です。

Q. スタックしたとき、タイヤの空気圧を下げるのは有効ですか

A. この記事では扱いません。JAFが公開している雪道の自力脱出方法にはこの手順の記載がなく、根拠となる一次データを確認できなかったためです。JAFが示しているのは、雪の除去、脱出プレート、丈夫な布やチェーン、牽引ロープ、という4つの手順です。

Q. 一晩分の備えを、どこまで揃えればいいですか

A. まず「夕方から翌朝まで」を1単位として、暖・明かり・電源・トイレ・食べ物の5項目にそれぞれ1つずつ用意するところから始めてください。報道によると2020年12月の関越道では塩沢石打サービスエリア付近で最長52時間の滞留があったとされますが、その規模をいきなり想定すると、量が多すぎて結局積まないという結果になりがちです。

Q. 自力で抜けられないとき、どこに連絡すればいいですか

A. JAFのロードサービスは#8139です。自動車保険や共済に付帯するロードサービスがある場合は、そちらも連絡先の候補になります。高速道路上であれば、非常電話や道路管理者からの案内にも従ってください。連絡先は、スマートフォンが使えなくなる可能性も考えて、紙のメモを車検証入れに入れておくと安心です。

今日やることは1つ。トランクに「抜ける道具」の場所をつくる

「抜ける道具」とは、雪から車を動かすための装備一式のことでした。大雪の立ち往生への備えは、この脱出のための道具と、耐えるための道具の二段構えです。そして優先順位のいちばん上に来るのは、暖房でも食料でもなく、マフラー周りを掘るためのスコップです。JAFの実測値が示しているのは、その一点でした。

とはいえ、今日から全部そろえる必要はありません。まずやることは1つだけ。トランクを開けて、スコップと毛布が入る場所を空けることです。空き場所ができれば、買う物は自然と決まります。

  1. 今日:トランクを開けて、冬装備を置くスペースを確保する。ついでに、いま積んでいる物の置き場所が「車内で使う物/車外で使う物」で分かれているかを見直す。
  2. 今週:スコップ・毛布・カイロ・モバイルバッテリーの4点をそろえる。すでに家にある物があれば、それを車へ移すだけで構わない。
  3. 初雪の前:脱出プレートと牽引ロープを追加し、冬タイヤの溝とチェーンの装着方法を確認する。ロードサービスの連絡先を紙で車検証入れへ。

冬にそなえる道具は、車の中だけの話ではありません。停電や断水を含めた冬全体の備えは冬の防災グッズ一覧にまとめてあります。車の装備を見直すついでに、家のほうも一度のぞいてみてください。

冬に限らず、車へ通年で積んでおく物の全体像は車に常備する防災グッズ|車内とトランクで分ける、夏に置けない物リストで一覧にしています。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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