防災用モバイルバッテリーの容量の決め方|表記の6〜7割で計算する

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モバイルバッテリーの箱に書かれた「10,000mAh」という数字は、そのままスマホに入る量ではありません。結論から言うと、変換ロスの影響で実際に使えるのは表記容量のおよそ6〜7割です。防災用の容量は「表記容量×0.6÷スマホの電池容量=充電できる回数」で見積もり、家族で3日分を備えるなら「20,000mAhクラスを1人1台」が基本線になります。

この記事では、なぜ表記どおりに使えないのかという仕組みから、自分のスマホに当てはめられる計算式と早見表、家族の人数分の考え方、複数台に分ける理由までを、メーカー公式情報と公的機関の資料をもとに整理しました。

目次

実際に使えるのは表記の6〜7割|変換ロスが起きる仕組み

10,000mAhのモバイルバッテリーと、電池容量4,000mAhのスマホ。単純に割り算すれば「2回半充電できる」ように見えますが、実際の目安は1回半ほどです。製品の不良ではなく、仕組み上どうしても目減りするためです。

モバイルバッテリーの中身はリチウムイオン電池で、電気をためているときの電圧は約3.7Vです。一方、USB端子からスマホへ送り出すときは5Vまで電圧を引き上げる必要があり、この変換の過程でロスが生まれます。Anker Japan公式も、この電圧変換で変換ロスが起きるため、表記されている容量よりも実際に充電できる容量は少なくなると説明しています。なお、製品の箱や仕様欄に表記容量より小さい「定格容量」という数字が載っていることがあり、そちらのほうが実際に使える量に近い目安です。

では、どのくらい目減りするのでしょうか。パナソニックの公式FAQは「USBモバイル電源の電池容量の約50%~60%が供給できる範囲」と説明しています。一方、Web上では「6〜7割使える」と紹介されることが多く、数字には幅があります。実際の値は気温やケーブル、電池の劣化具合で変わるため、この記事では実測値ではなく、一般的な技術説明に基づく概算として「表記の6割」で統一して計算します。少なめに見積もっておけば、災害時に「思ったより使えなかった」という誤算を避けやすくなるからです。

スマホを何回充電できる?計算式と容量別早見表

覚える式はひとつだけです。

充電できる回数 ≒ 表記容量(mAh)× 0.6 ÷ スマホの電池容量(mAh)

パナソニックの公式FAQにも「5000mAh×50%=2500mAhの電力供給が可能」「2500mAh÷1250mAh=約2回の充電が可能」という同じ形の計算例があります(こちらは掛ける割合を50%と、さらに控えめに置いた例です)。

自分のスマホの電池容量は、Androidならメーカー公式サイトのスペック欄でmAhを公表している機種が多いので、機種名で調べてみてください。一方、Appleの公式技術仕様ページはiPhoneの電池容量をmAhで公表しておらず、「ビデオ再生:最大33時間」(iPhone 17 Proの例)のような駆動時間だけを記載しています。ネットで見かける「iPhoneは◯◯mAh」という数字は非公式の値です。そこでこの記事では特定の機種名で断定せず、多くのスマホが収まる3,000〜5,000mAh台の容量帯ごとの早見表にしました。

表記容量(6割換算) 電池3,000mAh台 電池4,000mAh台 電池5,000mAh台
5,000mAh(約3,000mAh) 約1回 約0.7回 約0.6回
10,000mAh(約6,000mAh) 約2回 約1.5回 約1.2回
20,000mAh(約12,000mAh) 約4回 約3回 約2.4回

※表記容量×0.6を各容量帯の代表値(3,000/4,000/5,000mAh)で割った概算です。実際は使用環境や電池の状態で前後します。

表からわかるとおり、5,000mAhクラスでは1回の満充電に届かない組み合わせもあります。防災用としてこれから選ぶなら、10,000mAh以上を目安にすると計算が立てやすくなります。

家族の人数分はどう考える?「台数×日数」と複数台への分散

必要な総量は「スマホの台数×備蓄日数」で出す

内閣府「特集3 地震に備える」は、飲料水や食品について最低3日分、南海トラフ地震のような広域災害では「1週間以上の備蓄が望ましいという指摘もある」と紹介しています。これは水と食料についての目安で、モバイルバッテリーの量を定めたものではありませんが、連絡や情報収集を支えるスマホの電源にも、同じ「日数の物差し」を当てはめると必要量が見えてきます。

仮定はシンプルに「スマホ1台につき1日1回の満充電」と置きます(節電しながら連絡・情報収集・明かりに使う想定です)。すると、必要量は次の式で出せます。

充電したいスマホの台数 × 備蓄日数 = 世帯で必要な充電回数

先ほどの早見表のとおり、20,000mAhクラス1台で電池4,000mAh台のスマホを約3回充電できます。つまり20,000mAhクラス1台がほぼ「1人の3日分」。ここから「1人1台」という目安が導けます。

充電したいスマホ 3日分の充電回数 組み合わせの一例
1台 3回 20,000mAhクラス×1
2台 6回 20,000mAhクラス×2
3台 9回 20,000mAhクラス×3
4台 12回 20,000mAhクラス×4

※電池4,000mAh台のスマホを表記の6割で計算した場合の目安です。タブレットやキッズ携帯も充電したいなら台数に加えてください。1週間分に延ばす場合は、単純計算で2倍強になります。



※価格・在庫は変動します。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

同じ総量でも「大容量1台」より「複数台」に分ける

合計が同じなら大きな1台にまとめたほうが管理は楽に見えますが、防災用では分けることをおすすめします。理由は3つです。

  • 不具合の影響を小さくできる:1台に集約すると、その1台の故障や紛失で世帯の充電手段がまとめて失われます。分けておけば、残りでしのげます。
  • 同時に充電できる:1台を家族で順番に使うと待ち時間が生まれます。家族が別々の場所で過ごす場面でも、1人1台なら持ち分をそのまま渡せます。
  • 持ち出し用と在宅用に分担できる:軽めの10,000mAhクラスを非常用の持ち出し袋へ、20,000mAhクラスを在宅避難用へ、という役割分担ができます。持ち出し袋全体の構成は防災リュックの中身リストで整理しています。

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ポータブル電源が必要な家庭・モバイルバッテリーで足りる家庭/保管の注意点

ここまでの計算で出した世帯の必要量がモバイルバッテリー数台でまかなえるなら、スマホの電源確保という意味では、より大きく高価なポータブル電源を無理に揃える必要はありません。逆に、扇風機や冷蔵庫など家電まで動かしたい場合はポータブル電源のおすすめ容量は?防災用は人数×日数で逆算するで必要Whを計算できます。この線引きの考え方はポータブル電源はいらない?で詳しく扱っています。一方、在宅避難で扇風機や電気毛布といった家電まで動かしたい家庭では、ポータブル電源の出番です。Anker公式は、大規模災害時には電力の復旧まで2〜3日かかることもあるとして、300Wh弱の小型モデルから1,000Wh以上の大容量タイプまで、用途に応じた容量帯の例を紹介しています(Whはポータブル電源でよく使われる容量の単位で、mAhとは別の物差しです)。

あわせて、保管の注意をひとつだけ。総務省消防庁の調査(令和8年1月公表)によると、リチウムイオン電池等から出火した火災は令和4年の601件から令和6年には982件へと増え、令和7年も上半期だけで550件にのぼりました。製品別ではモバイルバッテリーが4年連続で最多(令和6年290件)で、出火原因の上位は「外部衝撃」と「高温下での使用・保管」です。消費者庁は、強い衝撃や圧力を加えない、高温になる場所で使用・保管しない、充電はなるべく起きている時間に行う、膨らみや発熱など異常を感じたら使用をやめる、と注意を呼びかけています。NITEも、事故は気温が上がる8月にピークを迎えるとして、購入前に販売元やリコール情報を確認するよう促しています。夏の車内や直射日光の当たる窓際を避け、涼しい場所で保管しましょう。

まとめ:今日は「手持ちの1台×0.6」を計算してみる

買い足しの前に、今日できることがひとつあります。家にあるモバイルバッテリーの表記容量に0.6を掛け、自分のスマホの電池容量で割ってみる——これだけです。「わが家はあと何回分足りないのか」が数字で見えれば、選ぶ容量と台数はおのずと決まります。買い足しのタイミングは台風前に買っておくものの見直しと一緒に、年1回の残量チェックは防災の日にやること10とあわせて進めると、無理なく続けられます。

よくある質問

Q. iPhoneは電池容量が公表されていないのに、どう計算すればいいですか?

A. Appleは日本向けの公式仕様ページで電池容量(mAh)を公表していないため、正確な値では計算できません。早見表の3,000〜5,000mAh台の幅で眺め、余裕を持たせたいなら回数が少なめに出る5,000mAh台の列で見積もると、不足しにくくなります。

Q. 20,000mAhを1台と、10,000mAhを2台。どちらがいいですか?

A. 使える量の計算上はほぼ同じですが、防災用なら2台に分ける形に利点があります。1台に不具合があっても残りが使えること、2人同時に充電できること、持ち出し用と在宅用に分担できることが理由です。大容量1台をすでにお持ちなら、買い替えではなく軽量な1台の買い足しで十分です。

Q. 何年くらいで買い替えるべきですか?

A. 公的機関が一律の年数を示しているわけではありませんが、リチウムイオン電池は使用や経年で実際に使える量が少しずつ減っていきます。年に1回は満充電にして減り具合を確かめ、本体の膨らみや充電中の異常な熱に気づいたら、消費者庁の注意喚起のとおり使用を中止してください。


出典: 総務省消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表」消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう」NITE「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」パナソニック公式FAQ「USBモバイル電源の電池容量とスマホへの充電回数の関係は?」Anker Japan公式「モバイルバッテリーの容量はどれくらいがおすすめ?」Anker Japan公式「防災にポータブル電源は本当にいらない?」Apple「iPhone 17 Pro – 技術仕様」内閣府「特集3 地震に備える」

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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