災害時の現金はいくら用意する?停電でキャッシュレスが止まる前提の内訳と小銭の枚数

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災害に備える現金の目安は、当サイトの試算では大人2人・3日分で2万円です。金種は一万円札を外して、五千円札1枚・千円札12枚・五百円玉2枚・百円玉15枚・十円玉50枚。合計でちょうど2万円になります。

この2万円という額は、決済が止まっている間の現金支出を大人1人あたり1日3,000円と置き、そこに人数と日数を掛けて切り上げたものです。前提を変えれば答えも変わります。だから金額そのものより、自分の世帯で計算し直せる式のほうが役に立ちます。

もうひとつ先に伝えておきたいことがあります。内閣府防災の家庭備蓄に関する公開資料を確認した範囲では、国が「現金を◯円備えなさい」と具体的な金額を推奨している記載は見つかりませんでした(2026年8月18日時点)。この記事に出てくる金額は、公的な推奨額ではなく当サイトが前提を置いて計算した目安です。そのつもりで読み進めてください。

この記事でわかること

  • 用意する現金額を自分の世帯で計算する式と、用途別の内訳早見表
  • 一万円札を外す理由と、五千円札・千円札・小銭の枚数の目安
  • 停電した公衆電話でテレホンカードが使えず十円玉が要る理由(NTT公式)
  • 手元の現金が尽きた後、通帳やカードを失っても預金を引き出せる特例

お金の話に入る前に、水や食料などモノの備蓄量を先に決めたい方は備えの全体像→家庭の備蓄品リスト完全版(人数×日数の早見表つき・現金以外のモノの備蓄量はこちら)をどうぞ。この記事は、そのリストが扱っていない「お金」の領域だけを担当します。

目次

停電するとキャッシュレス決済もATMも止まる

キャッシュレス決済とは、カードやスマホの情報を通信回線で決済会社に送り、承認を受け取って初めて成立する仕組みである。つまり、店の電源と通信のどちらかが欠けた時点で成立しなくなります。

レジの前に列ができている場面を想像してみてください。天井の照明は落ちていて、店員さんが手元の電卓を叩いている。スマホをかざす台は反応せず、レジの引き出しも開かない。並んでいる人が財布から出しているのは、現金だけ——。2018年の北海道の地震では、実際に「レジ周りの電源が落ちていて、クレジットカードも電子マネーも使えない」という状況が報じられました。取材によれば、非常用電源を備えている流通店舗はまれだとされています。

ATMも同じ理屈で止まります。ATMは店舗の電源と、銀行のホストコンピュータへの通信の両方に依存する機械です。停電が広い範囲に及んでいるとき、動いている数少ないATMには当然人が集まります。

「クレジットカードがあるから大丈夫」は、店の電源と通信が生きている場合の話です。カードの枚数は、停電下では現金の代わりになりません。

スマホが生きていれば、現金以外の手も残る

停電下で現金だけが頼りになるのは、たいていスマホが同時に沈んでいるときです。逆に手元のスマホが動いていれば、家族への連絡も、給水所や避難所の情報も、動いている店の営業情報も取りにいけます。現金の備えと電源の備えは、片方だけでは半端になりやすい組み合わせです。

電源側の一例として、エレコム(ELECOM)の半固体電池を採用したモバイルバッテリー「EC-C61MN」があります。メーカー公表値で質量は約220g。防災リュックに入れっぱなしにする用途では、容量の大きさより「軽くて、入れたまま忘れていても取り回しが効くこと」のほうが効いてきます。詳しい仕様は、購入前にメーカー公式サイトで最新の情報を確認してください。

用意する金額は「1日の現金支出×人数×日数」で決める

現金の必要額とは、決済インフラが止まっている期間に、現金でしか払えなくなる支出の合計である。だから、決める順番は「何日止まると想定するか」→「1日いくら現金で払うか」→「何人分か」になります。

用意する現金 = 1日あたりの現金支出(当サイト基準:大人1人3,000円)× 人数 × 決済が止まる想定日数(当サイト基準:3日)

大人2人なら 3,000円 × 2人 × 3日 = 18,000円。実際には端数が出るので、切りのいい2万円にしています。大人1人と子ども2人の世帯なら、子どもは大人の半分として 3,000×2 = 6,000円/日、3日で18,000円。やはり2万円あたりに着地します。

用途別の内訳早見表(当サイト基準)

「1日3,000円」という数字だけ渡されても、多いのか少ないのか判断できません。中身を分解して、書き込めるようにしたのが次の表です。右端の欄は、ご自身の世帯・日数で計算した金額を書き込む場所として空けてあります。

用途 大人1人1日の目安
(当サイト基準)
大人2人×3日の例 わが家の金額
食べ物・飲み物の買い足し 1,200円 7,200円     円
日用品・衛生用品 600円 3,600円     円
移動(バス・タクシー・燃料) 800円 4,800円     円
通話・コインランドリーなどの小銭 200円 1,200円     円
予備 200円 1,200円     円
合計 3,000円 18,000円 →切り上げ2万円     円

この配分は当サイトが置いた仮定であり、公的機関が定めた基準ではありません。車移動が前提の地域なら「移動」を厚くする、乳児がいるなら「日用品」を倍にする、といった調整をしてください。表の右端を埋めた時点で、この記事の役目はほとんど終わりです。

そなえぐらし管理人

検索して出てくる「1週間分」「2万円」といった数字を、なぜその額なのか説明している記事がほとんど無かったのが、この表を作った理由です。額を覚えてもらうより、前提を差し替えられる形で渡したほうが長持ちすると考えました。

置きすぎない、という制約もある

金額を上げれば安心が増えるわけではありません。自宅に置く現金は、盗難や紛失のリスクをそのまま抱えます。数万円を超える額を家に積むより、2万円前後を持ち出せる形にしておき、それ以上は預金と、後述する払い戻しの特例に任せる。当サイトはこの線引きを取っています。

金種は一万円札を外し、小銭を厚めに組む

金種とは、同じ金額をどの紙幣・硬貨の組み合わせで持つかという配分のことである。停電下ではここが効きます。理由は単純で、お釣りが用意できない場面が増えるからです。

レジが開かない店、電卓で計算している店、自動販売機、バス、コインランドリー、公衆電話。どれも一万円札を差し出した瞬間に手が止まります。2万円を一万円札2枚で持つのは、財布としては最軽量ですが、使える場面はいちばん狭い持ち方です。

2万円を組む場合の金種内訳

金種 枚数の目安 金額 主な出番
五千円札 1枚 5,000円 まとまった買い出し・宿泊費の一部
千円札 12枚 12,000円 店頭での支払いの主力。釣り銭が少なくて済む
五百円玉 2枚 1,000円 自動販売機・券売機
百円玉 15枚 1,500円 コインランドリー・自動販売機・小額の買い物
十円玉 50枚 500円 公衆電話
合計 80枚 20,000円

硬貨だけで67枚あります。財布に入れて持ち歩く量ではないので、小銭は小袋やコインケースにまとめて、防災リュックの内ポケットへ。紙幣とは分けて入れておくと、レジの前で探さずに済みます。

十円玉を厚めに持つのは、停電した公衆電話のため

NTT東日本の公式案内によると、停電時の公衆電話は赤いボタン(回し込みボタン)を操作して使う方式になり、テレホンカードは使えません。使えるのは硬貨、とくに十円玉です(2026年8月18日時点)。テレホンカードを防災リュックに入れている方は、停電という最も公衆電話が要る場面で機能しない可能性がある、という点を押さえておいてください。

「災害時は公衆電話が無料になるのでは」という理解も、半分だけ正しい状態です。NTT西日本の公式説明では、災害救助法の適用が想定される規模の災害で交通機関の遮断などの社会的混乱が発生し、携帯電話・固定電話の通話規制が起きる可能性がある状況などを総合的に勘案して、必要と判断される場合に通話料等が無料になることがある、とされています(2026年8月18日時点)。自動的に必ず無料になる仕組みではありません。無料化されなかったとき、あるいは無料化の判断が下りる前に電話をかけたいときのために、十円玉を持ちます。

公衆電話を「かける手段」として当てにするなら、かける先の番号を紙に書いて一緒に入れておく必要があります。連絡手段の決め方は家族の安否確認方法の決め方(災害用伝言ダイヤル171と伝言板・SNSの使い分け)で整理しています。

現金が尽きた後の道も、先に知っておく

手元の現金は数日で尽きる前提の備えである。だから「尽きた後にどうなるか」を知っているかどうかで、2万円という額の心細さがかなり変わります。ここを書いている記事は多くありません。

通帳もカードも印鑑も失った場合の払い戻し

金融庁の公開情報によれば、東日本大震災の際には、通帳・キャッシュカード・届出印を紛失した被災者に対し、本人確認書類の提示(それも無い場合は住所・氏名などの一致確認)によって預貯金の払い戻しに応じる措置が取られました。届出印が無い場合は拇印でも可とされています。根拠は「災害に対する金融上の措置について」(平成23年3月11日)などの一連の要請通知です。

また全国銀行協会の公開情報では、被災地域から避難した人が、避難先で被災地域の金融機関以外の窓口でも預金を引き出せる取り組みが実施されたことが示されています。

いずれも東日本大震災時に発出・実施された措置です。大規模災害のたびに同種の要請が行われる運用ですが、恒常的に約束された制度ではありません。実際に適用されるかどうかは、その災害ごとの金融庁・金融機関の公式発表で確認してください(2026年8月18日時点の整理)。

この特例が動くとき、鍵になるのは本人確認書類です。どの書類を持ち出し、どれはコピーで足りるのかは防災リュックに入れる書類(マイナンバーカードは持ち出す?コピーで足りる物の線引き)で線引きしています。現金の袋と同じポーチにまとめておくのが実務的です。

公的な「現金給付」は、災害救助法ではない

ここは誤解が多いところなので、正確に書きます。災害救助法は現物給付が原則の法律です。被服・寝具その他の生活必需品の給与または貸与は現物(または貸与)で行うものとされ、現金給付は原則として認められません。避難所、応急仮設住宅、食品や飲料水の供与といった支援は現物で届く、という設計です。

現金が実際に振り込まれるのは、被災者生活再建支援法にもとづく「被災者生活再建支援金」という別の制度です。住宅被害の程度に応じた基礎支援金が最大100万円、住宅の再建方法に応じた加算支援金が最大200万円で、全壊かつ建設・購入の場合に合計最大300万円という設計になっています(2026年8月18日時点)。住宅被害が要件である点が、手元の現金とは性格の違うところです。

そして時間がかかります。令和6年能登半島地震における石川県珠洲市の公式案内では、申請から振り込みまで3〜4ヶ月程度かかる見込みとされ、申請期限は基礎支援金が災害発生から13ヶ月以内、加算支援金が37ヶ月以内と案内されています(2026年8月18日時点)。これは個別の災害の実例であり、全国一律の法定処理期間ではありません。

被害認定の区分や支給の可否、申請の手続きは、お住まいの自治体および内閣府防災の公式案内で必ず確認してください。当サイトは制度の適用可否を判断できる立場にありません。

この目安が当てはまらないケース

2万円という数字は、いくつかの前提の上に立っています。次に当てはまる方は、金額そのものを組み直してください。

  • 停電が数時間で復旧する範囲の被害——局所的な停電なら、隣の駅まで移動すれば決済も現金引き出しも通ります。この場合、必要なのは現金より移動手段です。
  • 持病の薬や医療費など、定期的な支出がある——3日分の生活費とは別枠で考える必要があります。金額と方法は、かかりつけの医療機関に確認してください。
  • 自営業・フリーランスで、事業の入金が止まると生活が直撃する——手元現金の話とは別に、生活防衛資金の設計が必要です。当サイトは金融商品の助言をしませんので、必要なら専門家にご相談ください。
  • 同居家族の状況などから、自宅に現金を置くこと自体にリスクがある——置く額を下げ、預金の払い戻し特例に寄せる判断もあります。
  • 4人以上の世帯——式に人数を入れ直すと2万円では足りません。表の右端を埋めて計算し直してください。

よくある質問

Q. 一万円札2枚で2万円を用意してはいけませんか?

禁止されるものではありませんが、使える場面が狭くなります。停電中の店舗はレジが開かず釣り銭を出しにくい状態にあり、自動販売機・バス・公衆電話は一万円札を受け付けません。同じ2万円なら、五千円札1枚・千円札12枚・硬貨3,000円分という配分のほうが、実際に支払いが成立する場面は多くなります。

Q. 公衆電話は災害時に必ず無料になりますか?

必ずではありません。NTT西日本の公式説明では、災害救助法の適用が想定される規模の災害で社会的混乱が発生し、通話規制が起きる可能性がある状況などを総合的に勘案して、必要と判断される場合に無料になることがある、という条件つきです(2026年8月18日時点)。加えて停電時はテレホンカードが使えず硬貨での利用になるため、十円玉を用意しておく意味があります。

Q. キャッシュカードも通帳も失ったら、預金は下ろせませんか?

東日本大震災の際には、本人確認書類の提示(無い場合は住所・氏名等の一致確認)で払い戻しに応じる措置が取られ、届出印が無い場合は拇印でも可とされました。大規模災害のたびに同種の要請が発出される運用ですが、恒常的な制度ではありません。実際の対応は、災害発生後の金融庁および取引金融機関の公式発表を確認してください。

まとめ:今日やることは、両替を1回だけ

今日やることは1つです。財布の中身を、千円札と小銭に両替すること。金額を悩むより、手元にある一万円札を崩す行動のほうが早く効きます。

  1. 式に自分の世帯を入れる「1日3,000円 × 人数 × 3日」で必要額を出し、早見表の右端に書き込みます。
  2. 金種を組んで、袋を分ける一万円札を外し、紙幣は封筒、硬貨は小袋へ。十円玉は50枚を目安に、公衆電話用として別にしておきます。
  3. 足りない物を買い足す電源やポーチなど不足分は、値下がりしやすい時期にまとめるのが効率的です。時期と品目は防災の日セールで買うもの(8〜9月に安くなりやすい品目と買う優先順位)を参考にしてください。

現金の備えは、置いた瞬間に完成して、あとは減りません。年に一度、防災リュックを開けたときに枚数を数え直せば、それで維持できます。

停電のあいだスマホの電池をどう持たせるかは、防災用モバイルバッテリーの容量の決め方|表記値の6〜7割で計算するで必要な容量の出し方から整理しています。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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