防災の0次・1次・2次とは|持ち歩き・持ち出し・在宅備蓄の分け方と公的用語の対応

※本記事にはプロモーションが含まれます。

防災グッズを0次・1次・2次の3つに分ける。この整理は、そなえぐらしでも使っているくらい便利です。ただし先に一つだけ、はっきりさせておきたいことがあります。これは国が決めた制度ではありません。

総務省消防庁や多くの自治体の防災ページが使っているのは「非常持出品」と「非常用備蓄品」という二分類です。数字のラベルはそこに出てきません。つまり、あなたが民間の防災サイトで読んだ「0次・1次・2次」と、お住まいの自治体のページに書かれた言葉は、最初から別の体系なのです。どちらかが間違っているわけではない。ただ、翻訳がいる。

それでも3層で考える意味は残ります。時間と居場所という2つの軸で持ち物を切り分けられるからです。この記事では、その3層の中身と、公的な言葉への読み替え方を並べて置きます。

この記事でわかること

  • 0次・1次・2次がそれぞれ「どの時間・どの場所」を担当するのか
  • この3層が公式用語ではない理由と、どこから広まったのかの経緯
  • 自治体の「非常持出品/備蓄品」と民間の「0次・1次・2次」の対応表
  • 世帯構成による調整と、3層をどこに分散して置くかの設計
目次

0次・1次・2次は、備えを「時間」と「居場所」で割った整理である

0次・1次・2次とは、災害が起きてからの時間を区切り、そのとき自分がどこにいるかで持ち物を分ける整理の仕方です。持ち物の種類で分けているのではありません。分けているのは、あくまで場面のほう。

いる場所 しのぐ時間 持ち物の形
0次 外出先・通勤中 数時間〜半日 いつものカバンに入るポーチ
1次 自宅から避難所へ移動する場面 最初の1日 背負って歩けるリュック
2次 自宅(在宅避難) 3日〜1週間 置き場所に収まる箱・棚

3つを見比べると、判断の基準が一本通っているのがわかります。0次は「持ち歩ける重さか」、1次は「背負って歩けるか」、2次は「置ける場所があるか」。どれも中身の話ではなく、運べるか・置けるかという物理の話です。だから3層は、買い物リストというより、量の上限を決めるための枠として働きます。

この3層は、官公庁が公式に定義した用語ではない

ここが本記事のいちばんの核心です。国の防災行政の一次情報を当たっても、「0次防災」「0次の備え」という数字表現は見つかりませんでした(2026年8月19日確認時点)。内閣府の防災情報のページにも、総務省消防庁の解説ページにもありません。日本防災士機構の公式ページでも同様でした。

では、この整理はどこから来たのか。検索で確認できた範囲でもっとも古く、もっとも体系立てて3層を使っていたのは、兵庫県が阪神・淡路大震災の教訓を継承するために設立した準公的機関「人と防災未来センター」(運営は公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構)が公開したパンフレットPDFでした。ファイル名に残る日付は2012年4月22日。表題そのものが「非常時に備える3ステップ。まずは、1次から。ついで、0次・2次も。」となっています。

言い換えると、少なくとも2012年の時点で、防災の専門機関がこの3段階を使っていた。ただしそれは兵庫県立の研究機関による整理であって、国の制度ではありません。ここを混同すると、「決まりに従っていない自分」を責めることになってしまう。そうではないのです。

もう一段、広まるきっかけがありました。2022年4月11日、警視庁警備部災害対策課の公式アカウントが「防災ボトル」というアイデアを発信し、これがSNSで大きく拡散します。2024年1月の能登半島地震のあとにも再び注目が集まりました。ただしこれは0次に入れる実践アイテムが広まった出来事であって、警視庁が「0次・1次・2次」という体系を定義したわけではありません。その後、防災ブランドや個人の防災士ブログがこの3層フレームを踏襲し、いまの検索結果の形になった、という流れです。

整理すると/①2012年ごろ、準公的機関の「人と防災未来センター」が3ステップとして提示 → ②2022年、警視庁の防災ボトル発信で「0次」に当たる携帯の備えが一般に浸透 → ③企業・個人メディアが3層フレームを踏襲して定着。法令にも中央省庁の区分にも根拠を持たない、民間主導で広まった整理と考えるのが実態に近い形です。

そなえぐらし管理人

この記事を作るとき、編集部でいちばん迷ったのがここでした。「公式じゃない」と書くと、せっかく分かりやすい言葉を否定することになりかねない。でも出所を伏せたまま使うほうが不誠実だと判断しました。便利な整理として使う、けれど自治体のページを読むときは言葉を切り替える。この二段構えが正直なところだと思っています。

自治体は「非常持出品」「非常用備蓄品」と書いている

公的な防災ページで実際に使われているのは、数字ではなく、持ち出すか家に置くかで分けた言葉です。代表的な定義を原文で見ておきます。

横須賀市は非常持出品を「避難時に最初の1日をしのぐために必要な物品」、非常用備蓄品を「自宅等で避難生活を送る際に必要な物品」と定義しています(2026年8月19日確認時点)。大阪府は非常持ち出し品について「避難場所での生活に最低限必要な品をリュックなどに詰めて、いつでも持ち出せるように準備しておきましょう」と書き、備蓄品については「避難後に少し余裕が出てから安全を確認して自宅へ戻り持ち出したり、自宅で避難生活を送るうえで必要なもので、救援物資が届くまで1週間程度、自足するつもりで備えましょう」としています。

この2つの定義を読むと、民間の1次・2次とほとんど同じことを言っているのがわかります。違うのはラベルだけ。ならば、対応表を1枚作ってしまえば往復の手間は消えます。

0次・1次・2次と自治体が使う公的用語の対応を並べた図解
民間の呼び方 公的ページでの言い方 出典の自治体 明記されている時間
0次(常時携帯) 防災ポーチ 三郷市 期間の明文規定は確認できず
1次(持ち出し) 非常持出品/非常持ち出し品/1次品 横須賀市・大阪府・港区 「最初の1日をしのぐ」(横須賀市)
2次(在宅備蓄) 非常用備蓄品/備蓄品/2次品・3次品 横須賀市・大阪府・港区 「1週間程度」(大阪府)

注意したいのは、数字を使う自治体の例が、必ずしも「0次から始まっていない」ことです。内閣府の広報ページが紹介している港区の取り組みは、1次品を「緊急避難時の最小限グッズ」、2次品を「災害発生から3日間を生き抜くためのもの」、3次品を「長引く避難生活をできるだけ快適にすごすためのもの」と3段階で説明しています。0次は含まれず、番号が一つずつずれた別の切り方になっている。

一方で、宮崎県高鍋町の減災グッズチェックリストは「⓪、①、②次の備え」という表記を実際に使っています。今回の調査で「0次」に当たる記号を使っていた数少ない自治体の例です。ただしこのPDFは文字コードの都合で本文を読み取れておらず、どの品目をどの層に割り当てているかまでは確認できていません。

自治体のページを開いたときに「0次」という言葉が出てこなくても、あなたの探し方が悪いわけではありません。多くの自治体はそもそもその言葉を使っていない、というだけです。探す語を「非常持出品」「備蓄品」に切り替えてください。同じ内容にたどり着けます。

0次は「外出先の数時間」を担当する

0次とは、自宅にいないときに手元だけで数時間をしのぐための、常時携帯の備えです。

平日の午後、自宅から電車で40分の取引先で打ち合わせをしている場面を考えてみてください。揺れが収まり、建物の安全は確認できている。けれど電車は止まり、駅前は人であふれている。このとき使えるのは、いま肩に掛けているカバンの中身だけです。自宅の玄関に置いたリュックには、手が届きません。

この「手が届かない」という一点が、0次を1次から分ける理由のすべてだと言えます。中身が違うから分かれているのではない。距離が違うから分かれているのです。

公的な実例としては、埼玉県三郷市が「防災ポーチのすすめ」というページを公開しています。「ご自宅の非常用持出袋や水・食料・日用品の備蓄とは別に、いつも持ち歩ける防災ポーチを用意して、いつものバッグを防災バッグに」という呼びかけとともに、品目例としてモバイルバッテリー、簡易携帯トイレ、ホイッスル、マスク、絆創膏、ラジオ、軍手、ビニール袋、飴・チョコなど、LEDライトを挙げています(2023年6月30日更新のページ。2026年8月19日確認時点)。数字のラベルは使われていませんが、内容は民間で言う0次とほぼ重なります。

三郷市のページに「0次」という数字は一度も出てきません。それでも中身は民間で言う0次とほぼ同じ。用語が違うだけで、公的機関も同じ備えを勧めている——この事実が、3層フレームを安心して使ってよい根拠になります。

なお、外出先での行動そのものについては、内閣府が「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」(令和8年1月)を公開しています。むやみに歩き出さないという考え方は、持ち物より先に確認しておく価値があります。

持ち物選びで最初に効くのは、三郷市のリストの先頭に置かれているモバイルバッテリーです。連絡手段と情報源と地図と照明を、スマートフォン1台が兼ねてしまうため。ただしポーチに入る重さでなければ、そもそも毎日は持ち歩けません。エレコムのEC-C61MNは、公表値で220gの半固体モバイルバッテリーです。1次の重さの目安が10kg前後であることを思えば、桁が2つ違う軽さで、ポーチ側に置ける部類に入ります。

0次は、足していくと必ず重くなります。何を入れるかより、何グラムまでなら毎日カバンに入れて持ち出す気になるか。そこから逆算したほうが続きます。持ち歩ける重さから中身を決める手順は防災ポーチの中身を持ち歩ける重さから逆算する記事で1点ずつ検討しています。

1次は「最初の1日」を担当する

1次とは、自宅を離れて避難するときに背負っていく、最初の1日ぶんの備えです。横須賀市の定義がそのまま指針になります。「避難時に最初の1日をしのぐために必要な物品」。この一文を基準に置くと、入れるものと入れないものの線が引きやすくなります。

1日をしのぐのに要らないものは、1次には入れない。3日目に必要になるものは2次に回す。この振り分けだけで、リュックはかなり軽くなります。総務省消防庁も「避難場所での生活に最低限必要な準備をし、また負傷したときに応急手当ができるように準備しておきましょう。非常持出袋などは、いつでも持ち出せる場所に備えておきましょう」として、最低限という言い方を使っています。

ゼロから一つずつ選ぶのが負担なら、必要な品目があらかじめ組み合わされたセットを土台にする手もあります。アイリスオーヤマの防災リュック BRS-33は、公表値で33点セット・2,000gの構成です。2kgという重さは、2Lのペットボトル1本ぶんとほぼ同じ。ここに水と食料と個人の必需品を足していく、という組み立て方ができます。

セットに何を足すかを考えるとき、優先度が高いのが明かりです。夜間に停電した屋内では、両手が空く光源があるかどうかで動きやすさが変わります。GENTOSのEX-136Sは公表値355gのLEDランタン。BRS-33の2,000gと合わせても2,355gで、1次の重さの目安に対してまだ余裕が残る範囲に収まります。

重さの目安は、自治体によって割れている

「非常持ち出し袋は男性15kg・女性10kgまで」という数字を見たことがあるかもしれません。これは実在する記述です。ただし国の基準ではありません。

大阪府の公式サイトには「重さの目安は男性で15Kg、女性で10kg程度。※あくまで目安です。自分で持って避難できる量にしましょう」と書かれています。一方の横須賀市は性別を分けず、「個人やご家庭の事情にあわせて、持ち運べる分量(10~15kgが目安)を準備することが重要です」という表現を採っています(いずれも2026年8月19日確認時点)。今回の調査では、内閣府・消防庁など国の一次資料に同じ数値は確認できませんでした。

つまり「15kg/10kg」は全国共通のルールではなく、自治体ごとに示し方が違う目安です。共通しているのは数値そのものではなく、「自分で背負って歩ける量にする」という考え方のほう。数値を鵜呑みにするより、実際に背負って玄関から出られるかどうかを基準にしてください。

体感に置き換えると、10kgは2Lのペットボトル5本ぶん、15kgなら7本半ぶんの重さになります。これを背負って、階段を降り、暗い道を歩く。そう考えると、上限いっぱいまで詰める必要がないことは想像がつきます。

入れるものを絞り込む順番は防災リュックの中身を最低限の6つから組み立てる記事に、背負える重さから逆算した容量の選び方は防災リュックは何リットル必要かを重さから考える記事にまとめています。容量が大きいリュックほど良いわけではない、という話です。

2次は「3日から1週間の在宅避難」を担当する

2次とは、自宅で生活を続けるために家に置いておく備蓄です。持ち出す前提がないぶん、重さの制約が消えて、代わりに置き場所の制約が出てきます。

そもそも在宅避難とは何か。台東区の定義が簡潔です。「在宅避難とは、災害時においてご自宅に倒壊や焼損、浸水、流出の危険性がない場合に、そのままご自宅で生活を送る方法です」。自宅が無事であることが前提条件であり、そこが崩れる場合は避難行動が先になります。判断そのものは、内閣府(防災担当)の「避難行動判定フロー」が一次情報です。

日数の目安は、農林水産省が「最低3日分~1週間分×人数分の食品の家庭備蓄が望ましいといわれています」としています。台東区も「まずは『3日分』を目標にしましょう」と置いたうえで、「1週間分の備蓄に努める必要があります」と段階を示す書き方をしています。いきなり1週間を狙わなくていい、というのは実務的にありがたい表現です。

水は、人数と日数で量が決まる

水は計算できる数少ない備蓄です。農林水産省は「飲料用と調理用だけで一人当たり1日3リットルの水が必要と言われており、最低3日分として9リットルの備蓄が必要になります」としています。1人1日3Lという数値は、台東区も、内閣府の広報ページが紹介する港区の基準も同じです。

人数 3日分 1週間分 1週間分を2L×6本ケースに換算
1人 9L 21L 2箱(切り上げ)
2人 18L 42L 4箱(切り上げ)
3人 27L 63L 6箱(切り上げ)
4人 36L 84L 7箱

この表のうち4人家族の行、3日分36L・1週間分84Lは、台東区の公式ページが実例として示している数値です。掛け算の出所が公的ページにある、数少ないケースになります。ほかの人数の行は、1人1日3Lという公的な基準から同じ計算をしたものです。

84Lという数字だけ見ても、多いのか少ないのかは掴めません。2Lのペットボトルに直せば42本。6本入りのケースで7箱ぶんです。玄関に7箱を積むと通れなくなるので、押し入れ・キッチン下・寝室のクローゼットに分けて置く——というところまで想像できて、はじめて量が現実になります。

保存水は箱で買うと計算がそのまま置き場所の話になります。アイリスオーヤマの長期保存水は2Lが6本入りで、1本あたりの公表値は2,000g。箱としては12L・約12kgです。4人家族の3日分36Lなら、この箱がちょうど3つ。「3日分=箱3つ」と覚えてしまえば、買い足しの判断も置き場所の相談も一気に楽になります。

食料は、賞味期限の長さで置き場所が変わる

水の次に量が要るのが食料です。ここで効いてくるのが、期限の長さの違い。ふだん食べているものを多めに買う方法は始めやすい反面、期限が短いものは入れ替えの頻度が上がります。たとえばカップ麺は、賞味期限が短めで長期の在庫には向きにくい面があります。この弱点と対処はカップ麺は備蓄に向くのかを賞味期限から検証した記事で扱いました。

期限の長い非常食を土台にして、そこに日常食を足す。この順番のほうが、結果として管理の手数が減ります。サタケフードビジネスのマジックライスは、12食セットが商品ページ表示で1,026gという構成です(2026年8月19日確認時点)。1kgあまりで12食ぶんという密度は、置き場所の制約が強い住まいで効いてきます。

非常食セットを日数で選ぶときの見方は非常食セット7日分を1食あたりで比較した記事に、2次全体の品目と数量の早見表は家庭の備蓄品リスト完全版(人数×日数の早見表)にまとめてあります。この記事は3層の枠組みの話なので、2次の中身を詰めるときは備蓄リストのほうを開いてください。在宅避難そのものが成立する条件は在宅避難の準備リスト(成立する3つの条件)で整理しています。

3層は、置き場所を決めてはじめて完成する

置き場所の設計とは、それぞれの層を「取りに行ける距離」に配置する作業です。中身が正しくても、届かない場所にあれば0点になってしまう。0次と1次を分ける理由が距離だったことを思い出すと、この工程が中身選びと同じ重みを持つのがわかります。

3層の防災グッズを自宅・職場・カバンに分散して置く配置の図解
  • 0次はカバンの中に固定する。使うカバンを替える人は、ポーチごと移し替える運用にする。
  • 1次は、寝ている場所から玄関までの動線上に置く。履物のそばが定位置になりやすい。
  • 2次は1か所に集めない。1か所が塞がれても残りが使えるよう、押し入れ・キッチン下・クローゼットなど2〜3か所に分ける。
  • 職場や車に0次の予備を置けるなら置く。外出先で被災する時間帯は、1日のうち決して短くない。
  • 家族が全員、それぞれの置き場所を言えるか確認する。取りに行ける人が1人しかいない配置は、その人が不在のときに機能しない。

2次を分散させると、ローテーションの手間は増えます。それでもなお分けるほうを勧めるのは、家具の転倒や浸水で1か所が使えなくなる可能性を、置き方だけで下げられるからです。手間と引き換えに買っているのは、備蓄そのものではなく、備蓄に届く確率のほう。

置いたあとの点検についても触れておきます。荒川区は「袋の中身は定期的に確認をして、期限が切れそうなものは新しいものに交換しましょう」と案内しています。ここで注意したいのは、公的な資料で確認できるのは「定期的に」という表現までで、年に何回という具体的な回数を明記した官公庁・自治体の一次資料は今回見つからなかったことです(2026年8月19日確認時点)。よく見かける「年2回」といった数字は、民間の推奨と考えたほうが正確でしょう。

世帯構成で、3層の中身と重さは変わる

世帯構成による調整とは、3層の枠は保ったまま、各層の重さの上限と品目の優先順位を入れ替えることを指します。枠組みを人に合わせるのであって、人を枠組みに合わせるのではありません。動かす方向を先に一覧にしておきます。

世帯 重さの上限 厚くする層 いちばんの論点
単身 そのまま 0次 1次と2次の境目がぼやける
高齢の家族がいる 下げる 2次 背負えるかどうかで1次を組み直す
乳幼児がいる 下げる 1次と2次の両方 品目は増えるのに上限は下がる

単身世帯では、1次と2次の境目がぼやけがちです。持ち出すか家に置くかを決める人が自分ひとりなので、両方に同じものを入れて重複させたほうが、結果として悩む時間が減ります。逆に0次の比重は上がる。日中に自宅にいる時間が短い人ほど、外出先で被災する確率が上がるためです。

高齢の家族がいる世帯では、重さの上限を先に下げます。前述のとおり10〜15kgという目安は自治体によって示し方が違い、そもそも「自分で背負って歩ける量」という考え方が本体でした。背負えないなら、その人の1次は軽くする。足りないぶんは、同居する家族の1次に振り分けるか、2次に回して在宅避難を選べる状態を整えるほうが現実的です。常用している薬やお薬手帳の写しは、0次に置くと持ち出し忘れが起きにくくなります。

乳幼児のいる世帯を考えます。離乳食が始まったばかりの子どもがいる家庭では、そもそも代替がききません。ミルク、哺乳瓶、おむつ、おしりふき。これらは避難所で必ず手に入るとは限らないので、1次の中でも優先度が高くなります。同時に、抱っこして歩く可能性を考えると、背負える重さの上限は下がる。品目は増えるのに、重さの上限は下がるという、いちばん設計が難しい条件です。だからこそ、2次に厚みを持たせて在宅避難を選べるようにしておく価値があります。

わが家の3層を1枚で決めるチェックリスト

紙に書き出すか、この表をメモアプリにコピーして埋めてみてください。埋まらない行が、いま止まっている場所です。

決めること わが家の答え(記入欄)
0次 毎日持ち歩ける重さの上限は何gか        g
0次 どのカバンに固定するか        
1次 背負う人は誰か/その人が背負える重さは     さん・   kg
1次 置き場所(動線上のどこか)        
2次 何人ぶん・何日分を目標にするか   人・  日分
2次 水は何L必要か(人数×日数×3L)        L
2次 分散させる置き場所を2〜3か所 ①   ②   ③   

この表で最初に埋めるべきは、いちばん下から2番目の「水は何L必要か」です。数値の根拠が公的に示されていて、計算だけで答えが出る唯一の行だから。ここが決まると、必要な箱数が決まり、置き場所の相談ができるようになります。

この分け方が向かないケースもある

3層は整理の道具であって、達成すべき課題ではありません。次のような場合は、いったん枠を外したほうが前に進みます。

  • 3つ揃えようとして止まっているなら、まず1つに絞る。日中を自宅の外で過ごす時間が長いなら0次から、自宅にいる時間が長いなら2次から。0次から順番に始める決まりはありません。
  • 収納が限られている住まいでは、2次を1週間分そろえるのが現実的でない場合があります。台東区が示すように「まずは3日分」で区切ってよい。
  • 自宅の安全が確保できない条件(浸水想定区域にある、建物の耐震性に不安があるなど)では、2次を厚くするより1次と避難先の確認を優先する順番になります。判断は内閣府の「避難行動判定フロー」が基準です。
  • 自治体の推奨に従いたいなら、0次・1次・2次という言葉は使わなくてかまいません。「非常持出品」と「備蓄品」の二分類で十分に機能します。

3層で組むか、既成のセットを土台にするかで迷っている場合は、防災セットの中身を1点ずつ検証した選び方の記事で、セットに入っているもの・入っていないものを分解しています。

よくある質問

Q. 0次・1次・2次は国が決めた分類ですか?

いいえ。今回の調査では、内閣府・消防庁など国の一次資料にこの数字表現は確認できませんでした(2026年8月19日確認時点)。確認できた最も古い体系的な発信元は、兵庫県立の準公的機関「人と防災未来センター」が2012年に公開したパンフレットです。多くの自治体は「非常持出品」「非常用備蓄品」という二分類を使っています。

Q. 0次と1次で中身が重複してもいいですか?

問題ありません。0次と1次を分ける理由は中身の違いではなく、被災した瞬間に手が届く距離の違いだからです。外出先では自宅のリュックに手が届かない以上、モバイルバッテリーやライトが両方にあっても無駄にはなりません。重複を避けるべきなのは、重さの制約が厳しい1次と2次のあいだのほうです。

Q. 非常持ち出し袋は何kgまでにすればよいですか?

全国共通の基準は確認できていません。大阪府は「男性で15Kg、女性で10kg程度」と性別を分けて示し、横須賀市は性別を分けず「10~15kgが目安」としています。示し方が自治体によって違うため、数値を決め打ちにせず、実際に背負って玄関を出られるかどうかで判断してください。

Q. 備蓄は3日分と1週間分、どちらに合わせればよいですか?

農林水産省は「最低3日分~1週間分×人数分」という幅で示しています。台東区は「まずは『3日分』を目標にしましょう」と置いたうえで、1週間分に努める、という段階の示し方をしています。収納に余裕がないうちは3日分で区切って構いません。

Q. 非常持ち出し袋の点検はどのくらいの頻度で行うべきですか?

公的資料で確認できたのは「定期的に確認」という表現までで、年に何回という具体的な回数を明記した官公庁・自治体の一次資料は見つかりませんでした(2026年8月19日確認時点)。回数を決めるより、期限が近いものを見つけたら入れ替える、という運用のほうが実態に合います。

まとめ|今日やるのは「水の必要量を計算する」だけでいい

0次・1次・2次は、時間と居場所で備えを割った整理です。便利ではあるけれど、国が定めた制度ではありません。自治体のページを開くときは「非常持出品」「備蓄品」という言葉に読み替える。この一手間だけ覚えておけば、民間サイトと公的サイトを行き来しても迷わなくなります。

今日やることは1つだけで十分です。わが家に必要な水の量を計算すること。人数×日数×3L。この掛け算だけが、公的な根拠を持ったまま答えが出る作業だからです。

  1. 水の必要量を出す家族の人数に日数(まずは3日)と3Lを掛ける。4人家族の3日分なら36L、1週間分なら84L。2L×6本のケースなら、それぞれ3箱と7箱ぶんです。
  2. 置ける場所を2〜3か所さがす押し入れ、キッチン下、寝室のクローゼット。1か所に積み上げず、塞がれても残りが使える配置にします。
  3. 足りない層を1つだけ決める0次・1次・2次のうち、いま最も薄い層はどれか。3つ同時に手をつけず、そこから埋めていきましょう。

3層それぞれの中身は、層ごとの記事で決められます。0次は防災ポーチの中身(持ち歩ける重さから逆算する12品)、1次は防災リュックの中身リスト(最低限の6つ)、2次は家庭の備蓄品リスト完全版(人数×日数の早見表)へどうぞ。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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