防災リュックの雨具はポンチョでいい?メーカー公表値で見るレインウェアとの違い

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防災リュックの雨具は「ポンチョ」と「上下セパレート」の2つに分かれる

防災リュックの雨具とは、避難のあいだ体と荷物を濡らさないために持ち出す「着る形の雨よけ」のこと。形は頭からかぶるポンチョと、上下が分かれたセパレートの2つです。

玄関のリュックを開けて中身を並べ直す。食料も水もライトも迷わず決まったのに、雨具で手が止まる——折りたたみ傘か、コンビニのポンチョか、クローゼットのレインウェア上下か。検索すると「傘は危険」と断言する記事が並びますが、誰がどの資料でそう言ったのかは書かれていません

結論から。公的機関のリストにあるのは「雨具」「レインコート」までで、ポンチョかセパレートかを指定した資料はありません。判断材料はメーカーの公表値です。モンベルのトレッキング レインポンチョ(#1128667)は耐水圧5,000mmで透湿性を備えず、ストームクルーザー ジャケット Men’s(#1128733)は耐水圧20,000mm以上・透湿度40,000g/m²・24hrs。同じ「雨具」の中に4倍の開きがあります。

この記事でわかること

  • 消防庁と日赤は「雨具」を明記、東京都『東京防災』は本体リストに無く職場用にだけ「レインコート」がある割れ方
  • 耐水圧はJIS L 1092、透湿度はJIS L 1099という別々の規格で測られていること
  • モンベルのポンチョは「透湿性は備えていない」と公式が明言し、セパレート上衣は20,000mm以上・40,000g/m²・24hrsを公表
  • ワークマンは数値を公開しておらず、カタログだけでは横並びにできないこと

リュック全体の品目と重さの配分は防災リュックの中身リスト|最低限の6つと、入れなくていい5つへ。本記事はその「雨具」1行だけを掘り下げます。

ポンチョは透湿性という機能を持たない——とメーカー自身が書いています。汗をかく距離を歩く前提ならセパレート、脱ぎ着の速さとリュックごと覆える形を取るならポンチョ。分かれ目は防水力の高さではなく、汗の逃がし方です。

公的機関3者の持ち出し品リストは、雨具の扱いが割れている

非常用持ち出し品リストとは、各機関が品目単位で「これを持って逃げてください」と公開した資料のこと。同じ公的資料でも、扱いは一致していませんでした。

資料 発行 記載 使われている語(原文)
非常用持出品チェックシート 総務省消防庁 あり 「防寒用ジャケット・雨具」(衣料品)
非常時の持ち出し品・備蓄品チェックリスト 日本赤十字社 東京都支部 あり 「雨具(レインコート、長靴など)」
『東京防災』2023年版 P.90「非常用持ち出し袋」 東京都 なし 雨具・レインコート・ポンチョの記載なし
『東京防災』2023年版 P.91「職場用非常持ち出し袋」 東京都 あり 「レインコート」

防寒用ジャケット・雨具

出典: 総務省消防庁「非常用持出品チェックシート」(PDF/2026年9月1日確認)

雨具(レインコート、長靴など)

出典: 日本赤十字社 東京都支部「非常時の持ち出し品・備蓄品チェックリスト」(PDF/2022年1月12日付・2026年9月1日確認)

おもしろいのは東京都です。P.90の家庭用リストは懐中電灯・毛布・食品・軍手・衣類などが並ぶのに、雨具にあたる語がひとつもない。ところが次のP.91、職場用には「レインコート」と書かれています(東京都『東京防災』2023年版/2026年9月1日確認)。同じ本の隣り合うページで割れている。

「家庭では要らない」ではなく、想定する行動の違いと読むのが自然でしょう。職場からの帰宅は屋外を長く歩く前提です。なお内閣府防災情報のページには品目別チェックリストが見当たらず(2026年9月1日確認)、家庭向けは消防庁・自治体・日赤が担っているようでした。

避難所で自分が持つ物と施設が用意する物の線引きは避難所に持っていくものリスト|自治体が用意する物と、自分で持つ物の線引きへ。

耐水圧と透湿度は、別々のJIS規格で測っている

耐水圧とは、生地が水の圧力にどこまで耐えるかを示した数値で、JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」で測ります。透湿度は同じ規格ではありません。透湿性の試験はJIS L 1099という別の規格です。

規格 測るもの 単位 おもな適用
JIS L 1092 A法(低水圧法) 防水性(耐水度) mm レインウェアや傘などの製品
JIS L 1092 B法(高水圧法) 防水性(耐水度) kPa テント用布や靴用布
JIS L 1099 透湿性(透湿度) g/m²・24hrs 透湿防水素材のレインウェアなど

A法は毎分600mm±30mmで水位を上げ測定範囲は約2,000mmH₂Oまで、B法は毎分100kPaで加圧し約10〜500kPa(出典: 日本産業標準調査会 JIS検索ボーケン品質評価機構「防水性試験」/2026年9月1日確認)。

つまり防水の強さと蒸れにくさは、別の試験で別の単位で測られた別々の性能。片方だけ高くても快適とは限りません。

耐水圧と透湿度を同じ規格として説明するページは疑ってください。耐水圧はJIS L 1092、透湿度はJIS L 1099です。もう1点、A法の測定範囲は約2,000mmH₂Oまで。「耐水圧20,000mm以上」の値をどの方法で測ったかは商品ページに記載がなく、単位が同じでも機械的には並べられません。

モンベル公式は「透湿性が低いと汗で体が濡れて体温低下を招く」と定性的に述べますが、気温や時間の数値までは示されていないのが実情です。本記事でも書きません。体を温め直す側の道具は防災用の毛布・寝袋・アルミブランケットの違いと場面別の組み合わせ方【メーカー公表値で比較】へ。

ポンチョとセパレートの差は、メーカーの公表値に出ている

公表値とは、メーカーが自社の商品ページに数字で書いた仕様のことで、第三者が測り直した値ではありません。それでも同社の2製品を並べれば、形の違いは素直に見えます。

項目 トレッキング レインポンチョ #1128667 ストームクルーザー ジャケット Men’s #1128733
耐水圧 5,000mm(ハイドロプロ®2レイヤー) 20,000mm以上
透湿度 透湿性は備えていない 40,000g/m²・24hrs(JIS L-1099 B-1法・参考値)
重量 平均295g 平均254g
収納サイズ 9×9×14cm(1.2L) 8×8×15cm(1L)

構造的に高い通気を確保できるレインポンチョなどに使用

出典: モンベル公式オンラインショップ トレッキング レインポンチョストームクルーザー ジャケット Men’s(2026年9月1日確認)

モンベルの2製品の公表値を左右に並べた対応図。レインポンチョは耐水圧5,000mmで透湿性の記載なし、ストームクルーザー ジャケットは耐水圧20,000mm以上で透湿度40,000g/m²・24hrsという対応を示した図

読み替えるとこうです。ポンチョは生地で蒸気を逃がすのではなく、裾も袖口も開いた形そのもので風を通す——そうメーカーが自分で書いている。だから透湿度の欄に数字が入らない。

収納サイズの1Lと1.2Lは500mlペットボトル2本ぶんくらいの体積、254gと295gは中身入り500mlペットボトルの半分ほど。耐水圧が4倍違っても、占める場所と重さはほとんど変わりません

カタログの数値だけでは、全メーカーを横並びに比較できない

数値非公開とは、その性能が無いのではなく、消費者向けの商品ページに書かれていないという意味です。雨具ではこれが普通に起きています。

ワークマンのイナレム®レインスーツ Ladies(WNR001A)の公式ページは「INAREM®=高機能透湿防水素材」という定性表記だけ。高撥水レインポンチョ Ladies(WLR005C)は「高撥水」という撥水加工の表記までで、耐水圧の欄そのものが無く、重量も収納サイズも記載なしでした(イナレム®レインスーツ高撥水レインポンチョ/2026年9月1日確認)。

そなえぐらし管理人

「耐水圧の高い順ランキング」は、数字を公開した会社だけの順位になります。載らない製品が劣っているのではなく、比べる材料が無いだけ。

市販の防災セットも同じ。アイリスオーヤマ公式の防災リュック基本セットのページは内容が「食事/照明/寝具・防寒/移動/衛生用品/その他」の6分類で示され、「雨具」という独立カテゴリの表記はテキスト上見当たりませんでしたアイリスオーヤマ公式/2026年9月1日確認)。雨具の仕様で選べる状態にはなっていません。

  • 耐水圧の数値があるか(無ければ他社と比べようがない)
  • 透湿度の数値、または「透湿性なし」の明記があるか
  • 「撥水」だけの表記になっていないか(防水とは別の加工)
  • 重量と収納サイズが載っているか

セットの中身を1点ずつ確かめる考え方は防災リュックの手袋は軍手でいい?EN388の耐切創レベルと、防災セットに入っている手袋の正体で手袋を例に、セット全体の見方は防災セットのおすすめはどれ?市販セットの中身を1点ずつ検証する選び方で書きました。

「傘は危険」と名指しした公的資料は、見つからなかった

一次資料とは、その機関自身が公開した原典のことで、他サイトの要約は含みません。避難時の傘を公的機関が名指しで「危険」と書いた一次資料を、日本語での複数回の検索、国土交通省と気象庁のページ、気象台の参考資料PDFまで当たって探しましたが、見つけられませんでした。よって本記事は「傘は危険」と断定しません

持ち物はリュックで、手は自由に、長靴よりひも付き運動靴で避難しましょう

出典: 国土交通省 川の防災情報「浸水深と避難行動について」(該当ページ/2026年8月30日確認)

これは「手を自由に」と書いているだけで、傘を名指しした文ではない。傘が手をふさぐのは事実ですが、公的機関の見解として引用することはできません。同ページの履物の話は災害時の靴は長靴でいい?国土交通省が示す「ひも付き運動靴」と歩ける水深の目安で原文ごと扱いました。

メーカー側の扱いも見ておきます。モンベルの「オールウエザー(雨具)」カテゴリには、レインジャケットやレインポンチョと並んで「傘」も雨具の一種として置かれています(2026年9月1日確認)。メーカー自身は傘を外していない。「両手が空くほうが避難に向く」は成り立つ判断ですが、公的機関の言葉ではなく私たちの整理です。

この記事が当てはまらないケース

ここまでは「防災リュックに入れる1着」が前提。前提が変われば答えも変わります。

  • すでに登山用レインウェアを持っている——買い足す理由はありません
  • 毎日持ち歩くバッグに入れる——軸が重さと体積に寄ります。逆算の考え方は防災ポーチの中身|毎日持ち歩ける重さから逆算して決める12品と、入れない物の基準
  • 子どもや高齢の家族のぶんを選ぶ——挙げたのは成人向けの公表値です。丈の合わないポンチョは足元にまとわりつくので実寸の確認を
  • 在宅避難が前提の地域——屋外を歩く時間が短いなら優先度は下がります

防災リュックの雨具についてよくある質問

ポンチョとセパレート、防災リュックにはどちらが向いていますか。

公的機関はそこまで指定していないため、条件で選びます。モンベルの公表値はポンチョ(#1128667)が耐水圧5,000mmで透湿性なし、セパレート上衣(#1128733)が20,000mm以上・40,000g/m²・24hrs。汗をかく想定ならセパレート、脱ぎ着の速さならポンチョです。

耐水圧は何mm以上あればいいですか。

公的機関が示した基準値は見つかりませんでした。参考はメーカーの社内基準で、モンベルは「レインウエアに求められる耐水圧20,000mm以上をクリアした素材を使用」と公開しています(オールウエザー(雨具)カテゴリ/2026年9月1日確認)。ただし同社の基準で、業界共通の合格ラインではありません。

使い捨てタイプの簡易ポンチョではだめですか。

だめだと断じる材料はありません。ただし耐水圧や透湿度が公表されていない製品は、他社と横並びに比較できないだけです。その場合はカタログではなく、実物で袖口・裾の長さ・縫い目の処理を見ることになります。

本記事に価格を書いていないのは、変動するためです。仕様は公表値として残りますが、金額は確認した瞬間に古くなります。

まとめ|今日やることは1つ

今日やることは1つだけ。防災リュックの雨具を取り出して、タグと商品ページで耐水圧の表記を確かめることです。数値があれば選び直しの基準ができ、無ければ「比べる材料が無い品だ」と分かる。どちらでも前進します。

  1. リュックから雨具を出す入っていなければ、この時点で追加が決まります。消防庁は「防寒用ジャケット・雨具」、日赤東京都支部は「雨具(レインコート、長靴など)」と明記。
  2. 耐水圧と透湿度の表記を探すタグと商品ページの両方を。耐水圧はJIS L 1092、透湿度はJIS L 1099という別の規格で測られた値です。無ければ「非公開」とメモすれば十分。
  3. 形を決めて、一番上に戻す汗をかく距離ならセパレート、脱ぎ着の速さを取るならポンチョ。収納サイズは1L前後で、どちらでも荷物の総量は変わりません。
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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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