夏の避難所の暑さ対策|冷房があるとは限らない前提で自分が持っていくもの

夏の避難所の暑さ対策|自分で持っていくものの優先順位

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真夏の体育館を思い浮かべてみてください。窓は高い位置にあって開けにくく、床は日中の熱をため込んだまま。日が落ちても室温は下がらず、敷いたシートのほうが自分の体より熱い。夏の避難所に使われるのは、たいていそういう建物です。

つまずきやすいのは「避難所には冷房があるはず」という前提のほう。内閣府(防災担当)の「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定)は、冷暖房機器を含む防災機能設備等について、平時に整備状況を確認して充実強化を推進することが望ましい、保有しない場合は近隣施設等と協定を締結する、と記しています。これは努力目標であって、常設を保証する規定ではありません(出典: 内閣府「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」)。

規模感も押さえておきたいところ。総務省消防庁の確定値では、令和7年5〜9月の熱中症による救急搬送人員は全国で100,510人。平成20年の統計開始以降で最も多い数字でした。発生場所の内訳では住居が38,292人(38.1%)で最多です(出典: 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」)。

屋外で汗をかいている人だけの話ではない、ということ。避難所も「屋内だから涼しい」場所ではなく、周りの環境は自分で整えるつもりで向かう場所だと考えたほうが、準備は組み立てやすくなります。

この記事でわかること

  • 避難所の冷暖房が「あるとは限らない」と言える公的な根拠
  • 暑さ指数(WBGT)の区分値と警戒アラートの基準(環境省の公式区分)
  • 夏に追加で持っていくものの優先順位(1軍・2軍・3軍の3段)
  • 停電しているかどうかで、できることがどう変わるか

夏の避難所の暑さ対策は、設備で解決するとは限りません。冷房がない前提でも成立する装備を、自分の持ち出し袋に足しておく。ここが今日決められる一番大きいことです。

この記事が扱うのは「夏の避難所生活のために追加するもの」だけ。季節を問わない基本の装備一式は防災リュックの中身リスト|最低限の6つと、入れなくていい5つで全体像を押さえたうえで、以下を上乗せしてください。

目次

夏の避難所の暑さは、設備任せにできない

「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」とは、内閣府(防災担当)が避難所の生活環境について自治体に示している指針です。発災後についても、避難所の規模や設備状況に応じて適切な冷暖房の整備や備蓄を進めることが適切、という書き方。設備状況は避難所ごとに違うので、そこは行ってみるまで確定しません。

誰が搬送されているかの内訳も見ておきます。消防庁の確定値では高齢者(65歳以上)が57,433人で全体の57.1%。次いで成人34,096人(33.9%)、少年8,447人(8.4%)、乳幼児531人(0.5%)と続きます(出典: 総務省消防庁 同上)。

数字が続いたので言い換えると、半分以上は高齢者。家族に高齢の方や小さな子どもがいるなら、「自分は平気だから」の基準で荷物を決めると足りなくなりやすい、ということです。ちなみに5か月で10万人という総数を編集部が単純に日数で割ると、1日あたりおよそ650人になります。

  • 避難先が体育館など、天井が高く窓が高い位置にある建物だ
  • その避難所に冷房機器があるかを、自治体の公表資料や窓口で確認したことがない
  • 停電した場合に冷房が動く電源があるかどうかを知らない
  • 夏の地震や大雨がきっかけで、日中に徒歩で移動する可能性がある
  • 同行する家族に高齢者、または乳幼児がいる

当てはまる項目が多いほど、持ち物でカバーする範囲は広くなります。逆に冷房の有無を確認できていれば、荷物の判断はぐっと楽になるはずです。

暑さ指数(WBGT)は、行動を切り替えるための数字である

暑さ指数(WBGT)とは、環境省が熱中症の危険度の目安として公表している指標です。環境省の熱中症予防情報サイトでは次のように区分されています(出典: 環境省「熱中症予防情報サイト」)。

区分 暑さ指数(WBGT) 備えの作業をどう回すか(編集部の読み替え)
注意 25未満 荷物の点検や避難経路の下見は、この日に寄せる
警戒 25以上28未満 屋外の作業は短く区切る。水を持たずに家を出ない
厳重警戒 28以上31未満 用事は朝夕へ。持っていく飲料の量を見直す
危険 31以上 外出を控える判断が要る水準。避難が必要になれば自治体の指示を優先

左の2列が環境省の公式区分、右列は編集部が「備えの作業をいつやるか」に読み替えたものです。あわせてアラートの基準も。熱中症警戒アラートは、府県予報区等内のいずれかの地点で翌日または当日の日最高WBGT(予測値)が33に達する場合に発表されます。熱中症特別警戒アラートは、都道府県内のすべての地点で翌日の予測値が35に達する場合等、というのが環境省の説明です(出典: 環境省「熱中症予防情報サイト」)。

体感に置き換えます。区分の「危険」が31で、警戒アラートは33。アラートが出る日は、区分でいう「危険」をさらに上回っている日ということ。その日に停電した避難所へ荷物を担いで歩く場面を想像しておくと、次の章の優先順位が決めやすくなります。

WBGTの区分もアラートの基準も、体調を保証する数字ではありません。めまい、頭痛、吐き気、汗が止まる、呼びかけへの反応が鈍いなど体調の異変を感じたときは、数字にかかわらず医療機関や救急に連絡してください。避難するかどうか・どこへ避難するかの判断は、必ず自治体や公的機関の発表に従ってください。

夏に追加する持ち物は、1軍・2軍・3軍で決める

持ち物の優先順位とは、限られた重さとかさの中で何から先にリュックへ入れるかを決める順番のことです。先に断っておくと、避難者本人が持参すべき物を列挙した公的な記載は、今回確認した内閣府の避難所関連資料の範囲では見当たりませんでした。以下は、環境省が示す水分・塩分補給の目安と、重さ・かさばり・電源の要否を根拠に編集部が整理したものです。

追加するもの その段に置いた理由 かさ・重さ
1軍
これだけは
飲料水(500mlを複数本) 電源なしで機能する。給水が整う時間が読めない 1本500g前後
1軍 塩分がとれるもの(粉末・タブレット等) 環境省が大量発汗時の塩分補給に触れている 数十g
1軍 うちわ・扇子 電池も電源も要らず、壊れる部品がない 扇子なら数十g
1軍 薄手のタオル数枚 濡らす・敷く・日よけと用途を兼ねられる 1枚100g前後
2軍
入るなら
レジャーシート・銀マット 床に直に横たわらずに済む(次章参照) 丸めて缶1本ほど
2軍 速乾性の着替え・帽子 汗をかいたまま過ごす時間を短くできる 1式500g前後
2軍 電池式の小型ファン+予備電池 コンセント不要だが、後述の注意あり 200〜300g+電池
3軍
家に置く
凍らせる前提の保冷剤 停電すると作り直せず、溶ければ重いだけ 1個数百g
3軍 コンセントが要る冷却機器 電源と容積を同時に要求する 数kg

軸は単純で、上に行くほど「電気も冷凍庫も要らない」もの。停電した瞬間に使えなくなるものは、どれだけ頼もしく見えても後ろへ回しました。

そなえぐらし管理人

いちばん悩んだのが保冷剤の扱いでした。夏の備えとして真っ先に浮かぶ品なのに、停電を前提にすると急に頼りなくなる。迷った末、「冷凍庫が動いている前提のものは3軍」という線で統一しています。編集部の判断であって、公的な優先順位ではありません。

自分の水は、自分のぶんだけ持っていく

環境省は熱中症の予防として、水分をこまめにとることを呼びかけています。飲料として摂取すべき量(食事等に含まれる水分を除く)は1日あたり1.2Lが目安、という記載が環境省の資料にある。大量に汗をかいたときはスポーツ飲料等、塩分濃度0.1〜0.2%程度の水分摂取が薦められる、とも書かれています(出典: 環境省「熱中症を防ぐためには」)。

1.2Lは、500mlのペットボトルでおよそ2.4本分。0.1〜0.2%は、水1Lに食塩1〜2gを溶かした程度の濃さです。避難所での必要量を定めた数字ではありませんが、1人が1日に飲む量の見当をつける材料にはなりますよね。

持ち出し袋に入れるなら、2Lより500mlのほうが分けやすい。容量や賞味期限の考え方は保存水おすすめ比較で整理しています。持ち運びやすい形の備蓄水としては、次のような500mlサイズが選択肢になります。


今は8月。防災用品が値下がりしやすい時期の傾向は防災の日セールで買うもの|8〜9月に安くなりやすい時期にまとめています。買い足しの計画を立てるなら、この時期に一度どうぞ。

床から離れることには、暑さ以外の理由もある

簡易ベッドとは、段ボール等でつくる、床から体を離すための寝床のことです。内閣府の取組指針には、床に長期に横たわっているとエコノミークラス症候群を引き起こすだけでなく、埃等を吸い込むことによる健康被害も心配されるためベッドの設置が望ましい、と明記されています(出典: 内閣府「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」)。

この記述は暑さを名指ししたものではありません。ただ、日中に熱をため込んだ床に直接寝るのと、少し浮いた場所で寝るのとでは条件が変わる。簡易ベッドや間仕切りが行き渡るかは避難所ごとの状況次第なので、届かなかったときのために自分でシートを1枚持っておくという組み立てになります。

簡易ベッドの配備、間仕切りの用意、冷暖房の有無は、いずれも避難所ごとに異なります。何が備えられているかは、自治体の公表資料や防災担当窓口で事前に確認してください。

停電しているかどうかで、できることが変わる

停電下の暑さ対策とは、電気を使う機器が動かない前提で組み立てる暑さ対策のことです。優先順位表が「電源の要否」を軸にしているのも、ここが分かれ目になるから。

扇風機については、環境省の資料に押さえておきたい注意があります。気温が体温よりも高い場合には扇風機が熱風を送ってしまい逆効果になることがあるため注意が必要、という記載です(冷気を対流させる用途は有効、とも書かれています。出典: 環境省「熱中症を防ぐためには」)。

この注意書きは停電時を想定したものではありません。また、停電した避難所で扇風機が使えるかどうかを明記した公的資料は、2026年8月8日時点で編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。「電池式ファンがあれば大丈夫」とは書けない、というのが正直なところです。

停電中は、暑さ指数や気象情報を取りに行く手段も細くなります。スマホの電池を何に使うかという配分の問題になるので、ラジオや自治体の発信を含めた手段は停電時の情報収集の手段一覧で確認しておくと、当日に迷わずに済みます。

避難所に行かない選択肢も、視野に入れておく

在宅避難とは、自宅の安全が確認できる場合に、避難所へ行かず自宅で生活を続ける選択のことです。成立するかどうかは建物の被害状況やライフラインの見通し次第なので、条件は在宅避難の準備リスト|成立する3つの条件で判断材料をそろえてください。

もうひとつ、車中泊という選択肢もあります。ただし車中泊にはエコノミークラス症候群など、暑さとは別の注意点が伴うため、この記事では踏み込みません。夏の車中泊で気をつけることや一晩分の装備は車中泊は防災になる?一晩分の装備リストと夏冬の注意点に委ねます。どの形を選ぶにせよ、避難の要否と避難先の判断は自治体や公的機関の発表を優先してください。

よくある質問

Q. 避難所にエアコンは付いていないのですか?

A. 付いている避難所もあれば、そうでない避難所もあります。内閣府の取組指針は充実強化を推進することが望ましい・保有しない場合は近隣施設等と協定を締結する、という書き方で、常設を義務付けてはいません。実際にどうなっているかは、避難先の自治体の公表資料や防災担当窓口で確認するのが確実です。

Q. 水は1人あたりどれくらい持っていけばいいですか?

A. 避難所での必要量を定めた公的な数値は今回確認できませんでした。目安になるのは、環境省が示す「飲料として摂取すべき量(食事等に含まれる水分を除く)は1日あたり1.2L」という記載。500mlのペットボトルでおよそ2.4本分です。持てる重さと相談しながら、1日分を起点に考えてみてください。

Q. 電池式の小型ファンがあれば安心ですか?

A. 安心と言い切れる根拠はありません。環境省の資料には、気温が体温よりも高い場合に扇風機が熱風を送って逆効果になることがある、という注意が書かれています。停電した避難所での使用を明記した公的資料も、確認した範囲では見つかりませんでした。持ち物のひとつであって答えではない、という位置づけで考えてください。

まとめ:今日やることは1つだけ

1つに絞るなら、自分の避難先に冷房機器があるかを、自治体の公表情報で確認すること。ここが決まれば、荷物に何を足すかは自動的に決まります。

  1. 避難先を1つ決めて調べる自治体サイトで指定避難所の一覧を開き、行く可能性が最も高い1か所の設備の記載を確認。記載がなければ防災担当窓口へ。
  2. 1軍だけをリュックに足す水(500ml複数本)、塩分がとれるもの、うちわ、薄手のタオル。この4つはどれも電源を必要としません。
  3. 3軍を袋から出す凍らせる前提の保冷剤やコンセントが必要な機器が入っているなら外に出し、空いた重さを水にまわしてください。

暑さ指数も搬送人員も、体調を保証してくれる数字ではありません。準備を整えたうえでも体調に異変を感じたときは、迷わず医療機関や救急に連絡を。そして避難の判断は、必ず自治体や公的機関の発表に従ってください。

参考・出典

  • 環境省「熱中症予防情報サイト/暑さ指数(WBGT)について」 https://www.wbgt.env.go.jp/about_wbgt.php (確認日: 2026年8月8日)
  • 環境省「熱中症予防情報サイト/熱中症警戒アラートについて」 https://www.wbgt.env.go.jp/about_special_alert.php (確認日: 2026年8月8日)
  • 環境省「熱中症を防ぐためには」 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/3-1.pdf (確認日: 2026年8月8日)
  • 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」(令和7年10月29日公表) https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf (確認日: 2026年8月8日)
  • 内閣府(防災担当)「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定) https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf (確認日: 2026年8月8日)
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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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