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ペット用の防災セットを一つ買えば、公的機関が挙げている備蓄品はひととおり入っている。そう思って市販セットの公表内容を1社ずつ読み比べたところ、いちばん量が必要な項目が、どの製品にも入っていませんでした。フードと水です。
環境省のガイドラインは、ペットのフードと水を「少なくとも5日分(できれば7日分以上)」としています。これに対して市販セットの公表文言はこうです。IYOIYAの35点セットには「※別途、ペットが使い慣れたフードやおやつ、猫砂、お薬などを追加でご準備ください」。ナラネコのDXセットには「猫との避難はこのデラックスセットにフード・お水・猫砂等を加えれば完成します」。どちらも、フードと水は入っていないと販売者自身が書いています。アイリスオーヤマの15点セットは、収納量として「自宅にある水やフード、猫砂など…約2〜3日分入れられます」と公式に説明しています。公表値をそのまま並べると、同梱は0日分か、入れられて約2〜3日分。5日分との差は、最大で4〜5日分になります(2026年9月8日確認時点)。
ただ、これは製品の欠陥ではありません。フードは療法食かどうかで変わり、水の量は体重で変わり、猫砂は使い慣れた銘柄でないと使ってくれないことがある。各家庭で中身が違うものは、そもそも同梱できない——だから市販セットは「入れ物と、共通で使える小物」までを担当し、残りは飼い主が足す設計になっています。買ってから足すのか、買ったまま置いておくのか。その差だけが問題になります。
この記事でわかること
- 環境省が備蓄品を「優先順位1・2・3」の3段階に分けていること、そして原文の項目そのもの
- 市販4製品(IYOIYA/防災ダイレクト/ナラネコDX/アイリスオーヤマ)が公表している中身を、加工せず並べた表
- 公表内容だけで確認できる「フードと水の最大4〜5日分の差」と、その差を埋める買い方
- 優先順位1のうち、どうしても市販セットに入らない項目(療法食・薬・情報)を自分で用意する手順
環境省は備蓄品を3つの優先順位に分けている
環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」とは、ペットとの同行避難を前提に、飼い主が平時に何を備えるかを国がまとめた文書です。そのp.19に、備蓄品が3段階の優先順位で整理されています。ここが、この記事のものさしになります。
大事なのは、リストが「並列の買い物メモ」ではなく順位づけされているという点です。上から順に、命に近いものから並んでいます。
優先順位1(動物の健康や命に係わるもの)
- 療法食、薬
- ペットフード、水(少なくとも5日分[できれば7日分以上])
- キャリーバッグやケージ(猫や小動物には避難時に欠かせないアイテム)
- 予備の首輪、リード(伸びないもの)
- ペットシーツ
- 排泄物の処理用具
- トイレ用品(猫の場合は使い慣れた猫砂、または使用済猫砂の一部)
- 食器
優先順位2(情報)
- 飼い主の連絡先と、ペットに関した飼い主以外の緊急連絡先・預け先などの情報
- ペットの写真(印刷物とともに携帯電話などに画像を保存することも有効)
- ワクチン接種状況、既往症、投薬中の薬情報、検査結果、健康状態、かかりつけの動物病院などの情報
優先順位3(ペット用品)
- タオル、ブラシ
- ウェットタオルや清浄綿
- ビニール袋
- お気に入りのおもちゃなど匂いがついた用品
- 洗濯ネットなど(猫の場合は屋外診療・保護の際に有用)
- ガムテープやマジック

この3段階は、優先順位3が「要らないもの」という意味ではありません。持ち出せる量に限りがあるとき、どれを先にリュックへ入れるかの順番です。優先順位1を全部そろえてから、2、3へ進む。買い足しの順番としても、そのまま使えます。
優先順位ごとの項目を、飼い主が今日どこまで確認できるかはペットの同行避難の準備リスト|環境省が示す優先順位と、飼い主が今日確認することで工程に落としています。この記事は、その準備リストを「市販セットで代替できるか」という角度から検証したものです。
市販4製品の公表内容を、そのまま並べる
市販のペット防災セットとは、キャリーやリュックに衛生用品・食器類などをまとめて詰めた既製の詰め合わせ商品を指します。ここでは、メーカーや販売者が自分で公表している内容だけを、加工せずに並べます。評価やおすすめ度ではなく、まず公表値そのものを見てください。
| 製品 | 販売元 | 形状・素材 | 公表されている内容 | フードと水 |
|---|---|---|---|---|
| IYOIYA ペット防災グッズ 35点セット | Givery Pet Goods(ブランドIYOIYA) | ポリエステル製/28×18×40cm/1.42kg/リュック+手持ちの2WAY/内外5ポケット | 折りたたみ食器×2、マナー袋15枚、水入れ袋×2、チャック付き袋、ペットシーツ8枚、ポータブルトイレ、タオル | 非同梱。「※別途、ペットが使い慣れたフードやおやつ、猫砂、お薬などを追加でご準備ください」と明記 |
| ペット防災セット(防炎防水・防災士監修・犬猫兼用2way) | 株式会社防災ダイレクト(防災プロの地震対策ショップ) | 外形310×250×150mm/総重量約2.8kg/容量約11.6L/防炎ターポリン/3色/ショルダーベルトと底板付属/日本製 | QRコード迷子札「にくQR」入り。内容物の内訳は商品ページの画像でしか示されておらず、テキストでは確認できなかった | 公表内容から確認できず |
| ネコのための防災DXセット(bousai-DX) | ナラネコ | ナイロン製/猫専用/リュックは500mLペットボトル×6本+猫砂約4Lを収納可 | 折りたたみケージ、どこでもネコトイレ、スコップ、チェックリスト、特大リュック、ボトル、カップ2個、臭わない袋20枚、落ち着くネット | 非同梱。「猫との避難はこのデラックスセットにフード・お水・猫砂等を加えれば完成します」と製造者が明言 |
| ペット用防災セット 15点セット(PBSI-15=犬用/PBSN-15=猫用) | アイリスオーヤマ | 斜め掛けショルダー型/2025年8月7日発表・同年8月下旬発売/「当社初のペット用防災セット」/ペット災害危機管理士®3級監修 | 全15点=共通13点+犬専用2点/猫専用2点 | 非同梱。収納量として「自宅にある水やフード、猫砂など…約2〜3日分入れられます」と公式に明記 |
並べてみると、4製品に共通する性格が見えてきます。どれも「運ぶ入れ物」と「共通で使える衛生用品」が中心で、中身の個体差が大きいものは外してある。ナラネコDXが「リュックは500mLペットボトル×6本+猫砂約4Lを収納可」と、入れる物ではなく入る量で書いているのは象徴的です。売っているのは容器であって、日数ではない、ということになります。
正直なところ、セットを買った時点で「備えが終わった」と感じてしまうのがいちばんの落とし穴だと思っています。届いた箱を開けて、そのまま玄関に置く。あと一手、フードと水を入れるところまでを買い物の続きにしておきたいです。
フードと水は、どの製品でも5日分に届かない
備蓄日数とは、支援物資や買い物が期待できない期間を、家にあるもので越すための目安です。ペットの場合、人と違って避難所に配られる保証がないぶん、この日数がそのまま自己負担になります。
| 出所 | 示している日数 | 原文の表現 | 項目の分類 |
|---|---|---|---|
| 環境省 ガイドライン<一般飼い主編>p.19 | 5日分/できれば7日分以上 | 「ペットフード、水(少なくとも5日分[できれば7日分以上])」 | 優先順位1・2・3の3段階 |
| 東京都保健医療局 | 5日分/できれば7日分 | 「最低でも5日分、できれば7日分を目安に」 | 分類なしの列挙 |
| 大阪府 動物愛護管理センター | 最低5日分 | 「ペットの餌や水などの飲食物(最低5日分)」 | 分類なしの列挙(7項目) |
| アイリスオーヤマ 公式ニュースリリース | 約2〜3日分(収納量) | 「自宅にある水やフード、猫砂など…約2〜3日分入れられます」 | —— |
| IYOIYA/ナラネコDX | 0日分(同梱なし) | 「別途…ご準備ください」「フード・お水・猫砂等を加えれば完成します」 | —— |
つまりどういうことか。公的機関が「5日、できれば7日」と言っているところに、市販セットが用意しているのは入れ物としての約2〜3日分か、それ以外はゼロ。差し引きで最大4〜5日分が、買っただけでは埋まらない計算になります。しかも収納量の2〜3日分は「入れられます」であって「入っています」ではない。中身を詰める作業は、購入者側に残っています。

そこで、まず水から埋めます。ペット用の特別な水を用意する必要はなく、人と同じ長期保存水で構いません。むしろ、少量ずつしか飲まない動物ほど小容量ボトルが向きます。1本を開けきってしまえば、飲み残しを衛生上の理由で捨てる場面が減るからです。
アイリスオーヤマの長期保存水は500mLサイズで、製造から5年保存。24本入りは合計12L、2Lペットボトルなら6本ぶんに当たります(アイリスオーヤマ公式の防災用品ページ・2026年9月8日確認)。環境省の優先順位1にある「ペットフード、水」のうち、水の側をここで埋める形になります。
では何本必要なのか。ここは体重と頭数で答えが変わるので、この記事では数式を作り込みません。水の量は災害時のペットの水は何リットル必要?犬・猫の体重から逆算する早見表で体重別に、フードの量はペットフードの備蓄量|犬・猫に何日分?環境省基準と1日給餌量からの計算式・早見表で1日の給餌量から計算しています。うちの子の数字は、そちらで出してください。
フードは「いつも食べている銘柄」を回すのが基本です。防災用に買った見慣れないフードは、緊張した環境でさらに食べてくれないことがあります。普段のストックを1袋多めに持ち、古い順に使って買い足す。この回し方なら、賞味期限の管理も普段の買い物の中で終わります。
優先順位1のうち、市販セットで埋まる項目と埋まらない項目を分ける
ここからが本題です。優先順位1の8項目を、市販4製品の公表内容と突き合わせて3つに仕分けます。「セットに入っている」「入ってはいるが数が足りない」「そもそも構造的に入らない」——この区別ができると、買い足すものが自動的に決まります。
| 優先順位1の項目 | セットに入っている | 数が足りない | 構造的に入らない | 公表内容からの根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 療法食、薬 | — | — | ○ | 4製品とも同梱なし。IYOIYAは「お薬など」を別途準備と明記 |
| ペットフード、水(5日分以上) | — | — | ○ | 非同梱2製品+収納量「約2〜3日分」1製品 |
| キャリーバッグやケージ | △ | ○ | — | ナラネコDXに折りたたみケージ。他3製品はリュック/ショルダー=荷物用 |
| 予備の首輪、リード(伸びないもの) | △ | ○ | — | アイリスオーヤマは共通13点に首輪、犬専用2点にリードを含む。他3製品の公表内容に記載なし |
| ペットシーツ | △ | ○ | — | IYOIYAは8枚、アイリスオーヤマ犬用セットは犬専用2点に10枚。ナラネコDXは同梱の記載なし |
| 排泄物の処理用具 | ○ | ○ | — | IYOIYAマナー袋15枚/ナラネコDX臭わない袋20枚/アイリスオーヤマ共通13点に防臭袋×20 |
| トイレ用品(猫砂など) | △ | ○ | — | ポータブルトイレ・どこでもネコトイレ・アイリスオーヤマの折りたたみトイレは同梱、猫砂は非同梱 |
| 食器 | ○ | ○ | — | IYOIYA折りたたみ食器×2/ナラネコDXカップ2個/アイリスオーヤマ共通13点にディッシュ×2 |
表の右へ行くほど、買い物で解決しない項目になります。左から順に見ていきましょう。
キャリーは「荷物入れ」とは別に要る
いちばん誤解が生まれやすいのがここです。市販セットに付いているリュックやショルダーは、物を入れる袋であって、動物を入れるキャリーではありません。環境省が優先順位1に「キャリーバッグやケージ(猫や小動物には避難時に欠かせないアイテム)」と書いているのは、避難先で動物を落ち着いて留め置く器のことです。ナラネコDXが折りたたみケージを同梱しているのは、この点を製品側が織り込んでいるからでしょう。
猫壱のポータブルキャリー(型番DC-0012)は折り畳みが可能なタイプで、使わない期間はたたんで置いておけます(Amazonの商品ページ表示・2026年9月8日確認)。押し入れの奥にプラスチックキャリーを一つ抱えている家では、置き場所の問題で結局出しっぱなしにできず、いざというとき掘り出す時間がかかりがちです。玄関に置ける形かどうかは、避難のしやすさに直結します。優先順位1の「キャリーバッグやケージ」を、荷物用リュックと別に確保する枠として考えてください。
サイズの決め方や、キャリーとケージを両方持つべきかの線引きはペットのキャリーとケージの備え|同行避難で必要になる条件とサイズの決め方で条件から逆算しています。猫の場合は脱走対策が加わるので、猫の防災グッズは犬と何が違う?脱走とケージ生活から逆算する備えリストもあわせて確認しておくと、買い直しが減ります。
もう一段、分けて考えたいことがあります。環境省の表記は「キャリーバッグやケージ」で、2つの言葉が並んでいる。移動のための器と、避難先で過ごすための器は別物だからです。車で数十分運ぶだけなら移動用のキャリー1つで足りますが、避難所や親戚の家で何日か過ごすとなると、立ち上がって向きを変えられる広さがないと動物のほうが持ちません。4製品のうち、その居場所まで同梱しているのはナラネコDXの折りたたみケージだけでした。
Amazonベーシックのソフトクレート(Mサイズ)は、商品名に76cm×54cmという外寸が書かれた折りたたみ式のタイプです(商品名・サイズはAmazonの商品ページ表示・2026年9月8日確認)。布製なのでたたんで薄くなり、普段はクローゼットの隙間に立てて置けます。優先順位1の「キャリーバッグやケージ」のうち、移動用のキャリーではまかなえない「滞在の居場所」の枠として考えてください。どのサイズが自分の家の子に合うかは、体高と、伏せたときの体長から決まります。
ペットシーツは「日数×枚数」で足りるかが決まる
ペットシーツはIYOIYAのセットに入っています。枚数は8枚と公表されていますが、ナラネコDXのセットには同梱の記載自体がありません。仮に1日2枚使うとすると、8枚は4日でなくなる計算です。環境省が言う5日、できれば7日という土俵に乗せるには、別に用意しておく必要があります。
ワンモードの超吸収ペットシーツ 厚型ワイド(品番PSA-W)は240枚入り(Amazonの商品ページ表示・2026年9月8日確認)。優先順位1の「ペットシーツ」を、避難時だけでなく在宅避難の分までまとめて埋める位置づけです。普段から使っている家なら、防災用に別枠を作らず、いつものストックを厚めにするだけで済みます。
なお、ペットシーツを人間用の簡易トイレの代わりに使えるか、という話は別問題です。公的な推奨があるかどうかも含め、ペットシーツは災害用トイレの代わりになる?公的な推奨の有無と、代用の限界で整理しています。
においの管理は、同行避難できるかどうかに効く
避難所は共用の空間です。廊下の一角や、体育館の隅にケージを並べる形になることも多く、そこで排泄物のにおいをどう抑えるかは、周囲との折り合いに直結します。優先順位1の「排泄物の処理用具」は、量の問題であると同時に、性能の問題でもあるわけです。
市販セットに入っている袋は、IYOIYAでマナー袋15枚、ナラネコDXで臭わない袋20枚。1日3回の処理なら5〜7日ぶんに近い枚数ですが、多頭飼いだと一気に減ります。クリロン化成のBOS 臭わない袋 ストライプ Lは90枚入りで、防臭性能を前面に出した製品です(クリロン化成公式・2026年9月8日確認)。数と機能の両方を、ここで底上げしておきます。
食器は「頭数×2」で数える
最後が食器です。IYOIYAには折りたたみ食器が2つ、ナラネコDXにはカップが2個。1頭ならフード用と水用で足りますが、2頭になると取り合いになります。頭数×2(フードと水)が最低ラインだと考えると、多頭飼いの家は最初から足りません。
折りたたみタイプの給水ボウル・餌入れは、たたんでリュックの隙間に入るタイプを選べば、頭数ぶんを足しても荷物がほとんど増えません。優先順位1の「食器」を、頭数に合わせて埋める枠です。
療法食を食べている、持病の薬を毎日飲んでいる——この場合、優先順位1の先頭にある「療法食、薬」は買い物では埋まりません。何日分を持ち出してよいか、常温で保管できるか、代替がきくかは個体ごとに違います。備蓄する量や保管方法は、必ずかかりつけの獣医師に相談して決めてください。この記事を含め、インターネット上の情報で判断しないでください。
優先順位2の「情報」は、買い物では埋まらない
優先順位2とは、環境省が「情報」とだけ名付けている段です。物ではないので、どの製品を買っても入っていません。中身はこの3つでした。
- 飼い主の連絡先と、ペットに関した飼い主以外の緊急連絡先・預け先などの情報
- ペットの写真(印刷物とともに携帯電話などに画像を保存することも有効)
- ワクチン接種状況、既往症、投薬中の薬情報、検査結果、健康状態、かかりつけの動物病院などの情報
スマートフォンに入っているから大丈夫、と考えたくなるところです。ただ、停電が長引けば充電の順番待ちになりますし、預け先の人に見せる場面では画面を渡すより紙のほうが早い。紙に書いて、セットのポケットに1枚入れておく。かかる時間は10分ほどで、費用はゼロです。ワクチンの接種証明や診察券のコピーを一緒に入れておけば、預け先や動物病院での説明が短くなります。
写真は「飼い主と一緒に写ったもの」が向いています。大阪府のリストも「飼い主と一緒に写った写真」と書いており、はぐれたときに所有関係を示しやすいからです。毛色や模様がはっきり写った角度のものを、正面と横で2枚。
ここで書き分けておきたいのが、マイクロチップの扱いです。マイクロチップ・迷子札・鑑札は、環境省ガイドラインの優先順位1〜3には入っていません。備蓄品リストではなく、p.18の「3 ペットが行方不明にならないための対策」という別の章に置かれています。持ち出す物ではなく、平時にやっておく手続きという位置づけです。日本獣医師会は、マイクロチップについて「地震などの災害…飼い主のもとに戻る確率が高まります」と説明しています(2026年9月8日確認)。
制度の側も動いています。2022年6月1日に施行された改正動物愛護管理法で、ブリーダーやペットショップが販売する犬猫にはマイクロチップの装着と環境大臣への登録が義務づけられました。すでに飼っている犬猫については装着そのものは義務ではありませんが、登録情報が古いままだと連絡が届きません。引っ越しや携帯番号の変更があった家は、備蓄の見直しと同じタイミングで登録内容も確認しておくと、二度手間になりません。
自治体によって、求められる日数が違う
備蓄日数は全国一律ではなく、同じ「ペットの備え」を扱っていても、示している数字と書き方は自治体ごとに違います。
東京都保健医療局は「最低でも5日分、できれば7日分を目安に」と、環境省と同じ2段構えです。項目はフード及び水/動物の常備薬/食器/トイレ用品/首輪及びリード/健康の記録/写真/ケージ、キャリーバッグ/その他という単純な列挙で、環境省のような優先順位はつけていません。表現も少し違い、環境省が「療法食、薬」と書くところを、東京都は「動物の常備薬」としています。
一方、大阪府の動物愛護管理センターは「ペットの餌や水などの飲食物(最低5日分)」で、「7日分以上」の言及がありません。項目は餌や水/ペット用トイレ/与えている薬/爪きりなどのケア用品/飼い主と一緒に写った写真/ケージ/キャリーバックの7つ。このうち「爪きりなどのケア用品」は、環境省にも東京都にもない大阪府独自の項目です。避難生活が長くなると爪が伸びて他の動物や人を傷つけかねない、という現場感覚が出ています。
どれが正しいという話ではありません。住んでいる自治体の公表が、自分にとっての実務上の基準になります。避難所でペットを受け入れるかどうか、どの部屋まで入れるかも自治体と施設ごとに違うので、日数と一緒に確認しておくと動きが決まります。「◯◯市 ペット 同行避難」で検索して、市区町村のページを1度開いておく。それだけで、当日の判断が一段楽になります。
備蓄そのものの考え方は、人の分もペットの分も土台が同じです。人数と日数から必要量を出す手順は家庭の備蓄品リスト完全版|人数×日数でわかる必要量早見表にまとめてあります。人の水を7日分そろえるついでに、ペットの分も同じ棚に並べておくと、点検が1回で済みます。
公表内容そのものに、確かめきれない点がある
ここまで公表値を並べてきましたが、その公表値の側にも、こちらで確認しきれなかった箇所がありました。都合が悪いので黙る、という書き方はしたくないので、そのまま書きます(すべて2026年9月8日確認時点)。
① 防災ダイレクトの製品は、内容物の内訳が読み取れなかった
外形310×250×150mm、総重量約2.8kg、容量約11.6L、防炎ターポリン製で日本製——といった仕様はテキストで明記されています。しかし何が何個入っているかの内訳は商品ページの画像でしか示されておらず、テキストでは確認できませんでした。そのため、この記事では点数や品目を書いていません。検討する場合は、商品ページの画像を拡大して自分の目で確認してください。
② IYOIYAのページ内で、袋の枚数表記が食い違っている
チャック付き袋の枚数が、同じ商品ページ内で「8枚入り」と「10枚」の2通りに書かれていました。どちらが正しいかは外からは判断できません。2枚の差が致命的になる場面は考えにくいものの、公表値をそのまま計算に使うときは、この程度のぶれがあり得ると知っておくほうが安全です。
③ 「防災士監修」の監修者名が確認できない
「防災士監修」とうたう製品はありますが、監修者の氏名や資格番号は商品ページに記載がなく、4製品とも確認できませんでした。例外はアイリスオーヤマで、公式ニュースリリースに「ペット災害危機管理士®3級監修」と資格名まで書かれています。監修の中身をどこまで開示するかは各社の判断ですが、比較する側からすると、名前まで書いてある製品のほうが検証しやすい、とは言えます。
もう一つ、時間の問題があります。環境省のガイドラインは2025年度に改訂の動きがあるようです。改訂の内容までは確認できていないため、ここでは触れません。ただ、この記事が引いている「5日分(できれば7日分以上)」という数字も、将来更新される可能性があるとは書いておきます。備えを見直すときは、環境省のPDFを1度開き直してください。
人間用の防災セットについても、同じやり方で市販品の中身を1点ずつ検証しています。ペットの分と家族の分を同時に考えるなら、防災セットのおすすめはどれ?市販セットの中身を1点ずつ検証する選び方も並べて読むと、どちらに何を寄せるかの配分が決めやすくなります。
市販セットを買ったほうがいいのは、こういう人
ここまでの検証は「買うな」という話ではありません。担当範囲がはっきりしている商品なので、合う人にははっきり合います。
向いている人
- ペット用の備えがゼロで、何から買えばいいか決められない。まとめて届く形が、着手のきっかけになる
- 人用の持ち出し袋はあるが、ペットの分が同じ袋に混ざっている。袋を分けたい
- 折りたたみ食器・ポータブルトイレ・水入れ袋のような「災害時にしか使わない小物」を、単品でそろえるのが面倒
- 持ち運びの形(リュック/ショルダー/2WAY)を、実物のスペックで選びたい
向いていない人
- 療法食や持病の薬がある。優先順位1の先頭が製品でカバーされないので、獣医師と相談した個別の備えが主役になる
- 多頭飼い。食器2つ・袋15〜20枚といった数量が、頭数で割ると一気に足りなくなる
- 大型犬。キャリーやケージのサイズが製品の想定から外れやすく、荷物の重量配分も変わる
- すでに単品でそろえている。重複を買うより、フードと水の日数を5〜7日分に伸ばすほうが効く
迷ったときの判断基準は「入れ物が足りないのか、中身が足りないのか」です。入れ物が無いならセットは早い。中身(フード・水・薬・猫砂)が足りないなら、セットを買っても不足はそのまま残ります。
そして、備えが揃っているかどうか以前に、動く手段の話があります。台風のように事前に分かる災害の場合、先に止まるのは鉄道です。ペットを連れて移動する予定があるなら、台風の計画運休はいつ決まる?国交省のモデルケースと鉄道各社が公表する発表のタイミングで、いつ交通が使えなくなるかの目安を押さえておくと、荷造りの締め切りが決まります。逆に線状降水帯のように急に決まる場面では、線状降水帯の予測はどこまで当たる?気象庁が公表した適中率と、情報が出たときの動き方のように「どの情報が出たら動くか」を先に決めておくほうが、キャリーを出すタイミングで迷いません。
ペットの防災をまとめて確認する
よくある質問
市販のペット防災セットだけで、備えは完成しますか?
完成しません。4製品とも、フードと水は同梱されていないか、収納量として「約2〜3日分入れられます」と説明されているだけです(2026年9月8日確認時点)。環境省が示す5日分(できれば7日分以上)に届かせるには、フード・水・猫砂・薬を自分で足す工程が必ず要ります。セットは土台、と考えると位置づけがはっきりします。
フードと水は、結局どのくらい入れればいいですか?
環境省と東京都は5日分(できれば7日分以上)、大阪府は最低5日分としています。実際の量は体重・頭数・1日の給餌量で変わるので、ペットフードの備蓄量の計算式・早見表とペットの水の必要量の早見表で自分の数字を出してください。まず「日数」を決め、次に「1日あたり」を掛ける。この順番だと迷いません。
猫用と犬用で、セットの中身は変わりますか?
変わります。アイリスオーヤマの15点セットは共通13点に加えて、犬用(PBSI-15)と猫用(PBSN-15)でそれぞれ専用2点が入る構成です。ナラネコの防災DXセットは猫専用で、折りたたみケージ、どこでもネコトイレ、落ち着くネットといった猫向けの品目が入っています。環境省のリストでも、猫は「使い慣れた猫砂、または使用済猫砂の一部」と個別に書かれており、犬とは要件が違うことが読み取れます。
療法食を食べている場合は、どう備えればいいですか?
療法食と薬は、環境省の優先順位1の先頭にありながら、どの市販セットにも入りません。個体ごとに種類も量も違うためです。何日分をどう保管するか、常温でどのくらい持つか、代替できるものがあるかは、かかりつけの獣医師に確認して決めてください。次回の通院のときに「災害時に何日分を持ち出せばよいか」を1つ聞いておくと、その日のうちに備えが具体化します。
買い足すものが決まったら、次は量とサイズです。水は災害時のペットの水は何リットル必要?犬・猫の体重から逆算する早見表で体重から出せますし、キャリーとケージのサイズはペットのキャリーとケージの備え|同行避難で必要になる条件とサイズの決め方で条件から逆算できます。
まとめ|今日やることは1つ
市販のペット防災セットは、入れ物と共通の小物までを担当する商品です。フードと水が入っていないのは手抜きではなく、各家庭で中身が違うから同梱できないという設計上の理由があります。だから、買う・買わないよりも「買ったあと、何を足すか」が勝負どころになります。
公表値だけで確認できた事実は、次の3つでした。①環境省・東京都は5日分(できれば7日分以上)、大阪府は最低5日分。②市販4製品の同梱は0日分か、収納量として約2〜3日分。③その差は最大4〜5日分で、優先順位1の「療法食、薬」と優先順位2の「情報」は、どの製品にも構造的に入らない(2026年9月8日確認時点)。
- 水を先に確保する。500mLの長期保存水を、人の分と同じ棚にペットの分として1箱。量の計算は体重別の早見表に任せて、まず箱を置くところから始めます
- キャリーを、荷物用リュックと別に用意する。折りたたみタイプなら玄関に置けます。押し入れの奥から掘り出す時間を、最初から無くしておく
- 紙を1枚入れる。飼い主の連絡先、預け先、ワクチン接種状況、投薬中の薬、かかりつけの動物病院。優先順位2は、10分と0円で埋まります
3つのうち、今日できるのは3番目です。買い物が要らないぶん、いちばん早く終わります。
参考・出典
- 環境省「災害、あなたとペットは大丈夫? 人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」p.18〜19(PDF)/2026年9月8日確認
- 東京都保健医療局「ペットとの同行避難」(ページ)/2026年9月8日確認
- 大阪府 動物愛護管理センター「ペットといっしょに災害への備え」(ページ)/2026年9月8日確認
- 日本獣医師会「マイクロチップ」(ページ)/2026年9月8日確認
- アイリスオーヤマ ニュースリリース「ペット用防災セット」2025年8月7日(ページ)/2026年9月8日確認
- アイリスオーヤマ 防災用品「長期保存水」(ページ)/2026年9月8日確認
- 株式会社防災ダイレクト「ペット防災セット(防炎防水・防災士監修・犬猫兼用2way)」(商品ページ)/2026年9月8日確認
- IYOIYA「ペット防災グッズ 35点セット」Amazon商品ページ(ページ)/2026年9月8日確認
- ナラネコ「ネコのための防災DXセット」Amazon商品ページ(ページ)/2026年9月8日確認
- クリロン化成「BOS 臭わない袋 ストライプ」(ページ)/2026年9月8日確認
