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夜、家じゅうの明かりが一斉に落ちる。引き出しから懐中電灯を引っ張り出して天井に向けてみるものの、照らせるのは丸いスポットだけ。手元は暗いまま、家族の顔も見えない——停電した部屋でいちばん困るのは、光が「一方向にしか飛ばない」ことです。
この不便を、家にあるもの2つで和らげる方法があります。水を入れたペットボトルを、点灯した懐中電灯の上に乗せるだけ。警視庁の警備部災害対策課が公式サイトで紹介している方法で、光が乱反射して周りを照らせる、と案内されています(2026年8月16日時点)。
ただし先に正直なところを書いておきます。これは応急処置であって、常設のランタンの代わりにはなりません。どのくらい明るくなるかを示した公的な実測値も、2026年8月16日時点では見当たらないのが実情です。作り方と一緒に、その限界まで書きます。
この記事でわかること
- 懐中電灯と水入りペットボトルで簡易ランタンを作る手順(警視庁が紹介している方法)
- 光が広がる理由と、レジ袋を使う派生の方法の出典
- うまく光が回らないときに疑う3か所と、置き場所別のチェックリスト
- 常設ランタンの公表ルーメン値と並べたときの、この方法の限界
ペットボトルランタンは、懐中電灯・水入りペットボトル・倒れない台の3つで作れる
ペットボトルランタンとは、点灯させた懐中電灯の上に水を入れた透明なペットボトルを乗せ、光を容器全体に広げて周囲を照らす簡易的な明かりのことです。専用の道具は要りません。
用意するものは次の3つ。
- 懐中電灯(発光面を上に向けて自立するもの、または自立させられる台があるもの)
- 水を入れたペットボトル(透明なもの。500mlなら、水はコップ約200ml換算で2杯半ほど入ります)
- 倒れないように支える台(丼、コップ、空き箱など。懐中電灯を垂直に立てられるもの)
- 懐中電灯を発光面が真上を向くように立てる。自立しない形なら、コップや空き箱に挿し込んで垂直に固定する。
- ペットボトルに水を入れ、ふたを閉める。ラベルは剥がしておく。
- 懐中電灯を点灯させ、その上にペットボトルの底を静かに乗せる。ボトルが傾いたら、台の位置を調整して重心を真ん中に戻す。
警視庁ホームページの案内では「懐中電灯の上に水を入れたペットボトルを乗せるだけで、光が乱反射して周りを照らすことができる」と説明されています(同ページ更新日 2023年8月14日、2026年8月16日時点の記載)。手順としては、これがすべてです。
光が広がるのは、水とボトルの中で反射と散乱が起きるからである
光が広がる仕組みとは、懐中電灯から真上に出た光がペットボトルと水にあたり、反射・散乱して四方に散っていく現象のことです。日本気象協会が運営するtenki.jpの記事では、ペットボトルにあたった光が「反射したり散乱したりして周りに拡散するため」明るく見える、と説明されています(2026年8月16日時点)。
つまりどういうことか。懐中電灯そのものは光を前に飛ばす道具なので、置いただけでは天井に丸い光の輪ができて終わります。そこに水の入った容器を重ねると、光の出口が「点」から「面」に変わる。照らせる範囲の性質が入れ替わる、と考えると分かりやすいはずです。
同じtenki.jpの記事では、レジ袋を懐中電灯にかぶせる方法も紹介されています。ペットボトルが手元にないときの代替として覚えておくと選択肢が増えます。なお警察や消防といった政府機関がこのレジ袋の方法を紹介している例は、2026年8月16日時点では確認できていません。
うまく光が回らないときは、ラベル・水の濁り・置き場所の3か所を疑う
失敗の原因とは、光が通る道のどこかが遮られているか、ボトルが安定していないかの、どちらかに集約される問題です。手を加える場所は多くありません。
| 症状 | 考えられる原因 | その場でできる対処 | 確認の目印 |
|---|---|---|---|
| ボトルの一部だけが光る | ラベルやフィルムが光をさえぎっている | ラベルを剥がし、シールの跡も拭き取る | ボトルを回すと明るさが変わる |
| 全体がぼんやりしか光らない | 水が濁っている、色付き飲料が入っている | 透明な水に入れ替える | ボトル越しに指が透けて見えるか |
| 光が上にしか抜けない | 懐中電灯の発光面とボトルの底がずれている | ボトルの底の中心を発光面の真上に置き直す | 床に落ちる影が片側に寄る |
| ぐらついて安定しない | 台が軽い、置き場所が傾いている | 広くて重い台に替え、壁際に寄せる | 指で軽く触れると揺れ続ける |
やってはいけないこと
- 頭の上や、人が通る動線の真上に置く(落下したときに水がかかります)
- 不安定な棚の縁や、ふちのない台の端に置く
- 電化製品・延長コード・書類の近くに置く(倒れて水がかかると困る場所は避ける)
- ふたを開けたまま乗せる
置き場所については、部屋ごとに正解が変わります。床から少し高い位置に置くほど、光が届く範囲は広がります。次のチェックリストで、置く前に確認してみてください。
- 台の面積は、ペットボトルの底より明らかに広いか
- 倒れても水がかかって困るものが、半径50cm以内に無いか
- 就寝中に人や布団が触れる高さでないか
- 暗い中で手を伸ばしたとき、真っ先に触れてしまう位置でないか
- 部屋の中央寄りか、壁際でも光を反射させられる明るい壁の前か
1部屋に1つで足りるのか、それとも家全体でいくつ要るのか。ここが気になった方はランタンは何個必要か(間取り別の早見表)で、部屋数と生活動線から必要数を出しています。
これは応急処置である。常設ランタンの公表値と並べると役割の差がはっきりする
応急処置とは、道具が手元に届くまでのあいだ、いま持っているもので不便を減らす一時的な手当てのことです。ペットボトルランタンは、まさにこの位置づけにあたります。
大事なので繰り返します。ペットボトルランタンが何ルーメン相当になるのか、公的機関にもメーカーにも実測値は存在しません(2026年8月16日時点)。書けるのは「懐中電灯を直接置くより光が広がる」という定性的なところまでです。数字で語れないものを、数字で語らないこと。それが、この方法を扱ううえでの前提になります。
一方で、常設のランタンには公表されたスペックがあります。比較のためではなく、「本物のランタンはこう名乗っている」という事実として並べます。
| 製品 | 公表明るさ | 点灯時間(公表値) | 電池 |
|---|---|---|---|
| パナソニック BF-BL45M-W | 単色 最大約400lm/最小約1lm、全灯色 最大約800lm/最小約2lm | エボルタNEO使用時:単色 最大約16時間〜最小約1,500時間、全灯色 最大約8時間〜最小約1,000時間 | 単1形×3本 |
| GENTOS EX-136S | High 370ルーメン | High 9時間/Mid 18時間/Eco 142時間/キャンドルモード60時間 | 単3形アルカリ×6本 |
| ペットボトルランタン | 公表値なし(実測値が存在しない) | 使う懐中電灯の電池しだい | 懐中電灯の電池 |
数字が並ぶと身構えますが、要するに常設ランタンは「どのくらい明るく、何時間もつか」を自分で名乗れる道具だということ。ペットボトルランタンは、そこを名乗れません。だからこそ、明かりの本命は別に1台持っておく——という順番になります。電源方式と置き場所から本命の1台を選ぶ考え方は、防災ランタンを電源方式と置き場所で選ぶにまとめています。
リビングに1台置くなら:パナソニック BF-BL45M-W
パナソニックの多機能強力ランタン BF-BL45M-W は、白色と電球色を組み合わせた全灯色で最大約800lm、絞れば最小約2lmまで落とせる仕様です(公表値、2026年8月16日時点)。強い光と、寝るときの豆あかりのような弱い光を1台で切り替えられる点が、家族が同じ部屋で夜を過ごす状況に向きます。単1形電池3本で、エボルタNEO使用時なら単色の最小モードで約1,500時間という公表点灯時間も示されています。
持ち運びと水まわりを想定するなら:GENTOS EX-136S
GENTOS EX-136S はHighモード370ルーメンのLEDランタンで、耐塵・1m防水(IP67準拠)と2m落下耐久を公表しています(2026年8月16日時点)。停電時に洗面所や浴室へ持ち込む場面、屋外に出る場面を想定するなら、この耐久まわりの表記が効いてきます。質量は電池込みで355g。500mlのペットボトルに水を7割ほど残した状態と同じくらいの重さ、と考えると片手で持ち歩ける範囲だとわかります。Ecoモードで142時間という点灯時間も公表されており、長い停電を電池交換なしでしのぐ側の使い方ができます。
両手をあけたいなら:GENTOS CP-195DB
ペットボトルランタンには、決定的にできないことがあります。持ち運べないし、両手をあけられない。暗い中で階段を降りる、ブレーカーを見る、荷物を運ぶ——こうした動く作業には、頭に着ける明かりが要ります。GENTOS CP-195DB は単3電池式・120ルーメンのLEDヘッドライトで、防滴仕様です(2026年8月16日時点の公表値)。据え置きの明かりとは役割が違うので、ランタンの代わりではなく、もう一方の担当だと考えてください。
なぜ頭に着ける明かりを別枠で持つのかは、ヘッドライトが防災に必要な理由で詳しく書いています。あわせて、単1形と単3形をそれぞれ何本ずつ置いておくかは乾電池の備蓄はサイズ別に何本必要かで計算しています。上の表のとおり、必要な電池サイズは製品ごとにばらけます。
この方法で足りない場面もある
ペットボトルランタンが向かないのは、次のような場面です。停電が始まった直後の行動そのものについては、停電したらまず何をするかに手順をまとめています。
- 移動しながら手元を照らしたいとき(据え置き専用のため)
- 屋外や、風で倒れる可能性がある場所
- 小さな子どもやペットが走り回る部屋の床面
- 停電が長引き、懐中電灯の電池を節約したいとき(点けっぱなしになるため)
- スマートフォンのライトで代用したいとき(充電を情報収集に残しておきたい場面と競合します)
最後の項目は見落とされがちです。明かりに使ったぶん、スマートフォンのバッテリーは確実に減ります。電池を守る設定については停電時の情報収集と電池を守る設定を参考にしてください。
よくある質問
Q. ペットボトルは何mlのものがよいですか?
A. 警視庁の案内にサイズの指定はありません(2026年8月16日時点)。選ぶ基準は明るさではなく安定性です。底が広くて背が低いほど倒れにくいため、手元にあるなかで重心が低いものを選ぶのが現実的でしょう。
Q. 水の代わりにお茶やスポーツドリンクでもよいですか?
A. 警視庁が紹介しているのは「水を入れたペットボトル」です。色や濁りがあるものは光を通しにくくなるため、透明な水を使うのが基本になります。飲用の備蓄水を使うのがもったいない場合は、水道水を入れたボトルで構いません。
Q. どのくらい明るくなりますか?
A. 数値では答えられません。ペットボトルランタンの明るさを測った公的な実測値は、2026年8月16日時点で確認できていないためです。公的な説明としてあるのは「光が乱反射して周りを照らすことができる」という警視庁の表現までで、当サイトもその範囲を超えて書かないことにしています。
Q. 火を使わないので、寝るときにつけっぱなしでも平気ですか?
A. この方法は火を使いません。ただし懐中電灯の電池は消耗し続けますし、寝返りや寝ぼけて手を伸ばしたときに倒す可能性は残ります。就寝時は消すか、手が届かず、倒れても水がかかって困るものが周りに無い場所へ移してください。
まとめ:今日やることは、懐中電灯を「上向きに立てられるか」の確認1つ
この方法が成立するかどうかは、手持ちの懐中電灯を発光面が真上を向く状態で自立させられるかにかかっています。細長いペン型で自立しないなら、コップや空き箱をひとつ、懐中電灯と同じ場所にしまっておく。それだけで、停電した夜の選択肢がひとつ増えます。
- 懐中電灯を取り出し、発光面を上にして立ててみる。倒れるなら、支えになる台を同じ引き出しに入れておく。
- 透明なペットボトルを1本、飲料の備蓄とは別に空のままキープしておく(水は停電時に入れれば足ります)。
- 応急処置と本命を分けて考え、常設のランタンを1台決める。防災ランタンを電源方式と置き場所で選ぶで、置き場所から絞り込む。
ペットボトルランタンは、道具が届くまでの橋渡しです。橋を架けられること自体に価値がありますが、橋の向こう側——常設の明かり——を用意する作業を置き換えるものではありません。
参考・出典
- 警視庁ホームページ「ペットボトルで簡単ランタン」(警備部災害対策課、ページ更新日 2023年8月14日)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/saigai/yakudachi/house/lifeline/836797698321887232.html(2026年8月16日時点) - tenki.jp(日本気象協会)「tenki.jpラボ」
https://tenki.jp/suppl/tenkijp_labo/2024/02/16/32388.html(2026年8月16日時点) - パナソニック公式 BF-BL45M 仕様
https://panasonic.jp/flashlight/products/BF-BL45M/spec.html(2026年8月16日時点) - GENTOS公式 EX-136S 製品ページ
https://www.gentos.jp/products/series/explorer/ex-136s/(2026年8月16日時点)
