体育館に避難した夜、床に敷かれているのは、たいてい床そのものです。毛布が1枚配られることはあっても、その下に何を敷くかは自分の荷物次第になります。
国の考え方ははっきりしています。内閣府の「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」は、1人あたり最低3.5㎡(畳にしておよそ2枚ぶん)の居住スペースを目安に掲げ、床に長期に横たわる状態を避けてベッドを設置することが望ましいと記しました。いっぽうで、令和6年7月4日付の内閣府の事務連絡は、簡易ベッドが避難所にいる全員分そろわない場合の優先順位まで定めています。つまり国は、全員分が行き渡らない事態をあらかじめ想定しているのです。
だとすれば、備えの設計はひとつしかありません。行き渡ればありがたい、行き渡らなくても今夜は眠れる。その二段構えを、自分の持ち物のほうで作っておくことになります。この記事は、その持ち物を「床からの断熱」「体の下の厚み」「保温」「明かり」の4つの層に分けて組み立てる手順をまとめたものです。
この記事でわかること
- 簡易ベッドや段ボールベッドが自分に配られるかを、国の通知の条文から判定する方法
- 床で寝ることの何が問題なのか(冷え・埃・高さの3点)と、国の指針が実際に書いている文言
- 持ち込む寝床を「断熱・厚み・保温・明かり」の4層で設計するチェックリストと早見表
- 段ボールベッド・エアーベッド・銀マット・折りたたみマットなど、寝床の類型ごとの得手不得手
寝る準備は、備蓄全体の一部でもあります。水や食料まで含めた必要量から先に決めたい場合は、家庭の備蓄品リスト完全版(人数×日数でわかる必要量早見表)を先に見てから戻ってくると、荷物の総量を決めやすくなります。
避難所の寝床は、行政の備蓄と自分の荷物の二階建てで決まる
避難所の寝床とは、行政があらかじめ備蓄する簡易ベッドやパーティションと、避難者自身が持ち込む寝具との、二つの層でできあがる生活環境のことです。片方だけを前提にすると、どちらの側にも穴が空きます。
まず、公的な側の基準を条文で見ておきます。内閣府(防災担当)の取組指針は、居住スペースについてこう書いています。
スフィア基準に沿って、1人当たり最低3.5㎡の居住スペースとなるようにすること
——内閣府(防災担当)「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」第2-10-(6)
同じ指針の別の項は、寝床の形についても踏み込んでいます。パーティションや段ボールベッド、エアーベッド等の簡易ベッド、屋内用インスタントハウス等を各避難所において備蓄し設置するなど、居住環境を確保することが重要である——という書き方です。段ボールベッドについては業界団体の推奨規格に留意することまで添えられています。
3.5㎡は「法律で決まった広さ」ではありません。これはスフィアハンドブックという国際人道支援の最低基準に示された指標で、内閣府がそれに沿うよう求めている参考基準です。日本の避難所で義務化された数値ではないため、「3.5㎡が確保されていないのは違法」とは言えません。あくまで、自分が何㎡ぶんの寝床道具を持つかを逆算するための物差しとして使ってください。
物差しとして使うと、こうなります。1畳をおよそ1.65㎡として換算した、世帯人数別の目安です。
| 世帯人数 | 3.5㎡×人数 | 畳に換算すると |
|---|---|---|
| 1人 | 3.5㎡ | 約2.1畳 |
| 2人 | 7.0㎡ | 約4.2畳 |
| 3人 | 10.5㎡ | 約6.4畳 |
| 4人 | 14.0㎡ | 約8.5畳 |
| 5人 | 17.5㎡ | 約10.6畳 |
4人家族なら8畳間ひとつぶん。荷物を置き、着替え、寝返りを打つ空間としては、決して広くありません。この面積感が、あとで出てくる「持ち込む寝床のサイズ」を決める基準になります。
「全員分は確保できない場合」と国の通知が書いている
ここが、この記事でいちばん伝えたい一次情報です。令和6年7月4日、内閣府政策統括官(防災担当)付は「避難所開設当初からパーティション・段ボールベッド等の簡易ベッドの迅速な設置について」という事務連絡を出しました。そこには、開設当初から簡易ベッドを設置するよう努めること、そして避難所にいる全員分の数量を確保できない場合は、公平性だけを重視するのではなく、高齢者、障害者等の困っている人から迅速かつ臨機応変に設置すること、という趣旨が明記されています。
読み替えると、次のようになります。国は「全員分がそろわない避難所」を想定した上で、誰から順に設置するかを自治体に指示している。優先されるのは高齢者や障害のある人。したがって、健康な成人が開設当初から簡易ベッドを受け取れるとは限らない、ということです。
ここは書き方をいちばん迷った箇所です。「避難所には必ず段ボールベッドがある」と書けば安心してもらえますが、根拠がありません。逆に「絶対にもらえない」と書くのも事実に反します。配備率の統計を探しましたが、公的機関の公表資料には見当たりませんでした。だから、確認できた国の通知の文面だけを置いて、判断は読む人に返す形にしています。
段ボールベッドそのものの供給は、東日本大震災を契機に考案されたのち、段ボール工業組合と都道府県・自治体との災害協定という形で全国的に整備されてきました。制度としては存在しています。ただし「協定があること」と「今夜あなたの区画に1台届くこと」は別の話です。

就寝環境を避難所の必需品として位置づける考え方に「TKB48」があります。トイレ(T)・キッチン(K)・ベッド(B)を48時間以内に整えて二次的な健康被害をなくそうという掲げ方で、提唱しているのは一般社団法人 避難所・避難生活学会です。ベッドが「あったらいいもの」ではなく「48時間以内の必需品」として数えられている、という位置づけを知っておくと、自分の荷物の優先順位も決めやすくなります。
床で寝ると、冷えと埃と高さの三つが同時にのしかかる
床寝とは、体と硬く冷たい床面が、毛布や敷物をわずかに挟んだだけで接し続ける状態のことです。問題は寝心地だけではありません。国の指針は、その理由をはっきり書いています。
床に長期に横たわっていると、エコノミークラス症候群を引き起こすだけでなく、埃等を吸い込むことによる健康被害も心配されるため、ベッドの設置が望ましい
——内閣府(防災担当)「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」第2-10-(1)
この一文には、三つの論点が畳まれています。順に開いていきましょう。
- 冷え:体育館の床は、暖房が入っていても足元から熱を奪います。体の熱は、接している面から逃げていきます。毛布を体の上に何枚かけても、床との間に断熱がなければ下から抜けていくのです
- 埃:人が歩けば埃は舞い上がり、やがて落ちてきます。落ちてくる高さのいちばん下が床面。指針が「埃等を吸い込むことによる健康被害」と書いているのは、この高さの問題です
- 高さ:床から30cmでも体が離れると、埃も冷えも遠のきます。加えて、寝起きの立ち座りが楽になる。高齢の家族がいる世帯では、この立ち座りが体力の消耗に直結します
床で長時間同じ姿勢が続くことについて、厚生労働省は「エコノミークラス症候群の予防のために」というページで、ときどき軽い体操やストレッチ運動を行う、十分にこまめに水分を取る、ゆったりとした服装をしてベルトをきつく締めない、かかとの上げ下ろし運動をする、といった行動を呼びかけています。これは公的機関が呼びかけている行動の紹介であって、寝具に何らかの医学的な効果があるという話ではありません。寝具の役割は、あくまで床との間に距離と断熱をつくることです。
数字が示しているのは、初期の生活環境の重みです
避難生活そのものによる死亡は、災害関連死として集計されています。東日本大震災では、発災から1週間以内に472人、1か月以内の累計で1,219人、3か月以内で1,905人、1年以内の累計では2,812人。最終的な集計は1都9県で3,808人で、1年以内の死亡がその約73.8%を占めました(令和6年12月31日現在、令和7年2月14日公表)。
熊本地震では、内訳の比率がさらに際立ちます。警察の検視で確認された死者50人に対し、市町村が認定した災害関連死は215人。これに6月の豪雨に関連する5人を加えると、関連死は220人にのぼりました。揺れそのものよりも、そのあとの生活のほうで多くの命が失われた計算になります。
これらの数字は、怖がらせるために置いたものではありません。読み取るべきは一点だけ。被害が集中しているのは、避難生活の初期です。裏を返せば、最初の数日をどう過ごすかに手を打つ余地がある、ということでもあります。手を打つ対象が、これから説明する4つの層です。
用語について。同じ性質の死亡でも、東日本大震災については復興庁の統計名が「震災関連死」、熊本地震など一般には内閣府の用語で「災害関連死」と呼ばれます。混乱を避けるため、この記事では読み手向けの呼称を「災害関連死」に統一し、出典名だけ元の表記のまま記載しています。
持ち込む寝床は、断熱・厚み・保温・明かりの4層で設計する
4層設計とは、寝床に必要な働きを4つの役割に分け、それぞれに担当する道具を1つずつ割り当てる考え方です。「マットを買う」「毛布を買う」と商品単位で考えると抜けが出ますが、役割単位で並べると、足りない層がひと目でわかります。
避難所の寝床 = ①床からの断熱 + ②体の下の厚み + ③体の上の保温 + ④手元の明かり
4つのうち1つでも欠けると、残り3つの性能が落ちます。
順番にも意味があります。①と②は床との関係、③は空気との関係、④は夜そのものとの関係。上から順に買い足すのではなく、下の層から埋めていくのが基本です。体の上に毛布を3枚重ねても、床が冷たいままなら眠りは浅くなります。

いま何層まで持っているかを判定する
持ち出し袋を開けて、次の4つに答えてみてください。1つでも「いいえ」があれば、そこが最初に埋める層です。
- 床に直接敷ける、水を通さない断熱材(アルミ蒸着シート等)が1人1枚ありますか
- 体の下に敷く、指で押してへこむ厚みのあるもの(マット等)がありますか
- 体の上にかける保温具が、その季節の最低気温に対応していますか
- 両手が空く明かりが、寝床の枕元に1つありますか
| 層 | 役割 | 担当する持ち物の例 | 欠けるとどうなるか | 現地での代用 |
|---|---|---|---|---|
| ①床からの断熱 | 体温が床へ逃げるのを止める | アルミ蒸着シート、銀マット、レジャーシート | 上に何枚かけても下から冷える | 段ボールを平らに敷く |
| ②体の下の厚み | 硬さをやわらげ、床から体を離す | 折りたたみマット、エアーマット、簡易ベッド | 寝返りのたびに目が覚める。埃の高さで寝ることになる | 段ボールを重ねる、衣類を敷く |
| ③体の上の保温 | 体のまわりの空気をためる | 寝袋、防災毛布、使い捨てカイロ | 明け方の冷え込みで起きてしまう | 配布毛布、上着の重ね着 |
| ④手元の明かり | 夜間のトイレ移動と手元の作業 | LEDランタン、ヘッドライト | 暗がりでの移動が危なくなる。スマホの電池を消費する | 共用照明の近くに区画を取る |
③の保温については、毛布・寝袋・アルミブランケットのどれをどう組み合わせるかで迷う人が多い部分です。素材ごとの違いと季節別の組み合わせは、防災用の毛布・寝袋・アルミブランケットの違いと場面別の組み合わせ方にまとめてあります。製品単位の比較はそちらへ。
④の明かりは、個数の設計が要ります。寝床用と、トイレへの移動用と、家族が別行動をするときの分。世帯人数と間取りから必要数を出す早見表は防災用ランタンは何個必要?世帯人数×間取り別の早見表に載せています。
なお、寝床以外の持ち物——自治体が用意するものと自分で持つものの線引き全体は、避難所に持っていくものリスト(自治体が用意する物と、自分で持つ物の線引き)で整理しています。夏に避難する可能性が高い地域なら、寝床の設計は夏の避難所の暑さ対策(冷房があるとは限らない前提で自分が持っていくもの)と合わせて考えてください。断熱シートは、夏は床の熱を遮る側にも働きます。
寝床の類型を、仕組みで比べる
ここでいう類型とは、個別の商品名ではなく「どういう仕組みで床から体を離すか」で分けたグループのことです。同じ「マット」でも、空気で浮かせるものと発泡素材で支えるものでは、持ち運びも弱点もまるで違います。
| 類型 | 誰が用意するか | 床からの距離 | 断熱 | 持ち運び | 弱点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 段ボールベッド | 行政の備蓄・災害協定による供給 | いちばん高い | 高い(空気層が多い) | 持参は現実的でない | 開設当初に全員分が届くとは限らない。水に弱い |
| エアーベッド・エアーマット | 自分 | 高い | 中(空気層はあるが対流が起きる) | 畳めば小さい。ポンプが要るものもある | 穴が開くと機能を失う。ふくらませる時間と場所が要る |
| 折りたたみマット(発泡素材) | 自分 | 低い | 高い | かさばるが軽い | 収納時に体積を食う。厚みは商品差が大きい |
| 銀マット・アルミ蒸着シート | 自分 | ほぼ無い | 高い(反射で熱を戻す) | いちばん軽く小さい | これ1枚では床の硬さは解決しない |
| 寝袋(封筒型・マミー型) | 自分 | 無い(下敷きにはならない) | 中(下面はつぶれて効きにくい) | 収納袋つきで運びやすい | 下に敷くものが別途必要。夏は暑い |
| 屋内用テント・パーティション | 行政の備蓄が中心 | 無い | 低い(風よけ・視線よけが主目的) | 持参は場所を取る | 寝床の硬さ・冷えは解決しない |
表を縦に見ると、傾向が見えます。床から高く離せるものほど持ち運べず、持ち運べるものほど床の硬さに弱い。だから4層設計では、①の断熱シート(軽い)と②の厚み(かさばる)を別々に持つ、という組み立てになるわけです。1つの道具で全部を担わせようとすると、必ずどこかが破綻します。
段ボールベッドを自宅備蓄として買うかどうか。行政向けの規格品は保管場所を選び、家庭の玄関収納に置ける大きさではないことが多いものです。当サイトの整理では、家庭が自前で用意するなら、まず①と②を軽い装備でそろえるほうが費用と場所の効率が良いと考えています。段ボールベッドは「届いたら使えるとありがたいもの」の位置づけで組んでおくのが現実的です。
では、今日は何から買うのか
最初の一手とは、4層のうち欠けている層を1つだけ埋める買い物のことです。全部を一度にそろえる必要はありません。以下は、③保温と④明かりの層を埋めるときに検討しやすい選択肢を、公表スペックとともに挙げたものです。数値はいずれもメーカーまたは販売ページの公表値で、当サイトが計測したものではありません。
③保温の層:かさばらない備蓄用毛布から
家族分の毛布を押し入れに寝かせておける家は多くありません。そこで候補になるのが、圧縮梱包された備蓄用の不織布毛布です。アクシスの災害備蓄用不織布毛布「もしもうふ」AX-MOSIMO(10枚入り)は、販売ページに掲載された公表値(2026年8月15日確認)で、サイズ140×200cm、重量は1枚あたり約500g。素材はPETスパンレース不織布とPPスパンボンド不織布で、アルミ真空圧縮梱包の状態で届きます。
1枚500gは、500mlのペットボトル1本ぶんとほぼ同じ重さです。10枚入りという単位は個人には多く見えますが、家族分+近所や職場に置く分と考えると使い道があります。真空圧縮のまま保管でき、必要な枚数だけ開けられる点が、家庭の収納事情に合います。
秋から春にかけて避難する可能性を考えるなら、体をすっぽり包める寝袋のほうが、毛布より空気を逃がしません。コールマンの寝袋「パフォーマーIII/C5」は、正規販売店の記載が複数一致した公表値(2026年8月15日確認)で、快適温度5℃以上、使用時サイズ約80×190cm、収納時サイズ約φ24×41cm、重量約1.4kg。封筒型で、洗濯機で丸洗いでき、同型モデル同士を連結できる仕様です。
避難所の寝床として見たときに効いてくるのは、この「洗える」と「連結できる」の2点です。避難所生活では洗濯の機会が限られ、寝具は汚れます。洗える素材なら、帰宅後に持ち帰って使い続けられます。連結できる仕様は、小さな子どもと並んで寝るときに区画をひとまとめにできる、という意味を持ちます。快適温度5℃以上という表記は、それより冷える環境ではマットやカイロなど他の層で補う必要がある、という読み方をしてください。
その「補う」側の代表が使い捨てカイロです。アイリスオーヤマの「ぽかぽか家族 貼るレギュラー」PKN-30HRは、販売ページに掲載された公表値(2026年8月15日確認)で、最高温度63℃、平均温度53℃、持続時間12時間、サイズ13×9.5cm。持続12時間は、就寝前に貼れば朝まで届く長さです。
体を温める道具として書いていますが、健康上の効果をうたうものではありません。低温やけどを避けるため、肌に直接貼らない・就寝時の使用方法は必ずパッケージの表示に従う、という前提で数えてください。30個入りという単位は、1人1日1〜2枚として、家族で数日ぶんという計算になります。
④明かりの層:点灯時間を日数に換算して選ぶ
ランタンはルーメン(明るさ)で選ばれがちですが、避難所で効いてくるのは点灯時間のほうです。GENTOSのLEDランタン「エクスプローラー EX-136S」は、メーカー公式サイトで確認した公表値(2026年8月15日確認)で、明るさ370ルーメン(Highモード)、点灯時間はHigh 9時間・Mid 18時間・Eco 142時間・キャンドルモード60時間。耐塵・1m防水(IP67準拠)で、電源は単3形アルカリ電池×6本です。
この点灯時間を、避難生活の日数に置き換えたのが次の表です。就寝前後と夜間の移動で1日6時間使う想定での、当サイトの試算になります。
| モード | 公表の点灯時間 | 1日6時間使うと | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| High(370ルーメン) | 9時間 | 約1.5日 | 到着直後の設営、荷物の確認 |
| Mid | 18時間 | 約3日 | 食事や着替えなど、手元を見る時間 |
| Eco | 142時間 | 約24日 | 就寝中の常夜灯、長期化したとき |
| キャンドルモード | 60時間 | 約10日 | 消灯後の枕元。まぶしさを抑えたいとき |
読み取れるのは、明るさを1段落とすだけで持ち日数が桁違いに伸びる、ということです。乾電池の予備を何本買うかも、この表から逆算できます。単3形×6本という電源仕様は、他の防災用品と規格をそろえやすい点でも扱いやすい部類に入ります。
ここに挙げた4点のうち、ランタン以外の3つは、メーカー公式サイトの該当ページに到達できませんでした。複数の正規販売店に載っている数値が完全に一致していたため採用していますが、公式で確認できたものと同じ確度では扱っていません。スペックが判断の決め手になる場合は、購入前に販売ページの最新表示を見てください。
4層をゼロから一度にそろえるなら、市販の防災セットを土台にして足りない層を足す方法もあります。中身の妥当性は防災セットのおすすめはどれ?市販セットの中身を1点ずつ検証する選び方で1点ずつ検証しました。セットに寝床の層がどこまで入っているかは、商品によってかなり差があります。
もうひとつ。寝床の周りは、衛生面の管理が難しい場所でもあります。共用の床に敷いたシートを翌日そのまま巻いて持ち歩くことになるためです。手指や口まわりの用品をどう組むかは避難所の感染症対策(自分で持っていく衛生用品と、公的ガイドラインが示す予防)にまとめています。
この備えが向かない人、当てはまらないケース
向かないケースとは、4層すべてを持ち歩くことが前提として成り立たない状況を指します。あてはまる場合は、無理に荷物を増やさないでください。
- 徒歩避難で、荷物の総重量に余裕がない人:坂道や階段を含む避難路なら、②の厚みは現地の段ボールで代用する前提にして、①の断熱シートと③の保温だけを持つ組み方があります
- 在宅避難が成立する住まいの人:建物の安全が確認でき、水と電気の見通しが立つなら、寝床は自宅のベッドがそのまま最善です。成立条件は在宅避難の準備リスト(成立する3つの条件)で確認できます
- 持病や治療の都合で、床に横になること自体が難しい人:優先設置の対象になり得ます。避難所に着いたら運営者に申し出るほうが確実で、自前の装備で解決しようとしないほうがよい場面です
- 車中泊を選ぶ人:内閣府の指針は、車中泊避難について健康面から注意が必要な点が多く、弾性ストッキング等の物資の配布が必要と記しています。寝床の設計とは別に、この注意を前提に判断してください
よくある質問
Q. 段ボールベッドは、避難所に行けばもらえますか
もらえる場合もあれば、そうでない場合もあります。国の事務連絡(令和6年7月4日)は、開設当初からの設置に努めるよう求めつつ、全員分の数量を確保できない場合は高齢者・障害者等から優先して設置するよう書いています。配備率の統計は公表資料に見当たりませんでした。健康な成人は「届かない可能性がある」前提で自分の寝床を用意しておくのが安全側の組み方です。
Q. 銀マットとエアーマット、先に買うならどちらですか
①床からの断熱がまだ空いているなら、銀マット系が先です。軽く、小さく、床の冷えという土台の部分に先に手を打てます。②の厚みは、現地の段ボールや衣類でもある程度は代用が利きますが、断熱の代用は難しいためです。両方を買える場合は、断熱シートの上にマットを重ねる順で敷いてください。
Q. 避難所には毛布が配られると聞きました。それでは足りませんか
配布があるかどうか、何枚かは避難所の備蓄状況によります。内閣府の指針は毛布を生活必需品のひとつとして挙げていますが、到着時期までは保証されていません。加えて、毛布は体の上にかけるもので、①床からの断熱を担う道具ではありません。配布があってもなくても、床との間に1枚挟む備えは別に必要になります。
Q. 夏に避難するときも、保温の層は要りますか
要ります。体育館に冷房が入っている場合、床に近い位置は想像より冷えます。夏用には、厚い毛布ではなく薄手の1枚と、床からの断熱シートの組み合わせが扱いやすい構成です。暑さ側の対策は別に必要になるため、季節ごとの持ち物は暑さ対策の記事と合わせて組んでください。
Q. 子どもや高齢の家族がいる場合、優先順位は変わりますか
変わります。国の通知が優先設置の対象として挙げているのは高齢者・障害者等で、簡易ベッドが行き渡らない場面では優先される側になります。ただし到着時期までは決まっていないため、家族のなかで最も体の負担が大きい人から、②の厚みの層を厚くする——という配分が現実的です。
まとめ:今日やることは、押し入れを開けて1つ数えること
避難所の寝床は、行政の備蓄だけでも、自分の荷物だけでも完成しません。国は3.5㎡という目安と簡易ベッドの設置方針を示しつつ、全員分がそろわない場合の優先順位まで書いています。その空白を、自分の側の4層で埋めていくのが、この記事の設計でした。
やることは1つだけです。押し入れの防災用品を出して、4層のうち何層そろっているかを数えてください。買い物はそのあとで構いません。
- 数える持ち出し袋の中身を床に並べ、①断熱・②厚み・③保温・④明かりの4つに仕分けます。どの山にも入らないものは、寝床とは別枠の荷物です。
- 空いた層を1つだけ決める山が空になった層のうち、いちばん下の層を選びます。①が空なら①から。下の層ほど、上の層の効きを左右します。
- サイズを世帯人数で確認する選んだ層の道具が、1人3.5㎡・畳約2枚ぶんの区画に人数分収まるかを見ます。収まらない大きさなら、そこは持ち込む装備ではなく現地調達で組む層です。
あわせて読みたい: 防災用の毛布・寝袋・アルミブランケットの違いと場面別の組み合わせ方/防災用ランタンは何個必要?世帯人数×間取り別の早見表
参考・出典
- 内閣府(防災担当)「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」平成25年8月(令和6年12月改定)/https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf(2026年8月15日確認)
- 内閣府政策統括官(防災担当)付 事務連絡「避難所開設当初からパーティション・段ボールベッド等の簡易ベッドの迅速な設置について」令和6年7月4日/https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/r6_06.pdf(2026年8月15日確認)
- スフィアハンドブック2018 日本語版「7. 避難所および避難先の居住地」/https://jqan.info/sphere_handbook/sphere_handbook_07.pdf(2026年8月15日確認)
- 復興庁・内閣府(防災担当)・消防庁「東日本大震災における震災関連死の死者数」令和7年2月14日公表/https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-6/20250214_kanrenshi.pdf(2026年8月15日確認)
- 内閣府政策統括官(防災担当)付「災害関連死について」(資料8)/https://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/r01kaigi/siryo8.pdf(2026年8月15日確認)
- 厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」/https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07384.html(2026年8月15日確認)
- 一般社団法人 避難所・避難生活学会 公式サイト/https://dsrl.jp/(2026年8月15日確認)
- 全国段ボール工業組合連合会「段ボールが社会のためにできること」/https://zendanren.or.jp/pages/58/(2026年8月15日確認)
- GENTOS 公式サイト「EX-136S」製品ページ/https://www.gentos.jp/product/light/ex-136s/(2026年8月15日確認)
- コールマン パフォーマーIII/C5 のスペック(正規販売店の記載が複数一致)/https://www.yodobashi.com/product/100000001004220666/(2026年8月15日確認)
- アイリスオーヤマ ぽかぽか家族 貼るレギュラー PKN-30HR のスペック(販売ページ掲載の公表値)/https://www.monotaro.com/p/1036/3717/(2026年8月15日確認)
- アクシス 災害備蓄用不織布毛布「もしもうふ」AX-MOSIMO のスペック(販売ページ掲載の公表値)/https://www.monotaro.com/p/6157/6516/(2026年8月15日確認)
※コールマン・アイリスオーヤマ・アクシスの3製品は、メーカー公式サイトの該当ページに到達できなかったため、複数の販売ページに掲載された公表値が一致することを確認したうえで記載しています。仕様は変更される場合があります。※体育館の床面温度の公的な実測データ、および段ボールベッドの避難所配備率の統計は、2026年8月15日時点で公的機関の公表資料に見当たらなかったため、本記事では扱っていません。
