災害時の学校の引き渡しはいつ?自治体で違う震度の基準と、親が先に確認する3つ

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平日の午後、職場のスマートフォンが揺れを知らせます。テレビの速報は震度5弱。子どもは学校にいて、こちらは電車で40分の距離。すぐ迎えに行くべきなのか、それとも学校で預かってもらえるのか——判断がつかないまま、とりあえず靴を履いてしまう。そんな場面を想像したことのある人は多いはずです。

この問いに、全国共通の答えはありません。災害時に子どもを保護者へ引き渡すか、学校で待機させるかの基準は、自治体(教育委員会)ごとに震度で決められています。しかも、その閾値は自治体によって震度5弱だったり震度5強だったりします。編集部が2026年8月22日に3つの自治体の公式案内を確認したところ、東京都品川区は震度5弱以上で学校に留め置いて引き取りのみ、千葉県船橋市は震度5強以上で引き渡し、震度5弱は引き渡しではなく学校待機という扱いでした。

つまり同じ「震度5弱」という言葉が、ある市では「もう迎えに行く段階」を、別の市では「まだ迎えに行かない段階」を指しているということ。だからこの記事は、一般論で「震度5弱以上が目安です」と書いて終わりにはしません。あなたの市区町村の基準を今日のうちに調べるところまで、手順で案内します。

この記事でわかること

  • 「引き渡し」と「学校待機」は別の判断で、その境目の震度は自治体ごとに違うこと
  • 品川区・船橋市・和泉市の公式案内を並べた比較表(同じ震度5弱で扱いが逆になる実例)
  • 自分の市区町村と学校の基準を、どのページから調べればよいかの3ステップ
  • 引き渡しカードに書く「迎えに行ける人」を決めるための書き込み式チェックリスト
目次

引き渡しと待機は別の判断であり、学校はそれを分けて決めている

引き渡しとは、災害の発生時に学校が児童生徒を一人で下校させず、あらかじめ登録された保護者や代理の人に直接手渡して帰宅させる対応のことです。これに対して待機とは、引き取り手が来るまで、あるいは安全が確認されるまで、子どもを学校の管理下に置き続ける対応を指します。

この2つは似ているようで、判断のスイッチが別々に用意されています。文部科学省が2012年3月(平成24年3月)に公開した「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」でも、目次に「引き渡しと待機」という項目が置かれ、両者は並列の論点として扱われています。学校側から見れば「渡す/渡さない」ではなく、「今は渡す段階か、まだ預かる段階か」を段階で切り分けている、と考えるとイメージしやすいでしょう。

災害時の引き渡しの基準は全国共通ではありません。判断の閾値は各自治体の教育委員会が定めており、同じ震度でも「引き渡し」と「学校待機」に分かれます。あなたが調べるべきは一般論ではなく、通っている学校の設置自治体の基準です。

安否確認の手段そのもの(171や伝言板、SNSをどう使い分けるか)は、この記事では扱いきれません。全体像は全体像→家族の安否確認方法の決め方|災害用伝言ダイヤル171と伝言板・SNSの使い分けにまとめてあります。学校の引き渡しは、その安否確認の中に組み込まれる一部分だと捉えてください。

引き渡しの実行そのものは学校の判断です。保護者ができるのは「いつ、誰が、どこへ迎えに行くか」を家庭側で先に決めておくこと。ここが決まっていないと、当日の電話1本で家族の意見が割れます。

同じ震度5弱でも、品川区と船橋市では扱いが正反対になる

震度基準とは、自治体が「この揺れの大きさになったら学校はこう動く」と事前に決めておく発動条件のことです。ここが記事の核なので、実際の公式案内を並べます。

自治体 引き渡しの基準 震度5弱のときの扱い 出典(2026年8月22日確認)
東京都品川区 震度5弱以上 学校に留め置き。下校は緊急連絡先に記載された人による引き取りのみ(待機と引き渡しの閾値を分けていない) 品川区|登下校の判断について
千葉県船橋市 震度5強以上 引き渡しの対象外。「安全が確保されるまで下校させない」学校待機として別に扱う 船橋市|地震等発生時の児童・生徒の登校等について(令和7年4月1日時点)
大阪府和泉市(市立いぶき野小学校の案内) 震度5弱以上 保護者に「すぐに迎えに」=引き渡し。迎えが無い場合は学校で引き続き待機 和泉市立いぶき野小学校 保護者向け案内

表の3列目だけを縦に読んでみてください。震度5弱という同じ数字に対して、品川区と和泉市は「引き取りに来てもらう段階」、船橋市は「まだ引き渡さず学校で預かる段階」と、逆の向きの答えを出しています。震度の1段階の差が、そのまま「今日、会社を早退するかどうか」の差になるわけです。

なぜこんなに分かれるのか。理由のひとつは、引き渡しには引き渡しなりのリスクがあるからだと考えられます。余震や火災、道路の混雑がある中で子どもを外に出すより、学校という管理された場所で預かるほうが安全な局面もある。逆に、学校の被害が大きければ早く保護者の手に戻したほうがよい局面もある。地域の地形や通学距離、想定される災害の種類が違えば、答えが揃わないのは自然なことです。

そなえぐらし管理人

この記事を作るとき、最後まで迷ったのが「震度5弱以上が目安です」と一行で書くかどうかでした。そのほうが読みやすい。でも実際に公式ページを突き合わせると、その一行が半分の読者にとって間違いになってしまう。読みやすさより、自分の自治体を確認してもらうほうを選びました。

この表は3自治体の公式案内を整理したものであり、全国の傾向を示すものではありません。基準は年度ごとに改訂されます。最終的な判断は、必ずお子さんの通う学校と、その設置自治体・公的機関の指示に従ってください。

自分の自治体と学校の基準は、教育委員会のページと年度当初の配布物で確認できる

学校防災計画(自治体によっては学校災害対応マニュアル、学校防災マニュアルなどと呼ばれます)とは、災害時に学校がどう動くかを設置自治体が定めた文書のことです。多くの場合、公式サイトのどこかに置かれています。探し方には順番があります。

  1. 教育委員会のサイトを開く市の公式サイトのトップから「教育委員会」→「学校安全」「学校防災」の順にたどります。検索窓がある場合は「学校 引き渡し 震度」の3語で引くのが早い方法です。市の防災課ではなく教育委員会側にある、という点が迷いやすいポイント。
  2. 震度の数字と、その直後の動詞を読む「震度5弱以上」なのか「震度5強以上」なのか。そして続く文が「引き渡す」なのか「下校させない」なのかを、そのまま書き写します。ここで表現をまとめてしまうと、本来の意味が消えます。
  3. 学校からの配布物と突き合わせる年度当初に配られる学校だより、保健だより、緊急時対応のプリントに、その学校での運用(集合場所、引き渡し場所、訓練の日程)が書かれています。自治体の基準+学校の運用、この2枚でやっと完成します。

それでも見つからないときは、担任か学校事務に直接聞いてかまいません。「災害時の引き渡しは震度いくつからですか」という質問は、学校側が年に何度も受けている定番の質問です。遠慮する種類の問い合わせではありません。

私立や国立の学校に通っている場合、市区町村の教育委員会の基準がそのまま当てはまるとは限りません。学校独自の規程が優先されることがあります。詳しくは記事後半の「当てはまらないケース」を参照してください。

引き渡しカードは「誰が迎えに行けるか」を決めてから書く

引き渡しカードとは、災害時に子どもを引き渡してよい人をあらかじめ学校へ届け出ておく用紙のことです。岡山県教育委員会が公開している学校向けマニュアルには、文部科学省の手引き(平成24年)を基に作成された「引き渡しカード(例)」が参考資料として添付されています。様式は自治体や学校ごとに異なりますが、聞かれることはおおむね共通しています。

ここでつまずく家庭が多いのは、書式の書き方ではありません。「そもそも誰が迎えに行けるのか」を家族で決めていないまま、提出期限に追われて記入してしまうことです。祖父母の名前を書いたものの、その祖父母は電車で1時間半かかる——というケースは珍しくありません。カードを書く前に、次の欄を埋めてみてください。

  • 第1優先で迎えに行く人:     (    から学校まで徒歩・自転車で約  分)
  • 第2優先の人:     (学校まで約  分/連絡先      )
  • 第3優先=近所や親族で頼める人:     (学校まで約  分)
  • その人に「頼みたい」と実際に伝えてあるか: 伝えた / まだ
  • きょうだいが別の学校・園にいる場合、先に向かうのはどちら:     
  • 迎えに行けないと判断したときの合図(誰に何を伝えるか):     

ポイントは、時間を「分」で書き込むところです。距離ではなく所要時間で並べると、優先順位が自然に決まります。徒歩15分の近所の親族と、電車で1時間半の祖父母では、災害時に果たせる役割がまったく違う。公共交通が止まっている前提で考えれば、その差はさらに開きます。

そして4つ目の項目——「実際に伝えてあるか」。ここが空欄のまま学校に提出されているカードは、おそらくかなりの数にのぼります。名前を書くことと、当日その人が動けることは別の話です。カードを書き終えたら、その足で一度連絡を入れておくところまでが準備です。学年に応じた子どもへの伝え方は子どもに防災をどう説明する?学年別の声かけと、9月1日に家でやる30分で整理しています。

連絡が取れない前提で、伝言サービスと充電手段を先に決めておく

輻輳(ふくそう)とは、電話が特定の地域や相手に集中し、回線がさばききれなくなる状態のことです。総務省の解説によれば、大規模災害の発生時には被災地への電話が殺到し、通常時の数倍から数十倍の通話が一時的に集中します。東日本大震災の直後には、事業者によって平常時の最大50〜60倍以上が集中した例があると示されています。

数字だけだと実感が湧きにくいので言い換えます。普段なら1本の電話がすっと通る回線に、同じ瞬間に50本以上が押し寄せてくる。学校へ電話しても、家族に電話しても、つながらないのが普通の状態になるということです。「連絡してから動く」という段取りは、この時点で崩れます。

一方で、災害用伝言板は音声通話ではなくインターネット等のデータ通信で伝言の登録・確認を行う仕組みのため、音声回線が混雑していても利用できると総務省は説明しています。声で話すことをあきらめて、文字とデータに切り替える。これが災害時の連絡の基本形です。

音声を残したい場合の受け皿が、災害用伝言ダイヤル171です。NTT東日本の案内によると、1件あたりの録音時間は30秒、1つの電話番号あたりの伝言蓄積数は20件程度とされています。20件と聞くと十分に思えますが、両親・祖父母・きょうだいがそれぞれ数回ずつ吹き込めば、あっという間に埋まる数量です。誰の番号を「家族の集合場所」にするかを決めておかないと、伝言が散らばります。

171には体験利用日があります。NTT東日本の案内では、毎月1日と15日(00:00〜24:00)、正月三が日(1月1日00:00〜1月3日24:00)、防災週間(8月30日9:00〜9月5日17:00)、防災とボランティア週間(1月15日9:00〜1月21日17:00)。体験利用期間中の伝言は、その期間の終了まで保存されます。防災週間は新学期の準備期間と重なるので、引き渡しカードの見直しと同じ週にまとめてしまうのが現実的です。

もうひとつ、連絡手段の前提として電池があります。引き渡しを待つ間も、交通機関が止まって足止めされている間も、家族の連絡手段はスマートフォン1台に集約されます。画面を何度も点けて情報を追い、伝言板を確認し、位置を共有する——普段より電池の減りは確実に速くなります。だからモバイルバッテリーは、防災リュックの中ではなく通勤かばんの中に置くものだと編集部は整理しています。家に置いてあるバッテリーは、外にいる自分を助けません。

選ぶときの目安は、容量と出力の2つです。Anker Power Bank(A1384)は容量20000mAh・出力30Wと商品ページに表示されています(2026年8月22日確認時点)。何回分の充電にあたるかは端末や使い方で変わるため、ここでは表示されている数値だけを記載します。持ち歩く重さと相談しながら、家族の台数に見合うものを選んでください。


そなえぐらし管理人

防災グッズの記事を作っていると「家にどれだけ揃えるか」の話になりがちなのですが、学校の引き渡しに関しては逆だと考えています。親が困るのはたいてい家の外。持ち出すものより、持ち歩いているものが効きます。

この記事の基準が当てはまらないケースがある

ここまで市区町村立の小中学校を前提に書いてきました。次のような場合、基準そのものが別に用意されています。

  • 私立・国立の学校:設置者が異なるため、市区町村教育委員会の基準ではなく学校独自の規程が適用されることがあります
  • 幼稚園・保育園・こども園:所管する部署が教育委員会ではない場合があり、引き渡しの手順も園ごとに定められています
  • 放課後児童クラブ(学童保育):学校とは運営主体が別のことが多く、引き渡し先や連絡経路が学校と一致しないことがあります
  • 登下校中に被災した場合:校内にいるときとは判断が変わります。和泉市立いぶき野小学校の保護者向け案内では、登下校中に大きな地震が発生した場合は原則として「自宅か学校か、いずれか近い方に避難する」よう指導していると示されています
  • 学区外から通っている、きょうだいが別の学校にいる:迎えの順番と移動時間を、家庭側で先に決めておく必要があります

いずれの場合も、確認先は「うちの子が今いる場所を管理している組織」です。学校なら学校、学童なら学童の運営者。ここを一つずつ潰しておけば、当日の迷いはかなり減ります。

よくある質問

Q. 引き渡し訓練に参加できません。どうすればよいですか。

A. 学校に事情を伝えたうえで、訓練当日の手順(集合場所、受け取りの流れ、確認される内容)を書面や連絡アプリで共有してもらえないか相談してください。訓練の目的は当日の参加そのものではなく、手順を家庭が把握することにあります。代理で参加できる人がいるなら、その人の名前を引き渡しカードに登録しておくとつながりが良くなります。

Q. 祖父母や近所の人に迎えを頼んでもよいですか。

A. 多くの学校では、あらかじめ届け出た人にしか引き渡しません。品川区の案内でも、下校は緊急連絡先に記載された人による引き取りのみと示されています。頼みたい相手がいる場合は、当日の口頭の依頼ではなく、事前にカードへ登録しておく必要があります。登録の可否や人数の上限は学校によって異なるため、様式を確認してください。

Q. 自分の市が「震度5弱は学校待機」と決めている場合、迎えに行ってはいけないのですか。

A. 待機は「保護者が来てはいけない」という意味ではなく、「学校側から一斉に下校させない」という運用を指すのが一般的です。ただし受け取り方は自治体・学校で異なります。移動そのものに危険がある局面もあるため、独自に判断せず、学校からの連絡と自治体・公的機関の指示に従ってください。

Q. 学校に電話がつながらないときは、どうやって状況を知ればよいですか。

A. 学校の連絡アプリやメール配信、自治体・教育委員会の公式サイトやSNSなど、電話以外の経路を先に確認しておくのが現実的です。総務省が説明しているとおり、災害用伝言板はデータ通信を使うため音声回線が混雑していても利用できます。どの経路で学校からの連絡が来るのかは、年度当初の配布物に書かれていることがほとんどです。

まとめ:今日やることは、市区町村の震度基準を1つ調べるだけ

引き渡しの基準は全国共通ではなく、自治体ごとに震度で決まっています。同じ震度5弱でも、品川区・和泉市では引き取りに向かう段階、船橋市では学校で預かる段階。だから覚えるべきは一般論ではなく、あなたの市区町村の数字ひとつです。

安否確認の手段そのものについては、災害用伝言ダイヤル171と伝言板・SNSの使い分けを先に決めておくと、引き渡しの連絡もスムーズになります。

連絡手段の使い分けは家族の安否確認方法の決め方|災害用伝言ダイヤル171と伝言板・SNSの使い分けに、家族で先に決めておくことは家族の防災会議のやり方|30分で決める5つのことと書き込み式シートにまとめています。

  1. 教育委員会のページで震度の数字を確認する「震度5弱以上」か「震度5強以上」か、そして続く文が「引き渡す」か「下校させない」かを、そのまま書き写します。所要は5分ほど。
  2. 引き渡しカードの3人を、所要時間つきで決める本記事のチェックリストに、学校までの移動時間を分で書き込みます。書いたら、その人に一度連絡を入れるところまで。
  3. 連絡手段の逃げ道を1つ用意する171の使い方を家族で共有し、モバイルバッテリーを通勤かばんに移します。体験利用日を家族の予定に入れておくと定着します。

3つとも、家族が揃っている日にまとめて片づけられます。話し合いの進め方は家族の防災会議のやり方|9月1日までに30分で決める5つのことと書き込み式シートにシート付きでまとめました。最終的な避難や引き渡しの判断は、学校・自治体・公的機関の指示に従ってください。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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