寝室の地震対策|枕元に置くものと、置いてはいけないものの分け方

夜の寝室で、枕元に置いた明かりとスリッパ、頭上の棚から物を下ろす様子を示したイラスト

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれます

寝室の地震対策は、枕元に何を置くかを考える前に、何を置かないかを決めたほうが早いです。揺れた瞬間の寝室では、置いてある物のほとんどが「落ちる」「割れる」「床に散らばる」のどれかに変わってしまうからです。

阪神・淡路大震災の発生は1995年1月17日5時46分(内閣府 防災情報のページ)。平成28年熊本地震の本震は2016年4月16日1時25分(気象庁 地震調査委員会資料)。どちらも、多くの人が布団の中にいた時間帯でした。そして東京消防庁の電子学習室によれば、近年発生した大きな地震で家具類の転倒・落下・移動によってけがをした人は、負傷者の約3〜5割を占めています。けが人のおよそ3人に1人から2人に1人が、家具や物によるけがだという計算です。

だから枕元の準備は、便利グッズを増やす作業ではありません。暗い部屋で体を起こしたときに、頭の上・足の下・手の届く範囲がどうなっているかを整理する作業です。この記事は寝室と枕元の一点だけを扱います。

この記事でわかること

  • 枕元に置いてよい物と、置くと危ない物を分ける3つの基準
  • 自分の寝室に当てはめて答えを出す判定チェックリストと書き込み式シート
  • 明かり・履き物・音の3役をどう分担させるかの考え方
  • 枕元の対策だけでは防げないこと(公表データで確認できる限界)

枕元の判定式:「頭上から落ちてこない」+「割れて足を切らない」+「暗闇で手が届く」の3つを同時に満たす物だけを枕元に置く。1つでも欠けたら、置き場所を変えるか、部屋から出す。

なお、家具そのものを固定する方法(金具の種類・点検のタイミング・備蓄の棚卸し)は、この記事では扱いません。そちらは地震の備えリスト(家具の固定と備蓄の点検表)で整理しているので、寝室の家具配置を見直すときはそちらと合わせて読んでください。

目次

寝ているあいだの地震で、体はどんな状況に置かれるか

就寝中の地震とは、視覚・履き物・姿勢の3つを同時に奪われた状態で始まる災害である、と言い換えられます。

真夜中、寝返りを打った直後に部屋がきしむ音がして、次の瞬間に本棚の中身が背中側へ落ちてくる。照明のスイッチは壁で、手を伸ばしても届かない。足の裏には、さっきまで棚に並んでいたはずの何かが散らばっている——寝室の地震はだいたいこの順番で進みます。日中の地震と決定的に違うのは、靴を履いていないこと、メガネをかけていないこと、そして立ち上がる前に上から物が来ることです。

就寝中に起きた実例は、記録として残っています。

地震 発生日時 時間帯
阪神・淡路大震災(M7.3・震源の深さ16km) 1995年1月17日 5時46分 就寝中
平成28年熊本地震 本震(M7.3・震度7) 2016年4月16日 1時25分 就寝中
令和6年能登半島地震(M7.6・震度7) 2024年1月1日 16時10分 夕方(就寝時間帯ではない)
阪神・淡路大震災は1995年1月17日5時46分で就寝中、平成28年熊本地震の本震は2016年4月16日1時25分で就寝中、令和6年能登半島地震は2024年1月1日16時10分で夕方という、地震と発生時刻の対応を示した図

3件のうち2件が、布団の中にいる時間に起きています。もちろん能登半島地震のように夕方に起きる地震もあり、時間帯は選べません。だからこそ「寝ているときに来たら」という前提を1つ持っておく価値があります。

被害の中身も見ておきます。阪神・淡路大震災では、犠牲者の約8割が窒息死・圧死だったと内閣府の平成16年版防災白書は整理しています。倒れた物・崩れた物が体に乗った結果です。ここから導かれる寝室の優先順位は、はっきりしています。まず「上から来る物」を減らし、次に「暗闇で動ける道具」を置く。順番が逆になると、せっかく買った懐中電灯の上に本棚が倒れてくることになります。

地震のあとに動くか留まるか、けがの手当てをどうするかといった判断は、内閣府・消防庁・気象庁・お住まいの自治体が出す情報に従ってください。この記事は寝室の物の置き方だけを扱っています。

枕元に置くかどうかを分ける3つの基準

判断基準とは、物の名前ではなく「その物が揺れた瞬間にどう振る舞うか」で仕分けるものさしのことです。この記事では3つに絞ります。

基準1:落ちてくる高さにないか(頭上の点検)

枕の真上、および頭から半径1歩ぶんの範囲に、頭より高い位置の物があるかどうか。棚・額縁・時計・エアコンの上に載せた箱、すべて対象です。東京消防庁が家具類の転倒・落下・移動を負傷原因の約3〜5割と示している以上、ここが最初の関門になります。頭上に何もない状態が理想。

基準2:割れる・砕けるか(足を守れるか)

ガラス製の写真立て、陶器のマグ、鏡、ガラス扉の本棚。割れる物は、落ちた瞬間に「踏めない床」を作ります。東京消防庁の「地震に対する10の備え」は、ガラスの飛散防止措置と、散乱物でけがをしないようスリッパやスニーカーなどを身近に準備することを挙げています。飛散防止フィルムは、ガラスが割れても飛び散らないようにするもので、両面に貼ると効果が高くなるとされています。

基準3:停電の暗闇で、手探りで届くか

枕元の道具は、目が見えない前提で設計します。内閣府の資料によれば、停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを準備していると回答した世帯は約43%(2017年11月の防災に関する世論調査)。10軒のうち6軒近くは、停電したらそのまま真っ暗ということです。準備している側に回るなら、置き場所も「布団の中から腕を伸ばして触れる定位置」まで決めきる必要があります。首相官邸の防災の手引きも、手の届くところに懐中電灯やスリッパ、ホイッスルを備えるよう呼びかけています。

判定チェックリストと、書き込み式の寝室シート

判定とは、基準を自分の部屋の座標に当てはめて「撤去・移動・据え置き」の3択に落とし込む作業です。今夜の寝室で、次の4問に答えてみてください。

  • Q1 枕の真上と頭のまわりに、頭より高い位置の物があるか
  • Q2 その物、または枕元の物に、割れる素材(ガラス・陶器・鏡)が含まれるか
  • Q3 布団から出口までの床に、踏むとけがをする物が置いてあるか
  • Q4 明かり・履き物・ホイッスルは、布団の中から手を伸ばして触れる定位置にあるか

Q1が「はい」=撤去または移動。Q2が「はい」=枕元から外す(飛散防止措置の対象)。Q3が「はい」=スリッパか運動靴を枕元に必須。Q4が「いいえ」=定位置を決め直す。4問すべてクリアした物だけが、枕元に残ってよい物です。

枕元の判定4問と答えの対応。頭より高い位置に物があるかは、はいなら撤去または移動。割れる素材が含まれるかは、はいなら枕元から外す。床に踏むとけがをする物があるかは、はいならスリッパか運動靴を枕元に必須。明かり・履き物・音に手が届くかは、いいえなら定位置を決め直す、と示した図

4問の答えを、部屋の場所ごとに書き出すと抜けが減ります。紙にこの4列を書き写して、寝室を一周してください。

場所 今そこにある物 当てはまる基準 今日やること
枕の真上(壁・棚)   基準1 撤去/移動
枕元の床・サイドテーブル   基準2・基準3 割れる物を外す
布団から出口までの床   基準2 履き物を置く
出入口・ドアの周辺   基準1 倒れて塞がないか確認
手を伸ばして届く範囲   基準3 明かり・ホイッスルの定位置を決める

ちなみに首相官邸の防災の手引きは、寝室や子ども部屋にはできるだけ家具を置かず、置く場合も背の低い家具にして、倒れたときに出入り口をふさがない向き・配置にするよう示しています。シートの4行目は、この呼びかけを自分の間取りに当てはめる欄です。

枕元に置いてよい物:明かり・履き物・音の3役

枕元に置いてよい物とは、3つの基準を満たしたうえで「暗闇で自分の体を動かすため」に働く道具のことです。数を増やすほど良くなるものではないので、役割で3つに絞ります。

役割 候補 枕元での強み 向かない場面
明かり(動く用) ヘッドライト 両手が空くので、物をどけながら進める 部屋全体を明るくする用途
明かり(留まる用) ランタン 置いたまま面で照らせる。家族が同室でも共有できる 手に持って移動し続ける用途
足を守る スリッパ・運動靴 散乱したガラスの上を歩ける そのまま寝具の上に上げる使い方
音(居場所を知らせる) ホイッスル 声が出せない状況でも位置を伝えられる 連絡手段の代わり

明かりは「動く用」と「留まる用」を分ける

停電した寝室でまずやることは、部屋を明るくすることではなく、自分が安全に立ち上がることです。手に懐中電灯を握ったままだと、倒れた家具をどけることも、子どもを抱き上げることもできません。だから枕元は、頭に着けて両手を空けられる明かりが基本になります。理由の詳細はヘッドライトが防災に必要な理由(両手が空く)で整理しています。


一方で、家族が同じ部屋にいる場合や、揺れが収まってから部屋の中を確認するときは、置いたまま面で照らせる明かりが要ります。ヘッドライトの光は前だけを照らすので、部屋の全体像はつかめません。置き場所ごとの選び方は防災ランタンの選び方(置き場所別)にまとめています。


電池は「明かりと同じ引き出し」に入れておく

枕元の明かりで一番多い失敗は、いざ点けたら電池が切れていることです。停電時の照明を準備している世帯が約43%にとどまる状況で、その4割強のうち何割が電池まで管理できているかは、公表データでは確認できません。ただ、明かりと替えの電池を別の部屋にしまっている状態は、暗闇では準備ゼロと同じ意味になります。定位置は明かりと同じ場所に。


履き物は、枕の横ではなく「足を下ろす側」に

スリッパや運動靴は、枕の横に置くと寝返りで蹴り飛ばします。置くのは、布団から足を下ろす側の床。ガラスが散った床の上でスリッパを探し回るのが一番危ないので、履き物だけは体の向きを基準に決めてください。

そなえぐらし管理人

編集部でこの記事の構成を決めるとき、「枕元グッズ10選」という形も検討しました。ただ、上位の記事を読み比べても、物の名前は同じで、置き方の判断だけが抜けている。それなら数を並べるより、3つの基準に絞って自分の部屋に当てはめてもらうほうが役に立つと考えました。

枕元に置いてはいけない物と、その理由

置いてはいけない物とは、平常時は便利なのに、揺れた瞬間に「凶器」か「障害物」に変わる物のことです。基準1・2に照らすと、次のように整理できます。

  • ガラス製の写真立て・鏡・陶器のマグ:割れて床を歩けなくする(基準2)
  • 枕の上の棚に載せた本・箱・置き時計:頭上から落ちてくる(基準1)
  • 背の高い本棚・タンス:倒れて出入口をふさぐ(基準1/首相官邸の防災の手引き)
  • 加湿器・アロマの容器など水や熱を持つ物:中身が寝具にかかる(基準2の応用)
  • 枕元に立てかけた姿見:転倒と飛散が同時に起きる(基準1・2の両方)

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。枕元の整理は、家具の転倒そのものを止める対策ではありません。東京都生活文化局が兵庫県南部地震の観測波形を使って行った加振試験(2015年3月10日公表)では、転倒防止器具を単体で使った場合、震度6強相当で7検体すべてが転倒しました。「震度7対応」と表示された製品でも、震度6強相当で転倒した例があります。

数字だけ見ると身も蓋もないのですが、同じ試験には続きがあります。器具を組み合わせて使った場合には、食器棚の移動を10cm以下に抑えられたケースが確認されています。10cmは、大人の足の甲がすっぽり入るくらいの幅。倒れるか、足の甲ぶんずれて止まるかの差だと考えると、組み合わせの意味が見えてきます。東京消防庁の電子学習室も、L型金具でのネジ止めが最も効果が高く、ポール式とストッパー式の組み合わせがそれと同等と説明しています。

枕元の整理は「落ちてきた物から体を守り、暗闇で動けるようにする」ための対策。家具の固定は「そもそも倒さない」ための対策です。役割が違うので、片方だけでは寝室は完成しません。固定の具体的な手順は地震の備えリスト(家具の固定と備蓄の点検表)を参照してください。

この記事が当てはまらないケースと、枕元対策のデメリット

3つの基準は万能ではありません。当てはめにくい寝室のほうが、実際には多いかもしれません。

ワンルーム・寝室に家具を置かざるを得ない場合

間取りの都合で、寝る場所の近くに背の高い家具を置くしかない住まいもあります。この場合、基準1を満たすのは物理的に無理です。できるのは「頭の向きを変える(家具が倒れる先に頭を置かない)」「家具の上の物だけを撤去する」の2つ。首相官邸の防災の手引きが示す「倒れたときに出入り口をふさがない向き」も、頭の位置とセットで考えてください。

添い寝の子ども・ペットがいる寝室

小さな子どもと同じ布団で寝ている場合、枕元に硬い物や小さい物を置くこと自体がリスクになります。誤飲や、寝返りでの接触があるからです。ホイッスルを枕元に置きたいなら、子どもの手が届かず自分の手は届く高さ(サイドテーブルの奥など)に。ペットがいる家庭では、暗闇で動物が先に動くことも想定して、履き物は自分の足を下ろす側に固定しておくのが現実的です。

枕元対策そのもののデメリット

物を置けば、それだけ寝室に「散らばる物」が増えます。だから枕元は3役までに絞る。増やすほど安全になるという発想は、寝室では逆に働きます。また、持ち出し袋を枕元に置くと通路が狭くなるので、置き場所は寝室の出入口付近か玄関側が扱いやすいはずです。中身の考え方は防災リュックの中身リストに、家全体の備蓄との切り分けは家庭の備蓄品リスト完全版にまとめています。

寝る場所そのものを変える選択肢

余震が続く時期や、自宅の安全が確認できない状況では、そもそも寝る場所を移すという判断もあります。この場合の注意点は車中泊は防災になるか(寝る場所の確保)で整理しました。ただし、自宅に留まるか避難するかの判断は、必ず自治体や消防・気象庁の発表に従ってください。

よくある質問

Q. スマホを枕元に置くのは危ないですか

A. 落ちてくる高さ(基準1)と、割れて散る素材(基準2)のどちらにも触れないなら、床の高さで充電するのが無難です。危ないのは、頭の上の棚に置くこと、ガラスのコップの横に立てかけること。なお停電時にスマホのライトを使う想定なら、両手が空かない点は割り引いて考えてください。

Q. スリッパと運動靴、どちらを枕元に置くべきですか

A. 東京消防庁の「地震に対する10の備え」は、散乱物でけがをしないようスリッパやスニーカーなどを身近に準備するとしており、どちらかに限定していません。判断材料になるのは、部屋から玄関までの距離と、床にガラスが散る可能性です。屋外まで歩く想定があるなら、靴底の厚い履き物のほうが選択肢として広くなります。

Q. 家具を固定していれば、枕元の整理はしなくてよいですか

A. 固定と枕元の整理は別の対策です。東京都生活文化局の商品テスト(2015年3月10日公表)では、転倒防止器具の単体使用で震度6強相当のとき7検体すべてが転倒しました。固定は「倒れにくくする」対策であって、ゼロにする対策ではありません。暗闇で動くための明かりと履き物は、固定の有無にかかわらず必要です。

Q. 大地震に備えるなら、備蓄は何日分を寝室に置けばよいですか

A. 寝室に食料や水をまとめて置くのは、基準1(落ちてくる)に触れるためおすすめしません。備蓄は寝室以外の収納に分散させるのが原則です。想定日数の考え方は南海トラフに備える備蓄(1週間分が推奨の理由)で別途整理しています。

Q. 賃貸で壁にネジが打てません。何ができますか

A. 壁に穴を開けられない場合でも、枕元の3基準は今日から適用できます。頭上の物を下ろす、割れる物を寝室から出す、履き物と明かりの定位置を決める。この3つはネジも工具も使いません。器具については、東京消防庁がポール式とストッパー式の組み合わせをL型金具と同等の効果と説明している点が参考になります。

寝室まわりの見直しをこれから続けるなら、地震の備えリスト(家具の固定と備蓄の点検表)ヘッドライトが防災に必要な理由(両手が空く)の2本が、この記事の続きです。

まとめ:今日やることは1つだけ

枕元の対策は、買い物から始めると必ず散らかります。今日やることは1つ、枕の真上にある物を下ろすこと。これだけで基準1がクリアできます。明かりも履き物も、その次で間に合います。

  1. 頭上を空にする 枕の真上と頭のまわりから、頭より高い位置にある物をすべて下ろします。棚・額縁・置き時計・箱が対象です。
  2. 割れる物を寝室から出す ガラスの写真立て、鏡、陶器のマグを枕元から外します。窓や扉のガラスには飛散防止措置を検討してください。
  3. 定位置を3つ決める 布団から手を伸ばして届く場所に明かり、足を下ろす側に履き物、手が届く高さにホイッスル。決めたら家族にも同じ場所を伝えます。

阪神・淡路大震災は5時46分、熊本地震の本震は1時25分に起きました。時間帯は選べません。選べるのは、その時間に自分の頭の上に何があるかだけです。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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