南海トラフに備える備蓄|1週間分が推奨される理由と3日分から足す差分リスト

南海トラフに備える備蓄|1週間分が推奨される理由と足す差分リスト

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南海トラフ地震に向けた家庭の備蓄は、何日分そろえればいいのか。国の答えははっきりしています。内閣府の中央防災会議が決定した「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」(令和7年7月1日)には、被災地域では自活のため最低でも3日間、可能な限り1週間分程度の備えが必要と書かれています。

ポイントは「最低3日」と「可能な限り1週間」が並んでいること。3日でゼロ点ではなく、1週間が満点でもない。段階があるのです。そして、なぜ3日ではなく1週間なのかという理由も、同じ国の計画のなかに答えがあります。物資の支援が届くまでの流れが、3日目と7日目で切り替わる設計になっているからでした。

その根拠を出典で追いかけたうえで、すでに3日分を持っている人が何を足せばいいかまで落とし込みます。

この記事でわかること

  • 国の基本計画が「最低3日・可能な限り1週間分」と書いている根拠と、その原文の位置
  • なぜ3日ではなく1週間なのか——支援物資が届くまでの3段階の構造
  • すでに3日分ある人が1週間分にするために足す「4日分の差分」の考え方
  • 南海トラフ地震臨時情報が出たとき、情報の種類ごとに家庭が取る行動
目次

南海トラフの備蓄は「最低3日・可能な限り1週間分」が国の基準

南海トラフ地震防災対策推進基本計画とは、南海トラフ地震に関する国の対策の骨格を定めた計画のことで、中央防災会議が決定し、直近では令和7年7月1日に改定されています。

家庭の備蓄について書かれているのはこの一文です。被災地域では自活のため、最低でも3日間、可能な限り1週間分程度の備え。第2章第4節と第3章第7節に、同じ趣旨で置かれています。

南海トラフの家庭備蓄=最低3日分(ここは譲れない下限)+可能な限り1週間分(ここが目標値)。人数分をかけ算した量が、そのまま必要量になります。

農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」も同じ方向です。最低3日分から1週間分×人数分の食品備蓄が望ましい、という書き方。理由は、ライフラインの復旧に1週間以上を要するケースが多いこと、そして災害支援物資が3日以上届かないことや物流停止で、1週間はスーパーやコンビニで食品が手に入らない可能性があることです。

つまり、防災の役所と食料の役所が、別々の資料で同じ「1週間」を出している。これは偶然ではなく、後で見る支援の仕組みから逆算された数字でした。

なお、日数の話と品目の話は別モノです。何を何個そろえるかは家族構成で変わるので、そちらは全体像をまとめたページに譲ります。→ 家庭の備蓄品リスト完全版(全体像)|南海トラフの備蓄で実際にそろえる品目と数量

そなえぐらし管理人のイラスト
「南海トラフだから1週間」とだけ書かれた記事はたくさんあります。でも、なぜ3日ではダメなのかまで書いてある記事は少ない。数字の裏側を知ると、途中でやめずに続けられます。

1週間分が推奨される理由は、支援が届くまでの3段階にある

プッシュ型支援とは、被災自治体からの要請を待たずに、国が必要と見込まれる物資を判断して調達・輸送する仕組みのことです。逆に、自治体の要請にもとづいて送るやり方をプル型支援と呼びます。

内閣府の「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」(物資調達に係る計画の概要)は、発災からの時間を3つに区切っています。

発災からの時間 物資の供給の状態 家庭に何が起きるか
発災〜3日目 外部からの支援は前提にされていない期間。備蓄で対応する区分 家にあるものだけで生活する
4日目〜7日目 国のプッシュ型支援。要請を待たずに調達・輸送が始まる 物資は動き出すが、自分の手元に届くまでには時間差がある
8日目以降 地方からの要請にもとづくプル型支援に切替 必要なものを申請して受け取る通常の流れに戻っていく

ここが「なぜ1週間か」の核心です。計画が「備蓄で対応する」と明示しているのは3日目まで。4日目から7日目は支援が動き始める期間であって、届き終わる期間ではありません。そして8日目に、要請ベースの通常運転へ切り替わる。

言い換えるとこうなります。3日分の備蓄は「支援が動き出すまで」を持たせる量。1週間分の備蓄は「支援が動き出してから、自分のところに行き渡るまで」を持たせる量。前者は最低ライン、後者は現実的な着地点というわけです。

南海トラフ地震で支援が届くまでの3段階。発災から3日目は家庭の備蓄で対応、4日目から7日目は国のプッシュ型支援、8日目以降は自治体の要請にもとづくプル型支援

被害の広がり方も「1週間」を後押しします。同じ基本計画によれば、震度6弱以上または津波高3m以上となる市町村は31都府県764市町村。面積で全国の約3割、人口で約5割にのぼります。

人口の約5割、つまり日本に住む2人に1人が被災地域に入る計算です。この規模だと、隣の県から助けに来てもらうという平時の発想が通じにくくなる。支援する側も同時に被災している可能性があるからです。

電気・水道・ガスが「何日で復旧するか」という具体的な日数目標は、編集部で確認した範囲では公的資料に明記されたものを見つけられませんでした。そのため本記事では復旧日数の数字は扱いません。日数の根拠は、上の「支援が届くまでの構造」で読んでください。

3日分をすでに持っている人が足すのは「4日分の差分」だけ

差分の備蓄とは、ゼロから買い直すのではなく、いま家にある3日分に不足の4日分だけを積み増す考え方のことです。

3日分をそろえた棚を前に、「1週間分にしろと言われてもなあ」と手が止まる。よくある場面ではないでしょうか。でも必要なのは買い直しではありません。3日→7日は4日分の上乗せ。いま持っている量をもう一度そろえて、さらにその3分の1強を足すだけ。

種類 3日分ですでにあるもの 1週間分にするために足す考え方
飲料水 3日分×家族の人数 同じ量をもう1セット+1日分。部屋ごとに分けて置く
主食(米・麺・パンなど) 3日分×家族の人数 4日分を追加。普段食べる乾麺やレトルトを多めに買い、使った分だけ補充する回し方へ
おかず・汁物 3日分×家族の人数 4日分を追加。味の種類を増やすほうが食べ続けやすい
カセットボンベ 3日分の調理を想定した本数 加熱の回数から逆算し、4日分の本数を追加
簡易トイレ 3日分×家族の人数×1日の回数 4日分を追加。日数を延ばすと最も不足が出やすい
常備薬・衛生用品 3日分 4日分を追加。処方薬は主治医や薬剤師に相談して手元に置ける量を確認

書き込み欄:うちの4日分
家族の人数(   )人 × 4日 = 追加する日数分(   )人日
飲料水の追加(   )/主食の追加(   )/簡易トイレの追加(   )

この差分で見落とされやすいのがトイレです。水や食料は日数を延ばす感覚をつかみやすい一方、排せつは1日の回数×人数×日数で必要量がふくらみます。断水した状態で在宅避難を1週間続けるなら、ここが行き止まりになりやすい。

長期保存タイプの簡易トイレは、消費期限を気にせず押し入れに置ける点が1週間分の備蓄と相性のいい品目です。何年も置くものなので、普段使っているモールで保存年数と現在の取り扱いを確認しておくと安心です。


在宅避難そのものが成り立つかどうかは、建物の安全と衛生の確保が前提になります。そちらの条件は別の記事で整理しました。→ 在宅避難の準備リスト|成立する3つの条件

南海トラフ地震臨時情報が出たときの行動は、情報の種類で変わる

南海トラフ地震臨時情報とは、南海トラフ沿いで通常と異なる現象が観測されたときに気象庁が発表する情報のことで、4つの種類があります。基本計画(第2章第7節)にもとづいて、家庭に関係する部分だけ並べます。

情報の種類 発表される条件 期間 家庭が取る行動
調査中 M6.8程度以上の地震発生、またはプレート境界面での通常と異なるゆっくりすべりの観測時 調査が続くあいだ 続報を待つ。行政側は担当職員の緊急参集や情報収集の措置に入る段階
巨大地震警戒 プレート境界でM8.0以上の地震が発生したと評価された場合 対象の地震発生から1週間 津波到達までに避難が間に合わないおそれがある地域では避難・安全確保。あわせて日頃の備えの再確認
巨大地震注意 M7.0以上M8.0未満などの地震発生、または通常と異なるゆっくりすべりの観測時 1週間 事前避難は伴わない。備えの再確認などの「注意する措置」
調査終了 警戒・注意のいずれの条件も満たさなかった場合 措置は原則終了。地震の発生に注意しつつ通常の生活へ

4段階のうち、家庭の備蓄と直結するのは「警戒」と「注意」です。どちらも期間は1週間。そして両方に共通して求められているのが、日頃の備えの再確認でした。

基本計画が挙げている再確認の中身は、次のとおりです。臨時情報が出てから慌てて考えるのではなく、平時にこの並びを見ておくと動きが速くなります。

  • 避難場所と避難経路を確認する
  • 安否確認の手段を家族で取り決めておく
  • 家具などの固定を確認する
  • 家庭備蓄を確認する(数量と、置き場所の両方)

臨時情報が出た際に実際に避難するかどうかは、この記事の表では判断できません。実際の避難判断は、お住まいの自治体が出す避難情報と気象庁の発表に必ず従ってください。持病の薬や体調に関する判断も、主治医・薬剤師など専門家に相談してください。

再確認の項目に家具の固定が入っているのには理由があります。総務省消防庁の資料によれば、地震で約6割の部屋で家具が転倒・散乱し、震度5強でタンスが倒れることもあるとのこと。固定率は令和4年度で36%、令和17年度の目標は60%。10軒のうち約4軒しか固定できていない現在地です。備蓄の棚が倒れて中身が散らばれば、1週間分をそろえた意味が薄れます。

自分の市町村が推進地域かどうかは内閣府の一覧で確認できる

南海トラフ地震防災対策推進地域とは、「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」にもとづいて国が指定する地域のことです。令和7年7月1日時点で、1都2府26県707市町村が指定されています。

市町村一覧は内閣府のサイトで公開されているため、その場で確認できます。手順は3つ。

  1. 内閣府のページを開く「南海トラフ地震対策:防災情報のページ」にアクセス。
  2. 推進地域の市町村一覧で照合する都府県ごとに市町村名が並んでいます。
  3. 入っていたら1週間分、入っていなくても3日分指定地域なら「可能な限り1週間分」を優先。指定外でも、最低3日分は変わりません。

指定外=安全という意味ではない点だけ補足しておきます。勤務先や実家が指定地域というケースもあるので、家族の生活圏ごとに見ておくと現実的です。

当てはまらないケース・この方法が向かない人

1週間分という目標が、そのまま当てはまらない状況もあります。正直に書いておきます。

  • 収納スペースが足りない住まい:無理に1週間分を積むより、最低3日分を確実に維持するほうが先。基本計画も「可能な限り」という書き方です。
  • 建物が損傷して在宅避難ができない場合:備蓄の日数より避難先の確保が優先されます。この記事の前提は在宅避難です。
  • 津波の到達時間が極めて短い地域:備蓄より先に、避難経路と避難のタイミングが優先されます。
  • 食事に制限がある家族がいる場合:量ではなく中身の話になります。医療・栄養の判断は専門家へ。

よくある質問

Q. 3日分だけでは意味がないのですか?

いいえ。基本計画は「最低でも3日間」と書いており、3日分は下限として明確に位置づけられています。国の応急対策の計画でも、発災から3日目までは備蓄で対応する区分。まず3日分を確実にそろえ、そこから4日分を足していく順番で問題ありません。

Q. なぜ「1週間」で区切られているのですか?

物資支援の切り替わりが根拠のひとつです。内閣府の計画では、発災後4日目から7日目は国が要請を待たずに送るプッシュ型支援、8日目以降は地方の要請にもとづくプル型支援に切り替わる構造になっています。1週間は、支援が動き出してから通常の受け取り方に戻るまでの区切りにあたります。

Q. 南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」が出たら、備蓄を買い足しに行くべきですか?

「注意」で示されているのは事前避難ではなく、1週間の「備えの再確認」です。買い足しに走るより、いま家にある量と置き場所を数えるほうが先。避難に関する判断は自治体の避難情報と気象庁の発表に従ってください。

Q. 推進地域に指定されていない市町村に住んでいます。備蓄は不要ですか?

不要にはなりません。推進地域の指定は対策推進の枠組みであって、備蓄の要否を決めるものではないからです。「最低3日、可能な限り1週間」は、家庭の自活の目安として読むのが自然でしょう。

まとめ:今日やることは、棚の中身を数えることだけ

覚えるべき数字はふたつだけ。最低3日、可能なら1週間。その背景には、発災3日目まで備蓄・4日目から7日目はプッシュ型支援・8日目以降はプル型支援という、支援の届き方の構造がありました。

買い足しは明日でもできます。今日やることは1つだけ。いま家にあるものが何日分なのかを数えることです。

  1. 数える飲料水・主食・おかず・カセットボンベ・簡易トイレが、家族の人数で何日分あるかを紙に書き出します。
  2. 差を出す7日から、いまの日数を引きます。残った数字が、そのまま買い足す日数分です。
  3. 置き場所を決める増えた分をどこに置くかを先に決めてから買います。置き場所が決まらない量は、結局そろいません。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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