車に常備する防災グッズ|車内とトランクで分ける、夏に置けない物リスト

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外気温35℃の晴れた日、黒いミニバンを窓を閉め切って駐車する。JAFが2012年8月に実施したユーザーテストでは、このとき車内は最高57℃、ダッシュボードの上は79℃まで上がりました。サンシェードを付けても車内は最高50℃。窓を3cm開けても45℃。夏の車内は、手を打っても40℃台を割らない保管場所だった、という結果です。

だから車の防災グッズは、「何を買うか」より先に決めることがあります。置ける物と、置けない物を分けること。カセットボンベはメーカーが40℃以下での保管を指定し、モバイルバッテリーは高温下への放置がNITE(製品評価技術基盤機構)の注意喚起の対象。この2つを家に戻すだけで顔ぶれは変わります。

この記事が扱うのは、車に載せっぱなしにする常備品です。

この記事でわかること

  • 夏の車内とダッシュボードが何℃まで上がるか(JAF実測値)
  • ある物を車に置いてよいかを、自分で判定する5つの基準
  • 運転席まわり/トランク/車に置かない物、の仕分け表
  • 発炎筒と三角停止表示板の、義務の中身の違い

家に置く分の全体像は防災リュックの中身リストにあります。車は持ち出し袋の代わりではなく、置き場所を分散させる先の1つ。そう捉えると二重買いが減ります。

目次

夏の車内は最高57℃、ダッシュボードは79℃まで上がる

車内温度とは、エンジンを止めた駐車中の車で計測された空気および内装表面の温度である。JAFのテストは2012年8月22〜23日、外気温35℃・晴天の条件です。

条件 車内の最高温度 車内の平均温度 ダッシュボードの最高温度
黒色車・窓を閉め切り 57℃ 51℃ 79℃
白色車・窓を閉め切り 52℃ 47℃ 74℃
黒色車・サンシェード装着 50℃ 記載なし 52℃
黒色車・窓を3cm開ける 45℃ 記載なし 75℃

出典:JAFユーザーテスト「夏の車内温度」

対策の効き方には差があります。サンシェードはダッシュボードを79℃から52℃へ落とした一方、窓を3cm開ける方法では空気が45℃でもダッシュボードは75℃のまま。直射日光が当たる面と空気の温度は別ものです。そして、車を涼しくする工夫と物を安全に保管する条件もまた別の話。サンシェードを付けても50℃なら、「40℃以下で保管」の物の置き場としては失格です。

同じテストでは、エアコンを停止してから15分で熱中症指数が危険レベルに到達したと報告されています。コンビニで買い物をして戻るくらいの時間です。人や動物を車内に残さないのは、グッズ以前の大前提。

車に置いてよい物を、自分で判定する5つの基準

判定基準とは、品目リストを暗記する代わりに、目の前の物を1つずつその場で振り分けるための問いかけである。

  • 高温で発火・破裂・液漏れなど、その物自体が危険になるか(該当するなら置かない)
  • メーカーが保管温度・保管場所を指定しているか(満たせないなら置かない)
  • 劣化しても命に関わらないか(関わらないなら定期交換の前提で置ける)
  • 緊急時に運転席から手が届く必要があるか(あるなら運転席まわりへ)
  • 年に1回、点検して入れ替える手間を払えるか(払えないなら積まない)

1つめと2つめの代表がカセットボンベです。岩谷産業(イワタニ)の公式FAQには、火気や直射日光を避け40℃以下の湿気の少ない場所で保管するよう記載があり、40℃以上になる車内では破裂・爆発の恐れがあるとされています。モバイルバッテリーも同じ側。NITEは2025年6月26日、リチウムイオン電池搭載製品を高温下に放置するなど熱を与えないよう注意喚起しました。事故は5年間(2020〜2024年)で1860件、うち約85%の1587件が火災に発展しています。

食べ物と飲み物も2つめでふるいにかかります。尾西食品の公式FAQはアルファ米を「直射日光、高温多湿を避けて、常温で保存」とし、常温をJISに基づく20℃±15℃=5〜35℃と説明。車内の最高57℃は上限を20℃以上超えます。富士ミネラルウォーターの5年保存水も冷所・暗所での保存が案内されています。夏は降ろし涼しい時期だけ積む形なら成立します。缶詰なら缶詰の選び方もどうぞ。

そなえぐらし管理人

仕分け表で編集部の判断がいちばん割れたのが保存食でした。「積んである安心」か、「メーカーの保存条件」か。当サイトは後者を採ります。条件を外れた食品がどうなるかを保証できないからです。

置き場所で3つに分ける仕分け表

置き場所別の仕分けとは、同じ防災グッズを「取り出す速さ」と「保管条件」の2軸で3グループに振り分ける整理法である。自宅・職場・車と分散させるときも同じです(職場側は会社のデスクに置く防災セットへ)。

品目 置く場所 理由
発炎筒(非常信号用具) 運転席まわり 保安基準で備付け義務。停止直後に使う
脱出用ハンマー 運転席まわり 水没・横転時は車内を移動できない
軍手・携帯トイレ1〜2回分 運転席まわり 降車せず手が届く必要がある
携帯トイレの予備・ごみ袋 トランク 数がかさばる。尽きると困る
三角停止表示板 トランク 車外に出して置く物。面積を取る
アルミブランケット・毛布 トランク 高温で危険が生じない
スコップ・長靴・けん引ロープ トランク 重量物。車内に置くと走行中に危ない
モバイルバッテリー・ポータブル電源 車に置かない(持ち込む) NITEが高温放置に注意喚起
カセットボンベ・常備薬 車に置かない(持ち込む) 保管温度の指定がある
保存食・保存水 車に置かない(夏は降ろす) 常温5〜35℃・冷所暗所を満たせない

大事なのは下の3行です。「車に置かない物」を決めて初めて、車の防災グッズは形になります

グッズ以外では燃料も備えの一部。全国石油商業組合連合会の「満タン&灯油プラス1缶運動」は、燃料メーターが半分程度になったら満タンにすることを推奨しています。

トランク側から、具体を1つだけ挙げておきます。エマージェンシーシート(アルミブランケット)は、たたむと手のひらほどに収まる薄いシート状の保温具。仕分け表で「高温で危険が生じない」側に入れたとおり、夏の車内に置いたままにできる数少ない防寒具です。Eco Ride Worldのアルミシートには、この種のシート特有のカサカサという音を抑えた「静音」タイプがあります。車内で夜を明かすかもしれない場面では、音が小さいことがそのまま休めるかどうかに効きます。サイズと入数は販売ページで確認してください。


緊急時に使う道具は、公的機関が示す手順とセットで選ぶ

「手順とセット」とは、道具の性能を単体で見るのではなく、公的機関が公表する使用場面と限界を確認して選ぶという意味である。

発炎筒は常時備付け、三角停止表示板は停止時の表示

この2つは混同されがちですが、義務の性質が違います。発炎筒(非常信号用具)は道路運送車両の保安基準第43条の2により車両への備付けが義務。一方、三角停止表示板そのものに車載義務はありません。高速自動車国道や自動車専用道路でやむを得ず停止する場合に、停止表示器材の表示義務が道路交通法施行令第18条で定められている、という組み立てです。怠れば故障車両表示義務違反となり、普通車で反則金6,000円・違反点数1点(2026年8月10日時点)。

火薬式の発炎筒はJIS D5711で有効期限が4年と規定され、メーカー製品も4年での交換が案内されています。期限切れは車検で不適合となる場合があるため、助手席足元を次の給油のついでにのぞいてみてください。LED式は電池交換のみで長く使えます。

脱出用ハンマーで割れないガラスがある

JAFが2014年6月に実施したユーザーテストでは、金槌型・ポンチ型など脱出用ハンマー3種はいずれもサイドガラス(強化ガラス)を割ることに成功。ただしフロントガラスは合わせガラスのため割れないと報告されています。さらに一部車種はドア(サイド)ガラスにも合わせガラスを採用しており割れない場合がある、とも。

水没時についてもJAFの数字があります。セダンでは水位がドアノブ付近(80cm前後)でドアや窓が開きにくくなり、水深60cmでは通常の約5倍の力が必要。ただし水位差が小さくなると、かえって開きやすくなるとも。JAFは、車内にとどまらず水位が上がる前の早い段階で脱出するか、ガラスを割って脱出することを推奨しています。

雪の立ち往生では、道具より先に除雪と換気

国土交通省中部地方整備局の雪みち情報は、マフラーが雪で埋もれると排気ガスが車内に逆流して一酸化炭素中毒の危険があるとして、マフラー周辺の定期的な除雪と、窓を少し開けての換気を対処に挙げています。あわせて紹介されたJAFの検証では、窓を5cm開けても除雪しなかった場合は40分で失神濃度(800ppm)まで上昇。除雪をすればほぼ上がらなかったとのこと。

40分は、渋滞でラジオを2曲か3曲聴いているうちに過ぎる長さ。雪の季節にトランクへ入れるべきは、暖を取る道具より先にスコップと長靴です。

車から降りられない時間をしのぐ3点

「降りられない時間」とは、通行止めや大雪で車列が動かず、車外に出られない状態を指す。トイレ・明かり・電源の3つが、この時間の質を決めます。

渋滞と立ち往生で最初に困るのはトイレ

高速道路上で車列が止まり、次のパーキングエリアまで進めない。子どもが「トイレ」と言い出す。この場面で効くのが、車内で使い切れる携帯トイレです。全体の比較は簡易トイレの比較記事にありますが、車載用は「席を立たずに使える」ことが優先されます。

Qbitの「どこでも携帯トイレ」は、用途を小便用に絞った携帯トイレ。大便にも対応する製品より1回あたりの体積が小さく、ドアポケットに数回分を分けて置きやすいのが車載向きな理由です。高温で危険が生じる素材ではないため、前章の判定では「置いてよい」側。詳しい仕様は販売ページで確認しておいてください。


明かりは、両手が空く形で持つ

夜間に路肩でトランクを開ける、雪をかく、後方に停止表示板を置きに行く。どれも片手が塞がると難易度が上がります。だから車に積む明かりは、懐中電灯よりヘッドライト。理由はヘッドライトが防災に向く理由へ。

GENTOS(ジェントス)のヘッドライト CP-195DBは、公表スペックで明るさ120ルーメン、単3電池式、防滴仕様。乾電池で動く点が車載では効きます。充電式のように「使いたいときに充電が切れている」事態が起きにくいからです。


電源は「積む物」ではなく「持ち込む物」

ここは矛盾なく整理します。前章のとおりNITEは高温下への放置に注意喚起しており、モバイルバッテリーは車に載せっぱなしにする常備品ではありません。玄関やカバンに定位置を作り、乗るときに載せ、降りるときに持って出る物です。

Ankerの Power Bank(20000mAh・30W出力)は、容量と出力の両方に余裕がある一本。長時間の立ち往生でスマホを複数台つなぐ場面なら、この容量帯が候補です。決め方はモバイルバッテリーの容量の決め方で解説しました。現在の取り扱いを普段のモールで見ておくとよいでしょう。


厚生労働省の資料「被災地での健康を守るために」には、食事や水分を十分にとらない状態で車などの狭い座席に長時間座り足を動かさないと、血行不良が起こりエコノミークラス症候群が発症するリスクが高まるおそれがある、と記載されています。初期症状は大腿から下肢の発赤・腫脹・痛み等。体調の判断は自己流で行わず、医療機関や現地の医療救護所にご相談ください。

なお、車で一晩を過ごす前提の装備は常備品とは別のリストです。そちらは車中泊は防災になるのかで扱っています。

車に防災グッズを積むのが向かないケース

向かないケースとは、車に積むこと自体が管理コストを増やし、家に置いたほうが結果的に機能する状況である。

  • 点検・入れ替えを年1回もする見込みがない(劣化した物が積まれたままになる)
  • カーシェアやレンタカー中心で自分の車がない(持ち込み型が向く)
  • 屋外駐車場しかなく、夏の直射日光を避けられない
  • トランクを仕事の荷物で常時使っている(結局降ろしたままになる)

よくある質問

Q. 水と食料は車に積みっぱなしでいいですか?

A. メーカーの保存条件を満たせるかで判断してください。尾西食品はアルファ米を「直射日光、高温多湿を避けて、常温で保存」(常温はJISで20℃±15℃=5〜35℃)とし、富士ミネラルウォーターの5年保存水は冷所・暗所での保存を案内しています。夏の車内は最高57℃。降ろす運用が現実的です。

Q. 脱出用ハンマーがあれば、どの窓でも割れますか?

A. 割れない窓があります。JAFのユーザーテストでは、ハンマー3種はいずれもサイドガラス(強化ガラス)を割れた一方、合わせガラスのフロントガラスは割れないと報告されました。一部車種はドアガラスにも合わせガラスを採用しており割れない場合があるとのこと。自車の仕様をご確認ください。

Q. 三角停止表示板を積んでいないと違反になりますか?

A. 三角停止表示板そのものの車載義務はありません。ただし高速自動車国道・自動車専用道路でやむを得ず停止する場合は、停止表示器材の表示が道路交通法施行令第18条で義務づけられています。表示しなければ故障車両表示義務違反となり、普通車で反則金6,000円・違反点数1点です(2026年8月10日時点)。

まとめ:今日やることは「降ろす物を決める」1つ

買い足しは後回しで大丈夫。まず車に何が積まれているかを確認して、判定基準に引っかかる物を家に戻す。車の防災グッズは、足す前に引くほうが効きます

夏の車内は最高57℃・ダッシュボードは79℃(JAF実測)。だから車の防災グッズは「置ける物」から決める。高温で危険が生じる物と、メーカーが保管条件を指定している物は、車に置かず乗るときに持ち込む。

  1. 全部出す トランクとダッシュボード、シート下の物を一度すべて出して並べます。
  2. 保管条件で分ける 「40℃以下」「常温」「冷所」の表示がある物とリチウムイオン電池を含む物を家側へ。
  3. 置き場所で分ける 座ったまま届く必要がある物(発炎筒・脱出用ハンマー・軍手・携帯トイレ)を運転席まわり、重い物をトランクへ。

市販品は、メーカー各社の公表内容を1点ずつ照らし合わせた防災セットの比較にまとめました。車用を検討する前に家庭用で何が足りているかを見ておくと、重複を避けられます。全体像は防災リュックの中身リストへどうぞ。

参考・出典

いずれも2026年8月10日時点で確認。

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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