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ハザードマップで最初に見るのは3点です。①自宅の場所の色と、その色が表す深さ(洪水・高潮・津波なら想定される浸水の深さ、土砂災害なら警戒区域の種類)、②避難先と、そこへ向かう経路、③いま開いている図が、どの災害のものか。色の意味は、浸水の深さを示す図(洪水・高潮・津波)と土砂災害の図とで別なので、③を決めてから①を読みます。
防災庁が2026年11月2日に出した「事前防災徹底のための緊急要請」では、国民向けの呼びかけの1つに「ハザードマップ、避難場所、避難経路の確認」が入っています。防災大臣のメッセージ(防災庁の公表ページ、2026年11月3日確認)には、次のように書かれています。
「揺れやすさマップ」や「津波ハザードマップ」などのハザードマップを見て、自分の家や職場のリスクを把握してください。また、避難場所や避難経路を確認しておきましょう。
この記事は、その確認のうち、国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」で見られる洪水・土砂災害・高潮・津波の図の読み方と、読み取ったあとの判断を扱います。揺れやすさマップは対象に含めていません。
この記事は平時に自宅の想定を調べるための解説です。実際の避難のタイミングと行動は、お住まいの市区町村が発令する避難情報と、気象庁が発表する防災気象情報に従ってください。ハザードマップの色や区分をもとに、当サイトが「避難しなくてよい」と判断することはありません。
自宅の条件で、見る図と取る行動は変わる
内閣府の「避難行動判定フロー」は、ハザードマップで自宅の場所に色が塗られているなら、災害の危険があるので原則として立退き避難(自宅の外に避難)が必要としています。例外として、浸水の危険がある場合に限り、次の3つがそろえば自宅にとどまる「屋内安全確保」も可能とされています。①洪水により家屋が倒壊又は崩落してしまうおそれの高い区域の外側である、②浸水する深さよりも高いところにいる、③浸水しても水がひくまで我慢できる水・食糧などの備えが十分にある。この3つを、住まいの条件ごとに読み替えたのが次の表です。
| 自宅の条件 | 先に見る図 | 読み取ること | 取る行動 |
|---|---|---|---|
| 戸建て・1階で暮らす | 洪水浸水想定区域(想定最大規模) | 浸水深が0.5m未満(1階の床下浸水)か、それ以上か | 0.5m以上は1階の床上まで浸水する想定で、居室が浸水深より低くなり②を満たさない。立退き避難が前提。0.5m未満でも①と③を確かめる |
| 戸建て・2階に居室がある | 同上 | 浸水深が3m未満か、3〜5m未満か | 内閣府の簡易凡例では、3m未満は1階の床上〜軒下までの浸水です。川の防災情報は2〜5mの帯を「2階の軒下まで浸水する」目安としているため、2階の床の高さによっては居室が浸水深より低くなります。2階の居室の床が浸水深より高いと確かめられたときだけ②を満たします。3〜5m未満は2階の床上〜軒下まで浸水するため、2階でも②を満たしません。どちらも①と③が必要です。 |
| マンション・2階以上 | 同上+自宅の階 | 浸水深と階の対応(5〜10m未満は3・4階まで浸水する帯) | 居室が浸水深より高ければ②は満たしやすい。③は、電気・ガス・水道・トイレが使えなくなるおそれがあるため、水・食糧・薬が日数分あるかで決まる |
| 川や堤防の近く | 家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流・河岸侵食) | 自宅が区域に入っているか | 入っていれば①を満たさず、立退き避難。重ねるハザードマップの「すべての情報から選択」で見られる。表示がない河川は、河川事務所や市区町村の図で確認する |
| 崖・急傾斜地・沢の近く | 土砂災害警戒区域・特別警戒区域 | 区域に入っているか。入っていなくても崖のそばか | 判定フローが例外を認めているのは浸水の場合だけ。警戒レベル3・4が出たら危険な場所から避難する。色が塗られていなくても、崖のそばや低い土地では避難情報を参考に必要に応じて避難 |
| 海や河口の近く | 津波浸水想定・高潮浸水想定区域 | 重ねるハザードマップでは洪水と同じ凡例で、浸水の深さの帯を読む(階数の目安は洪水の資料のもの) | 指定緊急避難場所は災害の種類ごとに指定されている。津波用か洪水用かを見分けて、避難先を決める |
避難先は、小中学校や公民館だけではありません。判定フローは、安全な親戚・知人宅やホテル・旅館に避難することも考えてみましょう、としています。行き先は、普段のうちに決めておけます。
判定が出たあとの備えの全体像は家庭の備蓄品リスト完全版にあります。この記事の後半では、持って出る家ととどまる家のそれぞれで、最初にそろえるものを書いています。
ハザードマップを見る場所は2つある。「重ねる」と「わがまち」の使い分け
ハザードマップポータルサイトとは、国土交通省・国土地理院が運営する、全国のハザードマップへの入口となるWebサイトです。ここには性格の異なる2つのサービスが並んでいます。
ひとつが「重ねるハザードマップ」。洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報に加え、道路防災情報や土地の特徴・成り立ちなどを、地図や写真に重ねて表示できるサービスです。載っているのは国や都道府県などが作成した災害リスク情報で、水防法にもとづいて市町村が作る水害ハザードマップそのものではない、とポータルの「よくある質問」に書かれています。
もうひとつが「わがまちハザードマップ」。市町村が法令に基づいて作成・公開したハザードマップへのリンク集で、市町村が配る紙の地図と同じ内容にたどり着けます。避難場所や地域独自の注意事項は、こちらで確認します。
全国共通の物差しで自宅の想定浸水深を知りたい → 重ねるハザードマップ。自分の市区町村が配る地図そのものを見たい・避難場所や地域の情報まで確認したい → わがまちハザードマップ。両方を1回ずつ見ておくと、抜けが出ません。
順番としては、まず重ねるハザードマップで自宅の点を確認するのが早いです。手順は次のとおり。
- ハザードマップポータルサイトを開くdisaportal.gsi.go.jp にアクセスし、トップページの「住所から探す」に自宅の住所を入れます。「現在地から探す」「地図から探す」「災害の種類から選ぶ」もあります。
- 自宅の住所を入れて地図を動かす住所検索で自宅周辺を表示し、建物が判別できるところまで拡大します。ここで見るのは町全体ではなく、あくまで自宅の1点です。
- 災害の種類を1つずつ表示する洪水・土砂災害・高潮・津波を、まとめてではなく1種類ずつ重ねます。同時に重ねると、どの色がどの災害のものか判別できなくなります。「災害の種類から選ぶ」で洪水を選ぶと、洪水浸水想定区域(想定最大規模)が最初に表示されます。
- 洪水は「想定最大規模」と「計画規模」の両方を見る洪水浸水想定区域には想定最大規模のレイヤーと計画規模のレイヤーがあり、区域の広さも深さも変わります。違いは後述のとおりです。
- わがまちハザードマップで自分の市区町村の地図も開く重ねるハザードマップの画面右上の「リスク検索」で自宅の地点を選ぶと、ポップアップの下に「○○市のハザードマップを見る」が出ます。それを選ぶと、その市町村のハザードマップに移れます。トップページの「わがまちハザードマップ」の「まちを選ぶ」からも開けます。避難場所・避難経路、地域独自の注意書きは、こちらで確認します。
災害の種類から洪水を選ぶと、洪水浸水想定区域(想定最大規模・計画規模)、浸水継続時間(想定最大規模)、航空写真、指定緊急避難場所が初期表示されます。土砂災害なら、土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊・土石流・地すべり)と指定緊急避難場所です(国土地理院「重ねるハザードマップ 操作マニュアル」令和7年3月)。住所を検索すると、その場所で想定される災害リスクや避難行動のポイントが文字でも表示されます。浸水継続時間は見落とされがちですが、在宅避難を考えるうえで水と食料の日数を決める値になります。
住まいを選ぶ場面でも、水害ハザードマップは使われます。宅地建物取引業者は、2020年(令和2年)8月28日から、重要事項説明で、水防法にもとづいて作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を説明することが義務になっています。物件が浸水想定区域に入っていないことは、水害リスクがないという意味ではありません(国土交通省 報道発表資料)。
色が示しているのは「浸水の深さ」。深さの区分と階数の対応
浸水深とは、その場所が浸水したときに想定される水面の高さのことです。ハザードマップの色は、この浸水深を段階ごとに塗り分けたもので、色そのものに固有の意味があるわけではありません。
2024年8月1日に、重ねるハザードマップとオープンデータの凡例がそろえられました(国土地理院「重ねるハザードマップとオープンデータの凡例統一について」)。洪水・内水(雨水出水)・高潮・津波の浸水想定区域は、20m以上/10〜20m/5〜10m/3〜5m/0.5〜3m/0.5m以下の6つの色に分かれ、薄い黄色系から濃い紫系へ深さが増します。さらに0.5〜3mの中の「0.5〜1m」と、0.5m以下の中の「0.3m以下」が薄い色で細かく分けて示されることがあり、ポータルの「よくある質問」は浸水深を「6または8段階のランク表示」としています。色の名前を覚える必要はなく、自宅の点がどの深さの帯にあるかを読めば足ります(内水のみ、浸水深0〜0.1mの範囲は表示されません)。
その深さは自宅の何階に当たるのか。内閣府の「避難行動判定フロー」の簡易凡例(4区分)と、国土交通省「川の防災情報」の目安を使って並べたのが下の表です。浸水深は、各地点のおおよその地面の高さ(地盤高)からの深さです。1階の床が地面からどれだけ高いかで、実際の水の入り方は変わります。
| 浸水の深さ | 内閣府の簡易凡例が示す目安 | 川の防災情報の目安 |
|---|---|---|
| 0.5m未満(0.3m以下はさらに薄い色) | 1階の床下浸水 | 0〜0.5mは床下浸水。大人の膝までつかる |
| 0.5〜3m未満(0.5〜1mが薄い色) | 1階の床上〜軒下まで浸水 | 0.5〜1.0mは床上浸水で大人の腰まで。1〜2mは1階の軒下まで |
| 3〜5m未満 | 2階の床上〜軒下まで浸水 | 2〜5mは2階の軒下まで |
| 5〜10m未満 | 3階の床上〜4階の軒下まで浸水 | 5m以上は2階の屋根以上が浸水 |
| 10〜20m未満/20m以上 | 簡易凡例に区分なし | 5m以上に含まれる(2階の屋根以上が浸水) |
数字だけ並べると遠く感じますが、体に置き換えると距離が縮まります。0.5mは大人の膝、3mまでが1階の床上〜軒下、5mを超えたら2階の屋根より上。つまり自宅の点が「3m〜5m未満」に入っているなら、2階に上がっても床上まで水が来る想定ということです。
ここで注意したいのが、凡例が1種類ではないという点。内閣府の判定フローには、ハザードマップの着色や凡例は市町村によって異なる場合がある、と明記されています。手元の紙の地図を読むときは、必ずその地図に印刷された凡例を見てください。
浸水の深さの色(洪水・内水・高潮・津波)は同じ凡例で読めますが、土砂災害の色は別の意味です。洪水の赤系と土砂災害の赤系を同じ尺度で比べないでください。1種類ずつ表示して読むのは、この混同を避けるためでもあります。
浸水想定のあるエリアでは、実際に足すべき備蓄の中身が少し変わります。水に浸かる前提で必要になるものは水害の備蓄品リストにまとめました。
同じ地図に載っている「災害の種類」を分けて読む
ハザードマップは1枚の地図ではなく、災害の種類ごとに作られた複数の地図の集合体です。種類が違えば、指定している主体も、規制の意味も違います。
洪水は「想定最大規模」と「計画規模」の2枚がある
洪水浸水想定区域図でつまずきやすいのが、この2つの規模の違いです。ここを知らないまま片方だけ見ると、想定を過小にも過大にも読み違えます。
| 呼び方 | どんな雨か | 年超過確率 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 想定最大規模(L2) | その地域において想定し得る最大規模の降雨 | 概ね1/1000 | 重ねるハザードマップで洪水を選んだとき、最初に表示される図 |
| 計画規模(L1) | 長期的な河川整備の目標となる降雨規模 | 河川の重要度に応じて概ね1/10〜1/200 | 「現在の凡例」と「旧凡例」の2種類が載っている。同じ河川が両方にあるときは、現在の凡例を見る |
ここで誤解しやすいのが確率の読み方です。年超過確率1/100は「100年に1回起きる」という周期を意味しません。1年間にその規模を超える確率が1/100という意味で、100年の間に2回以上起こることも、1回も起こらないこともある——ハザードマップポータルサイトの「よくある質問」に、そう明記されています。1/1000も同じで、「1000年に1度の大雨」という言い方は正確ではありません。
自宅の想定を知るという目的なら、まず想定最大規模を見るのが素直です。区域が広く、深さも大きく出るため、備えを考える側の前提としては安全側に立てます。
土砂災害は「警戒区域」と「特別警戒区域」で意味が変わる
土砂災害警戒区域(通称イエローゾーン)とは、急傾斜地の崩壊・土石流・地すべりが発生した場合に、住民等の生命または身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域のことです。警戒避難体制を整備するために、都道府県知事が指定します(土砂災害防止法)。
土砂災害特別警戒区域(通称レッドゾーン)は、そのイエローゾーンのうち、急傾斜地の崩壊等で建築物に損壊が生じ、住民等の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域。こちらは指定されると、①住宅地分譲・社会福祉施設・学校・医療施設等の特定開発行為が許可制になる、②建築物の構造規制がかかり建築確認の対象になる、③著しい損壊が生じるおそれのある建築物の所有者等に、都道府県知事が移転を勧告できる、という規制が加わります(国土交通省「土砂災害防止法の概要」)。
イエローとレッドの差は「色が濃いかどうか」ではなく、建物の壊れ方に踏み込んで規制がかかっているかどうか。レッドゾーンは、建築物に損壊が生じるおそれがある区域として指定されています。
高潮・津波も同じ凡例で読める
高潮と津波の浸水想定区域図も、2024年8月の凡例統一により、重ねるハザードマップでは洪水と同じ凡例で表示されます。深さの帯の読み方は共通なので、自宅の点がどの帯にあるかは同じ手順で確認できます。ただし、前半の階数の目安は洪水についての資料にもとづくものです。津波・高潮に当てはめず、避難先は災害の種類ごとに指定されている指定緊急避難場所で確認してください。
台風の接近時は、高潮とあわせて停電や物流の停止も同時に起こりえます。時間の流れに沿って何を先にそろえるかは台風に備える備蓄リストで時系列に並べました。
家屋倒壊等氾濫想定区域は、色の濃さと別枠で見る
家屋倒壊等氾濫想定区域とは、堤防決壊に伴う激しい氾濫流や河岸侵食が発生して、家屋が倒壊・流失するおそれがあると想定される区域です。国土交通省と都道府県が、洪水浸水想定区域図とあわせて公表しています(国土交通省「洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップ」)。
この区域が重要なのは、浸水深の色が薄くても、そこでは「2階に上がる」が答えにならないから。内閣府の「避難行動判定フロー」は、屋内安全確保を選べる条件の1つに、洪水により家屋が倒壊又は崩落してしまうおそれの高い区域の外側であることを挙げています。この区域の中では、上の階へ移動するという選択肢が最初から外れ、立退き避難が前提になります。
国土交通省 京浜河川事務所(鶴見川)の家屋倒壊等氾濫想定区域図の解説には、この区域に指定されていない区域においても家屋倒壊・流出等が発生する場合があると書かれています。「区域外だから大丈夫」という読み方はできません。
区域の図は、重ねるハザードマップの「すべての情報から選択」にある「家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)」「家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)」のレイヤーで見られます。ただし、都道府県が管理する河川は一部の都道府県のデータしか配信されていません。内閣府の判定フローも、家屋倒壊等氾濫想定区域は地図に記載がない場合があるので、お住まいの市町村へ問い合わせるよう案内しています。表示されないときは、わがまちハザードマップや市区町村の窓口、河川事務所の公表ページで確認するのが確実です。
読み取った結果を、備えの中身に変換する
ここからが本題です。ハザードマップを見る目的は、地図を理解することではなく、自宅が「避難する家」なのか「在宅避難できる家」なのかを決めることにあります。判断の骨格は、内閣府(防災担当)の「避難行動判定フロー」が示しています。
3つの条件は、前半の表で住まいの条件ごとに読み替えたとおりです。原則は立退き避難で、屋内安全確保はあくまで例外的な選択肢という位置づけです。
次の5項目のうち、上の3つが判定フローの3条件です。4つ目と5つ目は、土砂災害と避難に時間がかかる人を考えて足した確認項目です。1つでも空欄が残るなら、それは「避難する家」側だと考えてください。
- 自宅は家屋倒壊等氾濫想定区域の外にある(区域内、または未確認なら該当しない)
- 普段いる階の床の高さが、想定浸水深より上にある(例:想定3m〜5m未満なら2階の床上まで浸水しうる)
- 浸水継続時間の間、水・食料・トイレの備えが足りている
- 自宅は土砂災害警戒区域の外にある(判定フローが例外を認めているのは浸水の場合だけ)
- 家族に高齢者・障害のある人・妊産婦・乳幼児連れなど、避難に時間がかかる人がいない(いる場合は警戒レベル3の段階で動く前提になる)
| 判定 | 前提となる行動 | 備えの重心 | 動くタイミングの目安 |
|---|---|---|---|
| 1つでも欠ける=避難する家 | 避難所等への立退き避難(水平避難) | 持って出られる装備。1つにまとまった持ち出し品 | 警戒レベル4「避難指示」で危険な場所から全員避難。避難に時間がかかる人はレベル3「高齢者等避難」で |
| 上の5項目すべてに当てはまる=在宅避難できる家 | 屋内安全確保も選択可(原則は立退き避難) | その場で消費し続けるもの。水・食料・トイレの日数分 | 同上。自治体が発令する避難情報に従う |
警戒レベルは1から5まであり、レベル3「高齢者等避難」とレベル4「避難指示」は市区町村が発令します。レベル5「緊急安全確保」は災害の発生または切迫を示すもので、市区町村が可能な範囲で発令するため、必ず出るとは限りません。レベル5を待つ設計にはできない、ということです。
「避難する家」だった人が、最初にそろえるもの
持って出る前提の家では、備えの評価軸が「量」から「持てるか」に変わります。棚に分散して置いてある食料や水は、避難の直前にかき集められません。最初の1つは、リュックにまとまった状態で玄関に置けるものが動かしやすいはずです。
ここで挙げるのは、1人用の防災セット(リュック型・食品付き・40点)。非常食と水を含む40点が1つのリュックに収まっている構成で、中身を自分で選び直す前の「ひとまずの基準線」として機能します。1人用なので、家族の人数分を段階的に足していく買い方もできます。持ち出しを前提とする判定になった人が、最初に手をつける対象として素直な選択肢です。まずは現在の内容と在庫を確認してみてください。
市販の防災セットは、メーカーごとに点数の数え方も中身の質もかなり違います。当サイトでは各社の公表内容を1点ずつ確認して並べた市販の防災セットの比較を用意しているので、セットを本気で選び分けたい人はそちらもあわせてどうぞ。
「在宅避難できる家」だった人が、最初にそろえるもの
3条件を満たしてその場にとどまる場合、家は「避難所」になります。とはいえ、内閣府のフローが3つ目の条件に置いているのは、水がひくまで我慢できる水・食糧等の備えが十分にあること。裏を返せば、備えが足りなければ在宅避難は成立しないということでもあります。在宅避難が成立する条件の整理は在宅避難が成立する3つの条件に詳しくまとめました。
最初に効くのは水です。とどまる日数がそのまま必要量になるうえ、断水は浸水が引いたあとも続きます。ここで挙げるのは長期保存水(500ml×24本・5年保存)。500mlのペットボトルなので、1本=1回分として消費量を数えやすく、持ち運びも軽い。5年保存なので、買い替えの管理も年単位で済みます。ローリングストックの土台としてケース単位で置いておく前提なら、まず現在の在庫状況を見ておくとよいでしょう。
なお、マンションの高層階は「浸水深より高い場所」の条件を満たしやすい一方で、停電でエレベーターと給水ポンプが止まると、水の運搬という別の問題が立ち上がります。この分岐についてはマンション高層階の停電と断水で整理しました。上階だから安全、という単純な話にはなりません。
浸水想定が浅い家は、玄関と掃き出し窓を先に塞ぐ
判定が「在宅避難できる家」に落ち着き、しかも自宅の点が「0.5m未満」——1階の床下浸水の帯(0.3m以下はさらに薄い色)に入っていた人には、もうひとつ手前の作業が残ります。水が入ってくる場所を、あらかじめ決めておくことです。色が薄い帯でも、床下に水が入れば断熱材と設備配管は濡れ、片付けと乾燥は週の単位でかかります。
家の中で水が入る場所は、だいたい決まっています。玄関、勝手口、掃き出し窓、それに半地下の階段や地下車庫の入口。開口部の下端が地面から低い順に、水は入ってきます。道具を買う前に、自宅のどこがいちばん低いのかを1回歩いて確かめてください。巻尺で下端の高さを測っておくと、あとで製品の高さと突き合わせられます。
水のう・土のう・止水板をどこに・どの順で置くかという手順は、自治体が公表している方法に沿って家庭でできる浸水対策|水のう・土のう・止水板を自治体の公表手順で使い分けるにまとめました。設置の前には、そちらとお住まいの市区町村の案内を必ず確認してください。
止水の道具は、浸水を防げると約束するものではありません。メーカーが公表しているのは「何cmまでを想定した製品か」という数値で、それを超える水位には設計上対応していません。浸水深が大きい家、家屋倒壊等氾濫想定区域の中にある家では、開口部を塞ぐ作業よりも立退き避難が先です。避難するかどうか、いつ動くかの判断は、内閣府・国土交通省の資料と、お住まいの市区町村が発令する避難情報、気象庁の防災気象情報に従ってください。
| 地図で読み取った区分 | 開口部でやれること | 押さえておく限界 |
|---|---|---|
| 0.5m未満(最も薄い側。0.3m以下はさらに薄い) | 玄関・勝手口・掃き出し窓の下端を塞ぐ余地がある帯。塞ぐのと同時に、家財を上階へ動かす手を並行させる | 家庭向け製品の公表値は10〜20cm程度で、区分の上限より低い。0.5mは大人の膝までつかる水位で、水が来てからの屋外作業は危険 |
| 0.5m以上 | 開口部を塞ぐという発想では足りない | 原則は立退き避難。屋内安全確保を選べるのは、家屋倒壊等氾濫想定区域の外で、居室が浸水深より高く、水・食糧などの備えが十分にある場合だけ |
玄関の幅を塞ぐ:旭電機化成の止水板(ABO-32903)
1つめは旭電機化成の止水板 3枚組(型番ABO-32903)です。同社の公式製品ページに記載されている仕様では、1枚の商品サイズが約W445×D50×H400mm、商品重量が約360g/1枚、本体の材質はポリプロピレン、付属の結束バンドはナイロン、クッションゴムはEPDM。板を横につないで幅を伸ばす構成で、公式ページには5枚セットすれば幅1.75m・高さ10cmまでの浸水を防げる、同社の吸水土のうを2段重ねすれば高さ20cmの止水ができる、と書かれています(旭電機化成 公式製品ページ)。
この数値の読み方が肝心です。10cm、土のうと組んでも20cm。ハザードマップのいちばん薄い区分(0.5m未満、さらに薄い帯は0.3m以下)の上限にも届きません。浸水深の帯全体をカバーする道具ではなく、帯の下のほうに自宅が位置する場合の、開口部1か所ぶんの守り——そう受け取るのが正確です。だから先に測るのは自宅の玄関の幅と、下端の高さ。3枚で足りなければ連結して伸ばす前提の製品なので、必要な枚数は測ってから決まります。1枚360g程度という軽さも、水が迫る短い時間に1人で立てられるかどうかに直結する要素でしょう。現在の仕様と在庫は販売ページで確認できます。
土や砂が用意できない家に:水で膨らむ吸水土のう
板を立てても、地面との境やドア枠の隅には必ず隙間が残ります。その隙間を埋めるのが土のうの役割です。ところが集合住宅やアパートで暮らしていると、土や砂そのものが手に入らない。都市部では、土のうを積んでおく場所も無いという事情もあります。
2つめの水で膨らむ吸水土のうは、袋に吸水ポリマーを封じた形式で、水を吸わせると袋がふくらんで重さのある土のうになります。土砂を用意しなくていいのが利点。メーカー名は商品ページの表示のとおりで、型番は公表されていません。吸水後の重量やサイズ、吸水にかかる時間は製品ごとに違うため、購入ページに表示されている数値をそのまま確認してください。
段取りだけは先に決めておきたいところ。膨らませるには水が必要です。断水してから、あるいは水が玄関まで迫ってから袋を開けても間に合いません。浴槽に水を張るのと同じタイミング——台風の接近が分かった時点、大雨の警報が出た時点で、玄関先に置いて吸水させておくのが順番です。使う水は飲用でなくてかまいません。上の止水板と組み合わせる場合も、自治体が公表している積み方に沿って設置してください。
浸水を伴う停電で両手を空ける明かり:GENTOS EX-236D
水害では、浸水と停電がほぼ同時に来ます。家財を上階へ動かす、止水板を立てる、家族を連れて階段を上がる——どれも両手を使う作業です。片手が塞がる懐中電灯より、置いて面を照らせるランタンのほうが役に立つ場面が多い。立退き避難で避難所に入ったあとも、手元の明かりとして続けて使えます。
3つめはGENTOS(ジェントス)のLEDランタン EX-236D。公式サイトの仕様では、明るさ430ルーメン(Highモード)、質量355g(電池含む)、サイズφ78.0×141.5mm、使用電池は単3形アルカリ乾電池6本。点灯時間はHigh 10時間・Mid 18時間・Eco 142時間・キャンドルモード60時間で、保護等級はIP68準拠(防塵・1m防水)、2m落下耐久、水に浮く構造と記載されています(GENTOS 公式製品ページ)。
浸水を前提にすると、この2つが効きます。1m防水と、水に浮くこと。足元が濡れている場所で取り落としても、沈まないなら拾い直せます。乾電池式なので、充電式のように停電後の残量に左右されないのも水害では素直な設計です。ただし単3形6本という本数は、備蓄側で確保しておく必要があります。停電が絡む水害でそろえるものの全体像は水害の備蓄品リストにまとめています。
この節の3点は、すべて「浸水深が浅い」と地図で読み取れた家を前提にしています。判定が「避難する家」だった場合は、優先順位が持ち出しの装備と早い避難に移り、開口部の作業はその次です。順番を入れ替えないでください。
ハザードマップでわからないこと
ハザードマップは、想定にもとづいて危険性の高い区域を着色した地図です。したがって、着色されていない場所が安全であることを示す地図ではありません。ここは公的資料が繰り返し注意している点です。
- 大雨特別警報が発表されるような極端な大雨や大地震の場合には、ハザードマップに表示がある範囲を超えて土石流・地滑り・がけ崩れが発生することがある(ハザードマップポータルサイト「よくある質問」)
- 土砂災害警戒区域でない区域でも土砂災害が発生する場合がある。危険性が表示されていなくても、渓流沿いやがけ地の近辺は土石流やがけ崩れが発生するおそれがある(同上)
- 着色されていないところでも災害が起こる可能性がある。色が塗られていなくても、周りと比べて低い土地や崖のそばに住んでいる場合は、市区町村からの避難情報を参考に必要に応じて避難する(内閣府「避難行動判定フロー」)
- 家屋倒壊等氾濫想定区域の外でも、家屋倒壊・流出等が発生する場合がある(国土交通省 京浜河川事務所)
- 重ねるハザードマップで災害リスク情報が表示されない場所は、被害の危険が想定されていない場所か、データが未整備の場所のどちらか。最新かつ詳細な情報は市町村のハザードマップで確認する(ハザードマップポータルサイト「よくある質問」)
もうひとつ、時間の問題があります。ハザードマップは事前に見る想定の図で、当日の危険度を示すのは気象庁の「キキクル(危険度分布)」です。気象庁は、レベル4・3の情報が出たらキキクルや河川の水位情報を確認して早めに避難するよう呼びかけています。事前に見るのがハザードマップ、当日見るのがキキクル。役割が分かれています。
見たあとにやっておくと効くこと
地図を読んだ状態を、いざというときに使える形に落とすまでが準備です。
- 印刷して紙で持つ。スマホが使えない状況を前提にすると、自宅と避難場所が写った範囲を紙で持っておく価値が出ます。わがまちハザードマップ経由なら、市区町村が配布する版をそのまま入手できます。
- 家族で同じ結論を共有する。「うちは避難する家」なのか「とどまれる家」なのかを、家族全員が同じ答えで持っていること。判定と、行き先と、連絡手段を合わせておくと迷いが減ります。連絡手段は家族の安否確認方法(171・災害用伝言板)に手順をまとめました。
気象庁は2026年5月29日から、新しい防災気象情報の運用を始めています。河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮の4種類は、レベル2が注意報、レベル3が警報、レベル4が危険警報、レベル5が特別警報の形にそろいました(レベル4の名称は氾濫危険警報・大雨危険警報・土砂災害危険警報・高潮危険警報)。ただし、市区町村が発令する避難情報と、気象庁等が発表する警戒レベル相当情報は、出るタイミングや対象地域が必ずしも一致しません(内閣府「避難情報のポイント」/気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」)。
判定が出たら、次に読むもの
自宅の点から深さと家屋倒壊等氾濫想定区域の有無を読み取り、「避難する家」か「在宅避難できる家」かに置き換えれば、そろえるものの向きは決まります。備えの全体像は家庭の備蓄品リスト完全版で確認できます。避難するかどうか、いつ動くかは、お住まいの市区町村の避難情報に従ってください。
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参考・出典
以下はいずれも2026年11月3日に開いて確認しました。
- 防災庁「事前防災徹底のための緊急要請」令和8年11月2日(bousai.go.jp)
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)
- ハザードマップポータルサイト「よくある質問」(https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/faq/faq.html)
- 国土地理院「重ねるハザードマップとオープンデータの凡例統一について」2024年8月1日掲載(PDF)
- 国土地理院「重ねるハザードマップ 操作マニュアル」令和7年3月(PDF)
- 内閣府(防災担当)「避難行動判定フロー」(flow.pdf)
- 内閣府(防災担当)「避難情報のポイント」(point.pdf)
- 国土交通省「川の防災情報」浸水深と避難行動について(city.river.go.jp)
- 国土交通省「土砂災害防止法の概要」(mlit.go.jp)
- 国土交通省「洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップ」(mlit.go.jp)
- 国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所「家屋倒壊等氾濫想定区域図」解説(ktr.mlit.go.jp)
- 気象庁「洪水キキクル」(jma.go.jp)
- 気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」(jma.go.jp)
- 国土交通省 報道発表資料「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」(mlit.go.jp)