※本記事にはプロモーションを含みます。
家の中で一番効く固定は、はっきりしています。L字金具を「下向き」に取り付けて、壁の下地にネジで留める方法です。東京消防庁が震度6強を想定して行った実験では、ストッパー式やマット式より、ポール式(突っ張り棒)より、ベルト式やチェーン式より、この留め方が最も高い効果を示しました。順位が接戦だったのではありません。器具の種類でくっきり段差がついています。
ただし、この答えは「壁にネジを打てる家」に限った話。賃貸でネジ穴を開けられないなら、選ぶべきは別のもの。同じ実験で、ポール式は単独で使うより「ポール式+ストッパー式」「ポール式+マット式」の組み合わせのほうが効果が高いと示されています。突っ張り棒を1本足すのではなく、床側にもう一手を足す。これが穴を開けられない家の最善手です。
そして、対象が冷蔵庫・テレビ・食器棚となると、留める場所が3つとも違います。冷蔵庫は下のキャスターと上のベルト。テレビは本体と台の二段構え。食器棚は本体の固定に加えて扉とガラス。ここを取り違えると、器具は正しいのに効かないという事態が起きます。地震に備えない理由で最も多いのは先延ばしという調査もあるので、この記事は「全部やる」ではなく「今日1か所だけ決める」ところまで持っていくつもりで書きました。
この記事でわかること
- 東京消防庁の震度6強実験でわかった、固定方法の効果順位(単独使用と組み合わせ使用)
- 冷蔵庫・テレビ・食器棚で「留める場所」がどう違うか、メーカー各社が公表している固定位置つき
- 壁に穴を開けられるかどうかで方法を分ける判定フローと、賃貸での組み合わせの選び方
- 耐震マット・ジェルの交換目安がメーカーで2倍以上ちがう件と、点検の回し方
家電の固定を先に片づける理由は、ケガの3〜5割が家具類から出ているから
家具類の転倒・落下・移動防止対策とは、地震の揺れで家具や家電が倒れる・落ちる・滑って動くことを、器具で物理的に抑える備えのことです。防災グッズを買い足す話ではなく、すでに家にあるものを動かなくする話。
東京消防庁が「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」で公表している主要地震9件のデータでは、負傷の原因のうち家具類の転倒・落下・移動が占める割合は29.2%〜49.4%です。宮城県北部地震で49.4%、岩手・宮城内陸地震で44.6%、新潟県中越地震で41.2%。低いほうでも能登半島地震29.4%、熊本地震の一般住宅29.2%。地震ごとに幅はありますが、どの地震でもおおむね3割から5割の間に収まります。
つまりどういうことか。揺れそのものより先に、部屋の中の物が人に当たっている。逃げる前の数秒間に起きることのほうが、統計上は大きい。総務省消防庁も、阪神・淡路大震災の住宅内部被害調査から全体の約6割の部屋で家具が転倒し、部屋全体に散乱したと紹介しています。
もうひとつ、住んでいる階で結果が変わるというデータもあります。東日本大震災のあとに東京都内で行われたアンケート(平成23年 東京消防庁調べ)では、家具類の転倒・落下・移動が起きた割合は次の通りでした。
| 住んでいる階 | 転倒・落下・移動が発生した割合 |
|---|---|
| 1〜2階(N=214) | 16.8% |
| 3〜5階(N=202) | 23.8% |
| 6〜10階(N=204) | 31.9% |
| 11階以上(N=36) | 47.2% |
この調査でいう「移動」は、家具が転倒せずにおおむね60cm動いた場合を指します。60cmは、大人が一歩ふみ出す距離くらい。冷蔵庫がその距離を滑れば、キッチンの出入口はふさがります。
11階以上はN=36と回答数が少ないので、この数字だけで断定はできません。ただ1〜2階の16.8%と比べて3倍近い開きがあり、階が上がるほど割合が増えるという傾向自体は4区分すべてで一貫しています。上の階に住んでいる人ほど、固定の優先度は上がると考えていいでしょう。
なお総務省消防庁は、器具で留めることと並べて就寝位置や出入口周辺の家具配置を見直すことも被害軽減の大きなポイントだと書いています。寝ている場所の頭側に倒れてくるものがないか、というチェックは器具より先に、しかもタダでできます。詳しくは寝室の地震対策|枕元に置くもので扱っています。
効く固定と効かない固定は、東京消防庁の実験ではっきり分かれている
転倒防止器具とは、家具や家電を壁・天井・床のどこかとつないで、揺れたときに動ける範囲を減らす道具のことです。種類はいくつもありますが、効き目は横並びではありません。
東京消防庁のハンドブックには、震度6強の揺れを想定した実験で、器具ごとの効果を比較した結果が載っています。これが、この記事でいちばん見てほしい表です。ここに商品名は出てきません。方法の比較です。
| 効果 | 固定方法 | 必要な強度 | ネジ穴 | 東京消防庁の補足 |
|---|---|---|---|---|
| 最も小さい | ストッパー式/マット式 | 床・家具の底面のみ | 不要 | 単独使用は効果が小さく、大きな家具には一般に不向き |
| ↑ | ポール式(突っ張り棒) | 天井の強度(マンションのコンクリート天井など) | 不要 | 強度が足りないときは当て板で補強すると効果が上がる |
| ↑ | L字金具(スライド式)/ベルト式/チェーン式 | 壁の下地(柱・間柱・胴縁など) | 必要 | 3種は同水準 |
| ↑ | L字金具(上向き取付け)/プレート式 | 壁の下地 | 必要 | 2種は同水準 |
| 最も大きい | L字金具(下向き取付け) | 壁の下地 | 必要 | 家具をL型金具などで壁に直接ネジ固定する方法が最も効果が高い |
注目すべきは、同じL字金具でも取り付けの向きで段が変わっている点です。スライド式・上向き・下向きが別々の行に並んでいる。金具を買えば終わりではなく、どう付けるかまでが性能のうち、ということになります。
そしてもうひとつ。単独で使うより効果が高い組み合わせが、名指しで挙げられています。
| 組み合わせ | 位置づけ |
|---|---|
| ポール式 + マット式 | ポール式単独より効果が高い |
| ポール式 + ストッパー式 | ポール式単独より効果が高い |
マット式もストッパー式も、単独では表の最下段、つまり最も効果が小さい組でした。それが、ポール式と足し合わせると単独のポール式を上回る。上を押さえるだけ、下を押さえるだけでは足りず、上下で挟むと急に効いてくるわけです。「1つ選ぶ」ではなく「2つ組む」。この記事の骨になる考え方はここです。
壁にネジを打てるなら、L字金具を下向きに取り付けて下地に留めるのが最優先。打てないなら、ポール式単独で終わらせずに、ストッパー式かマット式を必ず足す。
L字金具の施工には、東京消防庁が示している原則があります。固定先は壁下地の柱・間柱・胴縁。木ネジは長めのものを使い、ネジ頭までしっかりねじ込む。下地の位置は下地探知用センサー、市販の専用プッシュピン、あるいは打診(叩いた音の違い)で判断できる、と書かれています。天板に強度がない家具の場合は、幅全体に板を渡してネジ止めしてから金具を取り付けます。
その「下向きに留める」使い方ができるL字金具の実物として、量販されている定番がアイリスオーヤマのL字金具 JTK-L2(品番H527206)です。サイズは約2×7×8cm、スチール製の黒亜鉛メッキで、木ネジが付属します。同社が公表している施工条件は明確で、壁の芯材・柱・鴨居・桟などしっかりした部分に取り付けること、石膏ボードや薄いベニヤには取り付け不可。効果順位で最上位だった方法を、下地が確認できた壁で再現するための金具、という位置づけになります。なお、この製品ページに震度や等級といった耐震性能の数値表記は見当たりませんでした。効果の根拠は製品側ではなく、あくまで東京消防庁が示した「方法」の側にあります。
冷蔵庫・テレビ・食器棚は、留める場所がそれぞれ違う
家電別の固定とは、機器の重心と足元の構造に合わせて「どこを何とつなぐか」を変えることです。同じ地震対策でも、冷蔵庫とテレビと食器棚では答えが違います。

| 家電 | 下(床側) | 上(壁側) | 扉・画面まわり |
|---|---|---|---|
| 冷蔵庫 | 固定脚を引き出してロックする | 背面上部のベルト取付部と壁・柱をベルトで連結する | ―(上下の併用が重要とされる) |
| テレビ | テレビ台自体を床または壁に固定する | テレビ本体とテレビ台を直接固定する | ストラップ式は形状・重量に応じ4本以上 |
| 食器棚 | ストッパー式は家具の端から端まで敷く | L字金具などで壁の下地にネジ固定する | 扉開放防止器具+ガラス飛散防止フィルム |
冷蔵庫は「下のロック」と「上のベルト」をセットにする
冷蔵庫はキャスター付きで、地震の揺れで容易に大きく移動する——東京消防庁の指摘はここから始まります。だから固定脚を引き出してロックすること。そして必ず上部固定を併用すること。背面上部にあるベルト取付部分と壁をベルトで連結します。壁側にネジ止めする器具なら、壁の強度がある部分で行います。
「必ず併用」と書かれている点が肝心です。脚のロックだけでは倒れる力に対抗できず、上のベルトだけでは足元が滑る。両方でひとつの対策になっている。
メーカー各社が自社サイトで案内している内容も、この線に沿っています。公式ページに到達できた5社を並べます。
| メーカー | 公表している固定方法 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 日立 | 背面取っ手の上方に金具をねじ固定し、壁や柱にベルトで連結 | 市販の耐震ポール(つっぱり棒)は冷蔵庫上面の基板を傷める可能性があるため非推奨と明記 |
| シャープ | 調節脚を床に接地するまで回して水平固定。別売「転倒防止用ベルト」で背面上部のベルト掛けを丈夫な壁・柱へ | キャスターが容易に動かない状態にすることを設置時に案内 |
| 三菱電機 | 背面上部の取っ手2か所にベルトを通し、壁や柱など丈夫な所に固定(純正転倒防止ベルトの形名 MRPR-02BL) | 転倒・傾いた場合は内部破損の可能性があり、そのまま通電すると発煙・発火・感電のおそれ。必ず点検・修理を受けるよう明記 |
| AQUA | 冷蔵庫後部の転倒防止ハンガーと柱・壁を、別売の転倒防止ベルトで接続(2本入り1セット/部品コード2FB0132700100) | ― |
| 東芝ライフスタイル | 背面上部・左右の運搬用取っ手にベルト(別売品/商品コード44092279)を通し、下地のある丈夫な壁や柱に固定 | 下地の無い石膏ボードに取り付ける場合は石膏ボード用アンカーの使用を推奨 |
5社を横に並べて見えてくるのは、全社が「背面上部のベルトで壁とつなぐ」で一致していることです。下部は脚やキャスターのロック。ここも共通。冷蔵庫の固定は、メーカーが違っても考え方はひとつだと言い切れます。
差が出たのは日立でした。冷蔵庫の上に突っ張り棒を立てるのは、上面の基板を傷める可能性があるため非推奨——この警告は他4社のページには見当たりませんでした。冷蔵庫と天井のあいだが空いていると、つい突っ張り棒を思いつきます。でも冷蔵庫に関しては、そこは各社が案内している場所ではありません。
三菱電機は、地震で冷蔵庫が転倒したり傾いたりした場合、そのまま通電すると発煙・発火・感電のおそれがあると明記しています。揺れが収まったあと、元に戻して差し込み直す前に点検・修理を。地震後の火は揺れの最中とは別の時間帯に来ます。家庭に消火器は必要?もあわせてどうぞ。
なお、パナソニックの冷蔵庫については公式ページに到達できなかったため、この記事では取り上げていません。お使いの機種の取扱説明書で、転倒防止ベルトの対応可否をご確認ください。
テレビは「本体と台」「台と床・壁」の二段構え
東京消防庁は、テレビについて「床、壁に固定されたテレビ台とテレビを直接固定するのが最も確実」としています。テレビは重心が高いため、テレビ台ごと転倒することがある。だから台自体の転倒防止も重要、と。キャスター付きのテレビ台なら移動防止の対策も要ります。
器具ごとの注意も具体的です。ストラップ式は本体の形状・重量に応じて本数を増やし4本以上。マット式は重量と台座形状に加えて、取付面の凹凸に注意——凹凸が大きいと粘着しません。ヒートンを使うなら、壁の強度とテレビの重量に耐える太さ・強度を確認します。
テレビメーカー側の案内も、公式ページに到達できた4社を整理しました。
| メーカー | 公表している転倒防止の仕組み | 特記事項 |
|---|---|---|
| ソニー(ブラビア) | 転倒防止のための固定機構・ベルト対応を製品側に組み込み | 付属の木ネジが使えない・強度が足りない場合は市販ネジ(直径3〜4mm)を推奨 |
| パナソニック | テレビとテレビ台それぞれにベルトをネジ等で取り付け、前方への倒れ込みを防止。43V型〜77V型の大画面テレビの多くに転倒防止スタンドを採用 | 「転倒防止スタンドは、いかなる条件においても転倒・落下しないことを保証するものではない」と明記。凹凸のある設置面では吸着効果が出ない場合がある |
| シャープ | テレビ本体側への取付/壁面への取付の2方式 | 取付作業は必ず2人以上で実施することを推奨。「すべての地域に対してその効果を保証するものではない」と明記 |
| 東芝(レグザ) | 卓上スタンド後部に転倒防止バンド・転倒防止ネジ穴・フックの3種。バンドは設置台の背面に付属ネジで固定し、台の天面に穴を開けずに転倒を防止 | 固定後も後方に倒れる可能性が残るため、台を壁に近づけて設置し、子どもが入り込めないようにする |
ここで見落とせないのが、パナソニックとシャープが揃って「保証するものではない」と書いていることです。メーカーが自社の機構について、効果を約束しない書き方を選んでいる。固定は被害を小さくするための手段であって、倒れないことを保証する装置ではない——その前提はメーカー自身が置いています。
東芝レグザの「台の天面に穴を開けずに」という設計も、賃貸や借りている家具では効いてくるポイントです。テレビ台に穴を開けたくない人は、まず自分のテレビに付属の機構があるかを確認するほうが早い。
付属品では届かない場合や、テレビ台と壁をつなぎたい場合に使われるのが、汎用の家具転倒防止ベルトです。効果順位表でいえばベルト式は中位、単独のポール式より上の段。背面から留める用途に向きます。よく流通しているタイプに耐荷重160kgと表示された製品がありますが、この耐荷重はメーカー公式ページで特定できず、販売ページの表示(2026年8月23日確認時点)にとどまります。同種の製品では150kgと表記するものもあり、第三者認証にもとづく統一基準ではありません。数値を鵜呑みにせず、留める相手の重量に余裕を持って選ぶのが安全です。
食器棚は本体・扉・ガラスの3か所を分けて考える
食器棚が厄介なのは、倒れなくても被害が出るところです。東京消防庁も、地震動で扉が開くと収納物が散乱し、破片でケガをする危険があると書いています。だから観音開きの扉には扉開放防止器具を——粘着タイプ、チェーンタイプ、ネジ固定できる掛け金タイプ、感震ラッチなど。本棚のように重量の大きい収納物がある場合は、ネジ固定できるものを選ぶよう案内されています。
引き出しにも別の理屈があります。引き出し方向と揺れの方向が一致すると、引き出しが飛び出して重心が前に移動し、そのまま転倒する。なるべく重いものを収納しない、ラッチ付きの製品を選ぶ、という対策が挙げられています。食器棚の下段に土鍋やホットプレートを入れている家は、一度中身を見直す価値があります。
目安はシンプルです。引き出しは下段ほど軽いものにする。土鍋・ホットプレート・鍋類は、できれば低い位置の扉付き収納へ移す。それだけで、飛び出したときの重さと勢いを減らせます。
ガラス扉には飛散防止フィルム。貼り方にも一次情報があります。ガラス戸の両面に貼ると飛散防止効果が高くなる。片面のみの場合は外側のガラス面に貼る。霧吹き等でガラスとフィルムに十分な水を吹きかけてから貼付する、というのが東京消防庁の説明です。窓ガラスの飛散対策と考え方は共通なので、台風の窓ガラス対策|養生テープは効くのかもあわせて読むと、貼る/貼らないの判断がしやすくなります。
食器棚用として流通しているのが、ニトムズの食器棚用ガラス飛散防止シート M6130です。販売ページの表示(2026年8月23日確認時点)では、厚さ約0.075mm×幅32cm×長さ1.8m、UV99%カット機能付き、基材はポリエステルで粘着剤はアクリル系、貼付用のヘラが付属します。幅32cmはA4用紙の長いほうの辺より少し広いくらい。厚さ0.075mmは1mmの10分の1より薄い数字で、扉のガラスに貼っても中身の見え方をほとんど変えません。同シートは「室内側(家具の表面側)に貼るとより効果的」と案内されており、食器棚でいえば部屋に面した側。東京消防庁が言う「片面なら外側のガラス面」と同じ面を指します。
賃貸で穴を開けられないなら、組み合わせで効果を積む
穴を開けない固定とは、壁や天井にネジ穴を残さず、突っ張る力と粘着・摩擦だけで家具を留める方法のことです。原状回復義務のある賃貸で、壁にネジを打つ判断は簡単ではありません。ここで戻ってくるのが、冒頭の組み合わせの話です。

穴を開けない側を選んだとき、注意すべきなのはポール式の前提条件です。東京消防庁は、ポール式には天井に十分な強度(マンションのコンクリート天井など)が必要で、強度がない場合は家具幅以上の板で天井側を補強し、当て板とネジで固定すると効果が高いとしています。取り付け位置も指定があり、家具の両端の側板部の壁側奥に、できるだけ奥へ。奥行きのない家具や、天井との間隔が大きい家具には不向きです。ストッパー式は、家具の端から端まで敷きます。
- 天井は石膏ボードではなくコンクリートか、補強用の当て板を用意できるか
- ポールを家具の両端・壁側の奥に立てられる奥行きがあるか
- 家具と天井の隙間が大きすぎないか(大きい場合はポール式に向かない)
- ポール式に足すもう一手(ストッパー式かマット式)を同時に用意したか
ポール式の代表として広く流通しているのが、アイリスオーヤマの家具転倒防止伸縮棒 KTB-40Rです。販売ページの表示(2026年8月23日確認時点)によると、耐荷重(耐圧)約220kg、伸縮対応幅は約40〜60cmのMサイズで2本1セット。パイプは塩化ビニル被覆鋼管、樹脂部はABS樹脂・発泡PE・ポリカーボネートです。約220kgは大人3人ぶんの体重に近い数字。2本セットなのは、家具の両端に立てるという東京消防庁の取り付け方とそのまま噛み合っています。
ただし、冷蔵庫にこれを使うのは別問題です。日立が上面の基板を傷める可能性を挙げて非推奨としている以上、ポール式は食器棚など家具側の主力と考えるほうが無難でしょう。賃貸での家具固定全般——家具の種類ごとの穴を開けない方法や、退去時の扱いについては賃貸の家具固定は穴を開けずにできる?で詳しく整理しています。この記事は家電に絞っているので、家具側はそちらへどうぞ。
貼って終わりにしない——耐震マットは数年で貼り替える
耐震マット・耐震ジェルとは、家具や家電の底面と床のあいだに挟んで粘着で滑りを抑える、消耗品の器具です。消耗品、というところが大事。
交換の目安はメーカーによって幅があります。数字をひとつに丸めず、そのまま並べます。
| メーカー | 公表している交換・使用期限の目安 |
|---|---|
| エクシール(転倒防止シート/ゲルタックシート) | 約3年。使用環境(日射・高温等)で劣化が早まる |
| 東横化学(プロセブン) | 耐用年数5〜7年。使用環境や状況により異なる |
約3年と5〜7年。短いほうと長いほうで2倍以上の開きがあります。だから「耐震マットの寿命は◯年」と一本の数字で覚えないでください。買った製品の取扱説明書に書かれている年数が、その製品の答えです。
エクシールは、期限を過ぎるとどうなるかまで書いています。柔らかくなる、溶ける、剥がれにくくなる、振動吸収能力が落ちる。つまり劣化のサインは見た目に出るということ。半年に一度、掃除のついでに家電の足元を指で押してみて、べたつきや変形があれば交換の合図と考えられます。
貼り替えの日付を覚えておくのが難しければ、マットの端にマスキングテープを貼って設置年月を書いておく方法があります。次に掃除機をかけたとき、日付が目に入ります。
わが家の家電 固定チェック表(書き込み式)
印刷するかスマホにメモして、埋めながら回ってください。空欄が「まだ」の場所です。
| 家電 | 置き場所 | 下(床側)の固定 | 上(壁側)の固定 | 扉・画面まわり | 次の点検予定日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 冷蔵庫 | ( ) | □ 脚ロック済 □ まだ | □ 背面上部ベルト済 □ まだ | ― | ( / ) |
| テレビ | ( ) | □ 台を床・壁に固定済 □ まだ | □ 本体と台を固定済 □ まだ | □ ストラップ本数( 本) | ( / ) |
| 食器棚 | ( ) | □ ストッパー/マット済 □ まだ | □ 壁の下地にネジ固定済 □ まだ | □ ラッチ済 □ フィルム済 | ( / ) |
| 電子レンジ | ( ) | □ レンジ台を床・壁に固定済 □ まだ | □ 本体を台か壁に固定済 □ まだ | ― | ( / ) |
電子レンジの行を足したのには理由があります。東京消防庁は、電子レンジ本体をレンジ台または壁に固定するとともに、レンジ台自体も床または壁に固定するよう案内しています。本体だけを留めると、台ごと落下・移動する。冷蔵庫と同じで、上と下の両方が要るタイプです。キッチンに立つと、レンジの上には食パンの袋やラップの箱が乗っている。落ちてくるのはレンジだけではありません。
家の中の備え全体をひととおり見直したいときは、地震の備えリスト(家庭のチェック表)を上位のチェック表として使うと、固定以外の抜けも拾えます。
この対策が向かない人と、はっきり言えるデメリット
ここでいうデメリットとは、この対策が「効かない条件」と「引き受けることになる手間」のことです。効果順位の上位はすべて、壁の下地にネジを打つ方法です。裏を返すと、下地を探せない・穴を開けられない人は、最も効く選択肢を最初から使えません。石膏ボードや薄いベニヤへの直付けは、アイリスオーヤマも東京消防庁も認めていない施工です。「とりあえずボードに打つ」は対策になりません。
ポール式にも前提があります。天井の強度。当て板を用意できないマンション以外の住まいや、家具と天井の隙間が大きい部屋では、期待した効きになりません。奥行きのない家具にも不向きです。
そして最も正直に書いておくべきことは、固定は被害を減らすものであって、ゼロにはしないという点です。パナソニックは自社の転倒防止スタンドについて「いかなる条件においても転倒・落下しないことを保証するものではない」と書き、シャープも「すべての地域に対してその効果を保証するものではない」と明記しています。東芝レグザは、バンドで固定しても後方に倒れる可能性が残ると書いたうえで、台を壁に近づけて子どもが入り込めないようにと添えています。作った側が保証しないと言うものを、読者に「絶対安全」と伝えるわけにはいきません。
石膏ボードに直接ネジを打つ施工は、東京消防庁の案内にもアイリスオーヤマの製品情報にも含まれていません。下地が見つからないまま留めた金具は、揺れたときにボードごと抜けます。「打てなかった」は失敗ではなく、ポール式+ストッパー式へ切り替える合図です。
穴も開けられず、天井も頼れない。そういう部屋なら、器具に投じる前に配置を変えるほうが先です。総務省消防庁が挙げているのはまさにこれで、就寝位置と出入口周辺の家具配置の見直しが被害軽減の大きなポイントだと書かれています。背の高いものを寝床と出口から離す。費用はゼロ、必要なのは30分です。
固定がひととおり済んだら、次は持ち出す側の備えに移ります。防災セットのおすすめはどれ?で、そのまま次の一手に進めます。
ガラス側の対策はこちら
よくある質問
Q. 震度いくつから固定が必要ですか?
A. 「震度◯以上なら必要」という基準は、今回参照した東京消防庁・総務省消防庁の資料には見当たりませんでした。参照できるのは、東京消防庁が震度6強を想定した実験で器具ごとの効果を比較していること、そして主要地震9件で負傷原因の29.2%〜49.4%を家具類の転倒・落下・移動が占めていることです。震度で線を引くというより、倒れたら人に当たる位置にあるかどうかで決めるほうが実際的でしょう。
Q. 冷蔵庫は上と下、どちらを先に留めればいいですか?
A. 東京消防庁は固定脚のロックと上部固定の併用が重要としており、片方だけでよいという記載はありません。ただ編集部の整理では、冷蔵庫メーカー5社がいずれも別売品として用意しているのは背面上部のベルトのほうです。脚のロックは工具も部品も不要で数分で終わるので、脚を先に済ませ、ベルトを取り寄せる——という順番が現実的だと考えます。
Q. 突っ張り棒(ポール式)だけで足りますか?
A. 東京消防庁の実験では、ポール式単独より「ポール式+マット式」「ポール式+ストッパー式」のほうが効果が高いという結果が出ています。単独で使えないわけではありませんが、足すことでもう一段上がるとわかっている以上、下側の一手はセットで考えたほうがいいでしょう。なお冷蔵庫については、日立が上面の基板を傷める可能性を理由に市販の耐震ポールを非推奨としています。
Q. 耐震マットはいつ貼り替えればいいですか?
A. メーカーによって公表値に幅があります。エクシールは約3年、東横化学のプロセブンは5〜7年(いずれも使用環境により変動)。2倍以上ちがうので、平均値で覚えず、購入した製品の取扱説明書に書かれた年数に従ってください。日射や高温にさらされる場所では、目安より早く劣化します。
Q. ガラス飛散防止フィルムは内側と外側、どちらに貼りますか?
A. 東京消防庁は「両面に貼ると飛散防止効果が高くなる。片面のみの場合は外側のガラス面に貼る」としています。ニトムズのM6130も「室内側(家具の表面側)に貼るとより効果的」と案内されており、食器棚でいえばどちらも部屋に面した側。片面で済ませるなら、部屋側を選んでください。貼るときは霧吹き等でガラスとフィルムに十分な水を吹きかけます。
あわせて読みたい: 地震の備えリスト|家具の固定と備蓄を1枚で点検する家庭のチェック表
まとめ:今日決めるのは、1か所だけでいい
効果の順位も、家電ごとの留め場所も、ここまでで出そろいました。あとは手を動かす番。ただし全部を今日やる必要はありません。今日決めるのは「冷蔵庫の脚ロック」の1か所。工具も買い物も要らず、扉を開けて脚のレバーを下ろすだけで、5社すべてが案内している対策のうち片方が終わります。
- 今日:冷蔵庫の固定脚を下ろすキャスターが動かない状態にする。東京消防庁も各社も、まずここを共通で挙げています。
- 今週:壁の下地を探す下地探知用センサー、市販の専用プッシュピン、または打診で柱・間柱・胴縁の位置を確認。ここで「ネジを打てる家かどうか」が確定し、L字金具にするかポール式+ストッパー式にするかが決まります。
- 今月:食器棚の扉と、テレビ台の固定扉開放防止器具を付け、テレビは本体と台・台と床壁の二段構えに。あわせて耐震マットの設置年月をメモしておくと、次の点検が回り始めます。
固定は、地震が来るまで何も返してくれない備えです。それでも、負傷原因の3割から5割が家具類から出ているという数字を前にすると、順番としてはかなり手前にある。まずは1か所。
参考・出典
- 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」必要性/地震に対する家具類への対策/家庭用家具の転倒・落下・移動防止対策/家電製品の転倒・落下・移動防止対策/周期の長い揺れに対する家具類への対策(2026年8月23日確認)
- 総務省消防庁「地震による家具の転倒を防ぐには」基本的な考え方/被害の実態/家具配置の見直し(2026年8月23日確認)
- 日立の家電品サポート「地震への備えや、発生したときの対処方法について知りたいです」(2026年8月23日確認)
- シャープ サポート「お引っ越し(調節脚の固定と地震対策)」(2026年8月23日確認)
- 三菱電機「冷蔵庫を地震に備えて設置する」(2026年8月23日確認)
- AQUA 別売部品「転倒防止ベルト」(2026年8月23日確認)
- 東芝ライフスタイル よくあるご質問「冷蔵庫を固定したい」(2026年8月23日確認)
- ソニー「ブラビアの安全設計」(2026年8月23日確認)
- パナソニック「テレビの転倒防止対策はしていますか?」(2026年8月23日確認)
- シャープ Q&A「転倒防止の対策方法を教えてください」(2026年8月23日確認)
- 東芝「転倒防止機能を備えた安心設計の〈レグザ〉」(2026年8月23日確認)
- エクシール「地震対策用ゲル(転倒防止シート)の設置と剥がし方」(2026年8月23日確認)
- 東横化学「プロセブン 耐震マット」製品情報(2026年8月23日確認)
- アイリスオーヤマ公式Yahoo!店 L字金具 JTK-L2(H527206)(2026年8月23日確認)
- アイリスオーヤマ 家具転倒防止伸縮棒 KTB-40R/ニトムズ 食器棚用ガラス飛散防止シート M6130/家具転倒防止ベルト(耐荷重160kgとされる汎用品)のスペックは、メーカー公式ページに到達できなかったため販売ページの表示(2026年8月23日確認時点)にもとづきます。汎用ベルトの耐荷重表示は第三者認証にもとづく数値ではありません。
