停電の備えに買うものリスト|明かり・熱・情報・電源を、必要数の計算で決める

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停電の備えで迷うのは、たいてい「何を買うか」ではありません。買うものの名前は、検索すればいくらでも出てきます。詰まるのは、その次です。ランタンは何台、電池は何本、カセットボンベは何本。数を決められないまま、なんとなく一式をカゴに入れて終わる。それが実際のところではないでしょうか。

この記事は、その数を出すための親記事です。買うものを明かり・熱・情報・電源の4つに割り、それぞれに1つずつ式を当てます。明かりは「使う電池の本数 × 交換回数」、熱は「連続燃焼時間 ÷ 1日に使う時間」、電源は「容量Wh ÷ 消費電力W」。この3つだけです。式に自分の家の数字を入れれば、買う量が出ます。

買う順番も先に書いておきます。明かり(ランタンと電池)→ 情報(電池が切れても残る手段)→ 熱(カセットこんろとボンベ)→ 電源(モバイルバッテリー、必要ならポータブル電源)。この順に埋めるのは、停電で最初に困るのが暗さで、次に困るのが「今どうなっているか分からない」ことだからです。電源を先に買うと、金額のわりに困りごとが減りません。

この記事でわかること

  • 停電の備えを「明かり・熱・情報・電源」の4つに割ると、買う順番が自動的に決まること
  • 電池・カセットボンベ・ポータブル電源の必要数を出す3つの式と、その早見表
  • 何日分そろえるかは、公的な一次資料でも言い切れないため自分で決めるしかない、という事実
  • 復旧したあとの通電火災を防ぐ、消費者庁が示している3つの手順

なお、停電が起きた「あと」に何をするかという行動の話は、この記事では扱いません。発生直後から1日までの動き方は停電したらまず何をする?発生直後10分→3時間→1日の時系列やることリストが担当です。ここは買い物の側だけを引き受けます。

目次

停電の備えは「明かり・熱・情報・電源」の4つに割ると決めやすい

4分類とは、停電で止まる生活機能を、代わりの道具が用意できる単位まで分けたものである。照明・調理・通信・電力供給の4つで、この順に困りごとが起きる。

夜、急に部屋が真っ暗になる。スマホのライトをつけて、まず探すのは何でしょうか。ブレーカーの場所か、家族の顔か、そのどちらかです。次に気になるのが「これは家だけなのか、町全体なのか」。そして時間が経つと、温かいものが食べたくなり、スマホの電池が減っていく。停電で困ることは、だいたいこの順番でやってきます。

だから買うものも、この順に並べます。4つに割る利点は、抜けが見つかることです。防災グッズをひととおり持っている家でも、4分類に当てはめると「情報」だけが空っぽ、というケースがよくあります。ランタンもモバイルバッテリーもあるのに、電池が切れたあとに情報を取る手段が無い。分類していないと、この穴は見えません。

停電の備えを明かり・熱・情報・電源の4分類に分け、必要数を出す式を並べた対応表。明かりは使う電池の本数かける交換回数、熱は連続燃焼時間わる1日に使う時間、情報は式が無く電池が切れても残る手段を1つ、電源は容量Whわる消費電力W
分類 役割 必要数を出す式 この記事での扱い
明かり 手元と部屋を照らす 使う電池の本数 × 交換回数 = 買う電池の本数 式①として計算する
湯を沸かす・温かいものを作る 連続燃焼時間 ÷ 1日に使う時間 = ボンベ1本の持ち日数 式②として計算する
情報 停電の範囲と見通しを知る 式は無い。電池が切れても残る手段を1つ 数ではなく種類で決める
電源 スマホと小さな家電を動かす 容量Wh ÷ 消費電力W = 動かせる時間 式③として計算する

情報だけ式がないのは、足りるかどうかが「量」ではなく「切れないか」で決まるからです。ここだけは本数の話にならない。あとの3つは、かけ算と割り算で数が出ます。

もうひとつ、4分類の前に確認しておきたいことがあります。家の設備によって、必要な量そのものが変わることです。調理も給湯も電気でまかなっている家は、停電するとお湯が出ません。ガスが生きている家より、熱の備えを厚くする必要があります。この違いはオール電化の停電対策で詳しく整理しています。自分の家がどちらなのかを先に決めてから、以下の式に入ってください。

何日分そろえるかは、自分で決めるしかない

備える日数とは、停電が続く長さの想定であり、公的な一次資料から一意に導けるものではない。だから買う側が決める数字である。

ここは正直に書きます。「停電は何日で復旧するのか」を、今回わたしたちは一次資料で確定できませんでした。

2018年の北海道胆振東部地震で起きた北海道全域のブラックアウトについて、電源開発(J-POWER)の資料は「復旧には最大で約45時間を要した」としています。一方で、検索上には「64時間後の9月8日19時に復旧宣言」という数字も出てきます。45時間と64時間。この2つは食い違っており、どちらが正しいかを確かめるために北海道電力と資源エネルギー庁の公式ページを開こうとしたところ、いずれも403が返って閲覧できませんでした。

2019年の台風15号による千葉の停電も同じです。電気新聞(業界紙)は「最大停電93万4,900件(9月9日7時50分時点)」「9月30日現在、一部を除きおおむね停電は解消」と報じています。ただし東京電力の一次プレスリリースは403で開けず、全戸復旧の確定日は未確認のままです。

この記事は「45時間で復旧する」とも「2週間かかる」とも書きません。一次資料で確定できなかったからです。数日で終わった例と、数週間規模で長引いた例の両方があった——そこまでが、今回確認できた範囲です。

つまりどういうことかというと、日数は誰も保証してくれない、ということです。「3日分」という数字を掲げる記事は多いのですが、その3日がどこから来たのかを追うと、たいてい根拠にたどり着けません。だから逆に考えます。何日分そろえるかは、自分の生活のほうから決める。

決め方はシンプルです。次の2つを見比べてください。

  • 家に何日ぶんの水と食べ物があるか(それより短い日数で明かりが切れると意味がない)
  • 家族に、電気が止まると困る事情がある人がいるか(いる場合は、日数ではなく別の手当てが要る)

この記事では、以下の早見表をすべて3日分と7日分の2列で出します。3日は「短く終わった停電」の想定、7日は「長引いた停電」の想定です。どちらも根拠のある数字ではなく、計算の入口として置いた仮の数です。自分の数字がある人は、そちらを式に入れてください。式は同じです。

なお停電が長引くと、話は「明かりが足りない」から「家で暮らし続けられるか」に変わります。断水や下水の停止が重なると、トイレが最初に問題になる。備蓄品の期限まで含めた考え方は携帯トイレに使用期限はある?メーカー8社の公表値を1社ずつ確かめたにまとめました。7日分を想定するなら、こちらも同時に見ておく価値があります。

明かりは「台数」ではなく「電池の本数」で数える

明かりの必要数とは、ランタンの台数ではなく、そのランタンを想定日数のあいだ点け続けるために要る電池の本数である。

ランタンを1台買って安心する。これがいちばん多い落とし穴です。ランタンは電池が入っていなければただの筒で、切れた瞬間に台数はゼロになります。数えるべきは台数ではなく、電池の本数のほうです。

式① 使う電池の本数 × 交換回数 = 買う電池の本数

この式に入れる「使う電池の本数」は、ランタンの仕様で決まります。たとえばGENTOSのLEDランタンEX-136Sは、単3形アルカリ電池を6本使います。1回の電池交換で6本が出ていく。ここが式の左側です。

点灯時間はモードで大きく変わります。メーカー公式の公表値は次のとおりです。

GENTOS EX-136Sのモード別の公表点灯時間を並べた対応表。Highは370ルーメンで9時間、Midは18時間、Ecoは142時間、キャンドルモードは60時間
モード 公表値 身近に言い換えると
High 370ルーメン/点灯9時間 夜に3時間使うなら3日ぶん
Mid 点灯18時間 夜に3時間使うなら6日ぶん
Eco 点灯142時間 夜に10時間つけっぱなしでも約14日ぶん
キャンドル 点灯60時間 夜に10時間つけっぱなしで6日ぶん

Ecoモードの142時間を、夜だけ点ける使い方に割り直すと約2週間ぶんになります。142 ÷ 10 = 14.2。ここが重要なところで、モードを落とせば電池はほとんど減りません。逆に、明るさが要る場面でHighを使い続けると9時間で終わります。同じ1台でも、使い方しだいで持ち時間が15倍以上ちがう。

では交換回数をどう決めるか。想定日数のあいだに何回電池が切れるかを数えます。夜に3時間、Midモードで使う前提なら1回の電池で6日もつので、7日分なら交換は1回あれば足ります。Highで使い切る前提に立つなら、9時間を3時間で割って3日ぶん。7日分だと交換は2回です。

使い方の想定 1回の電池で持つ日数 3日分に要る単3 7日分に要る単3
Highで1日3時間 3日 6本(交換1回) 18本(交換3回)
Midで1日3時間 6日 6本(交換1回) 12本(交換2回)
Ecoで1日10時間 14日 6本(交換1回) 6本(交換1回)

表の数字は、本体に入っている6本も「1回目」として数えています。予備だけを買いたい人は、そこから6本引いてください。

この計算に使ったEX-136Sは、単3形6本で動くLEDランタンです。Highで370ルーメン、点灯時間はHigh 9時間・Mid 18時間・Eco 142時間・キャンドルモード60時間。重さは電池を含めて355gで、耐塵・1m防水(IP67準拠)とされています。モードの幅が広いことが、この記事の式と相性がいい理由です。ふだんは絞って点け、必要なときだけ明るくする——という使い分けができるので、「何本買えばいいか」が計算で出せます。

台数のほうをどう決めるかは、置く場所の数で変わります。トイレ、寝室、リビングと分けるなら1台では足りません。部屋別の必要台数と、電池式・充電式・ソーラーなど電源方式の違いは防災ランタンのおすすめは?置く場所別の必要数と電源方式4種比較で扱っています。台数を決めてから、この式で本数に直してください。

熱は「連続燃焼時間 ÷ 1日に使う時間」でボンベの本数が出る

熱の必要数とは、カセットこんろの台数ではなく、想定日数のあいだ湯を沸かし続けるために要るカセットボンベの本数である。

停電しても、都市ガスやプロパンが生きていればコンロは使えます。ただしガスコンロの多くは点火や安全装置に電気を使うため、電気が止まると点かない機種があります。そして給湯器はほぼ確実に止まる。カップ麺のお湯も、赤ちゃんのミルクも、電気が来ないと作れない家は珍しくありません。

ここでの式は、明かりよりさらに単純です。

式② 連続燃焼時間 ÷ 1日に使う時間 = ボンベ1本の持ち日数

岩谷産業のカセットこんろ「カセットフー 達人スリムV」CB-TS-5の場合、メーカー公式が示す連続燃焼時間は約68分です。これは気温20〜25℃の条件下で、強火の連続使用でCB缶1本を使い切るまでを測った実測値とされています。

68分という数字を、そのまま「1時間ちょっとしか使えない」と読むと誤解します。実際の停電中に強火を1時間まわし続けることは、まずありません。お湯を沸かす、レトルトを温める、汁物を作る。合計しても1日20分から30分に収まる家庭が多いはずです。

1日に使う時間 ボンベ1本の持ち日数 3日分に要る本数 7日分に要る本数
20分 約3.4日(68÷20) 1本 3本
30分 約2.2日(68÷30) 2本 4本
60分 約1.1日(68÷60) 3本 7本

1日20分の使い方なら、24本セットで81日を超える計算になります(3.4 × 24 = 81.6)。約2か月半ぶんです。多すぎるように見えますが、カセットボンベは停電のときにしか使わない道具ではありません。鍋をする、卓上で焼く。ふだんの食卓で減らしながら、減った分を買い足していけば在庫は勝手に回ります。備蓄というより、消耗品のストックとして持つほうが現実的です。

そのCB-TS-5は、最大発熱量3.4kW(2,900kcal/h)、外形335×275×84mm、日本製のカセットこんろです。厚さ84mmという薄さは、備蓄品として保管する側にとって効いてきます。防災用品は「置き場所が無いから買わない」で止まりがちなので、収納の棚に立てて入る寸法かどうかは、スペック表の中でも実用的な指標です。

ボンベのほうは、本数だけでなく期限も見ます。岩谷産業の公式によれば、CB缶の使用期限は製造から約7年です。7年というのは、防災用品としてはかなり長いほうに入ります。ただし「7年もつ」と覚えると、7年後に一斉に切れることになる。少しずつ使って少しずつ買い足す運用のほうが、結果として期限切れを出しません。24本セットのように多めに持つ場合ほど、この回し方が効いてきます。


カセットボンベの保管温度について、上限の具体的な数値は今回メーカー公式で確認できませんでした。この記事では書きません。高温になる場所を避ける、という一般的な扱いにとどめます。

人数が増えれば湯の量も増えるので、必要本数は世帯人数で動きます。冬は湯を使う量が上がるぶん、さらに増やす必要がある。人数別・季節別の目安はカセットボンベの備蓄は何本?人数別の目安と冬の増やし方で詳しく出しています。この記事の式で出た本数を、そちらで調整してください。

情報を取り続ける手段は、電池が切れたあとに残るものを1つ持つ

停電時の情報とは、停電の範囲・原因・見通しを知ることであり、それが分かるまで人は次の行動を決められない。

停電したとき、いちばん最初にすることを思い出してみてください。たいていの人は窓の外を見ます。向かいの家に明かりがついているか。街灯は生きているか。それで「うちだけか、町全体か」を判断しようとする。これは立派な情報収集で、つまり人は暗さそのものより「状況が分からないこと」に不安を感じます。

情報の手段は、ふつうスマホで足ります。停電しても通信基地局はしばらく動くので、電波は残ることが多い。問題はスマホの電池です。ここが尽きると、明かりも情報も同時に失うことになる。だから情報の枠では、電池が切れたあとにも残る手段を1つだけ持ちます。

その役割を担うのが手回し充電のラジオです。手回し充電機能があれば、電池も電源も無い状態から、自力で電気を作って音を聞ける。数は要りません。1台あればいい。ここが「本数で数える」明かりや熱と決定的に違うところです。

クマザキエイムのSL-091は、手回し充電・ラジオ・ライトを1台にまとめた複合機です。ラジオとライトが同じ筐体に入っているので、明かりの枠が全滅したときの最後の1灯にもなります。

SL-091については、「1分回すと何分使えるか」という手回しの効率や、本体の重量を、今回メーカー公式で見つけられませんでした。見つからなかったので書きません。数値が要る方は、購入前にメーカーの製品ページで確認してください。

数値を出せないまま紹介するのは歯切れが悪いのですが、この枠に限っては役割で選べます。手回しで発電できること、ラジオが入っていること、ライトが付いていること。この3つが1台にまとまっているかどうかが判断基準で、細かいスペック差はあとから効いてくる要素です。

ラジオ以外にも、公的機関の発信、防災アプリ、車のラジオなど手段はあります。どれを主に使い、どれを予備にするかの整理は停電時の情報収集の手段一覧|ラジオ・スマホ・公的発信の使い分けにまとめました。手段を1本に絞らないことが、この枠の要点です。

電源は「容量Wh ÷ 消費電力W」で足りるかが決まる

電源の必要量とは、動かしたい機器の消費電力と、動かしたい時間の掛け合わせであり、機器を先に決めないと容量は決まらない。

式③ 容量Wh ÷ 消費電力W = 動かせる時間

この式は単純ですが、使い方に注意が要ります。左の容量はカタログに書いてあるのに対し、右の消費電力は自分の家の家電を1つずつ調べないと出てこないからです。ここを飛ばして容量だけ大きいものを買うと、金額のわりに何も解決しません。

EcoFlowのRIVER 2を例にすると、公式の公表値は容量256Wh・定格出力300W・重量約3.5kg・満充電60分です。仮に消費電力10Wの機器なら、256 ÷ 10 = 25.6時間。仮に50Wの機器なら、256 ÷ 50 = 5.12時間。同じ1台でも、つなぐものによって答えは5倍変わります。

もうひとつ、容量とは別に見る数字があります。定格出力です。RIVER 2の定格出力は300Wなので、300Wを超える家電はそもそも動きません。容量が足りていても、出力が足りなければ起動しない。「何時間動くか」の前に「動くのか」を確かめる、という順番になります。

実際に取り出せる電力量は、表記の容量そのままにはなりません。変換のときにロスが出るためです。この差をどう見込むか、家電のW数をどう積算するかはポータブル電源の容量計算|自宅の家電のW数を積算して必要Whを求めるの担当です。この記事では式だけ示して、計算はそちらに送ります。

言い換えると、ポータブル電源は「大は小を兼ねる」で選ぶ買い物ではありません。動かしたい機器が決まっていない段階で大容量を買うと、重くて出しにくいものが押し入れに残ります。RIVER 2の約3.5kgという重さは、片手で持って別の部屋に移せる範囲です。停電中に据え置きではなく持ち歩く使い方をするなら、この重量帯は現実的な選択になります。満充電60分という短さも、停電の合間に電気が戻ったタイミングで充電し直せるという意味で効いてきます。

そして、多くの家庭にとってポータブル電源より先に効くのはモバイルバッテリーです。スマホが生きていれば、情報も連絡も明かりの代わりも、ある程度まかなえます。容量の大きさより「常に持ち歩ける重さかどうか」が実用性を左右する枠で、備えたものは手元に無ければ使えません。具体的な製品は、次の節の買う順番のところで挙げます。

冷蔵庫は「開けない」が最も効く。目安は2〜3時間

停電時の冷蔵庫とは、庫内の冷気を蓄えた保冷箱であり、開けるたびにその蓄えを捨てることになる装置である。

ここだけは、買い物ではなく行動の話です。ただしこの記事に置いておく理由があります。冷蔵庫の中身を守れるかどうかで、熱と電源に要る量が変わるからです。

パナソニック公式によれば、停電時に冷蔵庫の中身が保たれる目安は2〜3時間です。これはドアを開けない前提の数字で、開けた回数だけ短くなります。

2〜3時間という数字は、思ったより短く感じるはずです。ただしこれは「3時間で中身が悪くなる」という意味ではなく、「冷えた状態が保たれるのはここまで」という目安として示されたものです。冷凍室のほうが持ちますし、庫内が詰まっているほど冷気は残ります。

実務的な結論はひとつだけです。停電したら、冷蔵庫は開けない。先に必要なものを取り出す判断ができるなら、最初の一回で全部出す。あとは閉じたままにする。この行動が、結果として「もったいないから今日中に調理しよう」という無駄な熱の消費を減らし、カセットボンベの本数を節約します。

2〜3時間という値がどこから来ているのか、他社も同じことを言っているのかを確かめた記事があります。停電中の冷蔵庫は何時間もつ?公表値2〜3時間の出どころをメーカー6社分たしかめたで、メーカー6社分の公表値を1社ずつ突き合わせました。数字の出どころが気になる方はそちらへどうぞ。

復旧したあとがいちばん危ない——通電火災

通電火災とは、停電から復旧して電気が戻ったときに、倒れた電気器具や傷んだ配線に電流が流れて起きる火災である。

備えの話をしていると、停電中のことばかり考えてしまいます。けれど消費者庁が注意喚起しているのは、停電が終わったあとのほうです。電気が戻る瞬間、家の中では全部の家電に同時に電気が流れます。倒れたままの暖房器具、水をかぶった配線、スイッチが入りっぱなしのアイロン。それらが一斉に動き出す。

消費者庁が示している手順は3つです。

  1. 避難するときは分電盤のブレーカーを切る家を離れる前に、分電盤のブレーカーを落としてから出ます。いない間に電気が戻っても、家の中には電流が流れません。
  2. 停電中は電源プラグを抜く使っていた家電のプラグをコンセントから抜いておきます。とくに熱を出すもの、水回りで使うものを優先します。
  3. 復旧後はブレーカーを入れ、1台ずつプラグを差して様子を見ながら使うまとめて戻さない、というのがここの要点です。1台ずつ差して、異音や焦げたにおいが無いことを確かめながら使います。

3つ目が地味に効きます。復旧した瞬間はうれしいので、つい一気に元に戻したくなる。そこを1台ずつにするだけで、異常が起きたときにどれが原因か分かります。

停電時のろうそくについて。「公的機関がろうそくの使用を控えるよう呼びかけている」と書いている記事を見かけますが、今回わたしたちが確認した範囲では、消費者庁が注意喚起しているのは通電火災であり、ろうそくへの言及は確認できませんでした。他の公的機関が何か出している可能性は残ります。この記事では、確認できたことだけを書きます。

買う順番はこうなる

買う順番とは、金額の順でも人気の順でもなく、停電で困る順に手当てしていく並びである。

ここまでの式で出した数を、買い物の順に並べ直します。順番は明かり → 情報 → 熱 → 電源。上から順に埋めて、途中で予算が尽きたらそこで止める。それでも下から買うより効きます。

1つめ。明かりの電池です。ランタンを持っている人ほど、ここが空いています。EX-136Sなら1回の交換で単3形が6本。前の節で出したとおり、使い方によって3日分でも7日分でも交換1回で足りる場面がありますが、Highを多用する前提なら7日分で18本が必要になります。まとめ買いの単位として使いやすいのが単3形40本入りです。40 ÷ 6 ≒ 6.6 なので、EX-136Sの電池交換およそ6回ぶんにあたります。「防災電池 単3形 40本」(型番BD-LR06-40-001)は、商品名に「10年保存」を掲げた単3形の40本セットです。40という数を6で割ると6回、という関係が頭に入っていれば、買う量で迷いません。

2つめ。情報の手段です。電池が切れても残るものを1台。クマザキエイムのSL-091は、手回し充電・ラジオ・ライトを1台にまとめた複合機です。電池も電源も無くなった状態から、自力で電気を作って音を聞ける——それがこの枠に置く理由です。数を増やす枠ではないので、ここは1台で完了します。

3つめ。熱の道具です。カセットこんろ本体とボンベはセットで考えます。岩谷産業のCB-TS-5(カセットフー 達人スリムV)は最大発熱量3.4kW(2,900kcal/h)、外形335×275×84mm、連続燃焼時間 約68分、日本製。厚さ84mmで棚に立てて収まるので、置き場所を理由に買わずじまいになりにくい一台です。本体を持っていない家は、まずここからです。


4つめ。ボンベの本数です。式②で出した数を買います。1日20分の使い方で7日分なら3本。ただし本体だけあってボンベが1本、という状態は避けたいところです。岩谷産業のCB缶24本セット(CB-250-OR、セット品番CB-250-OR-24G)は、使用期限が製造から約7年。ふだんの鍋や卓上調理で回しながら減らしていける量です。備蓄用に別枠で持つのではなく、台所の消耗品として置いておくほうが、期限を切らさずに済みます。

5つめ。持ち歩ける電源です。スマホを維持できるかどうかが、情報と連絡と明かりの一部を左右します。エレコムのEC-C61MNは半固体電池を採用したモバイルバッテリーで、メーカー公式によると重量は約220g。容量と出力は今回公式で確認できなかったため書きませんが、カバンに入れっぱなしにできる重さであることが、この枠では効いてきます。備えたものは、手元に無ければ使えません。

6つめ。据え置きの電源です。ここまで埋まってから検討する枠です。EcoFlowのRIVER 2は容量256Wh・定格出力300W・重量約3.5kg・満充電60分。式③に自分の家電のW数を入れて、動かしたいものが300W以下に収まるかを先に確かめてください。収まらないなら、この容量帯では解決しません。逆に収まるなら、約3.5kgという片手で運べる重さと、満充電60分という戻りの速さが、停電中の使い勝手に直結します。

最後に、明かりの枠に戻る2台目を挙げておきます。パナソニックのBF-BL45M-Wは多機能ランタンで、1台をリビングに置いたあと「トイレや廊下にもう1つ欲しい」となったときの2台目という位置づけになります。点灯時間と重量は今回公式仕様ページで確認できなかったため書きません。役割としては、部屋ごとに明かりを分けるための追加、と考えてください。1台で家中をまかなおうとすると、暗い部屋に移動するたびにランタンを持ち歩くことになり、それがけっこうな負担になります。

そなえぐらし管理人
この順番でいちばん飛ばされやすいのが2つめの「情報」です。ランタンと電源は形が分かりやすいので買われるのに、手回しラジオは後回しになりがち。でも、電池と電源が両方切れたあとに残るのはここだけなんです。

この買い方が当てはまらない人・買わなくていい家庭の条件

例外とは、この記事の式では必要量が出せない条件のことであり、当てはまる場合は別の基準で決める必要がある。

ここまでの3つの式は、健康な大人が数日の停電をやり過ごす前提で組み立てています。次のどれかに当てはまる家庭は、この記事の計算をそのまま使わないでください。

在宅で医療機器を使っている家庭。これがいちばん大きな例外です。人工呼吸器、在宅酸素、吸引器などを使っている場合、「何時間もつか」は生活の快適さではなく安全に直結します。この記事の式で出したポータブル電源の容量では、まったく足りない可能性があります。機器ごとの内蔵バッテリー時間、停電時に誰へどの順で連絡するか、電力会社への事前登録が要るかどうか——判断すべきことがまるごと別にあります。在宅の医療機器は停電で何時間もつ?メーカー公表のバッテリー時間と、先に決めておく連絡の順番で、メーカー公表のバッテリー時間と連絡の順番を整理しました。この記事はこの領域について判断しません。該当する方は、そちらを読んでから買うものを決めてください。

火を使えない住まいの人。賃貸の規約でカセットこんろの使用や保管が制限されている場合、熱の枠を別の方法で埋める必要があります。式②はそのまま使えません。

すでに持っている人。4分類のうち埋まっている枠は買い足す必要がありません。分類表に自分の持ち物を書き込んで、空いている枠だけを見ます。全部そろえ直す必要はないのです。

  • ランタンも電池もある → 明かりの枠は完了。情報へ進む
  • カセットこんろがあるがボンベが1〜2本 → 熱の枠は本体済み・ボンベ未了
  • モバイルバッテリーが常にカバンにある → 電源の枠は最低限クリア
  • 4分類のどれかがまるごと空 → そこが最優先

短期の停電しか想定しない人。マンションの高層階で、断水も同時に起きる可能性が低く、数時間で復旧する地域なら、明かりと情報だけで実質的に足ります。熱と電源は買わなくていい、という結論も十分にあり得ます。全部そろえることが正解ではありません。

よくある質問

Q. 結局、何日分そろえればいいのですか。
A. この記事では言い切りません。復旧までの日数を一次資料で確定できなかったからです。北海道胆振東部地震のブラックアウトについては「最大で約45時間」という資料と「64時間後に復旧宣言」という数字が食い違っており、確認しようとした公式ページは開けませんでした。判断材料としては、数日で終わった例と数週間規模で長引いた例の両方があった、というところまでです。早見表は3日分と7日分の2列で出しているので、自分の想定を入れて読み替えてください。

Q. 電池は何本買えばいいですか。
A. 式①「使う電池の本数 × 交換回数 = 買う電池の本数」で出します。EX-136Sなら1回の交換で単3形が6本。Midモードで1日3時間なら1回の電池で6日もつので、7日分でも交換2回・12本で収まります。単3形40本入りなら、40 ÷ 6 ≒ 6.6 で約6回ぶんです。

Q. カセットボンベは古くなりますか。
A. 岩谷産業の公式によれば、CB缶の使用期限は製造から約7年です。長いほうですが、まとめて買うとまとめて期限が来ます。鍋や卓上調理でふだんから使い、減った分を買い足す回し方にすると期限切れが出ません。

Q. ポータブル電源は必ず買うべきですか。
A. いいえ。買う順番の4番目以降なので、明かり・情報・熱が埋まってから検討する枠です。判定は式③でできます。動かしたい家電の消費電力を調べ、定格出力を超えていないか、容量を消費電力で割った時間が足りるかを見る。RIVER 2なら定格出力300Wなので、300Wを超える家電は動きません。動かしたいものが決まっていない段階では買わなくていい、というのが素直な答えです。

Q. 停電中にろうそくを使ってもいいですか。
A. この記事では判断しません。「公的機関が使用を控えるよう呼びかけている」と書く記事もありますが、今回確認した範囲では、消費者庁が注意喚起しているのは通電火災であって、ろうそくへの言及は確認できませんでした。確認できていないことを根拠として書くわけにはいかないので、ここは保留とします。明かりの枠を電池式のランタンで埋めておけば、そもそもこの判断が要らなくなります。

Q. 4分類のどれから買えばいいか、まだ迷います。
A. 4つの枠に、いま家にあるものを書き出してみてください。まるごと空いている枠が1つ見つかるはずです。そこが最優先です。それでも決まらない場合は明かりから。停電で最初に困るのは暗さだからです。

まとめ|今日やることは1つ

停電の備えは、明かり・熱・情報・電源の4つに割れば、買うものと数が決まります。式は3つだけ。明かりは「使う電池の本数 × 交換回数」、熱は「連続燃焼時間 ÷ 1日に使う時間」、電源は「容量Wh ÷ 消費電力W」。日数だけは一次資料で確定できないので、自分で決めます。

  1. 4つの枠に、いま家にあるものを書き出す明かり・熱・情報・電源の4行を紙かメモアプリに書き、持っているものを入れます。まるごと空いている枠が今日の答えです。
  2. 空いている枠の式に、自分の数字を入れる何日分にするかを決めて、早見表の3日分か7日分の列を読みます。自分の想定日数があるなら、式に直接入れてください。
  3. 上の順番で、1つだけ買う明かり → 情報 → 熱 → 電源。全部そろえようとせず、いちばん上の空き枠を1つ埋めます。

4分類のすべてを一度に埋める必要はありません。空いている枠を1つ埋めるだけで、停電のときに困ることが1つ減ります。買い物としては、それで十分に前に進んでいます。

買うものが決まったら、次は使い方です。実際に停電が起きたとき、どの順番で何をするかは停電したらまず何をする?発生直後10分→3時間→1日の時系列やることリストにまとめました。また、停電に限らず家全体の備蓄をどう組み立てるかは備蓄リストの作り方ガイドが上位のハブになっています。

買う物が決まったら、実際に停電した夜の動き方は停電したらまず何をする?発生直後10分→3時間→1日の時系列やることリストとチェック表にまとめてあります。買い物と行動は担当が違うので、あわせて読むと抜けが減ります。

参考・出典

  • 消費者庁「停電が復旧した後の電気機器による火災に注意しましょう」(2023-08-29公表)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_070/(2026-09-05確認)
  • パナソニック「UP LIFE」停電時の冷蔵庫について https://panasonic.jp/life/safety/130010.html(2026-09-05確認)
  • 電源開発(J-POWER)Innovation Catalog 北海道ブラックアウトに関する記載 https://innovation-catalog.jpower.co.jp/commonbridge/hokkaido-blackout(2026-09-05確認)※本文中に記したとおり、他の資料と数字が食い違っており確定していません
  • 電気新聞 台風15号による千葉県の停電に関する報道 https://www.denkishimbun.com/sp/44771(2026-09-05確認)※東京電力の一次発表は確認できていません
  • EcoFlow 公式 RIVER 2 製品ページ https://www.ecoflow.com/jp/river-2-portable-power-station(2026-09-05確認)
  • GENTOS 公式 製品仕様(EX-136S:370ルーメン/点灯9時間・18時間・142時間・60時間/単3形アルカリ電池6本/355g/IP67準拠)(2026-09-05確認)
  • 岩谷産業 公式 製品仕様(カセットフー 達人スリムV CB-TS-5:最大発熱量3.4kW〈2,900kcal/h〉/外形335×275×84mm/連続燃焼時間 約68分/日本製)、およびカセットガスの使用期限に関する案内(製造から約7年)(2026-09-05確認)
  • エレコム 公式 製品情報(EC-C61MN:約220g)(2026-09-05確認)

この記事で書けなかったこと:北海道胆振東部地震の復旧所要時間(45時間と64時間で資料が食い違い、北海道電力・資源エネルギー庁の公式ページは403で閲覧できず)、台風15号の全戸復旧確定日(東京電力の一次発表が403で閲覧できず)、パナソニック BF-BL45M-W の点灯時間と重量、クマザキエイム SL-091 の手回し効率と重量、カセットボンベの保管温度の上限、乾電池の使用推奨期限。いずれも確認でき次第、追記します。

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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