停電中の冷蔵庫は何時間もつ?公表値2〜3時間の出どころをメーカー6社分たしかめた

停電中の冷蔵庫は何時間もつ?公表値2〜3時間の根拠|そなえぐらし

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停電中の冷蔵庫は、ドアを開けなければ約2〜3時間は庫内の冷えを保てる——これがパナソニック公式FAQに書かれている目安です。冷凍室はすき間なく詰まっていれば、季節によって半日から丸1日ほど凍った状態が続くとされています。

ただ、この記事を書くにあたって家電メーカー6社の公表資料を1社ずつ当たったところ、具体的な時間を数字で公表しているのは6社中1社だけでした。ネット上で「冷蔵庫は4時間、冷凍庫は48時間」という別の数字を見かけることもありますが、こちらは日本の公的機関の一次資料では確認できていません。数字そのものより、その数字がどこから来たのかを知っておくほうが、停電した夜に迷わずに済みます。

この記事でわかること

  • 冷蔵室2〜3時間・冷凍室半日〜1日という目安の正確な出どころ
  • 家電メーカー6社が停電時の保冷時間をどこまで公表しているかの一覧
  • 食品衛生法の保存基準(10℃以下・−15℃以下)という判断の物差し
  • 年間消費電力量から逆算する「冷蔵庫を電源で動かすと何日もつか」の計算式
目次

冷蔵室2〜3時間・冷凍室半日〜1日はパナソニックが公表している目安である

停電時の保冷時間とは、電源が切れた冷蔵庫が庫内の温度を保っていられるおおよその長さのこと。冷蔵庫は魔法瓶と同じで、冷気を作る力が止まっても断熱材が外の熱をしばらく防ぎます。

パナソニックの公式FAQには、こう書かれています。「冷蔵庫は庫内が十分に冷えている状態で停電になった場合、ドアを開けなければ約2〜3時間、庫内の冷えを保つことができます」。前提は2つ。すでに十分冷えていること、そしてドアを開けないことです。

冷凍室については、同社のオウンドメディア「UP LIFE」で、すき間なく冷凍食材を詰めておけば季節によっては半日から丸1日くらい凍った状態が保てる、と説明されています。ただしこちらは整理収納の専門家による監修記事で、技術部門の実測値として示されたものではありません。一般的な目安として読むのが正確です。

冷蔵室 約2〜3時間/冷凍室 半日〜丸1日。どちらも「開けない」が条件(パナソニック公式)

2〜3時間は、夕飯を作って食べて、片づけが終わるくらいの長さ。夕方に停電したなら、寝る頃までは冷蔵室の中身はおおむね持ちこたえる計算です。慌てて中身を移し替えるほうが、かえって冷気を逃がしてしまう。ここが最初の分かれ道になります。

「2〜3時間」を数字で公表しているのは6社中1社だけだった

「停電したら冷蔵庫は2〜3時間」という数字は、どのメーカーも同じように言っているわけではありません。主要メーカー6社のサポートページ・FAQ・災害時案内を1社ずつ確認した結果が、次の表です。

メーカー 保冷時間の数値 公表している内容
パナソニック 約2〜3時間と明記 停電前の準備(冷蔵室7割・冷凍室すき間なく)と復旧後の待ち時間まで具体的に案内
日立 記載なし 開閉をすばやく/冷凍室は多めに/約1日前に氷を作る、という手順のみ
三菱電機 記載なし 「ドアの開閉を少なくする」の注意のみ
シャープ 記載なし 停電モードの説明は太陽光・蓄電池の保有者向けで別の話
東芝ライフスタイル 記載なし 「ドアの開閉をなるべく少なく」の記載のみ
アイリスオーヤマ 確認できず 該当するFAQページを見つけられなかった

つまり「各社とも2〜3時間としています」という書き方は、事実としてできません。数字を出しているのはパナソニック1社で、残りは時間を示さず手順だけを案内しているというのが実際のところです。

では、ネットでよく見る「冷蔵庫は4時間、冷凍庫は満杯なら48時間」という別系統の数字は何なのか。調べた範囲では米国CDC(疾病予防管理センター)などの食品安全ガイダンスに由来する枠組みで、日本の農林水産省・厚生労働省・消費者庁が同じ数値を公式に発信している一次資料は確認できませんでした。海外の基準が悪いという話ではありません。ただ、どこの国の、誰が出した数字なのかは知っておいたほうがいいということです。

そなえぐらし管理人
正直に言うと、調べ始めたときは「各社が同じ数字を出しているはず」と思っていました。実際は1社だけ。数字が独り歩きしている典型例だと思います。だからこの記事では、2〜3時間を「絶対」ではなく「唯一の公表値」として扱います。

判断の物差しになるのは食品衛生法の10℃以下・−15℃以下である

保存基準とは、食品ごとに「この温度以下で保存すること」と定められた数値のことです。昭和34年厚生省告示第370号「食品、添加物等の規格基準」には、次のような基準が置かれています。

食品 保存基準
冷凍食品(一般) −15℃以下
食肉・鯨肉(生食用を除く) 10℃以下(細切り冷凍品は−15℃以下)
生食用食肉(牛肉) 4℃以下(冷凍品は−15℃以下)
生食用鮮魚介類・生食用かき・加熱食肉製品 10℃以下(各冷凍品は−15℃以下)

ひとつ注意があります。これは食品を扱う事業者に向けた法定の基準で、家庭の冷蔵庫を規制するものではありません。それでも「何℃を超えたら保存条件から外れるのか」という物差しとしては使えます。

そのうえで、当サイトでは「何時間で食べられなくなるか」は書きません。食品の状態は、元の鮮度・庫内の詰まり方・部屋の温度・開けた回数で変わるからです。

食品を口にしてよいかどうかの判断は、製造元の案内、お住まいの自治体の保健所、消費者ホットライン(局番なしの188)などにご確認ください。当サイトは判断の代わりにはなれません。できるのは、迷ったときに相談先があると知っておいてもらうことです。

実務的におすすめしたいのは、庫内に温度計を1本入れておくこと。停電のとき、推測ではなく数字が見えます。何度まで上がったか、何時間その状態だったかを記録しておけば、相談するときにも話が早い。

選ぶならアナログ式が向いています。デジタル式は電池が切れれば読めなくなりますが、停電はまさに「電気が使えない状況」だからです。冷蔵・冷凍の両方をカバーする温度域(−30〜50℃前後)のものを、普段から庫内に置きっぱなしにしておきます。



開ける回数を先に決めておくのが庫内温度を守る唯一の方法である

停電中にできることは、実はほとんどありません。冷気は増やせないからです。できるのは減らす速度を落とすことだけで、だから「開ける回数」がそのまま結果を決めます。

夜、家族の誰かが「何か食べるものある?」と冷蔵庫を開ける。次に別の誰かが飲み物を取りに開ける。3回、4回と重なれば、2〜3時間の目安はあっという間に短くなります。停電した瞬間にやるべきなのは、中身の移し替えではなく「今日はもう開けない」の共有でした。

  • 停電したら、まずドアを閉めた時刻をメモする(この時刻+2〜3時間が目安の起点)
  • 次に開ける回数と時刻を家族で決める(1日1回・まとめて取り出す、など)
  • 開ける前に「何を取り出すか」を口に出してから開ける
  • あたたかいものを庫内に入れない(日立公式でも逆効果と案内されている)
  • 冷凍室の保冷剤を冷蔵室の最上段へ移す(冷気は下に降りるため)。保冷剤がなければ凍らせたペットボトルでも代用できる

台風のように予告のある停電なら、前日までの仕込みが効きます。パナソニック公式FAQは、2〜3日前から冷蔵室の食品を容量の7割程度に減らし、冷凍室はすき間なくきっちり詰めることを案内。冷蔵室は空気が動くほうが冷えやすく、冷凍室は氷の塊そのものが保冷剤として働くためです。逆に見える指示ですが、理由が分かれば覚えられます。

クーラーボックスへの移し替えは、停電が長引くと分かってからで間に合います。コールマン公式が約30℃の室内で行った実験では、氷が完全に溶けるまでの時間は28QTで最大3日、65QTで最大5日間。ただしこれは氷の数値で、食品がどうなるかを示したものではありません。

復旧したら7分以上待ってから電源を入れ直す

電気が戻った瞬間にすべきことは、実は「すぐ動かさない」。パナソニック公式FAQでは、7分以内に復旧した場合は冷蔵庫に負荷がかかるのを防ぐため、7分以上待ってから電源プラグを差し直すよう案内されています。短い停電ほど忘れやすい項目です。あわせて庫内の温度と、ドアを閉めていた時間を記録に残しておきます。停電の初動全体は停電したらまず何をする?にタイムラインでまとめました。

電源で動かすなら年間消費電力量から1日分を逆算する

年間消費電力量とは、規定の条件で1年間運転したときに使う電力量で、カタログに必ず載っている数字です。これを365で割れば1日あたりの電力量が出ます。ポータブル電源で冷蔵庫を動かせるかは、この計算だけで判断できます。主要メーカーの公式仕様から4機種を拾って計算したのが次の表です。

機種 定格内容積 年間消費電力量 1日あたり 必要な表記容量(1日分)
パナソニック NR-F506T 501L 230kWh/年 約630Wh 約790Wh
東芝 GR-W500GT 501L 279kWh/年 約764Wh 約960Wh
シャープ SJ-D15K 152L 290kWh/年 約795Wh 約990Wh
パナソニック NR-B17AW 168L 308kWh/年 約844Wh 約1,060Wh

表を上から下へ見て、おかしなことに気づいたでしょうか。152Lの小型機(290kWh/年)のほうが、501Lの大型機(230kWh/年)より年間消費電力量が大きいのです。容量は3倍以上違うのに、電気は小さいほうが食う。大型機ほど断熱材と省エネ制御に開発費がかかっているためで、カタログの数字を並べれば誰でも確認できます。

つまり「うちの冷蔵庫は小さいから、小さいポータブル電源で足りる」は成り立ちません。見るべきは容量ではなく年間消費電力量です。

必要な表記容量の欄は、1日あたりの電力量を0.8で割ったもの。直流を交流に変換するときのロスを見込んだ係数で、当サイトのポータブル電源の容量計算と同じ式です。逆に言えば、1,070Whクラスで冷蔵庫だけを動かしてまかなえるのはおよそ1日分。「38時間」といった数値を見かけることもありますが、家庭用冷蔵庫を丸2日動かすのは、この計算では簡単ではありません。

年間消費電力量は規定の測定条件による値で、室温が高い・開閉が多いといった条件では実際の消費は増えます。またコンプレッサーの起動時には定格を超える電力が一瞬流れますが、この突入電流の数値を公表している冷蔵庫メーカーは確認できませんでした。定格出力ぎりぎりの機種を選ばず、余裕を見るのが安全側です。



要否の判断はポータブル電源はいらない?、容量の決め方は人数×日数での逆算へ。順番は「いるか決める」→「容量を計算する」→「機種を見る」です。

停電が1日を超えたら冷蔵庫に頼らない食事へ切り替える

ここで、現実的な停電の長さを確認しておきます。電力広域的運営推進機関(OCCTO)の集計では、2024年度の1需要家あたりの年間停電時間は24分、停電回数は0.13回。日常的な停電は、そもそも2〜3時間の目安に届かないことがほとんどです。

問題は、桁が変わる災害のとき。内閣府防災の記録では、2019年の令和元年房総半島台風(台風15号)は停電が最大約93万4,900戸に達し、電力の復旧は9月27日まで——発生から3週間近くかかりました。2018年の北海道胆振東部地震では、北海道電力が停電の解消を確認したと発表したのが10月4日です。

つまり「数時間の停電」と「数日以上の停電」は分けて考えるのが正解。前者なら開けずに待てば済みますが、後者は冷蔵庫の中身を守る話から、冷蔵庫がなくても食べられる状態を作る話へ切り替わります。

切り替え先が常温保存の備蓄です。停電が1日を超えたら、庫内の食品をあてにする計画をいったん捨てる。温めずに食べられるレトルトを何食分か持っておくと、この切り替えが一気にラクになります。



見分け方と賞味期限の考え方はレトルト食品の備蓄で、種類ごとの選び方は非常食のおすすめまとめで整理しています。普段の買い物で回していく方法はローリングストックへ。

停電中の冷蔵庫チェックシート(書き込み式)

暗い中で考えずに済むよう、記入式のシートを作りました。印刷かスクリーンショットで手元に置いておくと、そのまま使えます。

記録すること 記入欄 次にすること
ドアを最後に閉めた時刻 ___時___分 その2〜3時間後が冷蔵室の確認目安(パナソニック公式)
庫内温度計の数値(あれば) 冷蔵___℃/冷凍___℃ 10℃・−15℃という保存基準と照らして記録に残す
次に開ける時刻と、取り出すもの ___時___分/___________ 開ける前に口に出してから開ける
自宅の冷蔵庫の年間消費電力量 _____kWh/年 ÷365で1日分、÷0.8で必要な表記容量が出る
常温で食べられる備蓄の食数 ___食 停電1日超で切り替える分。人数×3食で足りるか確認
電力会社が公表している復旧見込み ___________ 数日以上なら冷蔵庫前提の計画をやめる
復旧した時刻 ___時___分 7分以上待ってから電源プラグを差し直す

まとめ:数字の出どころを知れば、停電した夜に迷わない

冷蔵室は約2〜3時間、冷凍室は詰まっていれば半日から丸1日。これはパナソニックが公表している目安で、他の5社は時間を数字で示していません。物差しとして使えるのは食品衛生法の10℃以下・−15℃以下という保存基準ですが、これは事業者向けのもの。食べてよいかどうかの判断は、相談先に委ねてください。

今日やることは1つだけ。自宅の冷蔵庫の型番を調べて、年間消費電力量をメモしてください。本体側面か扉の内側のシールに書いてあります。この数字さえあれば、必要な電源の容量は割り算で出せます。余裕があれば、下の2つも今日中に。

  1. 型番と年間消費電力量をメモする÷365で1日分、÷0.8で必要な表記容量。5分で終わります。
  2. 庫内温度計を1本入れる停電したときに、推測ではなく数字で状況が分かります。
  3. 家族と決めておく「停電したら冷蔵庫は開けない」「開けるのは1日1回」を先に共有しておきます。

ここまで読んだ方は、必要な電源の容量も、切り替え先の食料も、もう判断の基準が揃っています。この記事で扱った2つは、ポータブル電源の容量の決め方温めずに食べられるレトルトの選び方で、それぞれ詳しく比較しています。

よくある質問

停電と断水が同時に起きたら、冷蔵庫はどう扱えばいいですか

優先順位が変わります。断水が重なると、飲み水とトイレの確保が先になり、冷蔵庫は「開けずに放置する」だけで構いません。手を洗えない状況では庫内の食品を扱う行為自体のハードルが上がるため、常温保存の備蓄に早めに切り替えるほうが現実的です。断水側の手順は断水したらやること一覧にまとめています。

電気工事などの計画停電でも、同じ対策が必要ですか

数時間で終わる計画停電なら、必要なのは「開けない」の1点だけです。事前に日時が分かっているので、パナソニック公式が案内する準備(冷蔵室を7割に減らす、冷凍室をすき間なく詰める、氷を作っておく)をしておけば、目安の2〜3時間はより余裕を持って迎えられます。

停電で冷蔵庫の中身がだめになった場合、補償はありますか

当サイトでは補償の可否を判断できません。火災保険・家財保険に該当する特約があるかは保険会社へ、賃貸で建物側の設備が原因と思われる場合は管理会社や貸主へご確認ください。停電と復旧の時刻・庫内温度・写真を記録しておくと、どこに相談する場合でも話が進めやすくなります。


出典: パナソニック公式FAQ(停電時の対処)パナソニック UP LIFE日立の家電品 Q&A三菱電機「災害時のご注意」東芝ライフスタイル「自然災害発生時の対応」昭和34年厚生省告示第370号(保存基準・群馬県公開資料)/仕様: NR-F506TGR-W500GTSJ-D15KNR-B17AW電力広域的運営推進機関「電気の質に関する報告書-2024年度実績-」内閣府防災「令和元年度台風第15号」北海道電力「停電の解消について」コールマン「クーラーボックス保冷力実験」(すべて2026年8月確認)

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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