家族が在宅で人工呼吸器や酸素濃縮器を使っていると、停電の話はいつも同じ一点に集まります。「何時間もつのか」。ところがメーカーの公表値を並べてみると、その時間は機種によってまるで違いました。携帯型酸素濃縮器の帝人ファーマ「ハイサンソポータブルαⅢ」はバッテリー(小)で約1時間30分(連続0.5L/分使用時)。一方、在宅用人工呼吸器のフィリップス・レスピロニクス「トリロジー Evo シリーズ」は、着脱式バッテリーを2個使ったときの合計で「15時間のバッテリ駆動(最大)」と案内されています(いずれも2026-08-31確認)。
数十分の話と、十数時間の話。同じ「在宅の医療機器」という言葉の中に、この二つが同居しています。だから最初にやることは、備蓄を増やすことでも電源を買い足すことでもありません。自分の家にある機器の型番を控え、その機種の公表値をメーカーの資料で確かめ、停電したときの連絡先を紙に書いて機器のそばに貼る。まずはこの3つで足ります。
もうひとつ、先に言っておきたいことがあります。停電時に電力会社が用意している仕組みは、地域によって中身が違いました。東京電力パワーグリッドは公式ページで小型発電機等の貸与に触れていますが、関西電力送配電の公式ページには同じ趣旨の事前登録制度が見当たりません(2026-08-31確認)。「全国どこでも同じ制度がある」という前提で読み進めないほうが安全です。なお、この記事は電源が切れたときの段取りと制度の話だけを扱います。機器の操作や治療にかかわる判断は、必ず主治医・訪問看護・機器の供給業者にご相談ください。
この記事でわかること
- 主要メーカーが公表している在宅医療機器の内部バッテリー駆動時間と、その数字についている条件
- 設置型の酸素濃縮器について、フクダ電子の公式ページがどう案内しているか
- 停電したとき、機器の供給業者・訪問看護/主治医・電力会社のどこへどの順で連絡するか(書き込み欄つき)
- 電力会社への事前登録は全国一律ではないこと、自分の地域で何を聞けばいいかの質問リスト
在宅の医療機器が停電で何時間もつかは、機種ごとの公表値でしか分からない
内部バッテリーとは、機器そのものに組み込まれている電池のことで、外部からの電源が絶たれたときに機器の動作を引き継ぐためのものです。この駆動時間は「在宅医療機器はだいたい何時間」といった括り方ができません。機器の種類でも変わりますし、同じ種類でも機種で変わります。
まずは、メーカーの公式資料で確認できたものだけを並べます。通販サイトの数値や、医療機関の解説記事に載っていた数値は入れていません。

| 機器種別 | メーカー(国内販売) | 機種名 | 公表されている駆動時間 | 公式の注記 |
|---|---|---|---|---|
| 在宅用人工呼吸器 | フィリップス・レスピロニクス | トリロジー Evo シリーズ | 着脱式バッテリー2個で合計「15時間のバッテリ駆動(最大)」(7.5時間駆動のバッテリ×2個)。内部バッテリー単体の駆動時間は公式ページに記載なし。充電時間は0→80%で2.5時間、0→100%で3.5時間 | 「IEC 80601-2-72における公称合計駆動時間」「(最大)」と明記されている |
| 在宅用人工呼吸器 | レスメド株式会社(日本)/国内販売はフクダ電子株式会社 | クリーンエアASTRAL(Astral 100/150) | 一般的な使用でおよそ8時間。最悪条件(高圧設定・ダブル回路使用時)で4時間以上。外部バッテリー(ASTRAL外部電源/レスメドパワーステーションⅡ)は各8時間、最大2個接続で最長16時間 | 「駆動時間は、充電の割合、使用環境(室温・高度)、バッテリの状態と年数、オプション設定、患者回路設定や意図しないリークにより変動する」と明記されている |
| 携帯型酸素濃縮器 | フィリップス・レスピロニクス | シンプリーゴー(SimplyGo) | バッテリー駆動「最大3.4時間」 | 「設定、モードにより駆動時間が異なります」と明記されている |
| 携帯型酸素濃縮器 | 帝人ファーマ株式会社(製造販売業者) | ハイサンソポータブルαⅢ(認証番号304ADBZX00043000) | バッテリー(小・1.9kg)で約1時間30分/バッテリー(大・2.1kg)で約3時間10分 | 「連続0.5L/分使用時」という条件つきの数値。「機種の選択は医師の指示に従ってください」と注記されている |
すべて2026-08-31時点で各社の公式ページ・公式リリースから確認した内容です。
ここで大事なのは、右端の列のほうです。数字だけを抜き出して「うちの機器は8時間もつ」と覚えてしまうと、前提が抜け落ちます。ASTRALの「およそ8時間」には、充電の割合・室温・バッテリの状態と年数・回路の設定などで変わる、という注記がついています。トリロジー Evo の「15時間」には「(最大)」という語が添えられていますし、ハイサンソポータブルαⅢの「約1時間30分」は0.5L/分で連続使用したときの値です。公表値は、条件のそろった状態でその機種が出せる目安であって、今日この家のこの機器が必ず出せる時間ではありません。
時間の感覚に置き換えてみます。「およそ8時間」というのは、夜10時に停電したら翌朝6時ごろまで、という長さです。夜のうちに起きたことなら、朝を迎えるまでは持ちこたえる計算になります。反対に「約1時間30分」は、外来で会計を済ませて帰宅するまでのような、あっという間の時間です。同じ家の中に、この二つの時間軸を持つ機器が並んでいることも珍しくありません。
公表値には経年による変化が織り込まれていません。ASTRALの注記には「バッテリの状態と年数」が変動要因として挙げられています。実際に自分の機器がどのくらい持つのか、バッテリーの交換時期が来ていないかは、機器の供給業者と主治医に確認してください。この記事で数字を読んだことを、確認の代わりにはしないでください。
なお、電動吸引器についてはメーカーの公式サイトに到達できず、公式の駆動時間を確認できませんでした。通販サイトに記載された数値は見つかりましたが、出所が公式でないため上の表には入れていません。吸引器・電動ベッド・加温加湿器といった周辺機器がどうなるかは、供給業者に機種名を伝えて聞くのが確実です。
家の中で止まるのは医療機器だけではありません。照明、冷蔵庫、給湯、通信。どこから何が止まるのかを時系列で把握しておくと、機器の話も落ち着いて考えられます。全体像はオール電化の停電対策|何が止まるかを時系列で並べ、必要な電源を計算するで整理しています。
設置型の酸素濃縮器は、停電したら酸素ボンベに切り替えるよう案内されている
設置型の酸素濃縮器とは、部屋に据え置いて家庭用電源で動かし、空気から酸素を取り出して供給する機器のことです。携帯型と違い、家の電気で動き続けることを前提にした置き方をします。
この機器が停電したときにどうなるのか。今回の調査で公式に確認できたのは、次の一点です。フクダ電子の公式ページ(在宅酸素をお使いの方向けの「災害時の対応法」)は、器械が停電等で動かないときは、吸入を酸素ボンベに切り替えるよう案内しています(2026-08-31確認)。停電したら濃縮器から酸素ボンベへ、という切り替えが前提に置かれた案内です。
この記事では「設置型の酸素濃縮器は内部バッテリーを搭載していない」とは書きません。そう書ける直接の文言をメーカーの公式資料で確認できなかったためです。編集部の整理では、書けるのは「フクダ電子の公式ページが、停電等で器械が動かないときは酸素ボンベへの切替を案内している」という事実までです。手元の機種がどういう仕様なのかは、機種名を控えて供給業者に確認してください。
ボンベの本数、残量の見かた、切り替えのタイミング。このあたりは機器と処方の内容によって変わる領域なので、この記事では扱いません。訪問看護や供給業者から受けている説明が、その家にとっての正解です。もし説明を受けた記憶が曖昧なら、停電を待たずに聞き直しておくほうがいいでしょう。次の停電の日に思い出そうとするより、ずっと楽です。
連絡の順番は、停電してから考えるのではなく先に紙に書いておく
連絡の順番とは、停電に気づいてから誰へどの順で電話をかけるかを、あらかじめ決めて固定しておく手順のことです。停電の最中に考えることを減らすための道具であって、順番そのものに神秘的な意味があるわけではありません。

調べてみて分かったのは、この順番が世の中で統一されていないことでした。医療機関が書いた記事では「主治医が先」、訪問看護系の記事では「機器の供給業者が先」と、サイトによって主張が割れています。どちらが正しいかを外から決めることはできません。だからこの記事では、順番そのものを押し付けるのではなく、3つの系統があることを先に示します。そのうえで、自分の家の順番を書き込んでもらう形にしました。
3つの系統は役割が違います。①機器の供給業者は、その機器の状態と代替手段について具体的に答えられる相手です。②訪問看護・主治医は、体調と処方にかかわる判断を担う相手です。③電力会社(一般送配電事業者)は、停電の範囲と復旧の見通しを持っている相手で、地域によっては医療機器の使用者向けの案内を用意しています。この3つは代替関係ではなく、それぞれ別の情報を持っています。
順番を家族で決めるときの目安を挙げておきます。機器そのものに関することが最優先なら供給業者から、体調の変化が先に来ているなら訪問看護・主治医から。どちらにしても、電力会社への連絡は「復旧の見通しを知るため」という位置づけになります。実際にどの順にするかは、受けている医療の内容によって変わるので、次の訪問看護の機会に一緒に決めてしまうのが早いはずです。
連絡先の書き込み欄(印刷して機器のそばに貼る)
| 順番 | 連絡先の系統 | 名称・担当者名 | 電話番号 | 伝えること |
|---|---|---|---|---|
| 機器の供給業者(機種名: ) | 停電中であること/機種名/バッテリー残量の表示/いつから停電しているか | |||
| 訪問看護ステーション | 停電中であること/本人の様子/次の訪問予定 | |||
| 主治医・かかりつけ医療機関 | 停電中であること/使用中の機器/これまでの経過 | |||
| 電力会社(一般送配電事業者) | 住所/在宅で医療機器を使用していること/復旧見通しを知りたい旨 | |||
| 市区町村の担当窓口 | 住所・氏名/使用中の機器/名簿や個別避難計画の登録の有無 | |||
| 離れて暮らす家族・近隣の協力者 | 停電中であること/来てもらえるか/持ってきてほしいもの |
この表を印刷して、機器のそばと玄関の2か所に貼っておくと使えます。夜間や休日にかける番号が別に用意されている場合は、その番号も同じ行に書き添えてください。書き込みながら「あれ、この番号どこだっけ」となった連絡先があれば、それが今いちばん埋めておく価値のある欄です。
- 機種名と型番を、電話口ですぐ言えるようにメモしてある
- 供給業者の夜間・休日の連絡先を確認してある
- 訪問看護と主治医、どちらに先に連絡するかを家族で決めてある
- 紙の控えが、機器のそばと玄関の2か所にある
- スマホの連絡先にも同じ番号を登録してある
連絡の前後にやることの全体像、つまり停電に気づいてからの動き方そのものは、医療機器の有無にかかわらず共通する部分があります。発生直後から1日目までの流れは停電したらまず何をする?発生直後10分→3時間→1日の時系列やることリストとチェック表にまとめました。上の連絡表と併せて使うと、動きが途切れにくくなります。
電力会社への事前登録は、全国一律の制度ではない
一般送配電事業者とは、地域ごとに送電・配電の設備を運用している電力会社のことで、停電の復旧を担っているのはこの事業者です。医療機器の使用者向けの案内も、この事業者の公式ページに載っています。ただし、載っている中身が地域で同じとは限りませんでした。
結論から言うと、今回確認した2社で対応が分かれました。東京電力パワーグリッドは公式ページに次のように記載しています(原文どおり、2026-08-31確認)。
ご自宅で人工呼吸器等の医療機器をご使用されており、バッテリー等の代替電源がないお客さまにおかれましては、当社が保有している小型発電機等を可能な限りお貸しいたします。お近くのカスタマーセンターまでご連絡ください
加えて東京都北区の案内では、同社への電話登録(0120-995-007、03-6375-9803=有料)によって、停電時に復旧見通し等を個別に連絡してもらえる仕組みがあるとされています。ただしこの個別登録の窓口そのものは、東京電力パワーグリッドの公式サイト側では直接確認できず、区の案内を経由した確認にとどまりました(2026-08-31確認)。番号にかける前に、現在の受付内容を電話口で確かめるつもりでいてください。
一方の関西電力送配電の公式ページには、こうした事前登録制度の記載が見当たりませんでした。書かれていたのは「バッテリー等の代替電源のご準備をお願いします。停電中の健康状態がご心配な方は事前に医療機関などにご相談ください」という一般的な呼びかけです(2026-08-31確認)。
つまり、同じ「在宅で医療機器を使っている」という状況でも、住んでいる地域によって電力会社から受けられる案内が違います。他社については今回確認できていないので、「うちの地域にもあるはず」とも「無いはず」とも言えません。お住まいの地域の電力会社に、自分で確認するしかないというのが今回の到達点です。
電力会社に確認するときの質問リスト
事業者ごとに用意しているものが違うからこそ、聞くことを固定しておくと比べやすくなります。電話をかける前に、この5つを手元に置いてください。
- 医療機器の使用者として登録できる仕組みがあるか あるなら、登録の方法と受付窓口、必要な情報(氏名・住所・機器名など)を確認します。
- 登録すると停電時に何をしてもらえるのか 復旧見通しの個別連絡なのか、それ以外の対応も含むのか。期待できる範囲を言葉で確認しておきます。
- 発電機等の貸与の案内があるか ある場合、どこへ連絡すればよいか(カスタマーセンターか、別の窓口か)を控えます。
- 停電時に連絡する番号は、平常時の問い合わせ番号と同じか 災害時専用の番号が別にあるなら、それを連絡表に書き足します。
- 登録内容の更新はどうするか 引っ越し・機器の変更・電力契約の切り替えがあったときに、どう届け出るのかを聞いておきます。
電力の小売会社(契約している料金プランの会社)と、停電の復旧を担う一般送配電事業者は別の会社です。問い合わせ先を探すときは、地域の送配電事業者の名前で検索すると早く着きます。
実家で親が医療機器を使っている場合、この確認は帰省のタイミングでまとめて済ませるのが現実的です。電力会社の管轄が自分の住まいと違うことも多いので、現地で番号を控えておく価値があります。帰省中にできる点検の組み立て方は離れて暮らす親の家の防災|帰省の30分でできる点検と、置いて帰るものにまとめています。
国の資料と市町村の名簿が、地域の備えの土台になっている
避難行動要支援者名簿とは、災害時にひとりで避難することが難しい人をあらかじめ把握しておくために、市町村が作成する名簿のことです。在宅で医療機器を使っている人の備えは、この市町村の仕組みの上に乗っています。
国の側の資料としては、厚生労働省の「大規模災害時等長期停電における在宅人工呼吸療法患者等に関する支援について」(第8回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料2-3、平成31年3月18日)があります。この資料には、医療機関向けに簡易自家発電装置等の整備費用の一部を支援すること(補助率1/2)、患者情報(氏名・住所・使用機器等)をリスト化して発災時に活用する必要があること、そして「災害時難病患者個別支援計画を策定するための指針」を参照することが記載されています。
この内容は、読み手である患者・家族に何かを申請させるものではありません。医療機関や行政の側が、患者の情報を把握して動くための土台という位置づけです。裏を返すと、その土台に自分の家の情報が載っているかどうかで、災害時に地域から見えるかが変わります。
市町村の側では、災害対策基本法にもとづく仕組みがあります。避難行動要支援者名簿の作成は市町村の義務とされており(平成25年6月の改正)、個別避難計画の作成は市町村の努力義務とされています(令和3年5月の改正、第49条の14)。作成の主体はいずれも市町村です。努力義務という性質上、個別避難計画がどこまで進んでいるかは自治体によって差があると考えたほうが自然でしょう。
自分の家が名簿に載っているか、個別避難計画が作られているかは、市区町村の担当窓口でしか分かりません。窓口の名称は自治体によって違います(防災担当・福祉担当・保健所など)。まずは代表番号にかけて「在宅で医療機器を使っている家族がいて、避難行動要支援者名簿と個別避難計画について聞きたい」と伝えるのが早道です。なお、非常用電源の購入費助成や貸与の制度は自治体ごとに扱いが異なり、今回は原典を確認できていません。ある・ないの判断はご自身の自治体への確認でお願いします。
制度の確認と同じ日に、薬と介護用品の在庫も見ておくと二度手間になりません。何日分そなえるかの考え方は高齢者の防災の備え|持病の薬は何日分そなえるか、介護用品と食事の量の決め方で整理しています。
汎用のポータブル電源を医療機器につないでよいかは、この記事では判断できない
ポータブル電源とは、家庭用のコンセント形状の出力を備えた持ち運び可能な蓄電池のことで、防災用品として広く売られています。「これを買っておけば医療機器も動かせるのでは」と考えるのは自然な発想です。ただ、この点については今回、はっきりした答えを出せませんでした。分かったことと分からなかったことを、そのまま書きます。
分かったのは、少なくとも1社は医療機器について何かを書いている、ということです。Jackeryのポータブル電源1500 Ultraの取扱説明書PDFを取得して機械的にテキストを抽出したところ、17ページ付近に「CPAP」「ECMO」という英字の文字列が実在することを確認できました。つまり、少なくともJackeryの取扱説明書には医療機器に関する記載があると言えます。
分からなかったのは、その記載が具体的に何と書いてあるかです。前後の日本語部分はPDFのフォント埋め込みの都合で文字化けし、警告文の正確な言い回しを読み取れませんでした。したがってこの記事では、「メーカーが医療機器への使用を禁じている」とも「メーカーは何も言っていない」とも書けません。記載があることは確認できた。文言までは確認できなかった。ここが今回の到達点です。
EcoFlowとAnkerについては、今回の調査範囲では該当する記載を確認できていません。これは「記載が無い」という意味ではなく、確認しきれていないという意味です。同様に、出力波形(正弦波かどうか)と医療機器の関係についても、各社の明記を確認できませんでした。ネット上でよく語られる説明はありますが、原典を押さえられていないものをこの記事に書くことはしません。
読者にお伝えできる結論はひとつです。機器側の取扱説明書と、電源側の取扱説明書の両方を確認してください。そのうえで判断に迷う点が残ったら、機器の供給業者と電源メーカーの両方に問い合わせてください。医療機器につないでよいかどうかは、この記事が代わりに答えられる問いではありません。
一方で、医療機器以外の家電をどこまで賄えるかは、W数を積算すれば自分で計算できます。冷蔵庫や扇風機、通信機器といった一般の家電について必要なWhを求める手順はポータブル電源の容量計算|自宅の家電のW数を積算して必要Whを求める書き込み式ガイドにあります。医療機器の電源として計算するためのものではない、という点だけ切り分けて使ってください。
停電中は、照明とスマホを別の電源に逃がして機器のバッテリーを温存する
電源の役割分担とは、家の中で電気を使うものを「機器のためのもの」と「それ以外のもの」に分け、別々の電源で賄うという考え方です。医療機器の内部バッテリーは、機器を動かすためだけに使う。手元を照らす明かりや、連絡に使うスマートフォンは、そこから切り離して別の電源で持たせる。この線を引いておくと、限られた駆動時間を数字どおりに使い切れます。
逆の状況を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。停電した部屋で、機器の表示を確認しようとスマホのライトをつけ、連絡先を探してスマホを使い、待っている間に地図や運行情報を調べる。スマホの残量が減ると、今度は手近なコンセント代わりのものを探すことになります。ここで機器側の電源に手を伸ばさずに済むよう、明かりと通信の電源を最初から別立てにしておく。それだけの話です。
スマホと連絡の電源は、モバイルバッテリーで独立させる
連絡の系統が3つある以上、停電中のスマートフォンは「調べる道具」ではなく「かける道具」です。ここが切れると連絡表が紙にあっても電話ができません。
手元に置く一台として、エレコムのEC-C61MNを挙げます。公表スペックは容量10,000mAh(3.85V/5,000mAh×2セルの構成)、出力はUSB Type-Cが最大35W、USB-Aが最大22.5W、重量は約220gです。10,000mAhというのは、モバイルバッテリーとしては標準的な容量帯にあたります。この記事の文脈で見るべきなのは容量よりも重量と出力のほうで、約220gなら枕元や連絡表と一緒の場所に置きっぱなしにしても邪魔になりませんし、Type-C最大35Wという出力があれば、スマートフォンを短時間で必要なところまで戻せます。医療機器につなぐためのものではなく、連絡と情報のための独立した電源という位置づけです。
明かりは、乾電池で長く点くランタンにまかせる
照明をスマホのライトで代用しないほうがいい理由は、明るさよりも持続時間にあります。手元を照らし続ける用途でスマホを使うと、いちばん減らしたくないものが減っていく。おまけに片手がふさがります。
ここに置くなら、充電式ではなく乾電池式のほうが停電向きです。GENTOSのEX-136Sは、単3形アルカリ乾電池6本で動くLEDランタン(電池は別売)で、重量は約355g。公表されている点灯時間はHighで約9時間、Midで約18時間、Ecoで約142時間、キャンドルモードで約60時間です。Ecoの約142時間というのは、夜6時から翌朝6時までの12時間を毎晩点けたとして、11晩を超える計算になります。乾電池式なので、電池さえ換えれば復旧を待たずに点け続けられますし、充電し忘れて出番に使えない、という失敗が起きません。部屋を照らす仕事を丸ごと引き受けてもらい、スマホと機器の電源に手をつけないための道具です。
ただ、ランタンを1台にまとめようとすると、置き場所の取り合いが起きます。手元を照らす1台と、部屋そのものを明るくする1台では、求められる仕事が違うからです。機器の表示や配線を確かめるための明かりと、家族が動きまわる居間の明かり。これを1台で兼ねようとすると、どちらかを暗いまま我慢することになります。
部屋の側を引き受ける1台として、パナソニックのBF-BL45M-W(多機能強力ランタン)を挙げておきます。公式の仕様ページに記載されているのは、電源が単1形電池3本であること、明るさは白色・電球色で最大約400lm/最小約1lm、全灯色で最大約800lm/最小約2lmであること。連続点灯時間は乾電池エボルタネオを使ったときの値として、白色・電球色が最大16時間・最小1500時間、全灯色が最大8時間・最小1000時間と案内されています。防滴性能はIPX2(防滴形)、調光は無段階(最小1〜最大800lm)です(2026年9月7日確認時点)。
数字が続いたので、意味のほうに置き換えます。全灯色をいちばん明るくして点けっぱなしにすると8時間。夜のあいだ部屋を明るく保って朝を迎える、くらいの長さです。反対に、絞れるところまで絞れば1000時間を超える計算になります。明るさを落とせるということは、点けておける時間を自分で伸ばせるということでした。夜通し弱く灯しておいて、機器の様子を見るときだけ明るくする。この使い分けが1台でできると、スマホのライトを持ち出す場面がほとんどなくなります。
寸法と質量は、今回参照したパナソニックの仕様ページに記載がありませんでした。棚のどこに置けるか、片手で運べるかが気になる場合は、販売ページの表記か同社の取扱説明書で確かめてください。確認できていない数字を、ここに推測で書くことはしません。
乾電池は「本体より先に切れるもの」として数えておく
ここまでに挙げた2台は、どちらも乾電池で動きます。EX-136Sは単3形6本、BF-BL45M-Wは単1形3本。停電のときに先に足りなくなるのは、本体ではなくたいていこの中身のほうです。ランタンが2台あっても、電池が1組しかなければ点けられるのは1台だけになります。
数え方は単純で、1台あたりの必要本数 × 台数 × 交換したい回数。ランタンだけでなく、ラジオや懐中電灯、機器のまわりで使う小物も同じ形の電池で揃えておくと、在庫を1か所にまとめられます。停電の最中に引き出しを開けて、種類の違う電池を選り分ける作業をしなくて済むわけです。
まとめて置いておく先のひとつが、防災電池 単3形 40本(型番 BD-LR06-40-001)です。メーカーの公式サイトは今回見つけられなかったため、確認できたのは商品ページの表示だけになります。そこに書かれているのは、単3形が40本入っていることと、10年保存とされていることの2点(Amazonの商品ページ表示、2026年9月7日確認)。重量や素材といった細かい仕様は、出所を確かめられていないので書きません。
40本という数を、さっきの式に当てはめてみます。単3形6本で動くランタンなら、6回ぶん入れ替えてもまだ手元に残る量です。ラジオや懐中電灯にも回すと考えれば、家じゅうの単3形の機器を何巡かさせられる計算になります。10年保存という表示があるので、防災用品の棚に入れっぱなしにしておく備え方とも噛み合う。電池は、切れてから買いに行けないものだと考えておくと、置いておく理由がはっきりします。
- ランタン・ラジオ・懐中電灯が、それぞれ何形の電池を何本使うか書き出してある
- いちばん多く使う形の電池を、まとめて在庫にしてある
- 電池の置き場所が、ランタンと同じ場所か、すぐ隣にある
- 使用推奨期限を年に1回見る日を、決めてある
復旧の見通しを聞く手段を、スマホ以外にもう1つ残す
連絡の3系統のうち、電力会社は復旧の見通しを持っている相手でした。ただ、その見通しを受け取る手段がスマートフォンだけだと、残量が減るのと同じ速さで情報のほうも細くなっていきます。電話をかけるために残しておきたい電池を、状況を追うために使ってしまう。これがいちばん避けたい減り方です。
そこで、ラジオを1台だけ独立させておきます。クマザキエイムのSL-091(手回し充電ラジオライト)は、公式ページによると受信バンドがAM 522〜1620kHz/FM 76〜108MHzで、ワイドFMに対応。内蔵リチウムイオン充電池は3.7V/4000mAh、充電方式はUSBで6〜7時間、ソーラーで45〜50時間、手回しで10〜12時間(130〜150回転/分)、乾電池は単4形3本で8〜10時間と案内されています。ライトは1W(30ルーメン相当)で約18〜20時間の動作、防水等級はIPX-3、外形寸法は幅202×高80×奥90mm、質量は490g(乾電池含まず)。スマートフォンについては「1回充電出来ます」と記載があります(2026年9月7日確認時点)。
ここも、意味のほうに直しておきます。この一台の値打ちは、手回しで発電できることそのものではありません。電源の取り方が4通り用意されているという点です。ふだんはUSBで充電しておき、切れたら単4形の乾電池を入れ、それも尽きたら手回しに落とす。どこかで詰まっても次の手が残っている構造になっています。情報を取る道具が黙ってしまう場面を、順番に潰していける。
ラジオが伝えてくれるのは、停電の範囲や復旧の見通しといった地域の情報です。使っている機器をどうするか、受診や入院に切り替えるかどうかは、放送からは分かりません。その判断は主治医・訪問看護・機器の供給業者に電話で確認してください。ラジオは、電話がつながるまでのあいだ状況を把握しておくための道具です。
照明とスマホをまとめて逃がすなら、ポータブル電源という選択肢もある
先に線を引いておきます。ここで挙げるEcoFlowのRIVER 2は、照明・スマートフォン・ルーターを逃がすための電源であって、医療機器の電源として選ぶものではありません。医療機器につないでよいかどうかは、この記事の前のセクションに書いたとおり判断できていません。機器側の取扱説明書と電源側の取扱説明書の両方を読み、そのうえで機器の供給業者と電源メーカーの両方に確認してください。
乾電池でまかなえるのは、明かりと小さな機器までです。ルーターやスマートフォンを何日も回そうとすると、コンセントの形をした出口が要る場面が出てきます。ここまで引いてきた役割分担でいえば、いちばん外側にあたる部分になります。
EcoFlowのRIVER 2は、公式ページの記載で容量256Wh、定格出力300W、X-Boostで最大450W。バッテリーはリン酸鉄リチウムイオン電池で、サイクル寿命は3,000サイクル以上、AC充電は60分、出力ポートは6個、重量は約3.5kg、保証は5年とされています(2026年9月7日確認時点)。なお、今回確認した公式ページに医療機器についての記載は見当たりませんでした。これは「つないでよい」という意味ではなく、確認できていないという意味です。
時間の話に直すと、ここでも「何時間もつか」は積み上げでしか出せません。つなぐのは照明と通信、それに手元の小物まで。この記事の前のほうで触れた容量計算の考え方をそのまま当てて、必要なWhを出してから容量を選びます。医療機器のW数は、この計算に入れない。入れてしまうと、電源の選び方そのものが医療機器を前提にしたものに変わってしまうからです。
そしてAC充電が60分という記載は、段取りの側で効いてきます。台風の接近が予報された日の朝に満充電へ戻しておく、という使い方ができるためです。約3.5kgという重さも、棚から下ろして枕元まで運ぶくらいなら無理がありません。機器の内部バッテリーは機器のために。明かりは乾電池のランタン、情報はラジオ、連絡はモバイルバッテリー、それでも足りない範囲をポータブル電源が引き受ける。この順に線を引いておくと、停電の最中に「どれをどれにつなぐか」で迷う場面が減ります。
夏場は、明かりよりも室温のほうが先に問題になります。冷房が止まった部屋で何から手をつけるか、扇風機を回すのに何が要るかは真夏の停電に備える|冷房が止まった家で最初にすることと、扇風機を動かす電源の計算で扱いました。室温の管理について本人の体調にかかわる判断が必要なときは、訪問看護や主治医の指示を優先してください。
そして、ここまでの話はすべて「家にとどまる」ことを前提にしています。水・トイレ・食事を含めた在宅避難そのものが成立する条件と、人数×日数で必要量を出す早見表は在宅避難の準備リスト|成立する3つの条件と、人数×日数でわかる水・トイレの必要量早見表にまとめています。医療機器の段取りを決めたら、次はこちらで土台のほうを埋めていくと過不足が見えます。
これは自分で判断しないほうがいい(3つの線引き)
この記事は段取りと制度の話に限定して書いてきました。裏返すと、扱わなかった領域があります。そこを曖昧にしたままにしないよう、線を引いておきます。
| 判断しないほうがいいこと | なぜか | 相談する相手 |
|---|---|---|
| 機器の設定を変える(出力・モード・アラームなど) | 設定は処方と体調にひもづいており、家庭で調整する前提のものではないため | 主治医/訪問看護/機器の供給業者 |
| 代替電源をつないでよいかを自分で決める | 機器側と電源側の両方に条件があり、どちらか一方を読んだだけでは判断できないため | 機器の供給業者/機器メーカー/電源メーカー |
| 停電中に外出するか、受診・入院に切り替えるか | 体調と移動の可否、受け入れ先の状況をふまえた医学的な判断になるため | 主治医/訪問看護/かかりつけ医療機関 |
この3つに共通しているのは、答えが家ごとに違うということです。同じ機種を使っていても、処方が違えば結論が変わります。だから一般論として書ける記事は、ここまでで止まります。迷ったら、上の相手に電話する。それが正しい手順です。
停電の電源を4段階で整理する
よくある質問
公表されているバッテリー時間より短く感じるのですが、故障でしょうか
故障かどうかをここで判定することはできません。ただ、メーカーの注記には手がかりがあります。レスメドのASTRALの資料には、駆動時間が「充電の割合、使用環境(室温・高度)、バッテリの状態と年数、オプション設定、患者回路設定や意図しないリーク」によって変動する旨が明記されています(2026-08-31確認)。公表値と違う、と感じた時点で、機種名と気づいたことをメモして供給業者に連絡してください。
電力会社に登録すれば、停電しても電気は止まらないのですか
そうではありません。今回確認できた範囲でも、東京電力パワーグリッドの案内は「小型発電機等を可能な限りお貸しいたします」という内容であり、停電そのものを回避する仕組みではありませんでした(2026-08-31確認)。また、関西電力送配電の公式ページには同種の事前登録制度の記載がなく、対応は事業者によって異なります。まずはお住まいの地域の一般送配電事業者に、上の質問リストで確認してください。
市販のポータブル電源を1台買っておけば安心ですか
医療機器につないでよいかどうかを、この記事では判断できません。今回はJackeryの取扱説明書PDFに医療機器に関する記載があること自体は確認できましたが、その文言までは読み取れませんでした。他社については確認できていません。機器側の取扱説明書と電源側の取扱説明書の両方を読み、そのうえで供給業者とメーカーに問い合わせるのが確実です。医療機器以外の家電を賄う目的であれば、必要なWhを積算して選ぶ考え方が使えます。
吸引器や電動ベッド、加温加湿器はどうなりますか
これらの機器について、公式資料で駆動時間を確認することが今回はできませんでした。電動吸引器はメーカーの公式サイトに到達できず、加温加湿器についても公式の言明にたどり着けていません。数値を推測で書くことはできないので、機種名を控えて供給業者に確認してください。連絡表の「機種名」の欄に、呼吸器や酸素の機器と並べて書き足しておくと、聞き忘れが減ります。
照明とスマホをどこまで別の電源に逃がせるかは、用意する電源の容量で決まります。人数と日数から必要な容量を逆算する手順はポータブル電源のおすすめ容量は?防災用は人数×日数で逆算するにまとめています。医療機器につないでよいかは、この記事の本文のとおりメーカーと供給業者への確認が先です。
まとめ|今日やることは、機器の型番を控えることひとつ
在宅の医療機器が停電で何時間もつかは、機種ごとの公表値を見るまで分かりません。約1時間30分の機器もあれば、最大15時間と案内される構成もあります(2026-08-31確認)。そして、その数字にはすべて条件がついています。だから出発点は、備蓄でも買い物でもなく、手元の機器が何という機種なのかを書き留めることです。型番が分かれば、公表値も、供給業者への聞き方も、連絡表の埋め方も、そこから順に決まっていきます。
- 機器の型番を控える 本体のラベルや説明書の表紙を見て、メーカー名と機種名・型番を紙に書き出します。周辺機器(吸引器・加温加湿器・電動ベッドなど)も同じ紙に並べます。
- 公表値と夜間連絡先を、供給業者に確認する 控えた型番を伝えて、内部バッテリーの公表値、バッテリーの交換時期、夜間・休日の連絡先を聞きます。停電時の手順について説明を受けたら、その内容も同じ紙に書き足します。
- 連絡表を印刷して2か所に貼る この記事の書き込み欄を埋め、機器のそばと玄関に貼ります。あわせて、お住まいの地域の電力会社に質問リストの5項目を確認し、市区町村の窓口に名簿と個別避難計画の状況を聞いておきます。
ここまで済めば、停電が起きたときに考えることは「紙を見る」だけになります。段取りが紙の上にあると、あとは順番に電話をかけるだけの作業になります。
参考・出典
- フィリップス・レスピロニクス「トリロジー Evo」製品ページ(philips.co.jp)2026-08-31確認
- レスメド「Astral シリーズ」製品ページ(resmed.jp)/Astral 100・150 取扱説明書PDF(document.resmed.com)2026-08-31確認
- フィリップス「シンプリーゴー」に関するニュースリリース(2020年6月23日付、philips.co.jp)2026-08-31確認
- 帝人「ハイサンソポータブルαⅢ」ニュースリリース(2023年7月10日付PDF、teijin.co.jp)2026-08-31確認
- フクダ電子「在宅酸素療法を受けられる方へ/災害時の対応法」(fukuda.co.jp)2026-08-31確認
- 東京電力パワーグリッド「計画停電に関するお願い」(tepco.co.jp)2026-08-31確認
- 東京都北区「在宅人工呼吸器使用者等への支援」(city.kita.lg.jp)2026-08-31確認
- 関西電力送配電「停電時にご注意いただきたいこと」(kansai-td.co.jp)2026-08-31確認
- 厚生労働省「大規模災害時等長期停電における在宅人工呼吸療法患者等に関する支援について」(第8回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料2-3、平成31年3月18日、mhlw.go.jp)2026-08-31確認
- 総務省 関連資料(soumu.go.jp)/内閣府(防災担当)「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(bousai.go.jp)2026-08-31確認
- Jackery「ポータブル電源1500 Ultra」取扱説明書PDF(shopping.geocities.jp)2026-08-31確認
- エレコム「EC-C61MN」製品ページ(shop.elecom.co.jp)2026-08-31確認
- GENTOS「EX-136S」製品ページ(gentos.jp)2026-08-31確認
- パナソニック「多機能強力ランタン BF-BL45M」仕様ページ(panasonic.jp)2026-09-07確認
- クマザキエイム「SL-091」製品ページ(kumazaki-aim.co.jp)2026-09-07確認
- EcoFlow「RIVER 2 ポータブル電源」製品ページ(ecoflow.com)2026-09-07確認
- 防災電池 単3形40本(型番 BD-LR06-40-001)=メーカー公式サイトを確認できず、本数と保存年数は商品ページの表示にもとづく(2026-09-07確認)
