世界の備蓄の呼びかけはなぜ?イギリス・EU・ドイツ・北欧と日本の目安を比べる

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各国政府の文面を並べると、備蓄を呼びかける理由は嵐・停電・サイバー攻撃などで、戦争に触れる国と触れない国があります。日数は英国が3日、ドイツが可能なら10日、スウェーデンが少なくとも1週間で、日本の目安は最低3日、できれば1週間です(2026年10月31日時点)。

各国政府が自分で公表している文面を1つの表に並べると、日数だけでなく、水の数え方や理由の書き方もかなり違います。

自分の家は何をいくつ?「最低3日、できれば1週間」を量に直すと、大人1人の3日分は水9L・9食・携帯トイレ15回です。人数ごとの量と買う順番は備蓄3日分のリスト、1週間分は4人家族の1週間分のリストにまとめています。

目次

どの国が何日分の備えを呼びかけている?

日数で多いのは3日(72時間)で、スウェーデンやノルウェーの1週間、ドイツの10日が続きます。下の表は12の国・地域の政府や公的機関の文面を横に並べたものです。発行元の欄から原文へ進めます(リンク先はいずれも2026年10月31日確認)。

国・地域 日数 水(1人あたり) 戦争・武力攻撃に触れるか 発行元と時期
日本 最低3日、できれば1週間(国民保護パンフは3日分が目安) 9L(3L×3日・国民保護パンフ) 白書の段落は災害。国民保護パンフは武力攻撃やテロでも役立つと記載 内閣府「防災白書」令和8年版/内閣官房「国民保護パンフレット」
英国 3日 1日3L(飲用) 語なし※ Cabinet Office の発表・2026年10月22日
EU 少なくとも72時間(加盟国向けのガイドラインを欧州委員会が提案するとした) 記載なし 触れる 欧州委員会・上級代表 JOIN(2025) 130 final・2025年3月26日
ドイツ 可能なら10日(最低3日でも役立つ) 1日2L(うち0.5Lは調理用) 触れる BBK(連邦市民保護・災害援助庁)の手引き 第2版・2025年11月
スウェーデン 少なくとも1週間 1日3L以上 触れる MSB の冊子・2024年11月
ノルウェー 1週間 1週間で約20L 触れる DSB のページ・日付の表示なし
フィンランド 3日(72時間) 飲用は1日約2L、全体で1日1〜2バケツ 語なし※ 当局と団体が作った推奨(サイトの運営は SPEK)72 tuntia・冊子『Varautuminen kotona』は2025年1月21日版
オランダ 72時間 1日3L 触れる denkvooruit.nl(オランダ政府の NCTV〈テロ対策・安全担当の国家調整官〉が開発・調整するキャンペーンサイト)・ページ内の動画は2025年6月18日
スイス 食料は約1週間、水は3日分 9L(3L×3日) 語なし※ BWL(連邦経済国家供給庁)の冊子『Kluger Rat – Notvorrat』・2025年2月17日
米国 数日(数字なし) 1日1ガロン(約3.8L) 語なし※ Ready.gov・2026年7月1日更新
カナダ 少なくとも3日(72時間) 1日2L(チェックリスト)と約4L(別ページの動画) 語なし※ Public Safety Canada のチェックリスト・2026年4月30日/キットのページ・2025年9月12日
台湾 最低1週間 1日3L以上 触れる 国防部『當危機來臨時:臺灣全民安全指引』・2025年11月19日 二版一刷

※は、リンク先の家庭向けページの範囲で戦争や武力攻撃の語がない、という意味です。EU は2025年3月の戦略文書で「少なくとも72時間」を示し、ガイドラインの提案を予告した段階で、この文書に水の量は書かれていません。米国のキットのページは「several days」と書くだけで、日数の数字はありません。カナダは同じ省庁の2ページで水の量が割れています。

表に入れていないフランスも72時間で、SGDSN が作った手引きを政府系サイトが紹介しています(sports.gouv.fr「Guide « Tous responsables : face aux risques, agissons »」・2026年10月31日確認)。英国の発表文も、3日という助言はフランス、アイルランド、オランダでも使われていると書いています。

各国が勧める備えの日数の対応図。3日は英国・オランダ・カナダ、1週間はスウェーデン・ノルウェー、10日はドイツ(最低3日も可)、最低3日は日本(できれば1週間)

ドイツも「最低3日でも役立つ」と書き、日本も最低3日としています。3日は多くの案内に出てくる数字で、差が出るのはその先をどこまで勧めるかです。

英国では何があった?

2026年10月22日、英国政府が家庭に3日分の備えを勧める発表を出しました。発表文によると、これは3年間のキャンペーンの第1段階で、嵐など(severe weather)で電力、水道、電話、インターネットに影響が出る場面を挙げています(Cabinet Office「Households encouraged to take small, simple steps」・2026年10月31日確認)。

キャンペーンの名前は Be Ready です。サイトは「From severe weather to cyber attacks」と書き、嵐からサイバー攻撃まで、暮らしのサービスが止まる場面を挙げます(Be Ready トップページ・2026年10月31日確認)。3日の意味は、支援が必要な人に届くあいだ、自分の家で乗り切るため、という説明です。

チェックリストの主な項目は次のとおりです(Be Ready「Checklist」・2026年10月31日確認)。

  • 水3日分(1人1日3L・飲用)
  • 保存のきく食料3日分
  • 現金(硬貨と紙幣)とカード
  • FMラジオ(電池か手回し)
  • 充電済みのモバイルバッテリー
  • 手指消毒剤、ウェットティッシュ、衛生・バスルーム用品
  • 6か月ごとに期限を見るリマインダー

まったく新しい助言というわけでもありません。英国政府は2024年5月から家庭向けの助言を公開しており、発表文は、旧 Prepare のサイトを新しい言葉とデザインに更新したもので、助言の多くは変わっていないと説明しています。

発表の後、店の動きも報じられました。ネットスーパーの Ocado で水などに在庫切れの表示が出て、同社は週末に需要が増え、供給元と回復を進めていると説明しています。スーパーの Iceland は、週末に缶詰など(tinned products)の売上が40%増えたと同社が説明し、在庫は健全だとしています(何と比べた40%かは記事に書かれていません)(LBC 2026年10月27日の記事・2026年10月31日確認)。

この報道は、発表の直後が2つの嵐の週末と重なっていた点も合わせて読む必要があります。The National は、この種の商品は嵐の週末にふだんでも売れやすいと書いています(The National 2026年10月27日の記事・2026年10月31日確認)。店ごとに期間や比べる相手が違い、基準の書かれていない数字もあるので、数字どうしは比べられません。

政府側の言葉としては、国防相の Wes Streeting が取材で語った「alert but not alarmed」が報道で伝えられています。注意はしても怯えなくていい、という趣旨です(LBC 2026年10月23日の記事・AP の記事(Arab News 掲載)・いずれも2026年10月31日確認)。10月22日の発表文そのものには、買いだめの話は出てきません。

なぜ各国が備えを呼びかけているのか?

理由は1つではありません。各政府が自分の文面に書いている内容を並べると、次のようになります(原文は1つ目の表と、この表・本文のリンク先)。

国・地域 挙げている理由 原文の言葉
英国 嵐など、サイバー攻撃 From severe weather to cyber attacks
EU EUの戦略文書が挙げる、ロシアの侵略戦争、ハイブリッド攻撃・サイバー攻撃、妨害、パンデミック the possibility of armed aggression
ドイツ 極端な気象、サイバー攻撃・偽情報・妨害、戦争も以前ほど排除できない Selbst ein Krieg scheint nicht mehr so ausgeschlossen
スウェーデン 周辺で続く戦争、テロ、サイバー攻撃、偽情報 Krig pågår i vår omvärld
ノルウェー 気候変動、戦争、デジタルの脅威 klimaendringer, krig og digitale trusler
オランダ 極端な天候、戦争、大規模な障害 extreem weer, oorlog of een grote storing
フィンランド 長引く停電など pitkittynyt sähkökatko
スイス 輸送の途絶、Covid-19、極端な気象。一時的な供給の不足をしのぐため vorübergehenden Versorgungsengpasses
カナダ 洪水・嵐・猛暑・山火事などの気象災害、パンデミック、サイバー攻撃、停電、有害物質の放出、放射線・核の緊急事態(ハザードの分類として列挙) Cyberattacks, power outages(Get preparedのハザード分類の一部)
台湾 国防部の文面が挙げる、天災、疫病、極端な気候、中国の侵略の脅威 天災、疫病、極端氣候,還是中國的侵略威脅
米国 具体的な危機は挙げず、災害の後に数日は自力で過ごす場合があるとする several days

複数の政府に共通するのは、停電や断水などサービスの途絶、サイバー攻撃、極端な気象の3つです。戦争は、書く国と書かない国に分かれます。

英国では、国家リスク登録簿の2026年7月14日の更新で、データ基盤、水道、警察のシステムへのサイバー攻撃のリスクが加わりました。政府はこの登録簿を、将来の予測を意図したものではないと書いています(Cabinet Office「National Risk Register」の更新の発表・2026年10月31日確認)。サイバー攻撃で何が止まり、家で何を備えるかはサイバー攻撃に備える家庭の備蓄の記事にまとめています。

国どうしの関係に触れた文面もあります。英国の発表文は、キャンペーンの開始は「brings the UK into line with European peers」、つまり同じようなキャンペーンを行う欧州の国々と足並みをそろえるものだ、と書いています。表の文面が示すのは、各政府が挙げている理由までです。

戦争の準備なのか?日本はどうなのか?

戦争に触れている国はありますが、全部ではありません。日本の国民保護パンフレットは3日分を目安とし、戦争のための特別な量は示していません。

各国の家庭向けの文面で戦争や武力攻撃に触れているのは、EU、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、台湾の6つです(日本の国民保護パンフレットも武力攻撃に触れており、後ほど見ます)。ドイツの BBK はページのFAQで、ロシアのウクライナ侵攻を受けて市民から不安や質問が寄せられたことを、新しい手引きで戦争を取り上げた背景として説明しています。

一方、英国、フィンランド、スイス、米国、カナダは、リンク先の家庭向けページの範囲で戦争の語がありません。英国政府の10月22日の発表文と Be Ready のサイトに戦争や武力紛争の語はなく、理由は嵐など、サイトでは嵐からサイバー攻撃までです。報道にはこの呼びかけを武力紛争までの備えと説明するものもあるので(上の LBC 2026年10月23日の記事の地の文)、政府の文面と報道の説明は分けて読んでください。

では日本はどうでしょうか。内閣官房の国民保護ポータルサイトにあるパンフレット『武力攻撃やテロなどの緊急事態から身を守るために』は、第5章「日頃からの備え」で家庭の備蓄に触れています(内閣官房「国民保護パンフレット 第5章」・2026年10月31日確認)。

備蓄品は「3日分が目安」、飲料水は「9リットル(3リットル×3日分)」。地震などの災害への備えは「武力攻撃やテロなどが発生し避難をしなければならないなどの場合においても大いに役立つ」と書かれています。

パンフレットに書かれているのは3日分と9Lで、戦争用の別の量は示されていません。

日本の緊急要請は海外の動きと関係がある?

細野大臣の10月20日・23日・27日の会見要旨に、英国など他の国の備蓄の呼びかけの話は出てきません。日付を並べると、日本の要請の話は英国の発表より前に出ています(リンク先はいずれも2026年10月31日確認)。

日付(2026年) 公表された内容
9月25日 日本: 防災庁の発足日を11月2日と定める(内閣府 9月25日の会見)
10月13日 日本: 「11月2日に防災庁が誕生しますので、その時点で各省庁に対して要請を出したいと思っています」(内閣府 10月13日の会見)
10月20日 日本: 「11月2日に自治体にも緊急要請を出そうと思っています。」「食事もそうですし、トイレもそうですし。」(内閣府 10月20日の会見)
10月22日 英国: Be Ready の発表
10月27日 日本: 「地方自治体に対しては、備蓄の充実について緊急要請を行う予定をしております。」(内閣府 10月27日の会見)

日本の会見要旨にあるのは、自治体や各省庁への要請、食事やトイレなどの備蓄の充実の話です。緊急要請を戦争と結びつけるといった投稿もありますが、上の10月20日・27日と、10月23日の会見要旨(2026年10月31日確認)に、戦争や武力の語は出てきません。

日本の要請は2026年11月2日に公表され、国民には「最低3日間、できれば1週間分」の備蓄などを求めています(防災庁「事前防災徹底のための緊急要請」・2026年11月2日確認)。宛先ごとの内容は防災庁の緊急要請の解説で整理しています。

国によって何が違う?

いちばん大きな違いは水の数え方です。現金、ラジオ、トイレの書き方にも差があります。

水は「何に使う分か」で数字が変わる

英国の3Lは飲用、ドイツの2Lは0.5Lが調理用、米国の1ガロンは飲用と衛生、カナダの2Lは飲用・調理・衛生を合わせた量です。スイスの9Lは飲用と調理の3日分で、トイレを流す水などは含みません。同じ「1日◯L」でも中身が違うので、数字だけで多い少ないは比べられないのです。

4人家族に置き換えると、量の感覚がつかめます(当サイトの計算)。

国 計算 4人の合計 2Lペットボトルなら
日本(国民保護パンフ) 9L×4人 36L 18本
英国 3L×3日×4人 36L 18本
スイス 9L×4人 36L 18本
ノルウェー 約20L×4人 約80L 約40本
ドイツ 2L×10日×4人 80L 40本
スウェーデン 3L×7日×4人 84L以上 42本以上

ドイツの10日とノルウェーの1週間は、日数が違うのに合計はほぼ同じです。6本入りの箱にすると、36Lは3箱、84Lは7箱。置き場所を考えるときは、日数より箱の数で見るほうが分かりやすいかもしれません。

現金は「決済が止まる場面」のため

スーパーのレジやATMが止まった場面を想像すると、現金の役割が見えてきます。英国のページは理由を「In case electronic payments or ATMs are disrupted」と書き、チェックリストでは硬貨と紙幣を混ぜるよう示しています。スウェーデンは各種額面で1週間分以上、カナダは小額紙幣と硬貨、ノルウェーは少額の現金と複数のカード。細かいお金を挙げる国が目立ちます。日本の国民保護パンフは、非常持ち出し品の貴重品の中に現金を挙げています。いくらを、どんな内訳で持つかは災害時の現金の目安が参考になります。

ラジオは電池か手回しで聞けるもの

ラジオは、英国(FMの電池式か手回し)、ドイツ、米国、カナダ、ノルウェー、オランダ、スイス、台湾の案内に出てきます。方式は国で違い、米国は NOAA Weather Radio、ノルウェーは電池・手回し・ソーラーで動く DAB ラジオを挙げています。日本の国民保護パンフも携帯ラジオと予備電池です。停電でも聞ける電源を選ぶ点は共通しています。選び方は防災ラジオの選び方で比べています。

日本の家に置く1台の例が、クマザキエイムの Solpa 手回し/ソーラー蓄電ラジオ SL-091 です。手回し、USB、ソーラー、乾電池(単4×3)で充電できるので、各国の案内にある「電池か手回し」の条件に沿います。公式の表示は AM 522-1620kHz、FM 76-108MHz(ワイドFM対応)、LEDライト1W、防水等級 IPX-3、約490g(乾電池含まず)です。

トイレは袋を使う方法まで書く国がある

ドイツの品目には Campingtoilette と、便器に掛ける大きく丈夫なごみ袋があります。スウェーデンの冊子にはトイレの章があり、袋やバケツ、おがくずを使う方法が図で示されています。フィンランドも、断水時に便器へごみ袋を付ける方法を書いています。

日本では、防災基本計画(令和8年7月14日修正)が「最低3日間、推奨1週間」分の食料、飲料水に続けて、携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパー等を挙げています(内閣府「防災基本計画」・2026年10月31日確認)。家族で何回分になるかは携帯トイレの回数の数え方で計算できます。

まとまった回数で置くなら、クリロン化成の BOS 非常用トイレセット50回分があります。公式の表示は「4人で2.5日分(1日5回/人)」で、同じ条件なら2人で5日分です(当サイトの計算)。家族の人数で割って、何日分になるかを見てください。


日本の家庭は何を参考にすればいい?

海外の日数に合わせるより、日本の目安である最低3日、できれば1週間で、わが家の人数分を数えるのが分かりやすいです。

防災白書も「最低3日分、できれば1週間分」と書いています(内閣府「令和8年版 防災白書」・2026年10月31日確認)。ドイツの10日は、ドイツの機関が自国の家庭に向けて書いた数字です。日本で1週間が勧められる理由は南海トラフの備蓄の記事に、品目の数え方は3日分の備蓄リストにまとめています。

海外の案内から持ち帰るとしたら、日数より次のような点検の視点です。

  • 水を飲用・調理・トイレに分けて数えたか
  • 現金に硬貨や小さなお札が混ざっているか
  • 電池か手回しで聞けるラジオがあるか
  • トイレが流せないときの方法を決めてあるか
  • 期限を見る日を半年ごとに決めてあるか(英国のチェックリストの助言)

オランダのサイトは「Vooruitdenken is geen angstreactie, maar voorkomt juist paniek」と書いています。前もって考えることは不安からの反応ではなく、むしろ慌てるのを防ぐ、という意味です(denkvooruit.nl・2026年10月31日確認)。

まずは家族の人数×3日で水と食料を数えて、足りている分から1週間へ広げていく順番で考えてみてください。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直しています。記事は、国・自治体の資料とメーカーの公表値を1つずつ開いて確かめて書いています。自分で使っていない商品を、使ったようには書きません。

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