台風のとき車はどこに停める?冠水と飛来物から守る場所の決め方

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台風のとき車を停める場所は「その駐車場が何cm浸かるか」で決まる

「明日の昼ごろ、台風が最も近づきます」。夜にそう聞けば、家の中のことなら手が動きます。ベランダの鉢を入れて、浴槽に水を張る。ところが翌朝、駐車場を見たところで急に止まる。この車、ここに置いたままでいいのだろうか。

迷う理由ははっきりしています。家は動かせないのに、車だけは動かせてしまうから。しかも「高台へ移動を」と言われても、自分にとっての高台がどこかは分かりません。

台風のときの退避先とは、風で物が飛んでこず、かつ水が来ても車の下回りより高い位置にいられる場所のことです。物差しになるのは水深。JAFが2010年に行った冠水路走行テストでは、水深30cmならセダンもSUVも時速10km・時速30kmで走り抜けられたのに対し、水深60cmではセダンは時速10kmでも走行できず、31m地点でエンジンが止まりました(出典: JAF「冠水路走行テスト」/2026年9月1日確認)。30cmと60cmのあいだに、動けるかどうかの線があります。

この記事でわかること

  • 水深30cmと60cmで車に何が起きるか(JAFの実験値)と、駐車場所選びへの読み替え方
  • 「立地条件 × 時間の余裕」で退避先を決める判断表
  • 立体駐車場・地下駐車場の話を、誰の見解かで分けて読む整理
  • 浸かった車でやってはいけないことと、保険の確認先

問いは「高台かどうか」ではなく、「その場所は60cm浸かる可能性があるか」です。平らな月極駐車場でも、周囲より低ければ60cmは届きます。

水深30cmと60cmの境目を、駐車場所の物差しに変える

冠水路走行テストとは、実際の車を水を張ったコースに進入させ、どこまで走れるかを測った実験です。JAFが公開している結果は、駐車場所を選ぶ目安にそのまま使えます。

水深 進入速度 セダン(2,000cc) SUV(2,000cc)
30cm 時速10km 走行可能 走行可能
30cm 時速30km 走行可能 走行可能
60cm 時速10km 走行不可(31m地点でエンジン停止) 走行可能
60cm 時速30km —(時速10kmの時点で走行不可) 走行不可(10m地点でエンジン停止)

出典: JAF「冠水路走行テスト」(2026年9月1日確認)。2010年4月8日実施、車両はトヨタ・マークⅡと日産・エクストレイル。JAFが2024年に行った検証でも、水深60cmに時速40kmで進入した車が28.5m地点で停止しています(JAF「冠水路走行テスト(BEV・HV・ガソリン車で検証)」/2026年9月1日確認)。

数字だけでは体に入ってきません。30cmは30cm定規を立てた高さ。60cmはA4用紙(長辺29.7cm)を縦に2枚並べた高さとほぼ同じです。見下ろせば「少し深いな」程度にしか見えない水位で、車は自力で出られなくなります。

使いどころは、走ってよい水深の判定ではなく駐車場所の選定です。「大雨のとき何cmまで来た記憶があるか」「周囲より低いか高いか」を、30cmと60cmの2本の線で仕分けます。走行中に冠水に出くわしたときの判断は、冠水した道路は車で走れる?JAFの実験でわかる限界と、引き返す判断の決め方にゆずります。

実験はテストコースでの結果です。実際の冠水路には外れたマンホールや土砂があり、条件は変わります。数値は「安全な限界」ではなく「これ以上は無理」の側の目安です。

退避先は「立地条件 × 時間の余裕」の4通りに分かれる

判断表とは、条件の組み合わせから取れる選択肢を絞り込む道具です。台風前の車の話は、突きつめると「駐車場がどこにあるか」と「あと何時間動けるか」の2軸しかありません。

いまの駐車場の立地 前日までに動かせる 数時間しかない もう動かせない
浸水想定区域の外・周囲より高い そのまま。飛来物だけ確認 そのまま。移動のリスクが上回る そのまま
区域内だが上の階へ上げられる 上の階へ移す候補 上の階へ移す候補 上の階へ移す(近く間に合いやすい)
区域内の平置き・地下 区域外の駐車場へ移す 近場で最も高い場所へ。往復時間を先に測る 車は諦める判断も。人の安全が優先
駐車場の立地条件と、選ぶべき退避先の対応関係を示した図

いちばん重要なのは表の右下、「区域内の平置きで、もう動かせない」の欄です。ここに入ったら車を守る話は終わり。雨風が強まってから移動に出るのは、車のために自分を水の中へ置きに行くのと同じです。

それでも、動かすと決めた車が移動の途中で水に囲まれる可能性はゼロにできません。そのときの手順は国が具体的に示しています。国土交通省「水中に転落したときの脱出方法」によれば、ドアは水圧でほとんど開かなくなるため、出口は窓。窓が水面より上にあるうちに開けて外へ出て、十分に開かないときは水面より上にある側面か後面のガラスをハンマーで割る、という順番です。準備として「ハンマーは手の届く位置に固定しておく」ことも書かれています(2026年9月11日確認)。

身の回りの物では代わりが利かない、と考えておくのが無難です。JAF「自動車が水没したときの対処と脱出方法とは?」(ページ内の表記は2025年7月現在/2026年9月11日確認)では、スマートフォン、車のキー、ビニール傘、ヘッドレストでは窓が割れず、割れたのは脱出用ハンマーだけでした。同じページには、合わせガラスを使った窓は割れない場合があるという注記もあります。自分の車のどの窓なら割れるのか、ハンマーをどこに付けるかは車の脱出用ハンマーの選び方|割れない窓ガラスの見分け方と、置き場所の決め方で確かめられます。

候補として名前を挙げておくと、Amazonベーシックの「レスキューハンマー」。Amazonの商品ページ表示(2026年9月11日確認)では、ウィンドウハンマーとシートベルトカッターの機能を持つ2点セット(型番SW-835)とされています。ベルトを切る刃が付いているのは、バックルが外れないときの備え。運転席から手の届く場所に固定しておけば、国土交通省の手順どおりに動けます。

家と車のどちらを先に守るかで迷う人もいます。水のうを積む作業も、車を高い場所へ移す作業も30分では終わりません。住み続ける前提がある以上、家の浸水対策が先です。手順は家庭でできる浸水対策|水のう・土のう・止水板を自治体の公表手順で使い分けるにまとめました。所要時間を見積もってから移動時刻を決めてください。

水のうの作業を長引かせるのは、積むことより中身を用意する工程です。水を吸わせるだけで膨らむ吸水土のうなら、土や砂を集める手間がかかりません。たとえばTIAMORAの「水で膨らむ吸水土のう」は、Amazonの商品ページ表示(2026年9月11日確認)で2袋(10枚入り)とされています。家の側の作業を短い道具で組んでおけば、車を動かす時間も残しやすくなります。

車を動かす期限は、風が強くなる前に来る

移動の期限とは、雨が降り出す時刻ではなく運転そのものが難しくなる時刻です。気象庁は風の強さを段階で示しています。

通常の速度で運転するのが困難になる(平均風速20m/s以上30m/s未満・予報用語「非常に強い風」)

走行中のトラックが横転する(平均風速30m/s以上35m/s未満・予報用語「猛烈な風」)

出典: 気象庁「風の強さと吹き方」(2026年9月1日確認)

20m/sを時速に換算すると約72km/h。高速道路と同じ強さの風が横から吹き続ける状態です。車を動かす作業は予報が「非常に強い風」に届く前に終えている必要があります。

  • 退避先を決め、往復の時間を測っておく
  • 移動先から歩いて帰れる距離か確かめる
  • 買い出しと重なるなら、車の移動を先に済ませる
  • 誰が動かすかを家族と決めておく

もう一つ、動かす時刻を決めるときに頭に入れておきたいのが道の混み具合です。台風の前は、同じように車を高い場所へ移そうとする人が同じ時間帯に重なりがちです。退避先への道で渋滞にはまると、往復の時間は測ったときより延びる。途中で車を離れてトイレを探すのも簡単ではありません。

車に一つ積んでおくなら、Qbitの「どこでも携帯トイレ 小便用」のような携帯トイレが候補になります。Amazonの商品ページ表示(2026年9月11日確認)では、Mサイズで6回分、男女兼用で、受け口・エチケット袋・廃棄袋が付いたもの。「防災グッズ大賞2023 大賞ブランド」との表記もあります。車内の決まった場所に入れておけば、家族の誰が車を動かすことになっても手に取れます。


買い物と移動が重なる日は、順番を間違えると両方できなくなります。台風前に買っておくもの|売り切れる順の買い物リストで買う物を絞れば、買い出しを短く終えて移動を先に回せます。何日前に何をやるかは台風に備える備蓄リスト|上陸3日前・前日・当日にやることを時系列でに並べました。

見落とされがちなのが帰り道です。遠くの高台に移すほど、自分は歩いて帰ることになる。足元の判断も要るので、長靴でいいのかどうかは災害時の靴は長靴でいい?国土交通省が示す「ひも付き運動靴」と歩ける水深の目安で確認しておいてください。

そなえぐらし管理人
「遠くて安全な場所」より「歩いて帰れる範囲で、いちばん高い場所」。退避先を1つに絞れないときは、この基準で選ぶと迷いが減ります。

立体駐車場と地下駐車場の話は「誰が言っているか」で分けて読む

台風の駐車場所を扱う記事には、必ず「地下駐車場は避け、立体駐車場の上の階へ」という説明が出てきます。覚えておく価値はありますが、出所の確認が要ります。

これを言っているのは、駐車場運営会社や損害保険会社という民間事業者のコラムです。一方で、気象庁・国土交通省・自治体などの公的機関が、立体駐車場を勧める/地下駐車場を避けるべきと直接示した資料は、今回の調査では確認できませんでした。公的機関の指示ではなく、業界の実務的な見方として扱うのが正確です。

民間事業者の説明には限界もセットで語られています。立体駐車場の中層階以上は水から比較的守られるものの、周辺の道路が冠水すれば結局は車を出せなくなる点です。「浸からない」ことと「使える」ことは別だと理解しておけば、判断を誤りません。

使う順番は、JAFの実験が示す水深の数値、周囲との高低差、民間事業者の一般論。この順です。

屋外にしか置けないときは、飛んでくる物から逆算する

飛来物対策とは、車をぶつけない工夫ではなく、車の周囲から飛ぶ物を減らす工夫です。屋根つきの場所を確保できない人のほうが多いので、現実的に考えます。

気象庁の風速表が示すとおり、30m/s台では走行中のトラックが横転します。停まった車が飛ぶことはまずなくても、周りの物は動く。軸は半径数メートル以内に風で動く物が何個あるかです。工事現場の資材、置きっぱなしの自転車、古い建物のトタン。その風下は避けます。

車内に積む物は、置きっぱなしにできる物と夏場に置けない物で分かれます。ここは車に常備する防災グッズ|車内とトランクで分ける、夏に置けない物リストにまとめました。走るにも燃料は要ります。給油は災害に備えてガソリンは何割?満タン給油が推奨される理由と、車から電気を取る限界を参照。直前は給油待ちが長く、当日に足すのは現実的ではありません。

浸かってしまった車で、やってはいけないこと

水没車とは、外観に傷がなくても電気系統が水に触れた可能性のある車です。判断を誤ると、被害が車の損傷から人身事故に変わります。国土交通省の注意喚起はこうです。

水に浸った車両は、外観上問題がなさそうな状態でも、感電事故や、電気系統のショート等による車両火災が発生するおそれ

ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は、高電圧のバッテリーを搭載していますので、むやみに触らないで下さい

出典: 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」(2026年9月1日確認)

  • 自分でエンジンをかけない。使いたい場合は販売店や整備工場に相談(国土交通省)
  • HV・EVの高電圧バッテリーにむやみに触らない(同)
  • 発火のおそれがあるため、バッテリーのマイナス側ターミナルを外す(同)

危ないのは「動くかどうかだけ確かめたい」という気持ちです。そのひと回しが火災の引き金になりうる、というのが国の説明の趣旨。水が引いた後の一手目はキーではなく電話です。

費用も気になります。損保ジャパンの公式コラムは「台風によって水没した車を修理する際に、車両保険に加入していれば保険が適用されることが一般的」と説明し、詳細は取扱代理店または同社への問い合わせを案内しています(2026年9月1日確認)。注意したいのは、これが「一般的」という言い方にとどまる点です。補償の範囲は契約の型によって変わります。手元の保険証券を開くか、契約先の保険会社に直接確認する。台風の前に済ませられる作業です。

この記事が当てはまらないケース

ここまでは自家用車を自宅の駐車場に置く人を想定しています。次の場合は別の判断です。

  • すでに避難情報が出ている——車の移動より避難が先。自治体の情報に従ってください
  • 周辺道路がすでに冠水している——移動ではなく走行の判断になります
  • 車庫が契約で決まっていて勝手に移せない——管理会社への確認が先。直前では連絡が取れません
  • 営業車・社用車——退避先の決定権が個人にない場合があります

よくある質問

立体駐車場の上の階に停めれば安心ですか?

「浸からない」ことと「使える」ことは別です。駐車場運営会社や損害保険会社は上の階への退避を挙げつつ、周辺の道路が冠水すれば出せなくなる点も指摘しています。公的機関がこれを直接示した資料は確認できませんでした。数日出られなくても困らないかで判断してください。

台風の前に車を動かすなら、いつまでですか?

気象庁は平均風速20m/s以上30m/s未満の「非常に強い風」で「通常の速度で運転するのが困難になる」としています(2026年9月1日確認)。この段階に入る前に終えているのが目安です。

浸かった車は、エンジンをかけて動くか確かめてもいいですか?

国土交通省は、外観上問題がなさそうでも感電事故や電気系統のショートによる車両火災のおそれがあるとして、自分でエンジンをかけずに販売店や整備工場へ相談するよう案内しています(2026年9月1日確認)。

まとめ:今日やることは1つ

台風の日に迷わないためにやることは1つだけです。いまの駐車場が浸水想定区域に入っているかどうかを、ハザードマップで見る。これだけで、当日の判断が「その場の勘」から「前もって決めた手順」に変わります。

  1. いまの駐車場を地図で確認するハザードマップで浸水想定区域の内か外かを見る。周囲の道路より高いか低いかも自分の目で確かめる。
  2. 退避先を1か所決めて往復時間を測る候補は「歩いて帰れる範囲で、いちばん高い場所」。片道何分かを記録する。
  3. 保険の契約内容を確認する保険証券を開くか、保険会社に水災の扱いを問い合わせる。台風が近づいてからでは電話がつながらない。

60cmという数字を覚えておけば、当日の判断は速くなります。ここは60cm来るのか、来ないのか。その1問で決まります。

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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