高潮の備えは「情報の4区分」と「区域図の有無」の2つで決まる
台風が近づくと、画面に並ぶ情報の数がふだんの何倍にもなります。雨、風、川の水位、土砂。そこに「高潮」の二文字が混じっても、それが自分の家に関係のある話なのかは、すぐに判断がつきません。海はここから遠いのか近いのか。考えているうちに、画面は次の話題へ進んでいきます。
高潮の備えは、2つのことが決まれば形になります。ひとつは自宅が高潮浸水想定区域に入っているかどうか。これは水防法にもとづいて都道府県知事が指定する区域図で調べられます。もうひとつは、どの情報が出た時点で動くか。こちらは2026年5月29日に仕組みそのものが変わり、高潮の情報はレベル2高潮注意報/レベル3高潮警報/レベル4高潮危険警報/レベル5高潮特別警報の4区分になりました。
数字で言い切ります。レベル2の注意報は基準に達すると予想される時刻のおおむね18時間前まで、レベル3の警報はおおむね12時間前まで、レベル4の危険警報はおおむね6時間前までに発表されます(出典: 気象庁「新しい発表基準の特徴等について」/2026年9月1日確認)。18時間前とは、前の日の夜に出た情報が翌日の昼過ぎの高潮に対応している、という時間感覚です。荷物をまとめ、車を高い場所へ移し、家族に連絡を回すには十分な長さがあります。問題は、その情報を見たときに「自分の家がどうなのか」を知らないことのほうです。
この記事でわかること
- 高潮が起きる仕組みと、津波とは情報の出方がどう違うのか
- 2026年5月29日から4区分になった高潮の情報と、リードタイム(18時間・12時間・6時間)
- 自宅が高潮浸水想定区域かを調べる全国共通の手順と、区域図が見つからないときにやること
- 「マンションの高層階なら高潮でも安全か」への答えと、上に逃げたときに残る限界
高潮とは、台風や低気圧によって潮位そのものが持ち上がる現象である
高潮は「波が高い」ことではありません。海面の高さそのものが、ふだんより持ち上がる現象です。
台風や発達した低気圧が通過するとき、潮位が大きく上昇することがあり、これを「高潮」という。
出典: 気象庁「潮汐・海面水位の知識」(https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/knowledge/tide/takashio.html/2026年9月1日確認)
持ち上げる力は2つあります。ひとつは、気圧が下がって海面が吸い上げられる効果。気象庁は気圧が1hPa下がると潮位は約1cm上昇するとしており、同じ数値は国土交通省水管理・国土保全局のページでも確認できます(出典: 気象庁「潮汐・海面水位の知識」/国土交通省「高潮はどうして起こるの?」https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/01/index.html/いずれも2026年9月1日確認)。1cmは指1本の幅にも満たない高さです。単独では取るに足らない。この単位の小ささが、高潮の理解をむずかしくしています。
もうひとつが吹き寄せ効果です。強風が沖から海岸へ吹くと海水が吹き寄せられ、海面が上昇します。国土交通省は、湾口から湾奥へ強い風が吹く場合、風速が速いほど、湾が長いほど、水深が浅いほど効果が大きくなると説明しています(出典: 国土交通省「高潮はどうして起こるの?」/2026年9月1日確認)。
つまり、同じ強さの台風でも、開けた外洋に面した海岸と、細長い湾の一番奥とでは起きることが違うということです。地形が効く。だから高潮の危険度は「台風の強さ」ではなく「どこに住んでいるか」で大きく変わります。この記事が区域図にこだわるのは、そのためです。
満潮と重なるとどうなるか
吸い上げ効果と吹き寄せ効果は、暦の上の潮の高さ(天文潮位)に上乗せされる形で働きます。同じ台風でも、干潮の時間帯に来るのと満潮の時間帯に来るのとでは、最終的な海面の高さが変わる計算になります。満潮・干潮の時刻は、気象庁が全国の験潮所ごとに潮位表としてPDF・テキストで公開しています(出典: 気象庁「潮位表」https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/index.php/2026年9月1日確認)。
高潮と津波は、原因も情報の出方も別の仕組みである
高潮は気象が原因で起きる現象で、津波とは別の仕組みです。結果が「海の水が家まで来る」で同じに見えても、備え方は分かれます。
下の表は、高潮の側だけを一次資料で確認して作りました。津波の側は今回の調査で一次資料に当たっていないため、列を置いていません。
| 観点 | 高潮について一次資料で確認できたこと |
|---|---|
| 原因 | 台風・発達した低気圧による気圧低下(吸い上げ効果)と強風(吹き寄せ効果) |
| 危険度を左右するもの | 風速・湾の長さ・水深といった地形条件。海岸に近いほど影響が強い |
| 情報の出方 | レベル2注意報はおおむね18時間前まで、レベル3警報はおおむね12時間前まで、レベル4危険警報はおおむね6時間前までに発表 |
| 危険な区域の示され方 | 水防法にもとづき都道府県知事が「高潮浸水想定区域」を指定し、区域図として公表する |
出典: 気象庁「潮汐・海面水位の知識」/気象庁「新しい発表基準の特徴等について」/国土交通省 水管理・国土保全局・水防法条文資料(いずれも2026年9月1日確認)
この記事では津波側の一次資料を確認していないため、「津波は〜である」という断定は置いていません。津波の浸水想定の調べ方、逃げる高さと家族の合図の決め方は、津波への備えと避難|自宅の浸水想定を調べて、逃げる高さと合図を決める手順にまとめてあります。海の近くなら、高潮と津波は両方とも確認する対象です。
高潮の情報は2026年5月29日から4区分に変わった
高潮に関する防災気象情報とは、警戒レベル2からレベル5までの4区分で発表される情報です。令和8年(2026年)5月29日に運用が新しくなりました。

| 警戒レベル | 高潮に関する情報 | 発表のタイミングの目安 |
|---|---|---|
| レベル2 | 高潮注意報 | 基準到達予想のおおむね18時間前まで |
| レベル3 | 高潮警報 | 基準到達予想のおおむね12時間前まで |
| レベル4 | 高潮危険警報 | 基準到達予想のおおむね6時間前まで |
| レベル5 | 高潮特別警報 | 高潮による浸水がすでに発生、または切迫している状況で発表 |
出典: 気象庁「新しい発表基準の特徴等について」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/pdf/kijun_tokucho.pdf/2026年9月1日確認)
変わった点は2つ。高潮危険警報が新しく設けられたことと、高潮特別警報がレベル5として独立したことです。改定前も高潮特別警報という情報自体はありましたが、警戒レベル4相当として運用されていました。特別警報が出てもレベル表示は4のまま。それが指標の見直しとあわせてレベル5に位置づけ直された、という経緯です(出典: 同上/2026年9月1日確認)。
ネット上の解説の多くは、この改定より前に書かれています。「高潮注意報・高潮警報・高潮特別警報の3段階」と書かれた記事は、2026年5月28日までの体系です。
高潮注意報は「まだ大丈夫」の合図ではない
高潮注意報とは、レベル4高潮危険警報の基準値に到達すると予想される場合にのみ発表される、警戒レベル2の情報です。この「〜場合にのみ」という条件が改定で入りました。レベル3の高潮警報も同じ考え方です(出典: 気象庁「新しい発表基準の特徴等について」/2026年9月1日確認)。
言い換えると、高潮注意報が出ている時点で、その先にレベル4が見えているということ。注意報を「様子見でいい段階」と読むと、判断を1段階分まるごと見誤ります。
高潮注意報(レベル2)は、レベル4危険警報の基準に達すると予想されるときにだけ出ます。注意報の段階で、区域図と避難先の確認を終わらせる。それが4区分になった新しい体系の使い方です。
レベル5の高潮特別警報は、浸水がすでに発生しているか切迫している状況で発表されます。旧基準では「伊勢湾台風」級(中心気圧930hPa以下または最大風速50m/s以上、沖縄・奄美・小笠原は910hPa以下または60m/s以上)の台風などによる高潮が指標でしたが、新基準では指標が見直されました。気象庁は近年の事例として、平成30年台風第21号による近畿地方の高潮がレベル5高潮特別警報の発表対象となりうると説明しています(出典: 同上/2026年9月1日確認)。
では、この情報はどれくらいの頻度で出るものなのか。頻度の感覚があるかどうかで、注意報を受け取ったときの重みが変わります。
全国の高潮警報の発表回数(府県予報区単位・年間)は、令和3年17回、令和4年31回、令和5年10回、令和6年8回、令和7年14回でした(出典: 同上/2026年9月1日確認)。全国で年に十数回。自分の地域で出るのは何年かに一度という頻度で、経験では覚えられない情報だということです。
レベル3で高齢者等避難、レベル4までに全員避難という枠組みそのものは、警戒レベル1〜5でいつ動く?レベル4までに避難する理由と、2026年5月に変わった情報名で扱っています。名前が変わった範囲は高潮に限りません。
自宅が高潮浸水想定区域かを調べる手順は全国で共通している
高潮浸水想定区域とは、想定し得る最大規模の高潮による氾濫が発生した場合に浸水が想定される区域です。平成27年の水防法改正で制度化されました。
大事なのは、指定するのが市町村ではなく都道府県知事だという点です。根拠は水防法第14条の3。あわせて、高潮により相当な損害を生ずるおそれがある海岸を「水位周知海岸」として指定する規定が第13条の3に置かれています(出典: 国土交通省 水防法条文資料https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/pdf/takashio_new.pdf/2026年9月1日確認)。区域図の作成には、農林水産省と国土交通省が共同で作った「高潮浸水想定区域図作成の手引き」(Ver.2.11、令和5年4月改定)が基準として使われています(出典: 農林水産省・国土交通省/2026年9月1日確認)。
指定権者が都道府県だと分かっていれば、探す順番が決まります。
- 都道府県のサイトから探す都道府県名と「高潮浸水想定区域」で検索します。区域図の一次の置き場所は都道府県側で、海岸を所管する部局(河川・海岸などの名前がつく課)のページにあることが多くなります。
- 市区町村のハザードマップで重ねて確認する指定された区域は市区町村のハザードマップに反映されます。洪水・土砂災害と別の面に分かれていることがあるので「高潮」の面を探します。配布された冊子とサイトの版で更新時期が違う場合もあります。
- 自宅の位置を色と一緒に読む区域図は色で浸水の深さを示します。色の意味と境界線の外側の解釈は地図の読み方の問題なので、ハザードマップの見方|色と浸水深の読み解き方と、自宅の想定を1枚にまとめる手順を区域図を開いた状態で読み進めてください。
- 避難先を、色のついていない場所で決める逃げる先は区域の外です。国土交通省は「海岸に近いほど高潮の影響が強いので、海岸より遠い方が安全です」と説明しています(出典: 国土交通省「高潮から身を守るには」/2026年9月1日確認)。
「高潮 ハザードマップ」で検索すると他の市町村のページばかり並んで混乱しがちです。指定するのは都道府県知事、と覚えておくと最初に開くページが決まります。
区域図が見つからないときに「無い=安全」と読んではいけない
高潮浸水想定区域の指定は、全国で完了していません。調べても自分の地域の区域図が出てこないのは、珍しいことではないということです。
国土交通省の資料では、令和7年1月31日時点で指定は全都道府県ではなく一部にとどまり、都道府県別の指定済み・指定予定の一覧表が載っています。新たな指定は令和7年度までに実施することが想定されていました(出典: 国土交通省 水防法関連資料https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/pdf/takashio_new.pdf/2026年9月1日確認)。
つまり「区域図が無い」には2つの意味があり得ます。そもそも高潮の想定が要らない地域か、指定の作業がまだ届いていないか。この2つを区別せずに「無かったから大丈夫」と結論するのが、いちばん危ない読み方です。

- 都道府県の海岸・河川の担当部局に、自分の市区町村が指定済みかを問い合わせる
- 指定がまだなら、水位周知海岸の指定状況もあわせて聞く(水防法第13条の3)
- 高潮の区域図が無くても、洪水・内水・津波の想定は別に公表されていることがある
- 台風接近時は、最寄りの験潮所の満潮時刻を気象庁の潮位表で調べておく
マンションの高層階なら高潮でも安全か、には条件つきで答えが出せる
垂直方向に逃げることは、水から離れるという一点では有効です。ただし高さだけでは足りません。上位の記事がほとんど答えていないこの問いに、条件をつけて答えます。
1階よりは2階、2階よりは3階、場合によっては屋根の上、と高いところの方が安全です。海岸に近いほど高潮の影響が強いので、海岸より遠い方が安全です。
出典: 国土交通省 水管理・国土保全局「高潮から身を守るには」(https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/05/index.html/2026年9月1日確認)
問題は、水が引くまでのあいだ、その部屋で生活が続くことのほうです。浸水すると建物の下の階にある設備が影響を受けます。マンションで水を上の階へ送るポンプは多くが電気で動くため、停電したとき上の階でまず止まるのは電気ではなく水です。この順番と部屋で起きることはマンション高層階の停電と断水|先に止まるのは水、そのとき何が起きるかで具体的に書いています。エレベーターが止まれば、高さは避難のしやすさではなく降りにくさに変わります。
そして水はすぐには引きません。国土交通省は伊勢湾台風の被害説明の中で、濃尾平野について「背後地がゼロメートル地帯であったことから、排水完了までに3ヶ月後の12月下旬まで要した」と記しています(出典: 国土交通省「高潮は恐ろしいの?」https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/02/index.html/2026年9月1日確認)。同省は濃尾平野を指して「日本最大のゼロメートル地帯」という言い方をしています。ここでは用例の紹介にとどめますが、地形によっては水がその場に長く居座る、ということです。
上の階にとどまる選択は、停電・断水・エレベーター停止・孤立がセットで来る前提で組む必要があります。電気・水道・ガスはどの順で戻る?一次資料で確認できた復旧日数と、備蓄を何日分にするかの決め方で日数の目安を確認したうえで、水とトイレの必要量を計算しておいてください。
情報が出てから動くまでを、リードタイムで1本につなぐ
高潮の情報は気象庁が出し、浸水想定区域は都道府県が公表しています。別々のサイトにある情報ですが、動くのは同じ1人の生活者です。台風のニュースが増えてきた土曜の夕方、まだ雨も降っていない段階。ここでやることがいちばん多くなります。
- 台風の進路が自分の地域に向いた時点(情報が出る前)区域図を開いて自宅が区域内かを確認し、最寄りの験潮所の満潮時刻を潮位表で見ます。買い物もこの段階。売り切れる順番は決まっているので、台風前に買っておくもの|売り切れる順の買い物リストの順に押さえます。
- レベル2 高潮注意報(おおむね18時間前まで)避難先と経路を決め、持ち出すものをまとめます。玄関や勝手口に水を入れないための家庭でできる浸水対策|水のう・土のう・止水板を自治体の公表手順で使い分けるも、風雨が強まる前にしか作業できません。
- レベル3 高潮警報(おおむね12時間前まで)高齢の家族、小さな子ども、動きに時間のかかる人がいる世帯は、この段階で移動を始めます。12時間はまだ明るいうちに動ける可能性のある長さです。
- レベル4 高潮危険警報(おおむね6時間前まで)危険な場所から離れる最後の区切りです。ここを過ぎると、外を移動すること自体がリスクに変わります。
- レベル5 高潮特別警報浸水がすでに発生しているか切迫している状況で発表されます。移動ではなく、その場で少しでも安全を確保する段階です。
区域図を見た結果、自宅が区域の外にあり、動かないほうが安全だと判断できる場合もあります。その「逃げない」が成立する条件は、水・トイレ・情報の3点が続くかどうかです。人数と日数から必要量を出す手順は在宅避難の準備リスト|成立する3つの条件と、人数×日数でわかる水・トイレの必要量早見表にまとめてあります。
伊勢湾台風の記録は、資料によって数字が違う
伊勢湾台風とは、1959年に高潮で大きな被害を出し、特別警報という制度が生まれる背景にもなった台風です。気象庁はその位置づけをこう書いています。
我が国の観測史上最高の潮位を記録し、5,000人以上の死者・行方不明者を出した「伊勢湾台風」の高潮
出典: 気象庁「特別警報について」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/2026年9月1日確認)
犠牲者数は、参照する一次資料によって書かれ方が違いました。片方に丸めず、両方を出所つきで並べます。
| 出所 | 記載されている数値 |
|---|---|
| 気象庁「災害をもたらした気象事例」(消防白書より) | 死者4,697名、行方不明者401名、負傷者38,921名。住家全壊40,838棟、半壊113,052棟、床上浸水157,858棟、床下浸水205,753棟 |
| 内閣府「災害教訓の継承に関する専門調査会」報告書(平成20年3月) | 台風災害としては明治以降最多の死者・行方不明者数5,098名。犠牲者の83%が高潮により愛知・三重の2県に集中 |
出典: 気象庁「災害をもたらした気象事例」伊勢湾台風(https://www.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/1959/19590926/19590926.html)/内閣府「災害教訓の継承に関する専門調査会」報告書(https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1959_isewan_typhoon/index.html)いずれも2026年9月1日確認
数字の差より読み取ってほしいのは、犠牲者の83%が高潮によるという内訳です。風でも雨でもなく、海面の上昇で人が亡くなった災害だった、ということになります。
潮位について内閣府の報告書は、伊勢湾奥部で既往最高潮位を1m近く上回る観測史上最大の3.55mの高潮が発生した、としています(出典: 内閣府 同報告書/2026年9月1日確認)。3.55mは、一般的な住宅なら1階部分がまるごと水面の下に入る高さです。屋根に上がるという国土交通省の記述が誇張でないと分かります。なお最高潮位についてはネット上に別の数値も流通していますが、当サイトが一次資料で確認できたのは内閣府報告書の3.55mだけで、本記事はこの数値のみを使っています。
この災害は制度も動かしました。被災経験を踏まえ、防災の概念と国の責務を明確にした「災害対策基本法」が、被災から2年後の1961年10月に制定されています(出典: 内閣府 同報告書/2026年9月1日確認)。
高潮の観測記録は2018年に更新されている
平成30年(2018年)台風第21号とは、近畿の複数の地点で既往の最高潮位を更新した台風です。伊勢湾台風を「昔の話」として片づけにくいのは、記録がこれだけ最近に塗り替えられているからです。
大阪港で最高潮位 標高329cm、神戸港で233cm。いずれも1961年の第二室戸台風時の記録を超える観測史上1位です。関西空港の最大瞬間風速58.1m/sも観測史上1位で、近畿地方で死者11名。上陸は9月4日12時前に徳島県南部、14時前に神戸市付近へ再上陸で、上陸時の中心気圧955hPa・最大風速45m/sでした(出典: 気象庁大阪管区気象台「過去の災害事例」平成30年台風第21号https://www.data.jma.go.jp/osaka/kikou/kakojirei/kakojirei_2018_t1821.pdf/2026年9月1日確認)。
そして前に触れたとおり、気象庁はこの事例を、新しい体系でレベル5高潮特別警報の発表対象となりうるものとして挙げています。60年前の記録が更新され、その更新された事例が最上位の情報に相当する。高潮を過去の災害として扱えない理由は、この2つが並んでいることにあります。
この記事が当てはまらないケース
高潮は海面が持ち上がる現象なので、海に面していない地域では警戒の対象になりません。次の場合、この記事の手順は不要です。
- 内陸に住んでいる区域図で自宅が高潮浸水想定区域に含まれないなら、高潮の警戒は不要です。洪水・内水氾濫・土砂災害は別制度の想定なので、そちらを確認してください。
- すでに区域の外へ避難先を決めてある前半(仕組みと情報体系)だけ読めば足ります。
- 都道府県が指定していない地域区域図が存在しないこと自体は起こり得ます。これは「安全と確認できた」ではなく「まだ確認できていない」状態です。担当窓口への問い合わせまでが手順の終わりになります。
- いま台風が接近中で外が荒れているこれから調べる段階ではありません。自治体の避難情報に従ってください。
よくある質問
高潮危険警報は、これまでの高潮警報と何が違いますか
高潮危険警報は2026年5月29日から運用が始まった情報で、警戒レベル4に位置づけられています。従来の高潮警報はレベル3となり、別の情報として扱われます。危険警報は基準到達予想のおおむね6時間前まで、警報はおおむね12時間前までに発表されます(出典: 気象庁「新しい発表基準の特徴等について」/2026年9月1日確認)。名前が似ているので、レベルの数字とセットで覚えるのが確実です。
高潮の警報は、そんなに出ているものなのでしょうか
全国の高潮警報の発表回数(府県予報区単位・年間)は、令和3年17回、令和4年31回、令和5年10回、令和6年8回、令和7年14回です(出典: 同上/2026年9月1日確認)。全国で年に十数回程度なので、自分の地域で出るのは何年かに一度。経験で覚えられる情報ではないため、区域図と避難先を先に決めておくほうが現実的です。
満潮の時刻はどこで調べられますか
気象庁が全国の験潮所ごとに潮位表を公開しており、満潮・干潮の時刻を含むデータをPDFとテキストで見られます(出典: 気象庁「潮位表」https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/index.php/2026年9月1日確認)。気圧低下と強風による潮位上昇は暦の上の潮位に上乗せされるため、台風接近が予想される日は満潮時刻を先に確認しておくと動く時間の目安がつきます。
区域図が自分の県に見当たりません。危険はないということですか
そう結論するのは早い判断です。高潮浸水想定区域は水防法第14条の3にもとづき都道府県知事が指定しますが、指定は全国で完了していません。国土交通省の資料では令和7年1月31日時点で一部の指定にとどまることが示されています(出典: 国土交通省 水防法関連資料/2026年9月1日確認)。都道府県の海岸・河川の担当部局に指定状況を問い合わせるところまで進めてください。
古い資料を読むときの読み替え
2026年5月28日までに書かれた解説は、高潮の情報を「注意報・警報・特別警報」の3つで説明しています。現行制度ではあいだにレベル4高潮危険警報が入り、特別警報がレベル5として独立しました。手元の防災冊子に3段階の記述があれば、4区分に更新しておいてください(出典: 気象庁「新しい発表基準の特徴等について」/2026年9月1日確認)。
まとめ|今日やることは1つ、区域図を開くこと
高潮の備えで先に決まるべきなのは、防災用品でも避難のタイミングでもなく、自宅が高潮浸水想定区域に入っているかどうかです。ここが決まっていれば、レベル2の注意報が出た18時間前の時点から順番に手を打てます。決まっていないと、レベル4が出てから慌てて地図を探すことになります。今日やることは1つ。都道府県のサイトで区域図を開いて、自宅の位置を見る。晴れている日に、10分あれば終わります。
- 都道府県名+「高潮浸水想定区域」で検索する指定するのは都道府県知事です(水防法第14条の3)。市区町村より先に都道府県のページを開きます。
- 自宅の位置に色がついているかを見るついていれば避難先を区域の外に決めます。色の意味と浸水深の読み方はハザードマップの見方|色と浸水深の読み解き方と、自宅の想定を1枚にまとめる手順に沿って進めてください。
- 区域図が見つからなければ、担当窓口に指定状況を聞く「無い」は「安全」ではありません。指定がまだなのか対象外なのかを確認して、そこで判断が確定します。
