防災スリッパは必要?内閣府が載せた被災者の声とJIS規格で足を守る備えを決める

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夜中に大きな揺れで目が覚めて、暗がりのなかベッドから足を下ろそうとする。そのとき床に何が散らばっているかは、電気がつくまで分かりません。窓ガラス、食器棚の扉、写真立て。割れる可能性のあるものは、思っているより家じゅうにあります。

この記事の答えを先に置きます。スリッパと靴は、どちらか一方を選ぶものではありません。スリッパは「すぐ履ける」ことに強く、靴は「守れる」ことに強い。役割が違うので、置き場所を分けて両方そろえるのが、公的機関の資料とJIS規格をたどったかぎりでいちばん筋の通る備え方です。

もうひとつ、買う前に知っておきたいことがあります。「防災スリッパ」という商品名は、踏み抜きに耐える性能を保証する言葉ではありません。名前ではなく、踏抜き防止板の素材・厚み・耐荷重が公式サイトに書かれているかどうか。編集部の整理では、判断の分かれ目はそこにあります。

足元の備えは、家具の固定や備蓄と地続きの話です。家全体を先に点検したい方は、地震の備えリスト|家具の固定と備蓄を1枚で点検する家庭のチェック表から入ると、この記事の位置づけがつかみやすくなります。

この記事でわかること

  • 内閣府は「スリッパやズック靴を置く」と書き、同じサイトに「スリッパでは使いものにならない」という被災者の声も載せていること
  • 足を守れるかどうかの物差しになるJIS T8101:2020の「1,100N」という条文の中身
  • 「防災スリッパ」を3段階に分けて見分ける方法と、購入前に公式サイトで確認する3点
  • 枕元・玄関・リビング・ベランダで、スリッパと靴のどちらを優先するかの使い分け
  • ガラス面が平滑か凸凹かで変わる、飛散防止シートの選び分け
目次

内閣府は「スリッパやズック靴を置く」と書き、同じサイトに「スリッパでは使いものにならない」という声も載せている

防災スリッパとは、災害時に散乱したガラスや破片から足を守る目的で販売されている室内履きの総称であり、法令や規格によって定義された商品分類ではありません。ここを出発点にすると、以下の話が読みやすくなります。

まず、行政の推奨は確かに存在します。内閣府の防災情報のページ「やってみよう!防災対策 第1回」には、次の一文があります。

照明などは出来るだけ作りつけにし、スリッパやズック靴などを使えるように置いておきましょう。

出典:内閣府 防災情報のページ「やってみよう!防災対策 第1回」(https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h24/67/bousaitaisaku.html/2026年8月26日確認)

寝室限定の話ではなく、家全体の対策としてスリッパとズック靴が並記されている点に注目してください。この段階では「スリッパでもよい」と読めます。

ところが、同じ内閣府のサイトの別ページには、正反対の温度感の言葉が載っています。2007年の能登半島地震で被災した輪島市の方の証言です。

(スリッパは)とてもじゃないけど使いものになりませんね

底の厚いしっかりした靴をはかないと足を切ってしまいそうだったから、家族みんなで家の中でも長靴やズックをはいていました

出典:内閣府 防災情報のページ「スリッパではあぶない家の中」(https://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/ichinitimae/cbh20005.html/2026年8月26日確認)

推奨と実感が、同じ役所のサイトの中で食い違っている。これは矛盾というより、想定している場面が違うのだと考えると腑に落ちます。揺れが収まった直後に数歩だけ動く場面と、割れたガラスが積もった部屋で片づけを続ける場面。前者ならスリッパでも動けますが、後者では厚い底が要る、ということです。

内閣府はスリッパを勧めてもいるし、スリッパでは足りないという住民の声も載せている。どちらかが間違いなのではなく、「すぐ履ける」役割と「守れる」役割は別物だと考えるのが、この記事の立場です。

足を守れるかどうかの物差しは、JIS T8101の1,100Nにある

JIS T8101とは、安全靴の性能を定めた日本産業規格であり、現行版は2020年に改正されたものです(前の版は2006年)。「足を守れるか」を感想ではなく数字で語れる、数少ない共通のものさしがここにあります。

踏み抜きに関する条文は、次のように定められています。非金属製の踏抜き防止板であれば「1,100Nの力で試験用くぎの先端が試験片を貫通してはならない」こと。金属製であれば、底部分を貫通するときの力が1,100N以上であること。試験の手順そのものはJIS T8107の5.7.1・5.7.2に規定されています。

1,100Nと言われても、体感に結びつきにくい数字です。ざっくり言えば、およそ110kgの重さのものを足裏の一点に押しつけるくらいの力。大人がとがったものの上に片足で全体重をかけ、さらに勢いがついた状態を思い浮かべると近くなります。安全靴の規格は、そのくらいの力でくぎが貫通しないことを求めているわけです。

つまり、この基準をクリアしている製品には「どのくらいの力まで耐えるのか」という答えがあります。逆に言えば、耐荷重の記載がない製品には、その答えがありません。良し悪しの話ではなく、比べられるかどうかの話です。

まぎらわしい規格として JIS T8103(静電気帯電防止靴) があります。こちらは1979年制定で2010年版が現行。ただし踏み抜き性能そのものはT8103の主眼ではなく、「静電安全靴」としてJIS T8101の安全靴基準に準拠する場合にかぎって、耐踏抜き性が付加的に適用される位置づけです。番号が似ているだけで、見ている性能が違います。

「防災スリッパ」は3段階に分かれる

踏み抜きへの備えとは、「板を挟む」か「挟まない」かの二択ではなく、どの程度の裏づけがある板を、どの履物に入れるかという段階の問題です。編集部の整理では、市販品はおおむね次の3段階に分かれます。

防災スリッパの性能を見分ける分岐図。踏抜き防止板の素材・厚み・耐荷重が公式に明記されているかで進む先が変わる
段階 何を指すか 踏み抜きへの裏づけ 向く場面
JIS T8101に適合した安全靴・プロテクティブスニーカー 1,100Nの試験を前提にした踏抜き防止板が入る 片づけ、屋外への移動、ガラスが積もった部屋の横断
踏抜き防止板入りインソールを、普段の靴や厚底のルームシューズに後入れする 板の素材・厚み・耐荷重がメーカー公式に示されているものがある 手持ちの靴を活かしたいとき、家族分をそろえたいとき
一般的な「防災スリッパ」(布製・薄いソール) 板の有無や仕様を公式サイトで確認できない製品が多い 揺れの直後に数歩だけ動く、素足を守る

ここで正直に書いておきます。「スリッパ」という室内履きの形状に踏抜き防止板を積んだ製品は、メーカー横断で調べた範囲では公式に確認できませんでした(2026年8月26日確認時点)。安全靴の規格は総ゴム製・牛革製の靴型を前提にしているため、構造上そもそも別カテゴリなのだと考えられます。ただしこれは悉皆調査ではないので、「存在しない」と断定はしません。公式に確認できた製品は見つからなかった——ここまでが編集部の言えることです。

②の実例として公表値が確認できたのが、ミドリ安全の踏み抜き防止カップインソールです。0.5mmのステンレス製踏み抜き防止板を内蔵し、約100kgの荷重に耐える構造として、釘やガラス片からの踏み抜きを防ぐ用途で販売されています(ミドリ安全公式通販/2026年8月26日確認)。数字が公表されているので、JIS T8101の1,100N=およそ110kg相当という物差しと、同じ土俵で比べられます。

この違いを、買う前の手順に落とし込むと次の3点になります。

  • 踏抜き防止板の素材が公式サイトに書かれているか(ステンレス製か、非金属製か)
  • 踏抜き防止板の厚みが数値で書かれているか(「0.5mm」のようにミリ単位で示されているか)
  • 耐荷重、または準拠する規格名が書かれているか(「約100kg」「JIS T8101適合」など)

3つのうち1つでも欠けていたら、その製品が悪いわけではありません。ただ「割れたガラスの上を全体重で踏んでも大丈夫」とは言い切れない、というだけです。書かれていないものを、書かれているかのように扱わない。防災グッズ選びでは、この見方がいちばん頼りになります。

そなえぐらし管理人
この記事では、スリッパ・靴・インソールに商品リンクを置いていません。仕様が公表されていない製品をランキングにして並べると、この記事がやろうとしている「公表値で比べる」という作業が意味を失うからです。買う場所は読者が選べます。編集部が渡せるのは、公式ページのどこを見ればいいかという判定基準のほうだと考えました。

置き場所で、スリッパと靴を使い分ける

置き場所別の備えとは、同じ「足を守る」という目的でも、その場所で優先されるのが速さなのか防護なのかによって置くものを変える考え方です。この視点を入れると、スリッパか靴かという二択は消えます。

置き場所 優先するもの 置くもの そう考える理由
枕元 すぐ履けること かかとのあるスリッパ、またはルームシューズ 揺れの最中や直後に、暗い中で手探りでも履ける必要がある
ベッドの下・寝室のドア際 守れること ひも靴・スニーカー(踏抜き防止板入りインソールを入れておく) 数歩動いて明かりを確保したあと、履き替える前提で置く
玄関 守れること 底の厚い靴、長靴、安全靴 避難や屋外の移動では、ガラスだけでなく倒れた塀や瓦礫も想定される
リビング すぐ履けること スリッパ、ルームシューズ 家族の滞在時間が長く、食器棚・窓など割れる面が多い部屋
ベランダ・勝手口 守れること サンダルではなく、かかとが固定される靴 避難経路になる場合があり、脱げやすい履物では走れない

表の要点はひとつだけです。枕元に置くのは「速さ」、そこから先に置くのは「守り」。スリッパを枕元に置くこと自体は内閣府の記述とも矛盾しませんが、スリッパのまま片づけまで済ませようとすると、能登半島地震の被災者の言葉が現実になります。

枕元に何を置き、何を置かないかは、それだけで判断が要るテーマです。照明や倒れてくるものとの兼ね合いを含めて整理したい方は、寝室の地震対策|枕元に置くものと、置いてはいけないものの分け方を参考にしてください。

地震でけがをする主な原因の一つは、実はガラスではなく家具だった

家具類の転倒・落下・移動とは、揺れによって背の高い家具が倒れる、上に載せたものが落ちる、キャスター付きの家電が滑って走り出す、という3つの現象をまとめた呼び方です。東京消防庁は、これを地震のけがの主因として公表しています。

近年発生した大きな地震によるけが人のうち、約3割から5割の人が家具類の転倒・落下・移動が原因でケガをしています。

出典:東京消防庁<電子学習室>地震に備える(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/contents/jishin/contents02_2.html/2026年8月26日確認)

足元の話をしていたのに、いきなり家具の話が出てきて戸惑うかもしれません。けれど順番としては、こちらが先です。倒れた家具に当たらないことが最初にあって、そのうえで、散らばった破片を踏まないという二段目がある。スリッパを何足そろえても、食器棚が倒れてくる問題は解決しないからです。

では、ガラスによるけがはどのくらいなのか。ここは出所の格を分けて書く必要があります。ガラス由来の負傷割合について、消防庁の公式統計は確認できませんでした。確認できたのは次の2件で、いずれも公的統計ではありません。

  • 釧路沖地震:「足元のガラスを踏み抜いた」といった訴えが多く、「負傷例の約4分の1がこうした切り傷でした」——東京大学社会情報研究所の調査を、板硝子協会のサイトが引用(大学調査の孫引き)
  • 三陸はるか沖地震(1994年12月):負傷者688名(うち八戸市内596名)。「病院で手当てを受けた負傷者の大半が、室内に散乱したガラスの破片で手や足にケガをしていた」——読売新聞1995年1月17日の記事を、板硝子協会のサイトが引用(新聞報道)

出所の格を混ぜないでください。「約3〜5割は家具類が原因」は東京消防庁の公式ページに載る統計です。一方、「約4分の1が切り傷」「大半が手足のガラス外傷」は大学調査と新聞報道が出所で、消防庁の統計ではありません。同じ記事の中に並んでいても、確からしさの重みは同じではありません。

それでも、この2件が示す方向は一致しています。室内でガラスを踏むけがは、実際に起きている。だから足元の備えには意味がある。ただし、家具の固定より優先すべき対策ではない——という順番になります。

家電や食器棚の固定を先に済ませたい方は、冷蔵庫・テレビ・食器棚の地震対策|東京消防庁の実験でわかる効く固定と、やる順番が具体的です。壁に穴を開けられない住まいであれば、賃貸の家具固定は穴を開けずにできる?東京消防庁が示す「2つ組み合わせ」の根拠と器具の公表値のほうが実行しやすいはずです。

いちばん確実なのは、割れたガラスを床に撒かないこと

ガラス飛散防止シートとは、ガラス面に貼ることで、割れたときに破片が飛び散るのを抑える目的でつくられた粘着フィルムです。足を守る備えとしては、履物より一段上流にあります。踏まないで済むなら、それがいちばんです。

なお、担当の境界をはっきりさせておきます。台風で飛来物がぶつかって割れる場面への対策は台風の窓ガラス対策|養生テープは効くのか、フィルム・雨戸との使い分けで扱っており、この記事が扱うのは地震で揺さぶられて割れたガラスの飛散です。同じフィルムでも、想定している力のかかり方が違います。

ガラス面の種類と飛散防止シートの対応表。平滑な窓ガラス・食器棚のガラス扉・凸凹ガラスで貼れる製品が変わる

「防犯フィルムだから防災にも使える」という置き換えはしないでください。そして最大の落とし穴は、ガラス面が平滑か凸凹かで貼れる製品が変わることです。凸凹ガラス専用の製品は透明板ガラスに貼れず、平滑面用の製品は凹凸のある面に密着しません。買う前に、自宅のガラス面を手で触って確かめてください。

平滑な窓ガラスには、幅の広い平滑面用シートを合わせる

リビングや掃き出し窓のような、表面がつるりとした平滑なガラスに合うのが、ニトムズのガラス飛散防止シート M6120(平滑面用)です。メーカーはニトムズ。公表サイズは幅48cm×長さ1.8mで、幅はA3用紙の長辺よりやや広いくらい。材質はポリエステルフィルムとアクリル系粘着剤で、密着用のヘラが付属します。

ひとつ正直に書いておくと、この製品はUVカット効果を謳っていますが、具体的なカット率は公式ページに記載がありません(2026年8月26日確認時点)。飛散を抑える目的で選ぶぶんには問題ありませんが、紫外線対策を主目的にするなら、数値が公表されている製品と比べたほうがよいでしょう。出典はニトムズ公式(https://www.nitoms.com/products/glass_shatterproof_sheet//2026年8月26日確認)。

食器棚のガラス扉には、幅の狭いタイプを選ぶ

窓と同じ感覚で買うと余りが出るのが、食器棚のガラス扉です。ニトムズのガラス飛散防止シート M6130(食器棚用)は、公表サイズが幅32cm×長さ1.8m。幅はA4用紙の長辺よりわずかに広い程度で、材質と付属品はM6120と同じくポリエステルフィルム+アクリル系粘着剤、密着用ヘラ付きです。

要点は性能差ではなく、窓用より幅が狭く、食器棚のガラス扉の寸法に合うという使い分けにあります。棚の扉は縦長で細いことが多いため、幅48cmのシートを切って使うより、はじめから32cm幅を選ぶほうが無駄が出ません。割れたときに床へ落ちる高さが窓より低いぶん、手を抜きたくなる場所でもありますが、食器棚は破片の量が多くなりがちです。出典は上と同じくニトムズ公式(2026年8月26日確認)。

凸凹ガラスには、専用品しか貼れない

浴室、トイレ、玄関脇の小窓。すりガラス風に見えて、触ると波打っている面が家にはあります。この凸凹ガラス(凹凸面)に対応するのが、リンテックコマースのHGS-50Pです。公表仕様は厚み500μ(0.5mm)、サイズは37.5cm×30cmが2枚入り。UVカット率は99%以上と数値で明記されており、表面はザラつき処理がされているため、貼っても目隠し効果が保たれます。

そして重要なのが適合面です。この製品は凸凹ガラス(凹凸面)専用で、透明板ガラス・くもりガラスには貼れません。逆にいえば、凸凹ガラスに平滑面用のシートを貼っても密着しないということでもあります。ガラス面の種類を先に確かめる、という手順がここでも効いてきます。出典はリンテックコマース公式(https://www.lintec-c.com/product/glass/hgs50.html/2026年8月26日確認)。

ここまで3製品を挙げましたが、いずれもメーカー公式サイトに型番ページがあり、サイズ・材質・適合面を確認できました。「公式サイトで仕様を確認できるか」自体を、防災グッズ選びのチェックポイントにする——これは編集部が調査中にいちばん強く感じたことです。通販モールの商品説明にしか数字が載っていない製品は、その数字の責任の所在がたどれません。

この考え方が当てはまらない人・場面がある

例外とは、ここまでの「置き場所で使い分ける」という設計が前提から崩れる状況のことです。都合の悪い場面を伏せると備えが歪むので、先に挙げておきます。

真っ暗な中では、靴もスリッパも探せません。これが最大の穴です。停電した部屋で、床に手をついて履物を探すのは、破片を踏むのと同じくらい危ない行動になり得ます。順番としては、明かりが先。部屋ごとに何個の光源を置くかは、防災用ランタンは何個必要?世帯人数×間取り別の早見表と、部屋ごとの置き場所の考え方で整理しています。さらに、履物を履く動作は片手がふさがると一気にやりにくくなるため、ヘッドライトが防災に必要な理由|ランタンだけでは足りない「両手が空く」という決定的な差で扱っている両手が空く明かりのほうが、この場面には向いています。

自宅のガラス面の種類が分からないうちは、飛散防止シートを買わないでください。メーカーが適合面を限定している以上、合わない面に貼れば密着せず、貼ったつもりだけが残ります。触って確かめる、それだけの手間です。

踏抜き防止板入りインソールは、すべての靴に入るわけではありません。もともとの中敷きを抜いて入れ替える構造のため、靴の内寸に余裕がないと窮屈になります。家族分をそろえる前に、1足で試す順序が現実的でしょう。

けがをしたときの手当てと、避難するかどうかの判断は、この記事の範囲外です。ガラスで足を切った場合の処置や、その場にとどまるか避難するかの判断は、消防・自治体などの公的機関の案内と、医療機関の指示に従ってください。備えの記事が代われる領域ではありません。

よくある質問に、公表値の範囲で答える

ここでの回答は、記事本文で挙げた公的資料とメーカー公表値の範囲にとどめています。個別の製品の性能を保証するものではありません。

Q. 結局、防災スリッパは必要ないということですか?

A. そうではありません。内閣府の防災情報のページは「スリッパやズック靴などを使えるように置いておきましょう」と書いています。素足のまま床に降りるより、スリッパがあるほうがよい場面は確実にあります。ただし同じ内閣府のサイトには「とてもじゃないけど使いものになりませんね」という被災者の証言も載っています。枕元での「すぐ履ける1足」としては有効、片づけまで担う1足としては役割が違う——これが両方の記述を並べたときの読み方です。

Q. 普通の来客用スリッパで代用できますか?

A. 「すぐ履ける」という役割にかぎれば、手元にあるもので始められます。ただし来客用スリッパはかかとが固定されないものが多く、暗い中を移動すると脱げやすくなります。買い足すなら、かかとのある形状を優先してください。踏み抜きに関しては、板の素材・厚み・耐荷重が公式に書かれていない以上、性能の比較はできません。

Q. 室内に靴を置くのは、生活のうえで抵抗があります。

A. 玄関に集約するという選択肢があります。表で示したとおり、枕元は「速さ」、玄関は「守り」という分け方をすれば、寝室に靴を置かなくても設計は成り立ちます。靴箱の中ではなく、扉を開けてすぐ手が届く位置に出しておくのがポイントです。しまい込むと、探す時間が生まれます。

Q. 頭と足、どちらを先に守るべきですか?

A. 順番としては頭が先です。東京消防庁が公表しているとおり、地震のけがの約3割から5割は家具類の転倒・落下・移動が原因であり、落ちてくるもの・倒れてくるものへの備えが先に来ます。頭を守る道具の選び方は防災ヘルメットと防災ずきんはどちらが必要?国家検定と防炎認定の違いで選ぶにまとめました。足元の備えは、その次に置く二段目の対策として考えてください。

今日やることは、足元に1足だけ置くこと

まとめとは、覚えて帰る要素をひとつに絞る作業のことです。この記事で持ち帰るのは、次の一文だけで足ります。スリッパは「すぐ履ける」、靴は「守れる」。役割が違うので、置き場所で分ける。

「防災スリッパ」という名前は、性能の保証ではありません。踏抜き防止板の素材・厚み・耐荷重が公式サイトに書かれているかどうかを見る。書かれていなければ、その1足は「速さ」の担当だと割り切って、「守り」は別に用意する。この整理さえできれば、商品選びで迷う時間はかなり減るはずです。

  1. 今夜、枕元に1足置く手元にあるかかと付きのスリッパやルームシューズで構いません。まず「素足で床に降りない」状態をつくります。
  2. 玄関の靴を1足、手前に出す靴箱の奥ではなく、扉を開けてすぐ届く位置へ。底の厚い靴を1足決めておくだけで、片づけのときの選択肢が変わります。
  3. 家のガラス面を触って分類する平滑か凸凹かを確かめて、必要な飛散防止シートの種類を決めます。踏まないで済ませるのが、いちばん確実な足の守り方です。

台風で窓ガラスが割れる場面は、地震とは想定される力のかかり方が異なります。季節の備えとして続けて読むなら、次の記事が役に立ちます。

台風の飛来物からガラスを守る話は担当が別です。養生テープ・フィルム・雨戸の使い分けは台風の窓ガラス対策|養生テープは効くのか、フィルム・雨戸との使い分けにまとめてあります。

参考・出典

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この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

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