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テレビの画面が切り替わって「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」という帯が出る。夕食の支度をしている手が止まって、まず頭に浮かぶのは「逃げなきゃいけないの?」だと思います。答えを先に置きます。「巨大地震注意」で住民が避難所へ移動することは求められていません。内閣府の公式表現では「事前の避難は伴いませんが、日頃からの地震への備えの再確認に加え、地震が発生したらすぐに避難できる準備をしましょう」となっています(内閣府「南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!」2026年8月20日確認)。
やることは大きく2つ。①備えの再確認(避難場所と避難経路、家具の固定、非常持出品)と、②すぐ逃げられる状態の維持です。2025年(令和7年)8月に改訂された内閣府のガイドラインでは、この「特別な備え」に「すぐに逃げられる体制の維持」と「非常持出品の常時携帯」が新しく加えられました。荷造りをして家を出ることではなく、いつもの生活のまま反射神経だけ上げておく、というイメージに近いです。
一方、「巨大地震警戒」は別物です。こちらは事前避難対象地域に指定された地域の住民が、1週間、実際に地域の外へ移動します。同じ「1週間」という言葉が使われていても、注意と警戒では中身がまったく違う。ここを取り違えると、必要ない引っ越し騒ぎをしたり、逆に必要な移動をしそこねたりします。この記事は、その線引きと、発表されたあとの動き方に絞ってまとめました。
この記事でわかること
- 4つのキーワード(調査中/巨大地震警戒/巨大地震注意/調査終了)で、自分が何をすべきかが決まる
- 「巨大地震注意」なら避難はしない。2025年8月改訂の公式表現では、仕事も鉄道も平常どおり
- 2024年8月8日19時15分に発表された「巨大地震注意」が、8月15日17時に終わるまでの実際の1週間
- 臨時情報はJアラートでは配信されない。「スマホが鳴らないから出ていない」は成り立たない
そのうえで、備えの「量」の話はこの記事では扱いません。何をどれだけ持つかは家庭の備蓄品リスト完全版|人数×日数の早見表つきにまとめてあります。本記事は「情報が出たときに、どう動くか」だけを引き受けます。
南海トラフ地震臨時情報は4つのキーワードで読み分ける
南海トラフ地震臨時情報とは、南海トラフ沿いで異常な現象が観測されたときに、気象庁がその評価結果を知らせる情報である。ポイントは、情報のタイトルの後ろに必ず付くキーワードのほうにあります。「臨時情報が出た」だけでは、何をすればいいかは決まりません。決まるのは、括弧の中を読んでからです。
| キーワード | 発表される条件(気象庁の基準を要約) | 住民がとる行動 | 避難は伴うか |
|---|---|---|---|
| 調査中 | 監視領域内でM6.8以上の地震が発生、または想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性があるなど、関連性の検討が必要と認められる変化を観測 | 調査が始まったという通知。続報を待つ | 伴わない |
| 巨大地震警戒 | 「想定震源域内のプレート境界において、モーメントマグニチュード8.0以上の地震が発生したと評価した場合」 | 事前避難対象地域の住民は1週間の事前避難 | 伴う |
| 巨大地震注意 | 監視領域内でモーメントマグニチュード7.0以上の地震(警戒に該当する場合を除く)/プレート境界面で通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価した場合 | 備えの再確認と、すぐ逃げられる準備 | 伴わない |
| 調査終了 | 「(巨大地震警戒)、(巨大地震注意)のいずれにも当てはまらない現象と評価した場合」 | 通常の備えに戻る | 伴わない |
出典:気象庁「南海トラフ地震に関連する情報について」「南海トラフ地震に関連する情報」(2026年8月20日確認)

表を1行にまとめると、こうなります。避難という行動が発生するのは「巨大地震警戒」だけ。残りの3つは、生活を止めずに構えを変える情報です。ニュース速報の音に驚いて、まず括弧の中を確認する。それだけで、その先の数時間の落ち着き方がだいぶ変わります。
「調査中」は不安の合図ではなく、作業の合図
「調査中」は、気象庁が南海トラフ地震との関連を調べ始めたことを知らせるものです。この時点では評価が終わっていないので、続報で「警戒」「注意」「調査終了」のどれかに置き換わります。テレビをつけたままにして、家族の連絡手段を一度確認しておく程度で十分です。
巨大地震注意で本当にやることは3つに絞れる
巨大地震注意とは、南海トラフ地震が起きる可能性が普段より相対的に高まっていると評価されたものの、事前避難までは求めない段階を指す情報である。公式の表現をもう一度置いておきます。「事前の避難は伴いませんが、日頃からの地震への備えの再確認に加え、地震が発生したらすぐに避難できる準備をしましょう」。
「準備」という言葉が抽象的なので、生活の動作に翻訳します。やるのは次の3つです。
- 括弧の中を読む。「注意」なら避難行動はとらない。この判断を家族全員で共有します。
- 逃げる経路を今日のうちに一度歩く。避難場所と避難経路の確認は、静岡県が国の表現に沿って挙げている日頃の備えの項目にも含まれます。
- 持ち出すものを、置き場所ではなく身につける側へ寄せる。2025年8月改訂で加わった「非常持出品の常時携帯」がこれにあたります。
そのうえで、家の中を1周する時間があるなら、次のチェックだけ通してください。どれも数分で終わります。
- 寝室と、家族が長くいる部屋の家具は固定されているか
- 玄関までの動線に、倒れて通せんぼをする家具や段ボールがないか
- 靴とライトが、寝ている場所の手の届く範囲にあるか
- スマホの充電が、外出時に切れかけたまま放置になっていないか
- 家族の集合場所を、電話が通じない前提で決めてあるか

「すぐに逃げられる体制の維持」は、家の電気まで含む話
逃げられる状態というのは、体が動くことだけを指しません。倒れた家電や傷ついた配線に電気が流れ続けると、留守のあいだに火が出る通電火災が起こりえます。ブレーカーを落として出る習慣が続かない家庭ほど、装置に任せる選択肢が効いてきます。仕組みと費用感は感震ブレーカーの選び方|分電盤・コンセント・簡易の3タイプと費用の目安で整理しました。
正直なところ、「注意」で一番よく起きるのは、何をしたらいいか分からないまま画面を見続けて一日が終わることだと思うんですよね。テレビを消して、玄関までの通り道の段ボールをどけるほうが、たぶん気持ちは落ち着くと思います。
巨大地震警戒は「住民が実際に移動する1週間」になる
巨大地震警戒とは、想定震源域のプレート境界でモーメントマグニチュード8.0以上の地震が発生したと評価されたときに発表される、4つのキーワードのうち最も対応の重い段階である。気象庁の防災対応ページはこう書いています。「地震発生後の避難では間に合わない可能性のある住民は1週間の事前避難を行いましょう」。
ここで大事なのは、全員が避難するわけではないという点です。対象になるのは、あらかじめ自治体が指定した事前避難対象地域の住民に限られます。内閣府のガイドラインの定義を自治体が引用している表現では、「津波到達前に、地震動に伴う堤防沈下の影響により、概ね地震発生から30分以内に30センチメートル以上の浸水が生じる地域」とされています(名古屋市の掲載より)。地震が起きてから逃げ始めたのでは水が先に来る場所、という考え方です。
30センチという数字は、数字だけ見ると小さく感じます。膝より下、長靴の高さ。ところが流れのある水は、この深さでも大人の足を持っていきます。しかも30分以内という条件が付く。つまりこの地域は「揺れがおさまってから支度をする余裕がない場所」として線が引かれているわけです。
では、なぜ1週間なのか。気象庁は「1週間という期間は、人々が対応を続けられる限度等を加味している」と説明しています。地震の危険が8日目にゼロになるという意味ではありません。実際、1週間が過ぎたあとも、さらに1週間は注意の呼びかけが続けられます。人間が緊張を保てる長さのほうから決めた期間、と読むのが正確です。
「警戒の1週間」と「注意の1週間」は中身が違う
同じ「1週間」なので混同されやすいのですが、やることが別物です。
| 巨大地震警戒の1週間 | 巨大地震注意の1週間 | |
|---|---|---|
| 行動の中身 | 事前避難対象地域の住民が、地域の外へ実際に移動する | 移動は伴わない。備えの再確認と、すぐ逃げられる準備を続ける |
| 対象 | 自治体が指定した事前避難対象地域の住民 | 広く呼びかけの対象になる |
| 期間のあと | 1週間経過後も、さらに1週間は注意の呼びかけが継続 | 2024年8月の実例では、発表からちょうど1週間で呼びかけが終了 |
出典:気象庁「南海トラフ地震臨時情報が発表されたときの防災対応」、内閣府「南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!」ほか(2026年8月20日確認)
仕事も電車も止まらない。学校は公的な方針が確認できていない
2025年8月に改訂された『南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン』とは、臨時情報が出たときに国・自治体・企業がどう動くかを定めた、内閣府(防災担当)の運用文書である。改訂の中身は、2024年8月の「巨大地震注意」発表を受けて令和6年12月にまとめられた改善方策を、ガイドライン本体に反映したものだと説明されています。
この改訂で、検索してもはっきりしなかった「仕事どうなるの」に、公式の答えが付きました。改訂を告知している藤枝市のページから、内閣府の位置付けを引きます。
社会経済活動
「臨時情報発表時の対応として、適切な防災対応を実施したうえで『社会経済活動は継続する』と位置付ける」
鉄道
「巨大地震注意の発表時には平常どおりの運行とし、原則、運行規制はしない」
「特別な備え」に新しく加わった2項目
「すぐに逃げられる体制の維持」「非常持出品の常時携帯」
出典:藤枝市(内閣府ガイドライン2025年8月改訂を引用して掲載)、内閣府「『南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン』の改訂」概要(2026年8月20日確認)
まとめると、巨大地震注意の発表を理由に、会社を閉めたり電車を止めたりはしないという整理です。日常を止めるのではなく、日常を続けながら備えの水準だけを上げる。2024年に一度実際に発表され、その経験を踏まえて言葉が足された結果がこれ、という順番も押さえておくと納得しやすいと思います。
学校については、公的な方針が確認できていません
正直に書きます。休校の判断、部活動、登下校の扱いについて、内閣府と気象庁の一般向けページを確認した範囲では、学校に特化した公的な方針を見つけられませんでした。「無い」とは言い切れません。ガイドライン本体のPDFはテキストとして読み取れず、確認できていない部分が残っているためです。
学校の対応は、こちらで判断しないでください。臨時情報が発表されたときの登校の可否は、お住まいの自治体の教育委員会と、通っている学校からの連絡が唯一の答えになります。学校のメール配信・公式サイト・自治体の防災ページを確認してください。ネット上の一般解説(この記事を含みます)を、学校の判断の代わりにしないでください。
2024年8月の「1週間」は、こう始まってこう終わった
2024年8月8日に発表された臨時情報とは、この制度が始まってから初めて「巨大地震注意」のキーワードが付いた実例である。制度の説明を100回読むより、この1週間に何が起きたかを見るほうが、たぶん早いです。
- 2024年8月8日 日向灘でM7.1の地震。宮崎県で震度6弱を観測しました。
- 同日19時15分 気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表。呼びかけ文は「今後の政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとってください」でした。
- その後の1週間 事前避難は行われていません。求められたのは備えの再確認と、すぐ避難できる準備の継続です。
- 2024年8月15日17時 発表からちょうど1週間で、「特別な注意の呼びかけ」が終了しました。
出典:気象庁 臨時情報発表ページ(202408081915_rinji)、千葉市(気象庁発表を引用して告知)(2026年8月20日確認)
この時系列で見えてくるのは、終わり方も情報で知らされるということです。発表は大きく報じられ、終了は静かに流れていく。だから「あれ、あの臨時情報っていつまでだったんだろう」と後から分からなくなる。8日19時15分に始まって15日17時に終わった、と数字で覚えておくと、次に同じことが起きたときの見通しが立ちます。
1週間って、ゴミの収集日が一巡するくらいの長さです。特別な生活を1週間続けるのは、思っているより体力がいる。だからこそ「注意」では日常を止めない設計になっているのだと理解しています。
発生確率の数字は2段階で読む
南海トラフ巨大地震の発生確率とは、地震調査研究推進本部の地震調査委員会が公表している、今後30年以内に地震が起きる可能性の長期評価である。ここは報道でも混乱しやすいところなので、公表の時期で分けて並べます。
| 評価の時点 | 公表日 | 30年以内の発生確率 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 前年版 | — | 70〜80% | (参考値) |
| 2025年1月1日時点 | 2025年1月15日 | 80%程度(75〜82%を四捨五入) | 日本経済新聞 |
| 2025年1月1日時点(一部改訂) | 2025年9月26日 | すべり量依存BPTモデル:60〜90%程度以上/BPTモデル:20〜50%(併記) | 地震調査研究推進本部 |
出典:日本経済新聞(2025年1月15日公表分の報道)、地震調査研究推進本部「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)」(いずれも2026年8月20日確認)
読み方を補足します。まず2025年1月15日に公表されたのは「80%程度」という1つの数字で、前年の「70〜80%」からの引き上げでした。その後2025年9月26日の一部改訂で、計算モデルの違いによる2つの値が併記される形になりました。どちらのモデルが正しいと優劣をつけられないため、両方を示すという扱いです。同じ「2025年1月1日時点」の評価なのに数字が違って見えるのは、時点が変わったからではなく、計算の仕方を2通り示すようになったからです。
数字が上がったことを不吉に読む必要もありません。地震調査委員会の平田直委員長は「100年に1度程度発生するため、1年たてば1%程度上昇する。急激に確率が高まった訳ではない」と説明しています。時計の針が進んだぶんの上昇であって、何かが急変したわけではない、ということですね。
この記事の数字は「いつ時点か」を必ず付けています。確率も制度も改訂されます。ここに書いた内容は2026年8月20日に確認したもので、その後に更新されている可能性があります。最新の評価は気象庁と地震調査研究推進本部の発表を確認してください。
臨時情報はスマホの警報音では届かない
全国瞬時警報システム(Jアラート)とは、対処に時間的余裕のない事態に関する情報を、国から住民へ瞬時に伝えるための仕組みである。そしてここが、意外に知られていない一次情報です。南海トラフ地震臨時情報は、Jアラートで配信される情報の一覧に含まれていません。
| 経路 | 臨時情報は届くか |
|---|---|
| テレビ・ラジオ | 届く |
| インターネット(気象庁サイト・ニュースアプリなど) | 届く |
| 防災行政無線・広報車 | 届く |
| Jアラート(弾道ミサイル情報、緊急地震速報、大津波警報、津波警報、噴火警報・噴火速報、気象等の特別警報などを配信) | 配信対象に含まれない |
出典:総務省消防庁「全国瞬時警報システム(Jアラート)の概要」(2026年8月20日確認)。テレビ・ラジオ等の伝達経路は政府広報および複数自治体の記述に基づく
つまり、「スマホが鳴っていないから、まだ何も出ていない」という判断は成り立ちません。緊急地震速報のあの音は、揺れが来る数秒前に鳴らすためのもの。臨時情報は「これから1週間の構え方」を伝える情報なので、性質がそもそも違います。マナーモードで寝ていた夜に発表されていた、ということが普通に起こりえるわけです。
対策はシンプルで、自分から取りに行く経路をひとつ決めておくこと。テレビをつける、自治体の防災アプリを入れておく、気象庁のページをブックマークしておく。どれか1つで構いません。「向こうから鳴らしてくれる」を前提にしない、というのがこの項の結論です。
臨時情報が出たあとにやってはいけないことがある
臨時情報発表後にやってはいけないこととは、自分と周囲の安全を下げてしまう行動、あるいは他の人の備えを奪ってしまう行動である。3つだけ挙げます。
1. 発表を見てから買い集めに走る
2025年8月改訂の位置付けは「社会経済活動は継続する」です。物流も店も動いています。発表後に多くの人が同時に買いに走ると、本当に必要な人の手元から物が消えます。備えは平時に積んでおくもので、情報が出たあとに積むものではありません。
2. 出所の分からない情報を広める
「◯日に来る」といった日付入りの予知は、気象庁の情報体系にはありません。臨時情報は「相対的に高まっている」という評価を伝えるもので、日時を当てるものではない。転送する前に、気象庁と自治体の発表に同じことが書いてあるかを見てください。
3. 「スマホが鳴らないから出ていない」と判断する
前の章のとおり、臨時情報はJアラートの配信対象ではありません。通知が来ないことは、情報が出ていないことの証拠になりません。
日頃からの備えは平時のうちに形にしておく
日頃からの備えとは、臨時情報が出ているかどうかに関係なく、突然発生する地震に対して常に置いておく準備のことである。静岡県は国の表現に沿って、こう書いています。「引き続き、突然発生する地震への備え(住宅の耐震化、家具の固定、避難場所・避難経路の確認、非常持出品の確認等)を最優先に心がけましょう」。臨時情報の話をしているときも、土台はここだという整理です。
なお、何をどれだけ持つかという「量」の設計は、この記事の担当範囲ではありません。1週間分が推奨される理由と、3日分から足す差分は南海トラフに備える備蓄|1週間分が推奨される理由と3日分から足す差分リストに譲ります。ここでは「臨時情報が出たときに、あってよかったと思う形になっているか」という角度だけ確認します。
水は、箱の重さで置き場所が決まる
備蓄の中でいちばん先に行き詰まるのが水です。理由は量ではなく重さ。たとえばアイリスオーヤマの長期保存水は2Lボトルの6本入りで、公式に示されている内容量は1本あたり2,000g。単純に6本で12kgになります。2Lのペットボトルを1本持って階段を上るのは平気でも、箱ごと動かすとなると話が変わりますよね。米5kg袋2つぶんより重い塊が、玄関やクローゼットの床に居座ることになります。
だからこそ、買う前に置き場所を決めるほうが先です。長期保存水は「入れ替えの手間を減らすための選択肢」であって、たくさん買うためのものではありません。保存期間や規格は改定されることがあるため、最新の情報はアイリスオーヤマの公式サイトで確認してください。
置き場所を決めるときのコツをひとつ。1か所にまとめず、キッチンと寝室のように分けておくと、片方の部屋が家具で塞がっても取り出せます。臨時情報が出て「すぐ逃げられる体制」を意識する場面でも、玄関に近い側に1箱あるかどうかで動きやすさが違ってきます。
食べ物は「水がなくても戻せるか」で選ぶ
次に食べ物です。備蓄の失敗でよくあるのが、調理に水と火を前提にした食品ばかり積んでしまうこと。断水しているときにパスタを茹でるわけにはいきません。
その点で扱いやすいのが、尾西食品のアルファ米です。12種類の詰め合わせセットがあり、水またはお湯を注いで戻すタイプなので、火が使えない状況でも食べられます。12種類あるということは、同じ味が続いて食が進まなくなる事態を避けやすいという意味でもある。避難生活のストレスは、味の単調さから来る部分が意外に大きいと言われます。調理方法や必要な水量などの詳細は尾西食品の公式サイトで最新をご確認ください。
ここまでが「家に置くもの」の話です。家具の固定や避難経路まで含めて、家全体を1日で点検したい場合は地震の備えリスト|家具の固定と備蓄を1日で点検する家庭のチェック表のチェック表が使えます。臨時情報が出ていない今日のうちに一度通しておくと、発表されたときに確認する項目が減ります。
「非常持出品の常時携帯」は、持ち歩く側の備えを増やす
2025年8月改訂で「特別な備え」に加わった「非常持出品の常時携帯」は、家に置く備蓄とは別の話です。防災の世界では、持ち歩くぶんを0次、持ち出すぶんを1次、家に置くぶんを2次と分けて考えます。この改訂は、そのうち0次を厚くしてくださいという要請だと読めます。分け方と公的用語の対応は防災の0次・1次・2次とは|持ち歩き・持ち出し・在宅備蓄の分け方と公的用語の対応にまとめました。
常時携帯となると、重さがそのまま続けられるかどうかを決めます。カバンに入れっぱなしにできるかは、100g単位の差で変わる。たとえばエレコムの半固体モバイルバッテリー EC-C61MN は、公式に本体約220gと示されています。文庫本2冊ぶんくらいの重さです。毎日のカバンに入れて忘れられる重さかどうか、という基準で見てみてください。容量や対応機種などの仕様はエレコムの公式製品ページで確認をお願いします。
常時携帯するものは、増やしすぎると持ち歩かなくなります。持ち歩かない備えは、無いのと同じ。まずは充電手段とライト、それに家族の連絡先を書いた紙。この3つが毎日カバンに入っている状態を、臨時情報とは関係なく作っておくのが現実的だと思います。
事前避難対象地域かどうかは自分で判断しない
事前避難対象地域とは、自治体があらかじめ指定して住民に周知している地域のことであり、地図を見て個人が推測して決めるものではない。ここは、この記事で唯一「調べないでください」と書く箇所です。
定義そのものは公開されています。「津波到達前に、地震動に伴う堤防沈下の影響により、概ね地震発生から30分以内に30センチメートル以上の浸水が生じる地域」。ただ、この条件に自宅が当てはまるかどうかを判定するには、堤防の沈下量や浸水の到達時間といった計算が必要で、ハザードマップの色を見て決められるものではありません。
- 自宅が事前避難対象地域か → 市区町村の防災担当窓口・公式サイトで確認する
- 避難先はどこになるか → 自治体が指定する避難先に従う
- 臨時情報が出たときに避難するかどうか → 気象庁・内閣府・自治体の発表と指示に従う
そのうえで、自宅の浸水想定や避難経路の全体像をつかんでおくことには意味があります。ハザードマップの見方|色と浸水深の読み解き方と、自宅の想定を1枚にまとめる手順で自宅まわりの想定を1枚にまとめておくと、窓口で質問するときにも話が早くなります。あくまで「指定を調べる前段の下準備」として使ってください。
避難するかどうかの判断は、公的機関に委ねてください。臨時情報が発表されたときの行動は、気象庁の発表、内閣府の防災対応、そしてお住まいの自治体からの呼びかけが基準です。この記事は制度の読み方を整理したものであり、個別の避難の可否を判断するものではありません。
南海トラフ地震臨時情報のよくある質問
Q. 巨大地震注意が出たら、会社は休みになりますか
A. 2025年8月改訂の内閣府ガイドラインでは、臨時情報発表時の対応として「適切な防災対応を実施したうえで『社会経済活動は継続する』と位置付ける」とされています。国の整理としては、事業を止める前提にはなっていません。ただし勤務先ごとの判断は別にあります。自社のBCPや就業規則、当日の連絡を確認してください。
Q. 電車は止まりますか
A. 巨大地震注意については、「巨大地震注意の発表時には平常どおりの運行とし、原則、運行規制はしない」とされています(内閣府ガイドライン2025年8月改訂、藤枝市の掲載より)。なお巨大地震警戒時の鉄道以外の交通機関(航空・高速道路など)の扱いは、今回確認できませんでした。運行の可否は各交通事業者の発表を確認してください。
Q. 学校は休校になりますか
A. 学校に特化した公的な方針は、今回の確認範囲では見つけられませんでした。「無い」と断言はできず、確認できていないという状態です。登校の可否は、自治体の教育委員会と学校からの連絡で確認してください。
Q. 1週間が過ぎたら、もう安全ということですか
A. 違います。気象庁は「1週間という期間は、人々が対応を続けられる限度等を加味している」と説明しており、危険が消える期限ではありません。巨大地震警戒の場合、1週間が経過したあともさらに1週間は注意の呼びかけが続きます。
Q. 臨時情報が出たら、スマホに通知が来ますか
A. 南海トラフ地震臨時情報は、Jアラートで配信される情報の一覧に含まれていません(総務省消防庁)。テレビ・ラジオ・インターネット・防災行政無線などで伝えられます。通知が鳴らないことを「発表されていない」根拠にはできません。
Q. 2024年8月の臨時情報では、事前避難は行われたのですか
A. 発表されたキーワードは「巨大地震注意」で、事前避難を伴うものではありませんでした。2024年8月8日19時15分の発表から、8月15日17時の終了まで、求められたのは備えの再確認とすぐ避難できる準備の継続です。
今日やることは1つでいい
この記事の要点は、たった一行にまとまります。括弧の中が「注意」なら逃げない、「警戒」なら対象地域の住民が1週間動く。これだけ覚えていれば、発表の瞬間に混乱せずに済みます。
そして今日やることも1つで足りると考えています。自宅が事前避難対象地域に指定されているかどうかを、自治体の公式サイトで確認する。これが済んでいれば、次に臨時情報が出たとき、自分が動く側なのか構える側なのかが最初の30秒で分かります。
- 今日 市区町村の防災ページで、事前避難対象地域の指定を確認する
- 今週 避難場所と経路を一度歩き、玄関までの動線から倒れる物をどける
- 今月 毎日のカバンに、充電手段とライトと連絡先メモを入れて定位置にする
備えの持ち物を一式で揃えたい場合は、市販セットの中身を1点ずつ見比べた防災セットのおすすめはどれ?市販セットの中身を1点ずつ検証する選び方も参考にどうぞ。臨時情報が出ていない平常時のほうが、落ち着いて選べます。
制度を丸暗記する必要はありません。括弧の中を読む癖と、自宅が対象地域かどうかを知っていること。その2つで、次の発表のときの自分をだいぶ助けられます。
備えの「量」を人数と日数から決めるところは、家庭の備蓄品リスト完全版|人数×日数でわかる必要量早見表でまとめています。
参考・出典
- 気象庁「南海トラフ地震に関連する情報について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/nteq/info_criterion.html (2026年8月20日確認)
- 気象庁「南海トラフ地震に関連する情報」 https://www.data.jma.go.jp/eew/data/nteq/index.html (2026年8月20日確認)
- 気象庁「南海トラフ地震臨時情報が発表されたときの防災対応」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/nteq/bosai.html (2026年8月20日確認)
- 気象庁「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」2024年8月8日19時15分発表 https://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nteq/rinji/202408081915_rinji.html (2026年8月20日確認)
- 内閣府「南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!」 https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/rinji/index4.html (2026年8月20日確認)
- 内閣府(防災担当)「『南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン』の改訂」概要(令和7年8月) https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/kaiteigaiyou.pdf (2026年8月20日確認)
- 藤枝市「南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドラインの改訂について」 https://www.city.fujieda.shizuoka.jp/soshiki/kikikanri/kikikanri/oshirase/25962.html (2026年8月20日確認)
- 名古屋市「事前避難対象地域」 https://www.city.nagoya.jp/bousaiportal/hinan/1036438/1013411.html (2026年8月20日確認)
- 千葉市「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について」 https://www.city.chiba.jp/kensetsu/doboku/dobokukanri/20240809jisinzi.html (2026年8月20日確認)
- 静岡県「南海トラフ地震臨時情報について」 https://www.pref.shizuoka.jp/bosaikinkyu/sonae/earthquake/nankaitorafu/1035406.html (2026年8月20日確認)
- 総務省消防庁「全国瞬時警報システム(Jアラート)の概要」 https://www.fdma.go.jp/about/organization/post-18.html (2026年8月20日確認)
- 地震調査研究推進本部「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)」 https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/subduction_fault/summary_nankai/ (2026年8月20日確認)
- 日本経済新聞「南海トラフ地震、30年以内発生確率『80%程度』に引き上げ」(2025年1月15日公表分の報道) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG15D250V10C25A1000000/ (2026年8月20日確認)
- アイリスオーヤマ 公式サイト(長期保存水) https://www.irisohyama.co.jp/emergency-supplies/water/ (2026年8月20日確認)
- 尾西食品 公式サイト(製品一覧) https://www.onisifoods.co.jp/products/list.html (2026年8月20日確認)
- エレコム 公式製品ページ EC-C61MN https://www.elecom.co.jp/products/EC-C61MN.html (2026年8月20日確認)
