本記事にはプロモーションを含みます。
スマホの通知欄に、防災アプリのアイコンが3つも4つも並んでいる。夜中に揺れがあると、同じ地震の通知が数十秒の時間差で次々に鳴る。うるさくて全部オフにしてしまい、気づけば「入れているのに何も届かない」状態になっている——防災アプリでいちばん起きやすいのは、入れ忘れではなく入れすぎて止めてしまうことです。
だから答えを先に置きます。防災アプリは役割の違うものを2〜3本、それに自治体アプリを1本。多くの家庭ではこれで足ります。本数を増やしても届く情報はほとんど増えず、増えるのは通知の回数だけだからです。
なぜそう言えるのか。主要なアプリの公表されている機能を横に並べると、重なっている部分と重なっていない部分がはっきり分かれます。重なっている部分に何本お金と通知枠を割いても、得られるものは変わりません。この記事は「おすすめを何個も並べる」のではなく、役割で区切って、あなたが何本必要かを決めるための整理です。
この記事でわかること
- 防災アプリは何個入れれば足りるのか(判定チェックリストつき)
- 主要4本の公表機能・無料範囲・運営元の比較(2026年8月20日確認時点)
- 通知が重なったとき、どれを残してどれを切るかの決め方
- 自治体アプリを入れるべきかどうかの判断軸と、アプリだけでは埋まらない穴
アプリはあくまで「備え全体」のうちの情報の一枚です。家具の固定や備蓄も含めて自宅の状態をまとめて見直したいときは、地震の備えリスト|家具の固定と備蓄を1枚で点検する家庭のチェック表から先に点検すると、アプリに何を任せるかも決めやすくなります。
防災アプリを選ぶ基準は3つに絞る
選ぶ基準とは、アプリの機能一覧を上から順に見比べることではなく、「自分の生活で欠けている情報はどれか」を先に決める物差しである。機能の数で選ぶと、多機能なものが常に勝ってしまい、結局どれも入れることになります。
基準は3つだけで十分です。速さ、広さ、地域。この3つはそれぞれ違う情報源につながっていて、1本のアプリで3つとも最高になることはありません。
基準1: 速報がどれだけ速く届くか
速報の速さとは、気象庁が発表した情報が、どれだけ少ない中継を経て自分のスマホに届くかである。アプリ側が独自に地震を予知しているわけではなく、どのアプリも出どころは気象庁の発表です。差がつくのは、その発表を受け取ってから配信するまでの経路の短さになります。
たとえば特務機関NERV防災は、気象業務支援センター(気象庁本庁舎・大阪管区気象台内)と接続した専用線から直接受信していると公式に明記し、「国内最速レベルの情報配信」を掲げています(2026年8月20日確認時点)。ここは公表されている構成の違いなので、機能表の◯×よりも判断材料になります。
ただし、速さには原理的な天井があります。気象庁は緊急地震速報の仕組みについて、震源近くでP波(初期微動)を捉えた地震計のデータを自動解析して発表するため、解析と伝達に数秒程度かかり、内陸の浅い地震では震源に近い場所への提供が「原理的に間に合わない」場合があると説明しています。つまり、どのアプリを選んでも「揺れる前に必ず鳴る」わけではありません。速さは選ぶ価値のある基準ですが、速さを買えば安心が買えるわけではない、という前提で見てください。
基準2: 扱う情報の種類がどれだけ広いか
情報の広さとは、地震以外の「暮らしを止める出来事」を何種類カバーしているかである。大雨も、河川の増水も、熱中症も、そして避難情報も、届かなければ動けません。
Yahoo!防災速報は公式ページで、避難情報/緊急地震速報・地震情報/津波予報/豪雨予報/河川洪水情報/気象警報/熱中症情報/火山情報/国民保護情報(Jアラート)/防犯情報/自治体からの防災情報/異常感知情報という12種類の通知を挙げています(2026年8月20日確認時点)。地点は現在地に加えて国内3地点まで登録できます。自宅・職場・実家、と数えるとちょうど3つ。この「3つまで」という枠は、家族の住まいが散っている人ほど効いてきます。
ここでいう「避難情報」や「警戒レベル」という言葉の意味そのものが分からないと、通知が来ても手が止まります。言葉の側を先に押さえておきたい場合は、警戒レベル1〜5でいつ動く?レベル4までに避難する理由と、2026年5月に変わった情報名を読んでから通知設定に触れると、どの通知を残すかの判断がしやすくなります。
基準3: 自分の地域の個別情報が届くか
地域の個別情報とは、全国向けの気象情報には出てこない、自治体が自分の判断で出す情報のことである。避難所がどこに開いたか、給水はどこか、ごみの出し方はどうなるか。この層は、気象庁の発表を配信する全国型のアプリだけでは埋まりません。
自治体の情報がどう流れているかは、総務省が公開しているLアラート(災害情報共有システム)の説明が分かりやすい仕組みです。地方公共団体の職員、放送局・アプリ事業者等の関係者に対して必要な情報を一元的に提供する仕組みとされ、2011年6月に運用が始まり、2019年4月に全都道府県での運用が実現しています(運営管理は一般財団法人マルチメディア振興センター)。自治体の防災アプリの多くは、この基盤を通じて情報を受け取っています。
3つの基準は「どれが優れているか」ではなく「どれが自分に欠けているか」で使う。速さが欲しい人、広さが欲しい人、地域が欲しい人で、選ぶ本数も組み合わせも変わります。
入れる本数はチェックリストで決まる
適正な本数とは、機能の多さで決まるものではなく、自分が必要とする役割の数で決まるものである。役割が2つしか要らない人が5本入れても、増えるのは通知の重複だけです。
次のリストで、当てはまるものを数えてください。数がそのまま、全国型アプリの目安本数になります。
- 揺れの直前に少しでも早く知りたい(食器棚の前で立っている時間を減らしたい、火を止めたい)
- 地震以外に、大雨・洪水・熱中症・国民保護情報なども1本でまとめて受け取りたい
- 自宅以外に、通知を受け取りたい場所が2か所以上ある(職場、実家、子どもの学校など)
- 災害時に、文字だけでなく映像やライブ配信で状況を把握したい
- 普段から天気アプリを開く習慣があり、そこに防災機能もまとめたい
当てはまった数の読み方
1〜2個 … 全国型は1本で足ります。広さ重視の1本を入れて終わり。
3〜4個 … 全国型は2本。速さ型と広さ型を1本ずつ。
5個 … 全国型は3本まで。ここが上限で、4本目からは役割が重複します。
これに加えて、次章の分岐で必要と判断した人だけ自治体アプリを1本。
4本目以降を足したくなったときは、「その4本目にしかない通知は何か」を先に書き出してみてください。書き出せなければ、それは重複です。

役割分担の早見表
| 役割 | その役割とは | 担えるアプリ(公表機能から) | 判断のめやす |
|---|---|---|---|
| 速報の速さ | 気象庁の発表を、少ない中継で受け取る | 特務機関NERV防災(気象業務支援センターと接続した専用線から直接受信と公式に明記) | 揺れの前の数秒を重く見る人は入れる |
| 生活情報の広さ | 地震以外の災害・注意情報まで1本で受け取る | Yahoo!防災速報(12種の通知、国内3地点まで登録可) | 1本だけ選ぶならここ |
| 状況の把握 | 何が起きているかを映像・ニュースで確かめる | NHK ONE ニュース・防災(災害時のニュース同時配信・ライブ視聴) | NHK受信契約がある家庭は追加コストなし |
| 日常の天気とまとめる | 毎日開くアプリに防災機能を寄せる | ウェザーニュース(地震アラーム) | 天気アプリを別に入れているなら統合できる |
| 地域の個別情報 | 避難所・給水など自治体独自の情報を受け取る | お住まいの自治体アプリ(多くはLアラート経由で情報を受信) | 次章の分岐で判断 |
この表を見ると、上の4本が同じ役割で並んでいないことが分かります。裏を返せば、同じ列に2本入れても増えるものはほとんどないということでもあります。
公表機能の比較表(2026年8月20日確認時点)
| アプリ名 | 運営元 | 主な通知の種類(公式記載) | 無料範囲 | 出典確認日 |
|---|---|---|---|---|
| Yahoo!防災速報 | LY Corporation | 避難情報/緊急地震速報・地震情報/津波予報/豪雨予報/河川洪水情報/気象警報/熱中症情報/火山情報/国民保護情報(Jアラート)/防犯情報/自治体からの防災情報/異常感知情報の12種。現在地+国内3地点まで登録可 | 全機能無料と明記 | 2026年8月20日 |
| NHK ONE ニュース・防災 (2025年10月1日に改称) |
NHK | 速報ニュース・生命に関わる情報のプッシュ通知、地域の防災・気象情報、雨雲レーダーや川の情報のマップ、災害時のニュース同時配信・ライブ視聴 | 無料。ただしNHK受信契約が必要(未契約の場合は加入案内あり) | 2026年8月20日 |
| 特務機関NERV防災 | ゲヒルン株式会社 | 地震・津波・噴火・特別警報の速報、洪水・土砂災害等の防災気象情報。気象業務支援センター(気象庁本庁舎・大阪管区気象台内)と接続した専用線から直接受信し「国内最速レベルの情報配信」と公式が明記 | 基本機能は無料。有料「サポーターズクラブ」はEプラン月額250円/EEプラン月額480円で、地点登録数の増加・アーリーアクセス・クライシスマッピングの投稿権限など | 2026年8月20日 |
| ウェザーニュース | 株式会社ウェザーニューズ | 現在地周辺で震度3以上の地震があった場合に震度・津波の詳細を通知する「地震アラーム」(無料会員も利用可。「ウェザーニュースライト会員」は利用不可の注記あり) | 地震アラームは無料登録で利用可。有料「ウェザーニュースPro」は初月無料・以降月額680円(税込)で、登録地点の風速・雨量が閾値を超えたときや「避難指示」「緊急安全確保」発表時の通知など | 2026年8月20日 |
オフラインで使えるかは、4本とも公式に記載がなく確認できませんでした。「圏外でも使える」と書いてある紹介記事を見かけることがありますが、今回参照した各アプリの公式ページには、オフライン時の動作についての記載が見当たりませんでした。地図が保存されるのか、通知が届くのかは公式情報からは判断できないため、この記事では断定しません。最新の対応状況は各アプリの公式ページで確認してください。
4本のアプリは公表機能が重なっていない
個別解説とは、順位をつけるための紹介文ではなく、各アプリが「何を担い、何を担わないか」を確かめる作業である。以下は各社が公表している内容のみを整理したもので、優劣を決めるものではありません。
Yahoo!防災速報(LY Corporation)
役割は「広さ」です。公式が挙げる通知は12種類あり、地震・津波だけでなく、豪雨予報、河川洪水情報、気象警報、熱中症情報、火山情報、そして国民保護情報(Jアラート)まで含まれます。防犯情報や自治体からの防災情報も同じアプリに乗っているため、1本しか入れないと決めた人が最初に検討する対象になりやすい構成です。
登録できる地点は現在地に加えて国内3地点まで。数字だけ見ると素っ気ないのですが、生活に置き換えると意味が変わります。自宅、勤務先、離れて暮らす親の家。この3つを登録した瞬間に、このアプリは「自分の身を守る道具」から「家族の様子を知る道具」へ性格が変わります。料金は全機能無料と明記されています(2026年8月20日確認時点)。
NHK ONE ニュース・防災(NHK)
まず名前から。かつての「NHKニュース・防災」アプリは、2025年10月1日に「NHK ONE ニュース・防災アプリ」へ改称されています。古い名前のまま紹介している記事も残っているので、探すときは現行名で検索してください。
公表されている機能は、速報ニュースや生命に関わる情報のプッシュ通知、地域の防災・気象情報、雨雲レーダーや川の情報のマップ、そして災害時のニュース同時配信・ライブ視聴です。役割で言えば「状況の把握」。速報が鳴ったあとに「で、実際には何が起きているのか」を確かめる層を担います。
料金は無料ですが、NHKの受信契約が必要で、未契約の場合は加入案内が表示されます(2026年8月20日確認時点)。すでに受信契約のある家庭なら追加の負担なく1本増やせますし、契約がない家庭では選択肢から外れる、という分かりやすい線引きになっています。
特務機関NERV防災(ゲヒルン株式会社)
運営元の正式表記はゲヒルン株式会社です(「株式会社ゲヒルン」ではありません)。役割は「速さ」。地震・津波・噴火・特別警報の速報と、洪水や土砂災害などの防災気象情報を扱い、気象業務支援センター(気象庁本庁舎・大阪管区気象台内)と接続した専用線から直接受信していると公式に明記しています。
基本機能は無料です。有料の「サポーターズクラブ」はEプランが月額250円、EEプランが月額480円で、地点登録数の増加、アーリーアクセス、クライシスマッピングへの投稿権限などが特典として挙げられています(2026年8月20日確認時点)。月250円は、缶コーヒーにすると2本ぶんほど。登録したい地点が3つを超える人にとっては、検討する価値のある水準でしょう。
「速いアプリを入れたから安心」ではないところが、正直むずかしいところ。気象庁も、内陸の浅い地震では震源の近くに間に合わないことがあると書いています。速さはあくまで数秒を取りに行く投資。その数秒で何をするかを決めておかないと、鳴っただけで終わってしまいます。
ウェザーニュース(株式会社ウェザーニューズ)
役割は「日常の天気とまとめる」。公式が案内している「地震アラーム」は、現在地周辺で震度3以上の地震があった場合に震度・津波の詳細を通知するもので、無料会員でも利用できます(「ウェザーニュースライト会員」は利用不可という注記あり)。
有料の「ウェザーニュースPro」は初月無料、以降は月額680円(税込)。登録地点の風速・雨量が閾値を超えたときの通知や、「避難指示」「緊急安全確保」が発表されたときの通知などが強化されます(2026年8月20日確認時点)。月680円はコンビニのお弁当1回ぶんくらい。毎日天気を見る習慣があり、そのアプリを防災の窓口も兼ねさせたい人には無駄になりにくい支出です。
逆に、天気アプリを別に持っていて開く習慣がないなら、ここは「入れない」という判断が正解になりやすい枠でもあります。
通知が重なったら「速報の担当は1本」に決める
通知の整理とは、通知をオフにして静かにすることではなく、同じ情報を伝える通知を1本に寄せて、残りを別の役割に使い直すことである。全部切ってしまうと、備えとしては入れていないのと変わりません。
複数本入れると、同じ地震でこういう順に鳴ります。まず速報型が鳴り、数十秒後に広さ型が「地震情報」として鳴り、しばらくして状況把握型が「速報ニュース」として鳴る。3回鳴っているようで、実は1つの出来事を3回聞かされているだけです。
重なりを整理する4ステップ
- 役割を1つずつ担当に割り当てる。「緊急地震速報の担当は◯◯」「気象警報と避難情報の担当は△△」と、紙でもメモアプリでもいいので書き出します。担当が2本になっている行が、重なりの正体です。
- 重なった行では、担当でないほうの通知だけをオフにする。アプリごと消す必要はありません。通知の種類ごとにオン・オフできるアプリなら、重複している種類だけを落とせば、そのアプリが持つ固有の通知は生き残ります。
- 音を分ける。命に関わる速報は音あり、参考情報は音なし(バナーのみ)に変えます。すべてが同じ音で鳴るから、どれが本命か分からなくなるわけです。
- 1か月後に見直す。「この1か月で、動くきっかけになった通知はどれか」を思い出して、一度も役に立たなかった種類を落とします。
削るときの優先順位は単純です。自分が動くきっかけになる通知は残す。動きようがない通知から落とす。たとえば遠い地域の震度情報は、知っておきたい気持ちはあっても、その場でできることはありません。夜中に起こされるコストのほうが大きいなら、それは落としてよい通知です。
残すべき通知の見分け方
その通知が鳴ったとき、60秒以内にやることが1つでも決まっているか。決まっているなら残す。決まっていないなら、通知を残すより先に「何をやるか」を決めるほうが近道です。
通知が届いても、そのあと家族がどう動くかを決めていなければ、結局その場で相談が始まります。集合住宅にお住まいなら、マンションの防災訓練で住民が確かめること|年2回の義務は共同住宅にはないで、通知のあとの動き方を建物単位で確かめる方法をまとめています。
安否確認はアプリの役割ではありません。今回比べた4本は、いずれも公表機能の中心が「情報の受信」であって、家族と連絡を取り合う機能ではありません。安否の確認は、災害用伝言ダイヤル171や各社の災害用伝言板など別の手段で決めておく話になります。決め方は家族の安否確認方法の決め方|災害用伝言ダイヤル171と伝言板・SNSの使い分けにまとめました。
自治体アプリは「地域の個別情報が要るか」で決める
自治体アプリとは、全国向けの気象情報ではなく、住んでいる市区町村が自分の判断で出す情報を受け取るための窓口である。役割が全国型と重ならないぶん、入れる価値の判断も別軸になります。
前提として、自治体の災害情報の多くはLアラート(災害情報共有システム)という基盤を通って、放送局やアプリ事業者へ配信されています。総務省の説明によれば、地方公共団体の職員や放送局・アプリ事業者等に必要な情報を一元的に提供する仕組みで、2011年6月に運用が始まり、2019年4月に全都道府県での運用が実現しました。
ここが判断の分かれ目になります。Lアラート経由で流れる情報の一部は、全国型のアプリでも「自治体からの防災情報」として受け取れます。つまり自治体アプリを入れる価値は、「全国型では届かない情報が、その自治体アプリにあるかどうか」で決まるわけです。

入れたほうがよいと判断できる場合
- お住まいの自治体のアプリに、全国型では扱っていない機能(避難所の開設状況、ハザードマップ連携、多言語対応、ごみ・給水などの生活情報)が公表されている
- 川や斜面が近く、自治体独自の判断で出る情報を早く知りたい
- 家族に、自治体の窓口情報を必要とする人(要配慮者、乳幼児がいる世帯など)がいる
- すでに入れている全国型が1本だけで、通知枠に余裕がある
反対に、自治体のアプリが「広報紙の閲覧が中心」「防災情報は全国型と同じものを転送しているだけ」という構成であれば、無理に入れる必要はありません。確かめ方は単純で、アプリストアの説明文や自治体の公式ページに書かれている機能一覧を、上の比較表と突き合わせるだけです。新しい項目が1つも見つからないなら、それは重複です。
もっとも、避難するかどうかの判断そのものは、アプリの数では決まりません。最終的な避難の判断は、気象庁やお住まいの自治体が出す情報と指示に従ってください。アプリは、その情報を受け取るための入り口にすぎません。
自宅がそもそもどんな災害を想定すべき場所なのかが分かっていないと、どの通知が自分向けなのかも決められません。ハザードマップの見方|色と浸水深の読み解き方と、自宅の想定を1枚にまとめる手順で自宅の想定を1枚にしておくと、通知の取捨選択がぐっと楽になります。
アプリだけでは埋まらない穴が3つある
アプリの限界とは、機能が足りないという意味ではなく、アプリが動く前提(電気・通信・端末)が崩れたときに何も残らないという意味である。ここを埋めずに本数だけ増やしても、備えの厚みは変わりません。
穴1: スマホの電池が切れたら、入れたアプリは全部使えない
速報型も、広さ型も、状況把握型も、自治体アプリも、動く条件は同じです。スマホの電池が切れた瞬間に、入れている本数に関係なく全部が止まります。3本入れていても4本入れていても、この点だけは1本のときと変わりません。停電が長引く場面では、アプリを増やすことより電源を確保するほうが先です。
だから、アプリの整理と同じ日に電源の確保も一度見ておくと効率がいいわけです。
手元に置く電源として選びやすいのが、AnkerのAnker Power Bank(20000mAh, 30W)ブラックです。メーカーはAnker、容量20,000mAh・出力30Wという数値は商品ページ表示(2026年8月20日確認時点)です。この用途に向く理由は2つあります。ひとつは容量。スマホを複数回ぶん充電できる容量帯なので、家族で1台を回す使い方に耐えます。もうひとつは30Wという出力で、対応する端末なら短時間で必要なぶんだけ入れて次の人に回す、という運用がしやすくなります。停電中は「1人が満充電にする」より「全員が半分ずつ持つ」ほうが安全側です。
なお、容量を何mAhにすべきかという設計の話は、この記事では深追いしません。表記容量がそのまま使えるわけではないという前提を含めて、防災用モバイルバッテリーの容量の決め方|表記の6〜7割で計算するに分けてあります。停電中に電池の減りを抑える設定も同じくこの記事の担当外で、停電時の情報収集の手段一覧|ラジオ・スマホ・公的発信の使い分けと電池を守る設定に委ねます。ここでは「アプリを何本入れても電源がなければゼロになる」という一点だけ押さえてください。
ただ、大容量を1台だけ持つ形には弱点もあります。停電中にその1台を持った人が外に出てしまえば、残った家族は充電手段ごと失う。家族で回す本命の1台とは別に、1人1台の小型を配っておく——持ち出し袋、職場のロッカー、離れて暮らす親の家。分散させたほうが、通知を受け取り続けられる人数は増えます。
その小型側の選択肢が、エレコムの半固体電池モバイルバッテリー EC-C61MN。容量10,000mAh、最大出力PD 35W、Type-CとUSB-Aの2ポート、重量約220gという数値はAmazonの商品ページ表示(2026年9月6日確認時点)によります(エレコム公式ページは今回参照できなかったため、メーカー公表値としては扱いません)。電解質に半固体を使い、燃えにくい安全設計をうたう製品として案内されている点が、大容量の本命機との違いです。持ち出し袋に入れっぱなしにする用途では、この性格の差が効いてきます。
穴2: アプリの通知と、緊急速報メールは別の経路である
この2つは混同されがちですが、届く仕組みが違います。気象庁の説明によれば、緊急速報メールは携帯電話事業者(ドコモ・au・ソフトバンク等)が無料で提供しているもので、国や地方公共団体による災害・避難情報等を、回線混雑の影響を受けずに特定エリア内の対応端末へ一斉配信する仕組みです。「エリアメール」はこの緊急速報メールの呼称の一つにあたります。
一方、アプリの通知は、民間の事業者が気象庁の発表を受信して配信し、そこからインターネット経由で各端末へ届きます。アプリ側の通知設定に依存するのはこちらです。整理すると、経路は次の三層に分かれます。
| 層 | 経路 | アプリの要否 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1 | 気象庁の発表 →(携帯電話事業者)→ 緊急速報メール/エリアメール | 不要 | 回線混雑の影響を受けずに特定エリアへ一斉配信 |
| 2 | 気象庁の発表 →(民間アプリ事業者が受信・配信)→ 各アプリの通知 | 必要 | アプリの通知設定に依存する |
| 3 | 自治体の発表 →(Lアラート経由)→ 放送局・アプリ事業者 | アプリまたは放送 | 地域の避難情報が中心 |
ここから言えることは1つ。アプリの通知を全部オフにしても、第1層は残ります。逆に、アプリだけを頼りにして端末の緊急速報メールの設定を触ってしまうと、いちばん混雑に強い経路を自分で閉じることになります。整理するのはアプリ側の通知であって、端末側の緊急速報メールではありません。
穴3: スマホを使わない家族には、そもそも届かない
アプリは、スマホを持っていて、通知を見て、意味が分かる人にしか働きません。離れて暮らす高齢の家族がいる場合、その人のスマホに同じアプリを入れても、通知に気づけるとは限らない。この層は、アプリの本数ではなく「誰が電話をかけるか」を決めることでしか埋まりません。
薬や介護用品まで含めた高齢の家族の備えは、高齢者の防災の備え|持病の薬は何日分そなえるか、介護用品と食事の量の決め方に分けて書いています。情報の届け方は、その一部として決めておくと抜けにくくなります。
終了しているサービスに注意。au(KDDI・沖縄セルラー)の「災害用音声お届けサービス」は2022年3月31日をもって終了しています。いまでも現行サービスとして紹介している情報を見かけることがあるため、家族の連絡手段を決めるときは各社の現在の案内を確認してください。なお、NTTドコモの「災害用伝言板」については、「ファミリー割引グループ安否確認機能」と「登録お願いメール機能」が2026年3月31日(予定)で提供終了と公式に告知されています(2026年8月20日確認時点。終了実施後の告知は確認できていません)。
では、その家族の手元に何を置くか。アプリではない受信機です。ラジオなら、アカウントも通知設定も要らない。つまみを回せば音が出る。スマホを使わない人に渡せる情報の入り口としては、いまでもこれがいちばん短い経路です。
クマザキエイムの手回し充電ラジオライト SL-091は、その置き方に合う1台。クマザキエイム公式(2026年9月6日確認時点)によれば、電源は内蔵リチウムイオン充電池3.7V/4000mAh。充電方法は手回し(毎分130〜150回転で10〜12時間)、ソーラー(直射日光下で45〜50時間)、USB(6〜7時間)、単4形乾電池3本の4通りです。受信バンドはAM 522〜1620kHz/FM 76〜108MHzで、ワイドFMに対応。LEDライトは1W(30ルーメン相当)、本体サイズは幅202×高80×奥90mm(突起部を除く)、重量490g(乾電池含まず)、防水はIPX-3。スマートフォンを1回充電できるとも記載されています。
数字を並べましたが、読み替えると要点は1つです。充電の道が4通りあるということは、そのうち3つが塞がっても情報が止まらないということ。手回しは最後の手段で、普段はUSBで満充電にして棚に置いておけば足ります。渡す相手が操作を覚える必要もありません。
この整理が向かない人もいる
向き不向きとは、防災アプリの良し悪しではなく、この記事の前提(スマホで情報を受け取り、通知を自分で整理する)が成立するかどうかである。次に当てはまる場合、ここまでの手順はそのままでは当てはまりません。
- スマホを持っていない、通知の操作が負担になる人 … アプリの本数の話より、テレビ・ラジオ・防災行政無線・家族からの電話といった経路を決めるほうが確実です。
- 仕事で端末の通知を細かく管理できない人 … 勤務中に通知を切らざるを得ない環境なら、第1層(緊急速報メール)を最後の砦として残す設計にしてください。
- すでに自治体アプリ1本で運用が回っている人 … 不便を感じていないなら、無理に全国型を足す理由はありません。足すのは「届かなくて困った」経験があった役割だけで十分です。
- 圏外になりやすい場所で過ごす時間が長い人 … 今回の4本はオフライン時の動作が公式に記載されておらず、確認できませんでした。通信がない前提での情報収集は、ラジオなど別の手段を主役にしたほうが確実です。
- 「アプリを入れれば備えが完成する」と考えている人 … 通知は動く合図であって、備蓄や家具の固定の代わりにはなりません。
本音を言うと、アプリを増やすのはいちばん手軽で、いちばん達成感のある「備えたつもり」なんですよね。インストールは3秒で終わるし、お金もかからない。でも通知が鳴ったあとに動けるかどうかは、入れた本数とはまったく別の話。だからこの記事では、増やす話より削る話を長めに書きました。
そしてもう一段だけ地味な話を足します。手回しラジオもヘッドライトも、最後は乾電池に戻ってくる。アプリを1本入れるのは3秒で終わりますが、停電した夜に効くのはアプリの本数ではなく、引き出しに何本の乾電池が入っているかのほうだったりします。
まとめ買いの単位として扱いやすいのが、パナソニックのエボルタNEO 単3形アルカリ乾電池 8本パック(LR6NJ/8SW)です。メーカーはパナソニック、型番はLR6NJ/8SW、単3形アルカリ乾電池の8本パックという情報はAmazonの商品ページ表示(2026年9月6日確認時点)によります。使用推奨期限や連続点灯時間は停電時の情報収集の手段一覧|ラジオ・スマホ・公的発信の使い分けと電池を守る設定側の話なので、ここでは扱いません。
ひとつ注意を。形が違うと融通が利きません。SL-091の乾電池運転は単4形3本ですが、家庭の懐中電灯やランタンには単3形を使うものもあります。買う前に、手元の機器の電池ぶたに書かれた形と本数を見て、形ごとに合計してください。数えるのはそれだけです。
よくある質問
Q. 防災アプリは結局、何個入れればいいですか?
役割の違うものを2〜3本、それに必要なら自治体アプリを1本。この記事のチェックリストで当てはまった数が、そのまま全国型の目安本数になります。4本目を足したくなったら、「その1本にしかない通知は何か」を書き出してみてください。書き出せなければ重複なので、増やす意味は薄いはずです。
Q. 全部無料で使えますか?
2026年8月20日確認時点で、Yahoo!防災速報は全機能無料と明記されています。NHK ONE ニュース・防災は無料ですが、NHKの受信契約が必要です。特務機関NERV防災は基本機能が無料で、有料のサポーターズクラブはEプラン月額250円・EEプラン月額480円。ウェザーニュースは地震アラームが無料登録で利用でき(ライト会員は利用不可の注記あり)、有料のProは初月無料・以降月額680円(税込)です。料金は変わることがあるため、申し込み前に各アプリの公式ページで確認してください。
Q. 圏外や停電のときでもアプリは使えますか?
今回参照した4本の公式ページには、オフライン時の動作についての記載が見当たらず、使えるとも使えないとも確認できませんでした。地図が保存されるのか、通知が届くのかは公式情報からは判断できません。最新の対応状況は各アプリの公式ページで確認してください。確実に言えるのは、スマホの電池が切れればどのアプリも動かない、という点だけです。
Q. 通知を減らしたいのですが、どれから切るべきですか?
同じ出来事を伝えている通知のうち、担当に決めていないほうから切ります。切るのはアプリごとではなく通知の種類ごと。判断の物差しは「その通知が鳴ったとき、60秒以内にやることが決まっているか」です。決まっていない通知は、いま鳴らす必要のない通知だと考えて差し支えありません。
Q. 端末の緊急速報メールもオフにしていいですか?
おすすめしません。気象庁の説明によれば、緊急速報メールは国や地方公共団体の災害・避難情報等を、回線混雑の影響を受けずに特定エリアへ一斉配信する仕組みです。アプリの通知とは経路が別なので、整理の対象はアプリ側の通知に限り、端末側の設定はそのままにしておくほうが安全です。
Q. NHKのアプリは名前が変わったのですか?
はい。2025年10月1日に「NHK ONE ニュース・防災アプリ」へ改称されています。旧称のまま案内している情報もあるため、探すときは現行名で検索してください。
電池が切れたあとに残る手段をもう少し詳しく見るなら、防災ラジオの選び方|要否の判定フローと電源方式・ワイドFM対応の比較(2026年版)で、電源方式とワイドFM対応の違いを比べています。アプリの本数を決めたあとに読むと、抜けている経路が見えます。
今日やることは1つだけ
最初の一歩とは、アプリを入れることではなく、いま入っているものの役割を書き出すことである。役割の欄が埋まらないアプリは、通知だけを増やしている可能性が高いからです。
今日やるのは「スマホに入っている防災アプリを紙に書き出して、役割を1つずつ割り当てる」だけ。所要時間は5分ほど。空いた役割があればそこを1本足し、担当が2本になっている行があればどちらかの通知を落とす。それだけで、通知欄はかなり静かになります。
- 棚卸し … いま入っている防災アプリを全部書き出し、「速さ/広さ/状況把握/地域」のどの役割かを割り当てる。
- 整理 … 担当が重なっている役割で、担当でないほうのアプリの該当通知だけをオフにする。端末側の緊急速報メールは触らない。
- 補強 … 空いた役割を1本だけ足す。合わせて、停電したときの電源をどう確保するかを家族で決めておく。
アプリは、情報を受け取るための入り口です。入り口をいくつ作っても、そのあと誰がどう動くかを決めていなければ、玄関で立ち止まったまま終わってしまいます。本数を増やす前に、役割を決める。順番はそれだけで十分だと考えています。
なお、避難するかどうかの最終的な判断は、気象庁やお住まいの自治体が出す情報と指示に従ってください。アプリの通知は、その判断を早く受け取るための手段にすぎません。
停電中に電池を減らさず情報を取り続ける設定は、停電時の情報収集の手段一覧|ラジオ・スマホ・公的発信の使い分けと電池を守る設定でまとめています。
参考・出典
- Yahoo!防災速報 公式サイト/通知する災害情報の一覧(https://emg.yahoo.co.jp/、通知する情報一覧)2026年8月20日確認
- NHK「NHK ONE ニュース・防災アプリ【ダウンロードはこちら】」(news.web.nhk)2026年8月20日確認
- 特務機関NERV防災 公式サイト/ゲヒルン株式会社(https://nerv.app/、https://www.gehirn.co.jp/)2026年8月20日確認
- ウェザーニュース「地震アラーム」/「ウェザーニュースPro」(地震アラーム、Pro)2026年8月20日確認
- 気象庁「緊急地震速報の仕組み」(気象庁)2026年8月20日確認
- 気象庁「よくある質問集(緊急速報メール・エリアメール)」(気象庁FAQ)2026年8月20日確認
- 総務省「Lアラート(災害情報共有システム)」(総務省)2026年8月20日確認
- au「災害用音声お届けサービス」提供終了のお知らせ(au)2026年8月20日確認
- NTTドコモ「災害用伝言板」(NTTドコモ)2026年8月20日確認
