地震が起きたとき、最初にやることはひとつしかありません。丈夫な机やテーブルの下に入り、頭を守る。総務省消防庁も東京消防庁も、順番の先頭に置いているのはこれだけです。火を消しに行くことでも、玄関に走ることでもありません。
そして揺れがおさまってからの行動には、公的機関が示している決まった並び順があります。身の安全 → 出口の確保 → 火の始末 → 電気とガスの確認。この4つは、あなたが寝室にいても風呂にいても車の中にいても、入れ替わりません。変わるのは「その場所で、その一手をどうやるか」だけです。
ところが検索して出てくる情報は、時間の流れで整理したものか、場所ごとに整理したものか、どちらか一方に寄っています。実際に必要なのは「いま自分がいる場所 × 揺れてから何分たったか」の交差点なのに、その1枚がありません。そこでこの記事は、公的機関の原文をそのまま引きながら、時間軸と場所を1枚の表で交差させました。
この記事でわかること
- 揺れている60秒・収まった直後の3分・そこから1時間、それぞれで何をするか
- 寝室/風呂・トイレ/キッチン/屋外/車/エレベーターの場所別に見た、最初の一手
- やってはいけない5つと、その根拠になっている公的機関の原文
- 自分で判断せず、公的な窓口や専門家に任せたほうがいい場面の線引き
揺れている60秒は、身を守ることだけをする
揺れている最中の初動とは、移動と後始末をいっさい捨てて、頭と体を守ることだけに時間を使う行動のことです。この60秒でやることは、増やしてはいけません。
総務省消防庁は、揺れを感じたときの行動をこう書いています。
揺れを感じたら、まず丈夫な机やテーブルなどの下に身を隠しましょう。座ぶとんなどが身近にあれば、頭部を保護しましょう
大揺れは1分程度でおさまるので周囲の状況をよく確かめ、あわてて外へ飛び出すことなく落ち着いて行動しましょう
出典:総務省消防庁『地震に自信を あなたを守る次の行動1』(https://www.fdma.go.jp/publication/database/jishin2jishin/post17.html ・2026年8月28日確認時点)
「大揺れは1分程度」という一文が効きます。テレビCMなら2本分。体感ではもっと長く感じるはずですが、身を守る姿勢を保ちきれる長さではあります。ただし消防庁の表現はあくまで「程度」という目安で、揺れの続く時間は地震によって変わります。時計で計って動き出すのではなく、揺れが収まったことを自分で確かめてから次に進んでください。この時間をどう使うかで、次の3分の難易度が変わります。
初動の順番は「身の安全 → 出口の確保 → 火の始末 → 電気とガスの確認」。場所が変わっても、この順番は入れ替わらない。
緊急地震速報が鳴ってから揺れが来るまで
スマホや防災行政無線から緊急地震速報が鳴ったとき、動ける時間はどれくらいあるのか。政府広報オンラインは「発表から強い揺れが到達するまでは数秒から数十秒程度しかありません」と説明しています(政府広報オンライン『緊急地震速報~その時どう動く?「数秒間の心がまえ」』・2026年8月28日確認時点)。
ここで注意したいのが出典です。この「数秒から数十秒」は気象庁が公表している数字ではありません。気象庁自身は、猶予時間について「発表する対象地域の最小単位が、都道府県を3〜4つに分割した程度の広がりを持ち、その中でも場所によってかなり異なるものであるため、発表いたしません」としています(気象庁『緊急地震速報(警報)及び(予報)について』・2026年8月28日確認時点)。
つまり、何秒あるかは誰にも約束できません。だからこそ「鳴ったら考えずに机の下」という、判断を挟まない1手だけを覚えておくのが現実的だ、ということになります。
けがの主因は、揺れそのものではなく家具とガラス
地震のけがは、建物が壊れて起きるものばかりではありません。東京消防庁は『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』(令和6年1月)の冒頭で、近年の地震被害調査について「負傷者の約3〜5割の方々が屋内における家具類の転倒・落下によって負傷している」と書いています。
この「3〜5割」は、ひとつの調査から出た数字ではありません。同ハンドブックには地震ごとの内訳グラフが載っていて、宮城県北部地震49.4%、新潟県中越地震41.2%、岩手・宮城内陸地震44.6%、熊本地震の高層マンション40.0%、能登半島地震29.4%と、地震によって幅があります(出典:東京消防庁『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック―室内の地震対策―』令和6年1月・https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000010472.pdf ・2026年8月28日確認時点)。
数字を並べただけでは動けないので、言い換えます。けが人が10人いたとして、そのうち3人から5人は、倒れた家具や落ちてきた物にやられている。揺れている最中に机の下へ入る意味は、建物からではなく、部屋の中の物から身を守ることにあるということです。家具の固定そのものは記事の後半と賃貸の家具固定は穴を開けずにできる?東京消防庁が示す「2つ組み合わせ」の根拠と器具の公表値で扱います。
揺れが収まった直後の3分は、火と足元と出口を見る
収まった直後の3分とは、次の揺れが来る前に、部屋を「動ける状態」に戻すための時間です。カップ麺ができあがるくらいの短さだと思ってください。
東京消防庁『地震 その時10のポイント』は、順番をこう並べています。「地震だ!まず身の安全」「落ちついて火の元確認初期消火」「あわてた行動けがのもと」「窓や戸を開け出口を確保」「門や塀には近寄らない」。そして火については、こう補足されています。
火を使っている時は揺れがおさまってから、あわてずに火の始末をする
出典:東京消防庁『地震 その時10のポイント』(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/bou_topic/jisin/point10.html ・更新日2025年12月12日・2026年8月28日確認時点)
なぜ「揺れている最中に火を消しに行かない」のか
理由は精神論ではなく、設備の話です。東京消防庁は『地震に備えて』のページで、次のように説明しています。
火の始末は揺れが収まってから行いましょう
現在の都市ガスやプロパンガスは、震度5程度の揺れを感じると自動的にガスの供給を遮断するよう設定されています
石油ストーブなどにも耐震自動消火装置を備えたものが普及しており、使用中の火気器具からの出火の危険性は低くなっています
出典:東京消防庁『地震に備えて』(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/bou_topic/jisin/life00.html ・2026年8月28日確認時点)
ガス側の資料でも同じことが書かれていて、日本ガス協会は「震度5相当以上の地震の場合は、ガスメーター(マイコンメーター)が自動的にガスを遮断します」としています。強く揺れているあいだ、ガスは人が手を出さなくても止まる方向に設計されている。だから、揺れているコンロに向かって歩くリスクのほうが上回る、という整理です。
足元とガラス片
揺れがおさまって最初に踏み出す一歩が、いちばん切りやすい場面です。『地震 その時10のポイント』も「屋内で転倒・落下した家具類やガラスの破片などに注意」と明記しています。素足やスリッパの薄い底では、割れた食器やガラスの上を歩けません。枕元に履物を置いておく話は防災スリッパは必要?内閣府が載せた被災者の声とJIS規格で足を守る備えを決めるにまとめました。
ガスが止まった、ブレーカーを落とす
マイコンメーターが働くとガスは止まります。ここで急いで復帰ボタンを押しにいく前に、日本ガス協会の手順の1番目を思い出してください。ガス臭くないかを確認する。臭いがあるなら復帰操作はせず、ガス事業者に連絡します。復帰の具体的な手順は地震でガスが止まったら?マイコンメーターの復帰手順を都市ガス5社の公式で確かめたで都市ガス5社ぶんを並べています。
電気のほうは、逆に「切る」判断が要ります。東京消防庁尾久消防署は、地震で観賞魚用の水槽が倒れてヒーターが床に落ち、停電から復旧して再通電したときに出火した事例を挙げ、「避難などで家を離れる際はブレーカーを落としましょう!」と呼びかけています(更新日2026年4月28日・2026年8月28日確認時点)。
この通電火災は、規模の面でも無視できません。内閣官房の資料によると、阪神・淡路大震災では地震火災139件のうち電気火災が85件、東日本大震災では108件のうち58件を占めていました。地震のあとに燃えた家の半分以上は、電気が原因だったということです。

3分から1時間は、情報と安否と建物の安全に移る
この時間帯とは、自分の身の安全が確保できたあと、外の状況と家族の状況を確かめる段階です。ここから先の判断は、自分の感覚ではなく発表された情報に寄せていきます。
避難するかどうかは、自分で決めない
津波、火災、建物の損傷。どれも「たぶん大丈夫」と思ったほうに賭けてよい種類の判断ではありません。避難するかどうか、いつ避難するかは、気象庁が発表する警報と、自治体が出す避難情報に従ってください。この記事を含め、どのウェブサイトもあなたの現在地の危険度を知りません。
家族の安否は、決めておいた方法で
災害用伝言ダイヤル(171)は、いつでも使えるサービスではありません。NTT東日本は「地震、台風などの災害の時に運用開始する」ものだと説明しています。つまり、平常時にかけても本番と同じ動きはしません。ただし体験利用日が用意されていて、毎月1日と15日、正月三が日、防災週間(8月30日〜9月5日)、防災とボランティア週間(1月15日〜21日)に試せます。使い分けの詳細は家族の安否確認方法の決め方|災害用伝言ダイヤル171と伝言板・SNSの使い分けにまとめました。
「余震」という言葉を、気象庁はもう使っていない
大きな地震のあと、次に来る揺れをどう考えるか。気象庁は言葉づかいから変えています。
「余震」という言葉は最初の地震よりも規模の大きな地震は発生しないという印象を与えることから、気象庁は同指針の指摘に沿い、防災上の呼びかけ等においては、さらに規模の大きな地震への注意を怠ることのないよう、「余震」ではなく「地震」という言葉を使用します
出典:気象庁『大地震後の地震活動(余震等)について』(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/aftershocks/index_whats_aftershock.html ・2026年8月28日確認時点)
同じページによれば、最大震度5弱以上が観測された大地震のあと、気象庁は約1〜2時間後から今後の地震活動の見通しを発表します。呼びかけの基本は「1週間程度は、最初の大地震の規模と同程度の地震に注意する」こと、そして「特に、地震発生後2〜3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多くあります」。
言い換えると、揺れが止まって1時間の時点は、まだ終わりではなく途中です。片づけを始めるより先に、頭上の落下物を減らし、履物を確保しておく。ここで無理をして体調を崩す流れが、避難生活のなかでどう積み上がっていくかは災害関連死は何が原因で起きるのか|公的統計の内訳から逆算する家庭の備え4つで公的統計の内訳から見ています。
経過時間 × いまいる場所のマトリクス
ここがこの記事の主役です。公的機関が示す原則(身の安全 → 出口の確保 → 火の始末 → 電気とガスの確認)を、いる場所ごとに当てはめ直しました。縦に場所、横に経過時間をとっています。
| いまいる場所 | 揺れている最中(0〜60秒) | 収まった直後(〜3分) | 3分〜1時間 |
|---|---|---|---|
| 寝室・寝ているとき | 布団や枕で頭を守り、起き上がらずに揺れが止まるのを待つ | 明かりを確保し、足元を見てから床に降りる。倒れた家具とガラス片を避ける | 扉を開けて出口を確保。寝室に倒れてくる家具がないか、明るいうちに見直す |
| 風呂・トイレ | 扉を開けて出口を確保し、洗面器やタオルで頭を守る。すぐ飛び出さない | 裸足のままガラス片の上を歩かない。履物を確保してから移動する | 給湯器などガス機器の状態を確認。ガス臭ければ触らず事業者へ連絡 |
| キッチン | 火に近づかず、コンロと食器棚から離れて頭を守る | 揺れがおさまってから火の始末。割れた食器と包丁の落下位置に注意 | ガスが止まっていれば復帰の手順を確認。家を離れるならブレーカーも切る |
| リビング・居室 | 丈夫な机やテーブルの下に入り、脚をつかんで頭を守る | 窓や戸を開けて出口を確保。テレビや本棚の落下物を踏まない | 情報を確認しつつ、通路をふさいでいる家具を寄せて動線を作る |
| 屋外(市街地) | かばんなどで頭を守り、建物・ブロック塀・自動販売機から離れる | 落下物の危険が少ない広い場所へ移動する。塀や看板の下に留まらない | 気象庁の警報と自治体の避難情報を確認し、指示に沿って行動する |
| 車の中 | 急ブレーキを避けて減速し、道路の左側など安全な場所に停めて揺れが止まるのを待つ | ラジオなどで状況を確認する。あわてて外に出ない | 車を置いて移動する必要が出た場合の扱いは、警察や自治体の案内に従う |
| エレベーター | 最寄りの階で降りられるようにする。壁際で姿勢を低くする | 閉じ込められたら非常用の呼び出しボタンで通報。自力で扉を開けようとしない | 救出を待つあいだの過ごし方は長丁場を想定する(別記事で詳述) |
この表は、公的機関が示している行動の原則を当サイトが場所ごとに並べ直したものです。実際の判断は、その場の状況と、気象庁・自治体・施設の管理者からの案内を優先してください。エレベーターに閉じ込められたときの初動と待機時間の想定は地震でエレベーターに閉じ込められたら|最初にやる3つと、3時間を想定した備えで扱っています。

玄関に貼る初動チェックリスト
紙に印刷して玄関の内側に貼るか、スマホのスクリーンショットにして、すぐ開ける場所に置いておく用です。上から順に、迷ったらこの並びで動きます。
- 机やテーブルの下に入り、頭を守る(揺れているあいだはこれだけ)
- 揺れがおさまったら、窓や戸を開けて出口を確保する
- 火を使っていたなら、ここで初めて火の始末をする
- 足元を見る。履物を履いてから歩く
- ガス臭くないか確認する。臭ったら復帰操作をせず事業者へ連絡
- 家を離れるなら、ブレーカーを切り、ガスの元栓を締める
- 気象庁の警報と自治体の避難情報を確認する
- 決めておいた方法で家族の安否を確認する
やってはいけない5つは、根拠まで覚えておく
禁止事項とは、やらない理由を説明できて初めて、本番で守れるものです。「そう言われているから」では、慌てた瞬間に体が別の動きをします。5つとも、公的機関の原文を添えました。
1. 揺れている最中に火を消しに行く
東京消防庁『地震 その時10のポイント』は「火を使っている時は揺れがおさまってから、あわてずに火の始末をする」としています。理由は同庁『地震に備えて』にある通り、都市ガス・プロパンガスが震度5程度で自動遮断され、石油ストーブにも耐震自動消火装置が普及しているためです。揺れているコンロへ歩くほうが危険、という順序になります。
2. あわてて外へ飛び出す
総務省消防庁『地震に自信を』の原文は「大揺れは1分程度でおさまるので周囲の状況をよく確かめ、あわてて外へ飛び出すことなく落ち着いて行動しましょう」。同じ資料は「門や塀には近寄らない」ことも挙げています。外に出た直後こそ、落下物とブロック塀の下です。
3. ガス臭いのに、自分でマイコンメーターを復帰させる
日本ガス協会の復帰手順は、1番目が「ガス臭くないか確認」です。ガス漏れの疑いがあるときは復帰操作をせず、ガス事業者へ連絡することになっています。復帰ボタンは、安全が確認できた人だけが押すものだと考えてください。
4. ブレーカーを落とさないまま家を離れる
東京消防庁尾久消防署は、停電から復旧した際の再通電で水槽ヒーターから出火した事例を挙げ、「避難などで家を離れる際はブレーカーを落としましょう!」と明記しています。『地震 その時10のポイント』の側も「避難の前に安全確認 電気・ガス」を挙げ、ブレーカーを切りガスの元栓を締めてから避難するとしています。
5.「もう大きな地震は来ない」と思い込む
気象庁は「もう強い揺れを伴う地震は起きないとは決して思わず、その後の地震活動や降雨の状況に十分注意し、やむを得ない事情が無い限り危険な場所には立ち入らないなど、身の安全を守る行動を心がけてください」と呼びかけています。同庁が「余震」という語を使わなくなったのも、同じ理由からです。
出典:東京消防庁『地震 その時10のポイント』『地震に備えて』、総務省消防庁『地震に自信を』、日本ガス協会『ガスが止まったら』(https://www.gas.or.jp/anzen/gas-stop/)、東京消防庁尾久消防署『”地震火災”を防ぎましょう』、気象庁『大地震後の地震活動(余震等)について』(いずれも2026年8月28日確認時点)
これは自分で判断しないほうがいい
自分で判断しない場面とは、間違えたときに取り返しがつかない、または制度上あなたに判断権がない場面のことです。3つあります。
建物にまだ住めるかどうか
地震のあと、壁にひびが入った家に戻ってよいのか。これは目視の感覚で決める話ではなく、制度があります。震災建築物応急危険度判定は、被災した建築物について、その後の地震による倒壊や外壁・窓ガラスの落下から生じる二次災害を防ぐために行われるもので、市町村の要請を受けた知事認定の判定士(建築士など)が無料で調査します。結果は緑(調査済=使用可能)、黄(要注意=立ち入る場合は十分注意)、赤(危険=立ち入ることが危険)のステッカーで表示されます。
ここで混同しやすいのが、罹災証明書のための調査です。神奈川県の説明は「この調査は、地震発生後の二次災害防止のために行うもので、り災証明のための調査とは異なることに注意してください」と明記しています。目的が違うので、片方が終わっても、もう片方は別に申請が必要です。罹災証明の側の流れと、片づける前に撮っておく写真については罹災証明書の申請の流れ|片づける前に撮る写真と、判定に納得できないときの再調査にまとめています。
ガスを復帰させてよいかどうか
マイコンメーターの復帰は自分でできる作業ですが、それは「ガス臭くない」ことが前提です。臭いがある、器具の状態がおかしい、建物に損傷がある。どれかに当てはまるなら、判断はガス事業者に渡します。
避難するかどうか
繰り返しになりますが、避難のタイミングと避難先の判断は、気象庁の警報・注意報と、自治体が発表する避難情報に従ってください。当サイトの記事は、その判断を代わりに下すものではありません。
次の地震までにやっておくことは、部屋の中の凶器を減らすこと
ここまで見てきた通り、初動でいちばん厄介なのは倒れてきた家具と割れたガラスでした。裏を返せば、今日この瞬間にできる備えは、揺れたときに飛んでくる物を減らしておくことに集約されます。東京消防庁も、家具の固定を「都民の責務」として東京都震災対策条例第8条第2項第二号に位置づけていると説明しています。
器具は、効果の順番が公表されている
どれを買えばいいのか。東京消防庁は震度6強の揺れを再現した実験で器具の効果を測定していて、結論をこう書いています。
家具をL型金具などで壁に直接ネジ固定する方法が最も効果が高い
家具の上部と天井の間に、ポール式などで家具を固定する場合は、ストッパー式や粘着マット式を併用すると効果が高い
マット式やストッパー式の器具の単独使用は効果が小さい
出典:東京消防庁『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック―室内の地震対策―』令和6年1月(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000010472.pdf ・2026年8月28日確認時点)
順位がはっきりしています。壁にネジで留めるL型金具が一番。突っ張り棒だけ、あるいは滑り止めマットだけ、という単独使用は効果が小さい。まずは持ち家で壁に穴を開けられる人から、この一番強い方法を取るのが早道です。
下は、そのL型金具にあたる2個セットの製品です。Amazonの商品ページ表示では2個入りのセットとなっています(2026年8月10日確認)。当サイトはメーカー公式の仕様を未確認のため、重量や素材といった商品固有の数値には触れません。書けるのは「東京消防庁が最も効果が高いとしている固定方法の器具の種類である」ということまでです。
穴を開けられない賃貸は「2つ組み合わせる」
問題は賃貸住まいです。壁にネジを打てないなら諦めるしかないのかというと、同じハンドブックが逃げ道を用意しています。
最も効果の高い家具転対策器具はネジで固定するもの(L型金具等)です。しかし…穴を開けなくて済む器具を、2つ以上組み合わせて行う方法があります。例えば、ストッパー式器具(もしくはマット式)とポール式器具を2つ組み合わせることで、一番効果の高いL型金具と同等の効果が期待できます
出典:同ハンドブック 質問8(2026年8月28日確認時点)
ポール式というのが、いわゆる突っ張り棒です。単独では効果が小さいと明記されている一方、ストッパー式かマット式ともう1つ組み合わせれば、L型金具と同等が期待できるとされています。買うなら1種類ではなく2種類、というのがこの原文からの読み取りです。賃貸での具体的な組み方は賃貸の家具固定は穴を開けずにできる?東京消防庁が示す「2つ組み合わせ」の根拠で、家電ごとの固定は冷蔵庫・テレビ・食器棚の地震対策|東京消防庁の実験でわかる効く固定と、やる順番で扱っています。
次はそのポール式にあたる製品です。Amazonの商品ページ表示では伸縮棒のMサイズとなっています(2026年8月10日確認)。こちらもメーカー公式の仕様は当サイト未収集のため、寸法や耐荷重は書きません。組み合わせる相手(ストッパー式か粘着マット式)を一緒に用意することだけ、忘れないようにしてください。
ガラスは「割れない」ではなく「飛び散らない」に賭ける
食器棚のガラス戸や窓は、割れること自体を止められません。東京消防庁が推しているのは、割れたあとの飛散のほうです。
ガラスの破損や収納物の飛び出しを防止するためには、ガラス飛散防止フィルムの貼付が効果的です
ガラス戸の両面にはることにより飛散防止効果が高くなります。片面に貼る場合は、外側のガラス面に貼って下さい
出典:同ハンドブック(2026年8月28日確認時点)
貼り方まで指定があるのが実務的です。両面が理想、片面なら外側。なお同ハンドブックには「何パーセント減る」といった定量的な効果は書かれていないため、当サイトも数値では語りません。効くのは、割れた瞬間に破片が部屋じゅうに散らないことで、さっきのチェックリストの「足元を見る。履物を履いてから歩く」が現実的になる、という点です。
下は平滑面用のガラス飛散防止シートです。Amazonの商品ページ表示では平滑面用の製品となっています(2026年8月10日確認)。寸法や素材はメーカー公式で裏を取れていないため書きません。
明かりは、両手が空く形で持つ
地震のあとの部屋は、昼でも雨戸が閉まっていれば暗く、夜なら真っ暗です。そして足元にはガラス片がある。片手でスマホのライトを掲げながら家具をどける、という体勢が続かないのは想像がつくと思います。停電が長引いたときの動き方そのものは別記事の担当にして、ここでは「両手が空く明かりを1つ持っておく」ところまでにします。
下のPanasonic BF-BL45M-Wは、メーカー公式で質量520gと公表されている多機能強力ランタンです。500mlのペットボトル1本とほぼ同じ重さだと思ってください。USBの入出力機能は搭載されていませんので、スマホの充電も兼ねたい場合は別の手段が必要です。
通電火災を止める装置もある
先に見た通り、地震火災の半分以上は電気が原因でした。これを自動で止めるのが感震ブレーカーです。普及はまだ途中で、消防庁の資料に載っている令和6年度の内閣府調査では、首都圏の危険密集地域で30.5%(調査数1,096)、危険密集地域以外で20.3%(調査数9,736)となっています。
効果の見積もりも出ています。同じ資料は、首都直下地震の被害想定で設置率が20%から50%になれば焼失棟数が約3割減、100%なら約7割減という試算を示しています。数字が続いたので言い換えると、この装置は自分の家だけでなく、隣の家が燃えないためにも効く種類の備えです(出典:消防庁予防課『感震ブレーカーの普及推進について』資料2・令和8年2月・2026年8月28日確認時点)。
家全体で何が足りていないかを一覧で点検したい場合は、地震の備えリスト|家具の固定と備蓄を1枚で点検する家庭のチェック表を先に開いてから、上の器具を選ぶほうが無駄がありません。
よくある質問
Q. 緊急地震速報が鳴ってから、何秒あるのですか
政府広報オンラインは「数秒から数十秒程度」としています。ただし気象庁自身は、地域差が大きいことを理由に猶予時間を数値で発表していません。何秒あるかを前提に動くのではなく、鳴ったらまず頭を守る、と決めておくほうが確実です。
Q. 揺れている最中、本当に火を消しに行かなくていいのですか
東京消防庁は「火の始末は揺れが収まってから行いましょう」としています。根拠として、都市ガス・プロパンガスが震度5程度で自動遮断されること、石油ストーブに耐震自動消火装置が普及していることを挙げています。なお、この考え方に切り替わった時期を示す公的資料を当サイトは確認できていないため、年号は書いていません。
Q. 揺れがおさまったら、すぐ外に出るべきですか
総務省消防庁は「あわてて外へ飛び出すことなく落ち着いて行動しましょう」としています。外に出た直後は落下物やブロック塀の危険があるためです。ただし津波警報が出た沿岸部や、火災が迫っている場合は別で、気象庁の警報と自治体の避難情報に従って行動してください。
Q. どれくらいの期間、警戒を続ければいいですか
気象庁は最大震度5弱以上の大地震のあと、約1〜2時間後から今後の地震活動の見通しを発表します。呼びかけの基本は「1週間程度は、最初の大地震の規模と同程度の地震に注意する」で、特に発生後2〜3日程度は規模の大きな地震が発生することが多いとしています。
Q. 家族と連絡が取れません。171はいつでも使えますか
いいえ。NTT東日本は災害用伝言ダイヤル(171)を「地震、台風などの災害の時に運用開始する」サービスだと説明しています。運用が始まっていなければ本番と同じようには使えません。毎月1日・15日などの体験利用日に、家族で一度試しておくのが実質的な準備になります。
家具の固定とガラスの飛散防止は、手順まで踏み込んだ記事を別に用意しています。賃貸の家具固定は穴を開けずにできる?東京消防庁が示す「2つ組み合わせ」の根拠と器具の公表値と冷蔵庫・テレビ・食器棚の地震対策|東京消防庁の実験でわかる効く固定と、やる順番をあわせてご覧ください。
まとめ:今日やることは1つだけ
地震の初動は、覚えることを増やすほど本番で出てこなくなります。持って帰るのは「身の安全 → 出口の確保 → 火の始末 → 電気とガスの確認」という順番ひとつで足ります。
そのうえで、今日やることを1つに絞るなら、寝室で自分の頭の上に倒れてくる物を1つ減らすことです。近年の地震で負傷者の約3〜5割が家具類の転倒・落下によるものだという東京消防庁の調査を踏まえれば、初動の成否は揺れる前に半分決まっています。
- 寝室を見る寝ている位置から見上げて、倒れてくる家具・落ちてくる物を1つ特定する。
- 固定方法を決める壁に穴を開けられるならL型金具。開けられないなら、ポール式とストッパー式(またはマット式)を2つ組み合わせる。
- チェックリストを貼るこの記事の初動チェックリストを印刷して玄関の内側に貼るか、スマホに保存する。
避難の判断そのものは、いつでも気象庁の警報と自治体の避難情報が優先です。この記事の役目は、その判断が下るまでの数分を、迷わず動けるようにしておくことにあります。
参考・出典
- 総務省消防庁『地震に自信を あなたを守る次の行動1』https://www.fdma.go.jp/publication/database/jishin2jishin/post17.html(2026年8月28日確認時点)
- 消防庁予防課『感震ブレーカーの普及推進について』資料2・令和8年2月https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-187/01/shiryou2.pdf(2026年8月28日確認時点)
- 東京消防庁『地震 その時10のポイント』(更新日2025年12月12日)https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/bou_topic/jisin/point10.html(2026年8月28日確認時点)
- 東京消防庁『地震に備えて』https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/bou_topic/jisin/life00.html(2026年8月28日確認時点)
- 東京消防庁『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック―室内の地震対策―』令和6年1月https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000010472.pdf(2026年8月28日確認時点)
- 東京消防庁尾久消防署『”地震火災”を防ぎましょう』(更新日2026年4月28日)https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/ogu/page_00056.html(2026年8月28日確認時点)
- 気象庁『緊急地震速報(警報)及び(予報)について』https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/shikumi/shousai.html(2026年8月28日確認時点)
- 気象庁『大地震後の地震活動(余震等)について』https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/aftershocks/index_whats_aftershock.html(2026年8月28日確認時点)
- 政府広報オンライン『緊急地震速報~その時どう動く?「数秒間の心がまえ」』https://www.gov-online.go.jp/prg/prg24210.html(2026年8月28日確認時点)
- 日本ガス協会『もしも地震や台風などの自然災害がおきたら』https://www.gas.or.jp/anzen/jishin//『ガスが止まったら』https://www.gas.or.jp/anzen/gas-stop/(2026年8月28日確認時点)
- 内閣官房『過去の大規模地震時における火災の発生状況』(資料6)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/suisinkaigi/joukyou_dai16/shiryou6.pdf(2026年8月28日確認時点)
- NTT東日本『災害用伝言ダイヤル(171)』https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171//『体験利用のご案内』https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171s/howto.html(2026年8月28日確認時点)
- 神奈川県『震災建築物応急危険度判定について』(更新日2026年7月24日)https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f7t/oq.html(2026年8月28日確認時点)
