停電でも動く扇風機の選び方|消費電力の公表値と、モバイルバッテリーで動く条件

本記事にはプロモーションが含まれます。

真夏の夜、エアコンが止まった瞬間の静けさ。あの「ブーン」という音が消えると、部屋の空気がぴたりと動かなくなります。とりあえず扇風機を回そう——と手を伸ばして、そこでようやく気づくのです。扇風機もコンセントで動いている、ということに。

停電中に扇風機を動かす道は、大きく分けて3つあります。①内蔵バッテリーや乾電池で動く機種、②USB PD給電でモバイルバッテリーから動かす、③ポータブル電源からAC/DCで動かす。この3つは「どれが優れているか」ではなく、それぞれ必要とする条件がまったく違うのが厄介なところです。特に②は、手持ちのモバイルバッテリーが何でもいいわけではありません。山善が公式に書いている条件は「出力電圧9Vまたは12V、出力電力20W以上の機器」。この数字を知らずに買うと、家にあるバッテリーでは動かない、という結末になります。

消費電力にも、思ったより大きな幅がありました。山善のDCモーター機は公表値で13〜18W、同じ山善のACモーター機は23〜25W(50/60Hz)。アイリスオーヤマの「サーキュレーターアイ DC JET」に至っては、24畳モデルが25W、30畳モデルが35Wで、しかも電源の入り方そのものが違います。この記事は、その公表値を1機種ずつ確かめて並べたものです。価格には触れません。触れるのは、停電中に動くかどうかを分ける数字だけ。

なお、停電が起きた直後に何をするかという行動の順番は、この記事では扱いません。そちらは停電したらまず何をする?発生直後10分→3時間→1日の時系列やることリストとチェック表にまとめてあります。ここから先は「どの機種を選ぶか」だけの話です。

この記事でわかること

  • 停電中に扇風機を動かす3つの方式と、それぞれに必要な条件の対応関係
  • 手持ちのモバイルバッテリーで動くかどうかを、表示だけで判定する方法(9Vまたは12V・20W以上)
  • 山善・アイリスオーヤマの実機6機種のメーカー公表値(消費電力13〜35W)と、DC/ACの差
  • 「容量Wh ÷ 消費電力W」で駆動時間を自分の数字で概算する手順(理論値であることの注記つき)
目次

停電中に扇風機を動かす道は3つある

停電中の扇風機の電源方式とは、コンセントが死んでいる状態で羽根を回すための電気の出どころのことです。出どころは3つしかありません。機器の中に入っている電気(内蔵バッテリー・乾電池)、USBケーブルの先から来る電気(モバイルバッテリー)、そして家電をそのままつなげる箱から来る電気(ポータブル電源)。

この3つを混ぜて考えると、必ず判断を誤ります。「充電式だからモバイルバッテリーでも動くだろう」「DCモーターだからポータブル電源に優しいはずだ」——どちらも、条件を確かめないと成立しない推測です。整理すると、こうなります。

方式 電気の出どころ 成立に必要な条件 向く場面 弱点
①内蔵バッテリー・乾電池 機器の内部 停電前に充電が済んでいること/乾電池の在庫があること 停電の直後。ケーブルも何もつながずに動かせる 切れたら終わり。乾電池式は停電が長引くと補充が要る
②USB PD給電(モバイルバッテリー) 手持ちのモバイルバッテリー 扇風機側がUSB PD給電に対応し、バッテリー側が出力9Vまたは12V・20W以上を出せること スマホ用のバッテリーを兼用したいとき。持ち出しにも回せる 条件を満たさないバッテリーでは動かない。5V専用機では代用不可
③ポータブル電源 据え置きの大容量バッテリー AC出力があること(DC入力機は付属アダプターが要る場合あり) 据え置きで長く回したいとき。他の家電と共用できる 本体が重く高価。容量の計算が必要
停電中に扇風機を動かす3つの道。内蔵バッテリー・乾電池で動く機種、USB PD給電でモバイルバッテリーから動かす、ポータブル電源からAC/DCで動かす、の3方式と、それぞれが必要とする条件の対応図

3方式は「どれか1つを選ぶ」ものではありません。停電の長さによって出番が変わります。数時間なら①、半日〜1日なら②、それ以上なら③。備えとして考えるなら、①か②のどちらかを先に持っておいて、③はあとから足すのが現実的な順番です。

③のポータブル電源については、容量の決め方だけで1本の記事になります。人数と日数から逆算する考え方はポータブル電源のおすすめ容量は?防災用は人数×日数で逆算するにまとめました。ここでは「扇風機はポータブル電源にとって軽い負荷の部類に入る」ということだけ、先に押さえておきます。その根拠が、次の公表値です。

消費電力の公表値を並べると、DCとACの差が見える

消費電力とは、その機器が1時間あたりに使う電力の大きさを表す数字です。停電中は、この数字がそのまま「バッテリーの減り方」に直結します。ところが扇風機のW数は、カタログの目立つところにはあまり書かれていません。今回は、メーカー公式の商品ページと取扱説明書PDFを開いて、1機種ずつ拾いました。

機種 メーカー モーター 消費電力(公表値) 電源 適用面積などの目安
PCF-SDC15T アイリスオーヤマ 今回は確認できず(シリーズ名は「DC JET」) 25W DC24V(専用アダプター使用) 24畳/約1.3kg
PCF-SDC18T アイリスオーヤマ 今回は確認できず(シリーズ名は「DC JET」) 35W AC100V(50/60Hz) 30畳/約1.9kg
YWRX-BMD183 山善 DC 13W AC100V 壁掛・18畳まで
YWRX-BMD15E 山善 DC 18W AC100V 壁掛・15畳まで
YLX-DJD30E 山善 DC 18W AC100V リビング・風量9段階・羽根径30cm
YAS-BFKW151 山善 AC 23W/25W(50/60Hz) AC100V 比較用のACモーター機

並べると、山善の中だけでDCモーター機は13〜18W、ACモーター機は23〜25Wという差が出ました。同じメーカー、同じ「洗える」系の商品群で、モーターの方式だけが違う。これは比較材料としてかなり素直です。

この差は公的機関の統計ではありません。今回並べたのは山善が自社の商品ページに載せている公表値であり、資源エネルギー庁などが出した統計値ではないことを、はっきり書いておきます。「DCモーターは一般にAC比で何%省電力」といった数字を裏づける公的な一次情報には、今回たどり着けませんでした。ここに書けるのは、あくまで「この6機種の公表値を並べるとこうだった」までです。

では、この13Wと35Wの差はどれくらい効くのか。同じバッテリーにつないだと仮定すると、35Wの機種は13Wの機種の約2.7倍の速さで電気を減らします。仮に13W機が9時間もつ電源なら、35W機は3時間台。一晩を越えられるかどうかが、この1行で入れ替わる計算です。逆に言えば、W数を見ずに「大きくて強そうなほう」を選ぶと、停電の夜にいちばん困る機種を選んでしまう可能性があります。

そなえぐらし管理人
公表値を集めていていちばん驚いたのは、W数が「商品ページの下の方の仕様表にしか書かれていない」機種が多かったことでした。停電中はこの数字が全てなのに、選ぶときにいちばん目に入りにくい場所にある。だからこの記事は、まずそこを引っぱり出すところから始めています。

ちなみに、公表値を1社ずつ開いて確かめる作業は、当サイトが冷蔵庫でも同じようにやっています(停電中の冷蔵庫は何時間もつ?公表値2〜3時間の出どころをメーカー6社分たしかめた)。二次情報のまとめサイトに載っている数字と、メーカーが自分の名前で書いている数字は、しばしば一致しません。

同じ「DC JET」でも、電源の入り方が違う

電源電圧とは、その機器が受け取る電気の形そのものを指します。100Vの交流をそのまま受けるのか、アダプターで変換した直流を受けるのか。ここが違うと、停電中につなげる先も変わります。

今回いちばんの発見は、ここでした。アイリスオーヤマの「サーキュレーターアイ DC JET」は、シリーズ名を共有する兄弟機です。ところが公式の取扱説明書PDFを開くと、電源の入り方が別物でした。

項目 PCF-SDC15T(~24畳) PCF-SDC18T(~30畳)
電源電圧 DC 24V(専用アダプター使用) AC 100V(50/60Hz)
消費電力 25W 35W
適用面積の目安 24畳 30畳
製品質量 約1.3kg 約1.9kg

つまり、24畳モデルは専用ACアダプターを経由してDC24Vを受け取る設計で、30畳モデルはAC100Vを直接受け取る設計。名前は同じシリーズなのに、電気の入口が違います。

これが何を意味するか。「DCモーターだからポータブル電源に有利」という言い方が、そのままでは通らないということです。DC24V入力の機種でも、実際に電源に挿すのは付属の専用ACアダプターです。ポータブル電源のAC出口につなぐなら、そのアダプターが手元にないと動きません。逆にAC100V直結の機種は、アダプターの紛失を気にせずに済む代わりに、この2機種で言えばW数のほうが10W大きい。有利・不利は「DCかACか」では決まらず、機種ごとの実際の入口とW数で決まります。

備えとしての実務的な話。専用アダプターを使う機種は、アダプターも一緒に避難用の置き場に入れておく必要があります。本体だけ持ち出しても動きません。日常でコンセントに挿しっぱなしにしている家庭ほど、この「本体とアダプターがセットで1台」という感覚が抜けがちです。

なお、この2機種のモーター方式そのものについては、今回開いた取扱説明書PDFから読み取れたのが電源電圧・消費電力・適用面積・質量までだったため、「DCモーター搭載」と断定できる公式記述は今回は確認できませんでしたと書いておきます。シリーズ名に「DC JET」とあることは事実ですが、名前は仕様表ではありません。

モバイルバッテリーで動かせる条件は、公式に数字で書かれている

USB PD給電とは、USB Type-Cのケーブル経由で、5Vより高い電圧・大きい電力を送る仕組みのことです。スマホの急速充電で使われるあの規格を、扇風機の動力に使う。ここが「手持ちのモバイルバッテリーで扇風機が回るか」の分かれ目になります。

そして、この条件を数字で公表しているメーカーがありました。山善です。公式サイト(YAMAZEN BOOK)の該当機種のページに、原文でこう書かれています。

※モバイルバッテリー:出力電圧9Vまたは12V、出力電力20W以上の機器。

(出典: 山善 YAMAZEN BOOK 商品ページ/2026年8月30日確認)

ここが具体的で助かるところです。「PD対応のバッテリーをご用意ください」ではなく、9Vまたは12V、20W以上、と数字で書いてある。この3つは、たいていのモバイルバッテリーなら本体の側面か底面に小さく印字されています。買い足す前に、まず手元のものを裏返して見る価値があります。

  • 扇風機側の公式仕様表に、USB PD給電またはモバイルバッテリー駆動の記載があるか(通販サイトの商品説明文ではなく、メーカー公式で確認する)
  • 手持ちバッテリーの出力表示に「9V」または「12V」の段があるか(5Vしか書かれていないものは対象外)
  • その9V/12Vの段で、20W以上を出せると書かれているか(例: 9V=2.22A なら約20W)
  • ケーブルがUSB Type-Cで、PD対応品か(充電専用の細いケーブルでは電力が足りないことがある)
手持ちのモバイルバッテリーで扇風機を動かせるかの分岐図。出力電圧9Vまたは12Vがあり、かつ出力電力20W以上かという問いに対する「はい」「いいえ」の分かれ

4つすべてに「はい」がつけば、条件は満たしています。1つでも「いいえ」があるなら、そのバッテリーではその機種は動かないと考えたほうが安全です。ここは根性でどうにかなる部分ではなく、電圧と電力という物理の話なので。

USB PDの電圧段(5V/9V/12Vなど)そのものの規格上の定義については、規格団体の公式ページに今回到達できず、一次情報として確認できていません。この記事で扱っているのは、あくまで「山善が自社機種の動作条件として公表している数字」です。他社の機種には別の条件が書かれている可能性があります。

手持ちのモバイルバッテリーの容量そのものが心もとない場合は、防災用モバイルバッテリーの容量の決め方|表記の6〜7割で計算するを先に読んでおくと、扇風機とスマホの取り合いにならずに済みます。

山善 YARP-QD151(洗える・リモコン付き・20畳まで)

この「9Vまたは12V・20W以上」という条件を公式に明記している機種が、山善のYARP-QD151です。20畳までのサーキュレーターで、DCモーター、リモコン付き、そして分解して洗える構造。消費電力は16Wで、給電はUSB Type-C(通常はACアダプター経由)。停電時にはそのType-C端子に、条件を満たすモバイルバッテリーを差して動かす、という使い方が公式に想定されています。

型番の表記について、先に断っておきます。当サイトが把握している通販上の型番表記は「YARP-QD15(C)」で、メーカー公式サイトでの型番表記は「YARP-QD151」です。末尾の1文字が違います。本記事で公表値(消費電力16W、モバイルバッテリーの条件)として引いているのは公式サイトの YARP-QD151 のページに書かれている内容であり、下のカードに表示される商品名とは表記が食い違って見える場合があります。購入前にご自身で型番の一致を確認してください。

この機種がこの用途に向くと言えるのは、3点そろっているからです。①モバイルバッテリー駆動の条件がメーカー自身の言葉で数字化されている(推測で買わずに済む)、②16Wという値がPDの20W枠に収まっている、③洗える構造なので、停電の有無にかかわらず年間を通して普段使いできる。防災用品でいちばん多い失敗が「しまい込んで存在を忘れる」ことなので、普段から回している機械がそのまま停電時の戦力になる、という点は地味に大きい。

乾電池とUSBで動く卓上機という選択肢がある

卓上扇風機とは、部屋全体ではなく、机や枕もとなど自分の周囲の空気だけを動かす小型機です。部屋を涼しくする力はありませんが、その代わりW数が桁違いに小さい。停電中の電気の使い方としては、実はここがいちばん効率のいい領域です。

例に挙げるのは、ドウシシャの卓上扇風機「スリムコンパクトファンMulti」FSA-109U。公式サイトの仕様表に記載されている消費電力は1.5W(USB外部電源で使用時)です。前の章のYARP-QD151が16Wでしたから、単純計算で16W機1台ぶんの電気で、1.5W機なら10台が動く。停電が長引くほど、この差は効いてきます。

そして、この機種には書いておくべき食い違いがあります。

「4電源」という表示について。通販サイトの商品名には「4電源」という語が入っていることがあります。一方、メーカー公式(e-doshisha.com)の仕様表に電源として明記されているのは「DC5V USB-C端子」と「単3形乾電池×4本(別売)」の2方式です(2026年8月30日確認)。どちらかが嘘だ、という話ではありません。公式の仕様表に書かれているのはここまでだった、というのが今回確認できた事実です。USB-C給電なのでモバイルバッテリーからの動作は理屈のうえでは考えられますし、別売アダプターでコンセントから使うこともできるでしょうが、それらは公式仕様表に電源方式として列挙されてはいませんでした。購入の判断は、公式仕様表に書かれている2方式を基準にするのが安全です。

この機種がこの用途に向く理由は、条件のゆるさにあります。1.5Wという値なら、条件のきついPD対応バッテリーを用意しなくても、USB出力があるバッテリーで足ります。しかも単3形乾電池×4本(別売)でも動く。バッテリーが切れても、電池さえあれば復活する——これは①と②の方式を1台で兼ねているということです。停電が読めない長さに伸びたとき、電池で継投できる機械が1台あるかどうかは、気持ちの余裕がずいぶん違います。

ついでに言えば、卓上機のこの軽さは避難所に持ち込む前提とも相性がいい。冷房があるとは限らない場所で何を持っていくかは夏の避難所の暑さ対策|冷房があるとは限らない前提で自分が持っていくものにまとめてあります。

駆動時間は「容量Wh ÷ 消費電力W」で概算できる

Wh(ワットアワー)とは、バッテリーが蓄えている電気の総量を表す単位です。1Whは「1Wの機器を1時間動かせる量」。だから、割り算だけで持ち時間のあたりがつきます。

式はこれだけです。

駆動時間(時間) ≒ バッテリー容量(Wh) ÷ 扇風機の消費電力(W)

たとえば、20,000mAh級のPD対応モバイルバッテリーの容量を仮に74Whと置いて、16Wの機種を動かすとします。74 ÷ 16 ≒ 4.6時間。寝つくまでの数時間は回せても、朝までは届かない、という規模感です。ここを「一晩いける」と誤解したまま買うと、夜中の2時に止まって困ることになります。

この4.6時間は理論値です。変換ロス、出力制御による目減り、気温によるバッテリー性能の変化は一切考慮していません。実際にはこれより短くなります。また、74Whという数字は「20,000mAh級のPD対応バッテリーの一般的な目安」として置いた仮の値で、特定製品の公表値ではありません。実際の判断は、お手元のバッテリー本体に印字されているWh表示で計算し直した数字で行うのが確実です。

下の表は書き込み式にしてあります。右の2列が、自分の数字を入れる欄です。

機種の例(公表値) 消費電力W 仮に74Whなら(理論値) 手持ちの容量Wh(記入) ÷ W = 概算時間(記入)
ドウシシャ FSA-109U(卓上) 1.5W 約49時間    
山善 YWRX-BMD183(壁掛) 13W 約5.6時間    
山善 YARP-QD151 16W 約4.6時間    
山善 YLX-DJD30E 18W 約4.1時間    
山善 YAS-BFKW151(ACモーター) 23W/25W 約3.2/3.0時間    
アイリスオーヤマ PCF-SDC18T 35W 約2.1時間    

数字を並べると、選び方の順番が逆だったことに気づきます。ふつうは「風の強い機種はどれか」から入るはずです。でも停電を前提にすると、先に決まるのは持っている電源の容量のほうで、機種はそこから逆算するもの。手元に74Whしかないなら、35Wの機種は2時間で終わるので選択肢から外れます。そういう順番です。

ポータブル電源側の容量を、自宅の家電のW数から積み上げて求めたい場合は、ポータブル電源の容量計算|自宅の家電のW数を積算して必要Whを求める書き込み式ガイドが書き込み式になっています。扇風機だけでなく冷蔵庫やスマホも含めて足すと、必要な容量の姿がだいぶ変わります。

扇風機だけに頼らないほうがいい場面がある

扇風機の役割とは、空気を動かして体表からの熱の逃げ方を助けることであって、空気そのものを冷やすことではありません。ここを取り違えると、危ない使い方になります。

環境省の熱中症予防情報サイトのマニュアルには、原文でこう書かれています。

皮膚表面温の上昇には限り(せいぜい35℃まで)があるため、高温環境では汗による体温調節に対する依存率が高くなり…(周囲の温度が35℃以上になると、逆に熱が体に入ってきます)

(出典: 環境省 熱中症予防情報サイト『熱中症を防ぐためには』マニュアル/2026年8月30日確認)

つまり、室温が高いときは、扇風機だけに頼らないでください。周囲の温度が体表面より高い領域に入ると、風を当てることが涼しさにつながるとは限らなくなります。停電で冷房が止まり、締め切った部屋の温度が上がっていく状況は、まさにその条件に近づいていく状況です。

この記事は、扇風機が熱中症を防ぐと述べるものではありません。体調の判断、症状が出たときの対応は、公的機関の情報と医療機関の指示に従ってください。室温が高いまま下がらない、気分が悪い、といったときは、扇風機の設定をいじるより先に、涼しい場所へ移動する判断のほうが優先されます。

そのうえで、この記事の対象になりにくい人も書いておきます。①在宅で冷房の代替を求めている人——扇風機は代替になりません。②停電が数日単位で続く地域に住んでいる人——内蔵バッテリーや小容量のモバイルバッテリーでは足りず、③のポータブル電源か、そもそも避難の判断が先に来ます。③乳幼児や高齢のご家族がいる家庭——風を当てる位置や時間の判断が難しいため、機種選びより先に室温そのものへの対処を考えたほうがいい場面があります。

そなえぐらし管理人
正直なところ、扇風機は「停電の暑さを解決する道具」ではなく「解決するまでの時間を少し伸ばす道具」だと思っています。だからこそ、何時間伸ばせるのかをW数で把握しておく意味があるのだと。

停電した真夏の家で、扇風機以外に何ができるか——通風、保冷剤、時間帯の使い分けといった話は真夏の停電に備える|冷房が止まった家で最初にすることと、扇風機を動かす電源の計算にまとめています。

よくある質問

Q. モバイルバッテリーにつなげば、どの扇風機でも動きますか?

動きません。扇風機側がUSB給電に対応していることが前提で、さらに機種によっては電圧・電力の条件がつきます。山善が公表している条件は「出力電圧9Vまたは12V、出力電力20W以上の機器」。5V出力しかないバッテリーでは、この条件の機種は動かせません。まずメーカー公式の仕様表を開き、次に手持ちバッテリーの出力表示を見る、という順番で確かめるのが確実です。

Q. 乾電池式とUSB充電式、停電向きなのはどちらですか?

停電の長さで変わります。数時間で復旧するなら、充電式のほうが手間がかかりません。読めない長さに伸びる場合は、乾電池で継投できる機種のほうが粘れます。ドウシシャ FSA-109U のように、公式仕様表でUSB-C給電と単3形乾電池×4本(別売)の2方式が両方明記されている機種なら、その両方を1台でこなせます。

Q. ACモーターの扇風機は、停電時にはまったく使えないのですか?

ポータブル電源のAC出力につなげば動きます。ただし山善の公表値で比べると、ACモーター機は23〜25W(50/60Hz)、同社のDCモーター機は13〜18W。同じ電源なら、持ち時間はACモーター機のほうが短くなります。すでにACモーター機を持っているなら買い替えを急ぐ必要はなく、「何時間もつか」を先に計算しておくのが実用的です。

Q. 通販ページのスペックとメーカー公式の表記が違うときは、どちらを見ればいいですか?

メーカー公式の仕様表です。この記事でも実例に当たりました。ドウシシャ FSA-109U は通販ページの商品名に「4電源」と入る一方、公式仕様表に電源として明記されているのは2方式でした。山善の機種でも、通販上の型番表記「YARP-QD15(C)」と公式表記「YARP-QD151」が1文字違います。買う前に型番を公式サイトで検索し直す、という一手間が効きます。

Q. 「DCモーター」と書いてあれば、ポータブル電源での持ちがいいと考えていいですか?

単純にはそう言えません。アイリスオーヤマの「サーキュレーターアイ DC JET」は、24畳モデル PCF-SDC15T が DC24V(専用アダプター使用)・25W、30畳モデル PCF-SDC18T が AC100V(50/60Hz)・35W と、同じシリーズ名でも電源の入り方とW数が違いました。判断の材料になるのは、シリーズ名ではなく機種ごとの電源電圧とW数のほうです。

電源側の容量から決めたい方は、ポータブル電源の容量計算|自宅の家電のW数を積算して必要Whを求める書き込み式ガイドで、わが家の必要Whを先に出しておくと選びやすくなります。

まとめ:今日やることは、手持ちのバッテリーの表示を見ることだけ

ここまで6機種の公表値を並べてきましたが、今日この場でできることは1つです。手元のモバイルバッテリーを裏返して、出力の表示を読む。9Vか12Vの段があって、20W以上と書いてあるか。それだけで、②のUSB PD給電という道が自分にとって開いているかどうかが決まります。買い物は、それを見てからで間に合います。

  1. 手持ちのモバイルバッテリーの出力表示を確認する。「9V」または「12V」の段があるか、その段で20W以上出せるか。合わせて、本体に書かれた容量(Wh)もメモしておく。
  2. 候補の扇風機のW数を、メーカー公式の仕様表で確認する。通販ページの説明文ではなく公式で。今回の6機種の公表値は13W〜35Wの幅があり、専用アダプターの有無も機種で違いました。
  3. 「容量Wh ÷ 消費電力W」で持ち時間を計算する。理論値なので実際はこれより短くなります。その数字が自分の想定する停電の長さに足りなければ、より小さいW数の機種か、ポータブル電源のほうへ検討を移す。

計算して足りなかった場合の次の一手は、ポータブル電源の容量計算|自宅の家電のW数を積算して必要Whを求める書き込み式ガイドにあります。扇風機のW数がわかっている今なら、あの書き込み式は10分で埋まります。

参考・出典

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

目次