子どもに防災をどう説明する?学年別の声かけと、9月1日に家でやる30分

夕飯のあと、子どもがランドセルから出したプリントを片づけている——その横で切り出すのに、防災の話ほど間の悪い話題はありません。深刻な顔で始めれば怖がらせるし、軽く流せば来年の9月にまた同じことを言うことになります。

先に答えを書きます。家庭で子どもに教えるべきなのは、地震が起きたときの新しい動作ではありません。学校ですでに習っている行動を、子ども自身の言葉で言い直させること。そしてそのあと家族がどうやって合流するかという、学校では決められない部分を決めること。この2つです。動作を家庭で一から教え直すと、学校の指導と食い違ったときに子どもが迷います。

学校任せにできない理由もはっきりしています。文部科学省の「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」(2012年3月公開)は、事前・発生時・事後の3段階で学校の対応を整理する枠組みを示すものです。児童を保護者に引き渡す震度の基準は全国一律ではなく、学校や自治体ごとに個別に定められています。つまり「お迎えに行くのか、集団下校で帰ってくるのか」は、あなたのお子さんの学校のマニュアルを見なければ誰にもわかりません。ここは家庭の仕事です。

この記事でわかること

  • 家庭で教えるのは動作ではなく「学校で習ったことの言い直し」と「合流のしかた」だという整理
  • 緊急地震速報について、気象庁が公式に示している表現とその伝え方
  • 低学年・中学年・高学年で変える、声かけのセリフ例と任せる範囲
  • 9月1日の防災の日前後に、家で30分だけやることの手順と書き込み式シート
目次

家庭の防災説明は、学校で習ったことを言い直させるのが最短である

ここでいう家庭の防災説明とは、子どもに新しい知識を注入する作業ではなく、すでに学校で受け取っている指導を、子どもが自分の言葉で再生できる状態にする作業のことです。学校では避難訓練があり、地域によっては引き渡し訓練もあります。子どもの頭の中には材料がもう入っている。家庭がやるのは、それを口に出させて、抜けている部分だけを足すことです。

家で言うべきことは一言に縮められます。「学校で地震のとき、どうしなさいって習った?」——この質問から始めれば、学校の指導と家庭の説明が食い違いません。子どもが答えられたら、それが正解です。

この聞き方には副産物があります。子どもが言葉に詰まったところが、そのまま家庭で補うべき箇所になる。訓練で体は動いても、なぜそうするのかを説明できない子は多いものです。逆に、すらすら答える子には「じゃあ、家の中だったらどこ?」と場所を変えて聞けば、応用が効いているかどうかがわかります。

9月1日前後にやることの全体像は、備蓄と持ち出し袋の点検も含めてハブ記事にまとめてあります。子どもの説明と物の点検はセットで進めると一度で済むので、防災の日に家庭でやること10|30分で終わる点検チェックリストも合わせて開いておいてください。

学校のお便りを先に見てください。引き渡しの基準(震度いくつで学校待機になるか、震度が低いときは集団下校か)は自治体・学校ごとに異なります。年度当初に配られる学校の危機管理マニュアルや保護者向けプリントに書かれていることが多いので、記憶ではなく現物で確認するのが確実です。ここを勘違いしたまま「お母さんが迎えに行くからね」と約束すると、当日に子どもが動けなくなります。

そなえぐらし管理人
編集部としては、この記事に「机の下に入りましょう」といった具体的な動作の指示を並べるかどうかを最後まで迷いました。結局、公的機関の一次情報で確認が取れた表現だけを載せる方針にしています。動作を教えるのは学校の役割で、家庭がそこに別の言い方をかぶせると、いざというとき子どもの判断が一拍遅れると考えたからです。

緊急地震速報は「1分は身を守り続ける合図」として教える

緊急地震速報とは、強い揺れが予測されたときに気象庁が発表する情報で、最大震度5弱以上、または長周期地震動階級3以上と予想された場合に発表されます(2026年8月17日時点)。テレビやスマートフォンから鳴るあの音は、震度がある程度以上になると見込まれたときにだけ流れる、という理解でかまいません。

子どもに伝えるとき、いちばん誤解されやすいのは「音が鳴った=すぐ揺れる」という思い込みです。実際には、鳴ってから揺れが来るまでに間があることも、予想ほど揺れないこともあります。気象庁は「揺れがこなくても見聞きしてから1分程度は、身を守るなど警戒しましょう」「その間は身を守る行動をとり続け、揺れが収まってから落ち着いて行動しましょう」と案内しています(2026年8月17日時点)。

この「1分程度」が、子どもに渡せるいちばん実用的な数字です。1分は、校歌を1番歌い終えるくらい。テレビでCMが2本流れるくらい。頭の中で数えるにはそこそこ長い時間で、だからこそ「揺れなかったからもういいや」と早めに動き出しやすい。ここを先に言っておくだけで、当日の行動が変わります。

  • 音が鳴ったら、学校で習った身を守る形をとる
  • 揺れが来なくても、1分くらいはその形のまま待つ
  • 揺れが収まってから、落ち着いて動く
  • 形のとり方そのものは、学校で習ったとおりでいい

音を初めて聞く子は、音そのものに驚いてしまうことがあります。防災訓練の動画などで、一度だけ耳に入れておく。それだけで当日の受け止め方はずいぶん変わってくるはずです。ただし小さい子に繰り返し聞かせる必要はありません。「知っている音」になれば十分です。

声かけは学年で変える。低学年には動作、中学年には理由、高学年には判断を渡す

学年別の声かけとは、伝える内容を変えることではなく、同じ内容のうちどこまでを子ども自身に任せるかを変えることです。低学年に理由を長々と説明しても入りません。逆に高学年に動作だけを命じると、聞いてはいるものの自分ごとになりません。抽象度と、任せる範囲を動かします。

低学年には動作、中学年には理由、高学年には判断を渡すという、学年と家庭で渡すものの対応関係を示した図
学年 家庭で渡すもの 声かけのセリフ例 任せる範囲
低学年
(1〜2年)
動作の再生 「学校で地震のとき、どうしなさいって習った?やって見せて」
「おうちだったら、どこでそれをする?」
「音が鳴ったら、校歌1番くらいそのままでいてね」
身を守る形をとること。そのあとは大人の指示に従う
中学年
(3〜4年)
理由の言語化 「なんでその格好をするんだと思う?」
「揺れが来なくても1分待つのは、どうしてだと思う?」
「学校から帰る途中で鳴ったら、まずどうする?」
身を守る形+その場の安全な場所を自分で選ぶこと
高学年
(5〜6年)
判断と役割 「家に誰もいないときに鳴ったら、何から順番にやる?」
「弟や妹が一緒だったら、あなたは何をする?」
「連絡がつかないとき、どこに行けば会えるんだっけ?」
合流場所への移動、下の子への声かけ、連絡手段の実行

表のセリフをそのまま読み上げる必要はありません。眺めてほしいのは右の2列の関係です。学年が上がるほど、こちらが言う言葉は減り、子どもに答えさせる余白が増えていきます。低学年には「やって見せて」、高学年には「何から順番にやる?」。命令形から質問形へ、という一本の線が通っています。

高学年になると、家族の中での役割の話にまで踏み込めます。誰がどこに集まり、連絡がつかないときにどうするか——このあたりは子どもだけで決められないので、家族全員が揃う場でまとめて決めてしまうのが早いです。決め方の手順は家族の防災会議のやり方|30分で決める5つのことに整理してあります。

9月1日の前後は、家で30分やれば足りる

防災の日とは、毎年9月1日に置かれた防災啓発の日で、この日を含む8月30日から9月5日までが防災週間とされています(2026年8月17日時点)。現行の期間規定の根拠は昭和57年(1982年)5月11日の閣議了解です。

由来のほうは別の話になります。防災の日そのものは昭和35年(1960年)6月17日の閣議了解で創設されました。関東大震災が発生した日であること、暦の上で台風が来やすいとされる二百十日にあたること、そして前年の伊勢湾台風が契機になったこと——この3つが背景です。なお、昭和35年のこの閣議了解自体は現在は廃止されています。子どもに話すなら「昔、大きな地震と台風があった日にちなんで決まった日」という程度で十分伝わります。

この時期を選ぶ理由は、覚えやすさだけではありません。災害用伝言ダイヤル171を実際に体験できる日が、防災週間に設定されているからです(2026年8月17日時点)。

機会 171の体験利用ができる期間
毎月 1日・15日(0時〜24時)
正月 1月1日0時〜1月3日24時
防災週間 8月30日9時〜9月5日17時
防災とボランティア週間 1月15日9時〜1月21日17時

毎月1日と15日にも体験できるので、9月を逃しても翌月にやり直しがききます。使い方の実際と、171以外の手段も含めた決め方は家族の安否確認方法の決め方|災害用伝言ダイヤル171にまとめました。

家で30分でやること(手順)

30分は、夕飯の食器を片づけてお茶を飲むくらいの時間です。子どもの集中も、だいたいそのあたりで切れます。長くやらないほうが翌年も続きます。

  1. 学校のお便りを出す(5分)引き渡しの基準と、引き渡し場所を保護者が確認します。子どもに読ませる必要はありません。ここは大人の作業です。
  2. 子どもに聞く(10分)「学校でどう習った?」から始め、学年に応じて理由・判断へ広げます。答えられなくても責めないこと。わからなかった箇所が、次に学校で確かめる宿題になります。
  3. 連絡と合流を決める(10分)集合場所と連絡手段を家族で1つに決めます。防災週間中なら、そのまま171を体験利用して実際に声を録音・再生してみます。
  4. 下の確認シートを埋める(5分)紙に書いて、子どもが見える場所に貼ります。冷蔵庫でも、勉強机の横でもかまいません。

子どもと一緒に埋める確認シート

空欄は、できるだけ子ども自身に書かせてください。書きながら口に出したことは、聞いただけの内容より残ります。

項目 書き込む内容 記入欄
学校で習ったこと 地震のとき、学校でどうしなさいと習ったか           
家の中の場所 家にいるとき、どこで身を守るか           
学校での引き渡し お迎えになるのか、集団下校か(学校の基準を大人が記入)           
集合場所 連絡がつかないとき、どこに行けば会えるか           
連絡の方法 171を使うか、ほかの方法か。使う番号           
体験した日 171を実際に試した日付    年  月  日

30分の枠に物の準備まで詰め込むと終わりません。子どもに関わる備えのうち、量の見当がつきにくい食べ物は子どもの非常食|年齢別の量の目安を、頭を守る道具でヘルメットと防災ずきんのどちらを買うか迷っているなら防災ヘルメットと防災ずきんはどちらが必要?を、別の日に回してください。子どもが寝ている部屋の家具や照明が気になった場合は寝室の地震対策|枕元に置くものが参考になります。

説明の材料が欲しいときは、内閣府の防災情報のページに子ども向けの教材が公開されています。小学生を対象にした「ぼうさい探検隊」(まち探検をしながら防災マップを作る取り組み)、幼児向けのカード形式教材「ぼうさいダック」、紙しばい「津波だ!いなむらの火をけすな」、親子で建物の揺れを学ぶ「ぶるるくん」など(2026年8月17日時点)。学年が上の子には、まち歩きとマップ作りのほうが座学より入りやすい傾向があります。

この記事が当てはまらないケース

ここまでの内容は、学校で避難訓練を受けている小学生を前提に組み立てています。次のような場合は、そのまま当てはまりません。

  • 未就学児——「学校で習ったことを言い直させる」という土台がありません。園の方針を保護者が確認し、遊びの延長で扱う教材のほうが向いています。
  • 中学生以上——判断の範囲がさらに広がり、通学範囲も自宅から遠くなります。学年別の表の「高学年」の枠では足りません。
  • 配慮が必要なお子さん——音への過敏さ、移動のしやすさ、服薬などの事情がある場合は、学校や園と個別に打ち合わせるのが先です。一般的な手順に当てはめないでください。
  • 台風・大雨の備え——地震とは判断のしかたが変わります。この記事では扱っていません。

災害の話をしたあとに子どもが不安を強く訴えたり、眠れない・怖がるといった様子が続いたりする場合は、無理に説明を続けないでください。心のケアは専門的な領域です。学校のスクールカウンセラー、自治体の子育て相談窓口、かかりつけの小児科など、公的な相談先に相談してください。

よくある質問

Q. 地震のときの具体的な動作を、家でも教えたほうがいいですか?

まずは学校で習った内容を子どもに言わせて、それを軸にしてください。家庭で別の動作を教えると、学校の指導と食い違ったときに子どもが迷います。子どもが答えられない場合は、担任の先生や学校のお便りで確認するのが確実です。

Q. 引き渡しの基準は、震度いくつが一般的ですか?

全国共通の数値基準はありません。文部科学省の「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」(2012年3月公開)は事前・発生時・事後の3段階の枠組みを示すもので、引き渡しの震度基準は学校・自治体ごとに個別に定められています。お子さんの学校のマニュアルや保護者向けプリントで確認してください。

Q. 緊急地震速報が鳴ったのに揺れなかったら、どうすればいいですか?

気象庁は「揺れがこなくても見聞きしてから1分程度は、身を守るなど警戒しましょう」と案内しています(2026年8月17日時点)。揺れが来ないからといってすぐ動き出すのではなく、1分ほどは身を守る行動を続け、収まってから落ち着いて動くのが基本です。

Q. 災害用伝言ダイヤル171は、いつ練習できますか?

毎月1日と15日(0時〜24時)のほか、正月(1月1日0時〜1月3日24時)、防災週間(8月30日9時〜9月5日17時)、防災とボランティア週間(1月15日9時〜1月21日17時)に体験利用できます(2026年8月17日時点)。9月に間に合わなくても、翌月の1日か15日に試せます。

Q. 防災について、もっと学べる公的な場はありますか?

内閣府などが主催する「防災推進国民大会」(通称ぼうさいこくたい)があります。あわせて、内閣府の防災情報のページには子ども向けの教材が公開されているので、家庭で使う材料としてはこちらが手軽です。

まとめ:今日やることは、1つの質問だけ

この記事の内容を全部やろうとしなくてかまいません。今日のうちにやることは1つです。「学校で地震のとき、どうしなさいって習った?」と聞くこと。子どもが答えられればそれが正解で、答えられなければ、そこが家庭の出番だとわかります。

防災の日に向けて、順番はこうなります。

  1. 今日:学校のお便りを探す引き渡しの基準と場所を、記憶ではなく現物で確認します。5分で終わります。
  2. 今週:子どもに1つ質問する学年に合わせて、動作・理由・判断のどこを聞くかを決めて、夕飯のあとに1問だけ投げます。
  3. 防災週間(8月30日〜9月5日):171を家族で試す集合場所と連絡手段を決めて、確認シートに書いて貼ります。実際に声を録音して再生するところまでやれば完了です。

怖い話をする必要はありません。知っている状態にしておくだけで、当日の一拍が縮まります。子どもにとっては、それが備えのすべてです。

参考・出典

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

登山が趣味の会社員。山で非常食を食べてきた経験から「食べ慣れないものは災害時つらい」と実感し、家庭の備蓄を見直し中です。実際に買って食べたものだけ「おすすめ」と書きます。失敗も隠しません。

目次